チャールズ・リンドバーグ
Charles Augustus Lindbergh(1192〜1974)飛行家

彼はただ空を飛びたかった
「あの黒い点は何だろう」
リンドバーグは海上を見つめた。漁船だ!ヨーロッパの海岸はそう遠いはずはない。
パリのル・ブルージェ空港は、 15万人の群衆で埋まっている。そこには、富と名誉と賞賛が待っていた。そして、いつでも人に見られ、憶測され、批判される人生も待っていた。そのどちらも、まだこの25歳の青年は知らない。
飛行機は着陸し、彼の冒険は終わった。それは同時に、マスコミが英雄を作る時代の始まりでもあった。
掲載:NHKラジオ英会話2010年12月号表4/NHKラジオ入門ビジネス英語2010年12月号表4

上の画像をクリックすると拡大します
参考資料

『翼よ、あれがパリの灯だ』
リンドバーグ著、佐藤亮一訳(旺文社、1971)
1953年にリンドバーグ自身によって書かれたノン・フィクション。「本書は、二十世紀の初期、すなわち1920年代半ばにおける、飛行と飛行士の生活について書いたものである」と「あとがき」にある通りの内容です。第一部は、郵便飛行士になってから、大西洋単独無着陸飛行の前まで。第二部が大西洋単独無着陸飛行の詳細な記録で、パリに着くまでです。緊張の飛行なか、自身の飛行歴のあれこれの思い出が挿入され、ここにくるまでのリンドバーグの心情が伝わってきます。この作品は、1954年のピューリッツァー賞を獲得しました。

『リンドバーグ:空から来た男』
A. スコットバーグ著、広瀬順弘訳(角川書店、2002)
近年に書かれた詳細な伝記です。リンドバーグというと反射的に大西洋横断飛行と思ってしまいます。でも、それは25歳のことで、72歳で亡くなるまで半世紀近くを英雄をひきずって生きなければならなかったわけです。千ページ以上にもなるこの伝記の4分の3が、それ以降の人生について書かれています。なかでも、嬰児誘拐事件と第二次大戦時の発言・行動から起こった論争については詳述されています。「英雄」とされるとはどういうことなのか、それを考えずにはいられない本です。

『リンドバーグ:チャールズとアンの物語 (上・下)』
ジョイス・ミルトン著、中村妙子訳(筑摩書房、1994)
副題にある通り、チャールズ・リンドバーグとその妻アンの二人がこの本の主人公です。チャールズがどう育ち、アンはどう育ったか。知り合い、夫婦になった二人に起こったことが、それぞれの心境にどう影響したか。それが夫婦の関係をどう変えていったか。そういう視点で書かれた伝記です。ですから、チャールズの大西洋横断などはわずか数ページで終わってしまいます。「英雄業」が生身の人間たちに何をもたらすのかという意味で、おもしろい本です。
『人物アメリカ史:People America(全8巻)』
猿谷要ほか編(綜合社、1984)
「チャールズ・リンドバーグ:大西洋横断飛行で国民的英雄となった」と題する伝記が収録されています。
『アメリカ史重要人物101』
猿谷要編(新書館、2001)
「C・A・リンドバーグ」の項目があります。
映像

「翼よ、あれが巴里の灯だ」(The Spirit of St. Louis,1957)
ビリー・ワイルダー監督、 ジェームズ・スチュアート主演
大西洋単独無着陸飛行の前夜から、パリの空港に着陸するまでが描かれています。ところどころに回想シーンがはさまれ、郵便飛行時代、はじめての飛行機を買う、スピリット・オブ・セントルイス号の製作など場面が入るという構成です。飛行機の内部・外部も現物に忠実に作られていますし、飛行中のパイロットの様子なども丁寧に描かれ、単独無着陸飛行がどんな冒険であったかがわかります。

"LINDBERGH The Shocking, Tubulent Life of America's Lone Eagle"
The American Experience, 1990, 60分, Stephen Ives監督
リンドバーグの生涯を1時間にまとめたドキュメンタリー。大西洋単独無着陸飛行だけでなく、その後の人生も、家族(妻と娘)や関係者の証言を交えて描いています。そのなかには、愛児誘拐事件と裁判、ナチスに対する発言とそれへの批判など、栄光の座からの失墜に関しても含まれています。資料としていい点は、動いているリンドバーグのフィルムが、所々に挿入されていることでしょう。