降り続いた雨がようやく止んだその日、王宮の敷地内を進む牛車があった。
青空の下、王宮を囲む城壁のそこかしこにはためいているのは、この国の王の旗。
塔の上からサクとスマルが見守る中、牛車の中からついにユウヒが姿を現した。
人払いを命じる新王の声。それは間違いなくシムザのものだった。
御簾が上がり、現れた懐かしい顔は玉座に座るシムザと、ホムラ様となったリン。
他愛もない会話の中で、ユウヒはこの先の道の険しさを実感していくのだった。
新王との対面も済ませたユウヒ達は即位式に向けて動き出す。
サクの執務室になかなか姿を表さないユウヒが向かったのは、同じ棟のとある場所。
「なんだろうね。こんな場所、初めてきたはずなのに。全然知らないはずなのに…」
浮かべる微笑はいつもどこか寂しげで、今にも泣きそうだった。
ホムラの抱える心の闇はいったい何なのか…側仕えのカナンにはわからなかった。
そして溢れ出した感情と共に告げられた言葉は、思いも寄らぬ「真実」だった。
霧の朝、王宮の中庭にいたユウヒは見慣れぬ女官から声をかけられる。
カナンと名乗ったその女官は、話があると言ってユウヒをある場所へ連れていく。
消音石の放つ淡い光の中で、女官がユウヒに切り出した話とは…
即位の式典に向け、王宮の中庭で剣舞の稽古を始めるユウヒとスマル。
呼吸のぴたりと合った二人の仲は、いつの間にか女官達の間で噂になっていた。
そんな中、とある旅の一座の噂がユウヒ達の耳に入ってきた。
カンタ・クジャにあるジンの酒場へ、サクと共に久しぶりに訪れたユウヒ。
自分を支えてくれている人達の想いを感じながら、会話は弾む。
そこに合流したジンは、国を騒がす旅の一座についての話を切り出した。
ライジ・クジャを中心とした王都。そして青州、白州、赤州、黒州の四つの州。
一都四州がそれぞれに抱えている様々な事情を、サクとジンの二人がユウヒに伝える。
確かな手応えを感じながらも、ユウヒは今の自分に足りない物は何かを考えていた。
王宮へと戻ったユウヒの前に現れたのはスマルだった。
休養のためにホムラ郷へと帰郷するリンと共に城を離れるというスマルに
ユウヒはジンとサクから聞いた話を伝える。
何とも騒がしく賑やかに、その一日は幕を開けた。
ホムラ様の帰郷を前に、中庭ではその一行の準備が朝から着々と進んでいた。
ユウヒとスマルは、女官ヒヅルに見せるため、朝の中庭で剣を手に舞う。
ホムラ一行の旅立った後、騒然とする中庭を行くのは罪人を連行する刑軍。
救い上げた命がもう一度指の間からすり抜けようとするのを見た時、その剣は抜かれた。
浮き上がる火炎の痣。金色の瞳。白銀の髪を風になびかせ、その者は真紅の翼を広げる。
城に戻ったスマルを待っていたのは、ユウヒが収監されたという知らせだった。
主のいなくなった部屋で待っていたサクに、スマルの口から真実が伝えられる。
何も言わずに消えたユウヒが残された者達に託したものはいったい何なのか…
決して目が慣れることのない常闇の呪が施された部屋に、消音石が淡く光る。
想いは通じ、真実を知ったサクは全てを託され、ついに大臣達のもとへ。
王とその側近達が居並ぶ中、サクが下した決断とは…