参考文献:トールテールと英雄論

トールテール

 

民衆のアメリカ史

『アメリカン・ヒーローの系譜』

亀井俊介著(研究者出版、1993,372p.)

 著者はアメリカ文学者。古くから「アメリカのヒーロー」というテーマで、開拓時代から近代までのトールテールや伝説的人物を研究してきました。この本は、その集大成と言えるでしょう。個々の英雄物語を考察しながら、こうしたヒーロー像を求めるアメリカ人とアメリカ社会を描き出すことに成功していると思います。このテーマに関して、日本語で読める本としては一番の良書でしょう。巻末には、参考書目の詳しい解題も付いています。わたしとっては、この本を読んだことが、「アメリカのフォークヒーローたち」の広告シリーズを始めるきっかけでした。収録されている英雄は次の通りです。
「神話としてのアメリカ政治家」
ジョージ・ワシントン/エイブラハム・リンカン
「開拓の巨人たち」
ダニエル・ブーン/マイク・フィンク/デイヴィ・クロケット/ジョニー・アップルシード
「奇跡の活動家たち」
ジョン・ヘンリー/ポール・バニアン
「荒野の騎士たち」
ジェシー・ジェイムズ/ビリー・ザ・キッド/カラミティ・ジェーン/バッファロー・ビル

 

 

"Tall Tale Americ

"Tall Tale America: A Legendary History of Our Humorous Heros",

Walter Blair(The University of Chicago Press, 1987)

 収録されている人物の数は多く、一つひとつの話も詳しく語られています。トールテール関係では、『アメリカン・ヒーローの系譜』と本書を一番参考にしました。
 収録されている人物は次の通り。
Christopher Colombus/Captain Stormalong/Johnathan Slick/Daniel Boone/Mike Fink/Davy Crockett/Johnny Appleseed/Mose Humphreys/Windwagon Smith/Febold Feboldson/Jim Bridger/Paul Bunyan/Pacos Bill/John Henry/Joe Magarac/

 なお、この本は近年、翻訳が出ました。
 『ほら話の中のアメリカ:愉快な英雄たちの痛快伝説でつづるアメリカの歴史』ウォルター・ブレア著、廣瀬典生訳(北星堂書店、2005)。

 

American Tall Tale

"American Tall Tales"

Adrien Stoutenburg, Richard M. Powers(illustrations) (Puffin Books, 1976)

 パフィン・ブック版のトールテール本です。墨で描いた豪快なイラストとともに、定番の話がそれぞれ13ページほどで語られます。
 収録の人物は次の通り。
Paul Bunyan/Pecos Bill/Stormalong/Mike Fink/Davy Crockett/Johnny Appleseed/John Henry/Joe Magarac/

 

西部開拓史

"A Treasury of North American Folk Tales"

Catherine Peek(compiled and annotated), (W.W.Norton & Company, 1998)

 110の民話やトールテールが、9つのテーマに分けて収録されている大きな本です。当サイトが扱っているような英雄の物語は、"Chapter3:Legendary Heros and Heroines"と、"Chapter4:Larger Than Life"の章に集められています。第3章には、アニー・オークレー、ディヴィ・クロケット、マイク・フィンク、ケーシー・ジョーンズ、ジョニー・アップルシード、ワイルド・ビル・ヒコックの話を収録。第4章には、ポール・バニヤンの話が数話出ているほか、ジョン・ヘンリーとペイコス・ビルの物語も収められています。

 

American Tall Tale

"American Tall Tales"

Mary Pope Osborne (Alfred A. Knopf; 1991)

 カラーの版画風イラストが楽しい絵本です。文章の方も充実していて、これだけで人物の概要は充分にわかるでしょう。話の前に「覚え書き」のページもあって、それぞれの話の意味や起源についての簡単な考察がなされています。
 収録されている人物は次の通り。
Davy Crockett/Sally Ann Thunder Ann Whirlwind/Johnny Appleseed/Stormalong/Mose/Febold Feboldson/Pecos Bill/John Henry/Paul Bunyan/

 

"The Sinew of Americ

"The Sinew of America: A Celebration of Tall Tales"

Carl Japikse(ed.), (Kudzu House, 2001)

 アメリカの作家たちは、ときどきにトールテールの主人公たちへの讃歌を書いてきました。この本は、そういう詩、短編小説、物語などを集めて、簡単な覚え書きをつけたもの。ロングフェロー、アーヴィング、ホイットマンなどの作品が収められています。
 収録されている人物は次の通り。
Paul Revere/ Rip van Winkle/ Paul Bunyan/ Davy Crockett/ Mike Finn/ Pecos Bill/ John Henry/ Johnny Appleseed/ Judge Roy Bean/ Sam McGee/

 

 

巨人ポール・バニヤン

『巨人ポール・バニヤン:アメリカの奇妙な話1』

ベン・C・クロウ編、西崎憲監訳(筑摩書房、2000)

 副題にある通り、都市伝説や怪談からほら話に至る「奇妙な話」が集められています。そのなかの「アメリカの英雄たち」と「巨人ポール・バニヤン」にトール・テールの英雄たちが登場します。ポール・バニヤンは一章設けられている通り、比較的まとまってでていますが、その他は小話程度です。
 本サイト関係では次のような人物を収録。
ディヴィッド・クロケット/マイク・フィンク/ジョニー・アップルシード/ポール・バニヤン/

 

アメリカほら話

『アメリカほら話』

井上一夫訳編(筑摩書店、1973)

 同じ著者の『ほら話しゃれ話USA』が短いジョーク集が中心だったのに対して、こちらは少し長めの話が中心となっています。ワシントン・アーヴィング、マーク・トゥエイン、カール・サンドバーグといった作家が再話したもので構成されているので、一つひとつがあらすじだけでなく、読める物語になっているのも特徴でしょう。トールテールの類に加えて、後半には近現代の作家による「現代アメリカ・ユーモア小説」も載っています。

 

ほら話しゃれ話USA

『ほら話しゃれ話USA』

井上一夫編(集英社、1984)

 編者は他にも同様な本を出していますが、これは、短いジョークや小話がたくさん載っている小さな本です。テーマごとにいくつかの章に分けられていますが、本サイトのフォークヒーロー関係で言えば、マーク・トウェイン、ポール・バニヤン、デイビー・クロケット、ジョン・ヘンリー、ジム・ブリッジャーなどが取り上げられています。それぞれの話は量的には少ないものの、「市井ではこんな感じで語り伝えられてきたのだろう」という感じがします。

 

アメリカ・ジョーク集

『アメリカ・ジョーク集』

船戸英夫訳編(実業之日本社、1980)

 アメリカやアメリカ人に関する短いジョークが、たくさん収録された本です。なかに、「新大陸のヒーローたち」として、トールテールの主人公たち17人がちょっとずつ紹介されています。ただ、あまりに短いので、これだけではどんな人かよくわかりませんが。「星条旗を永遠なれ」の章では政治家にまつわるジョークが紹介され、フランクリンやリンカーンなどが出てきます。

 

12 Tall Tale Mini-Boo

"12 Tall Tale Mini-Book"

Jeannette Sanderson, (Scholastic, 2002)

 トール・テールが12編入った子供向けの絵本です。切り取り線が入っていて、そこを切り離して、それぞれホッチキスで留めると、12冊のミニ・ブックができあがるという仕掛けになっています。子ども向けなので、内容はあらすじ以上のものはありません。一番最初に、概要を把握するための本です。
 収録されているのは次の通り。
Johnny Appleseed/Pecos Bill/Paul Bunyan/Davy Crockett/Febold Feboldson/John Henry/Mose Humphreys/Joe Magarac/Gib Morgan/Sam Patch/Slue-Foot Sue and Pecos Bill/Alfred Bulltop Stormalong

 

英雄論

語りつがれるアメリカ

『語りつがれるアメリカ』

リチャード・M・ドーソン著、松田幸雄訳(青土社、1997)

 アメリカには、それぞれの時代を象徴するライフスタイルがあると、著者は言います。各時代の英雄譚や民話・伝説などには、ライフスタイルの考え方が反映されるというわけです。アメリカの歴史を、植民の時代、建国の時代、発展の時代、現代と4つに分け、それぞれの時代で語られた英雄などを検証していきます。本サイト関係では、デイヴィー・クロケット、マイク・フィンク、サム・パッチ、 モーズ・ハンフリーズ、ケーシー・ジョーンズが語られています。

 

アメリカ文学とユーモア

『アメリカ文学とユーモア』

コンスタンス・ルーァク著、原島善衛訳(北星堂書店、1982)

 著者は、アメリカ人のユーモア感覚を、東部(ヤンキー)、西部(奥地人)、南部(黒人)の3つに分類。それぞれの特徴をトールテール、歌、大衆演劇などから検証していきます。本サイト関係では、「ヤンキーのユーモア」では、アンクル・サム、「奥地アメリカ人のユーモア」では、デイヴィ・クロケットやマイク・フィンク、サム・パッチ、「ニグロのユーモア」では、スティーブン・フォスターが取り上げられています。他にも、マーク・トウェインのユーモアに関する比較的長い考察が収録されています。

 

アメリカ文学とユーモア

『英雄・悪漢・馬鹿』

O.E.クラップ著、仲村祥一・飯田義清訳(新泉社、1977)

 アメリカにおける人間の社会的タイプを、著者は「英雄」、「悪漢」、「馬鹿」という3つのモデルで表します。そのモデルが社会のなかで、実際にどんな役割を果たしているかを、映画界のスター、スポーツ選手、政治家、文化人など実際の人物たちの例をあげながら検証していきます。アメリカ人およびアメリカのヒーローを考えるおもしろい視点の本です

 

アメリカ文学とユーモア

『ヴァージンランド』

H・N・スミス著、永原誠訳(研究社、1971)

 フロンティアとしての西部の見方を通して、19世紀アメリカ人の社会的意識を表そうとした本でしょう。「第一部:インドへの道」では西進の思想を、「第二部:レザーストッキングの息子たち」では西部を扱った文学を、「第三部:世界の農園」では農民社会の描き方を通して、アメリカ人たちが作り上げた「神話」と「象徴」を解説しています。
 当サイト関係では、「第二部:レザーストッキングの息子たち」に、ダニエルブーン、キット・カーズン、バッファロー・ビルなどの話が出てきます。

 

アメリカ文学とユーモア

『アメリカ文学とユーモア』

コンスタンス・ルーァク著、原島善衛訳(北星堂書店、1982)

 著者は、アメリカ人のユーモア感覚を、東部(ヤンキー)、西部(奥地人)、南部(黒人)の3つに分類。それぞれの特徴をトールテール、歌、大衆演劇などから検証していきます。本サイト関係では、「ヤンキーのユーモア」では、アンクル・サム、「奥地アメリカ人のユーモア」では、デイヴィ・クロケットやマイク・フィンク、サム・パッチ、「ニグロのユーモア」では、スティーブン・フォスターが取り上げられています。他にも、マーク・トウェインのユーモアに関する比較的長い考察が収録されています。

 

アメリカ文学とユーモア

『アメリカン・ヒーロー』

亀井俊介著(JALパック・セター、1984,120p.)

 1980年代に開催されていた「ジャルパックアカデミー教養講座」の講演を元にした小冊子。著者にとっては、後の『アメリカン・ヒーローの系譜』のひな形というべき本でしょう。収録されている人物は、デイヴィー・クロケット、マイク・フィンク、ジョン・ヘンリー、ポール・バニヤンの4人で、現代のヒーローとして、ターザンとスーパーマンに関する考察もあります。このうち、スーパーマンは、『アメリカン・ヒーローの系譜』では割愛されたようで、こちらの本にしか載っていません。

 

映像

概説アメリカ文化史

"Tall Tales & Legends"

(Platypus Productions, Inc. and Gaylord Productions, Inc., 1985)

 ジョン・ヘンリーやアニー・オークレーなど、トールテールや伝説のドラマが9本入ったDVDセット。一本50分程度のドラマだが、あくまで子ども向けなので、基本中の基本のエピソードが語られています。脚本、監督もさまざまで、ドラマの構成もそれぞれの違っていますが、全体的にチープな作りは否めません。ただ、その割りに俳優は有名な人が出ています(エリオット・グールド、スティーヴ・グッテンバーグ、サリー・ケラーマンなど)。収録作品は次の通り。
"The Legend of Sleepy Hollow"、"Pecos Bill"、"Casey at the Bat"、"Darlin' Clementine"、"Johnny Appleseed"、"Ponce de Leon"、"John Henry"、"Davy Crokett"、"Annie Oakley"。

 

更新情報

2012年5月19日
冊子・広報誌(六弦堂の仕事2)に、今年作ったもの2点を加えました。
2012年5月1日
六弦堂ページをリニューアルしました。
2012年1月4日
プレイ・ザ・スラッキー・ギターに「ビデオ(教則)」を加えました。
2011年12月26日
六弦堂ページをアップロードしました。

掲載一覧

参考文献

フォークヒーローリスト

アニー・オークリー
アメリア・イヤハート(*)
アメリゴ・ヴェスプッチ
アンクル・サム
アンダーグラウンド・レイルロード
イサドラ・ダンカン(*)
イシ(*)
ウィリアム・クリストファー・ハンディ
ウィルバー・ライト&オービル・ライト
ウインドワゴン・スミス
ウォルト・ホイットマン
エイブラハム・リンカーン
エジソン
エリザベス・スタントン
ガーシュイン(*)
カメハメハ大王
カラミティ・ジェーン(*)
キット・カーソン(*)
キング・コング
ケーシー・ジョーンズ
クリストファー・コロンブス(*)
ココペッリ
コロンブス(*)
サカガウィーア
サム・パッチ
サリー・アン・サンダー・アン・ワールウインド
ジェシー・ジェームズ
ジェーン・アダムズ(*)
シッティング・ブル
ジム・ボウイ(*)
ジャック・オランタン
ジャック・ジョンソン(*)
自由の女神
ジョー・ヒル(*)
ジョー・マガラック
ジョージ・ガーシュイン(*)
ジョージ・ワシントン
酋長ジョセフ
ジョニー・アップルシード
ジョン・ヘンリー
ジョン・リード
スコット・ジョプリン
スーザン・アンソニー(*)
スティーブン・フォスター
ストウ夫人
ストーマロング
ラ / ワ
ライト兄弟
リップ・ヴァン・ウィンクル
リリウオカラニ
リンカーン
リンドバーグ
ルイス&クラーク(*) → メリウェザー・ルイス&ウィリアム・クラーク
ローラ・インガルス・ワイルダー
ワイアット・アープ
ワイルド・ビル・ヒコック(*)
ワシントン