参考文献:人物論

『人物アメリカ史:People America(全8巻)』
猿谷要ほか編(綜合社、1984)
アメリカの歴史を8つの時代に分け、各巻にそれぞれの時代を代表する8人の人物の伝記を収録しています。収録の人選も、政治家、事業家、社会運動家、芸術家、ジャーナリスト、スポーツ選手、宗教家など広範囲に選んであり、通して読めば、伝記で読むアメリカ史となるシリーズです。
1.自由の新天地
(ウィリアム・ブラッドフォード/ポカホンタス/ウィリアム・ペン/ピーター・ゼンガー/ベンジャミン・フランクリン/ジョージ・ワシントン/トマス・ジェファソン/ルイスとクラーク)
2.大西部の時代
(イーライ・ホイットニー/アンドルー・ジャクソン/デイビー・クロケット/マシュー・C・ペリー/ブリンガム・ヤング/ジョン・サター/エイブラハム・リンカーン/スティーヴン・コリンズ・フォスター)
3.横断鉄道の時代
(マーク・トウェイン/エリザベス・スタントン/アンドリュー・カーネギー/ウォルト・ホイットマン/トーマス・エディソン/ジョージ・カスター/ジョン・ロックフェラー/フェノロサ)
4.摩天楼の時代
(セオドラ・ローズヴェルト/ジョン・P・モーガン/オリヴァー・W・ホームズ/ピューリッツアーとハースト/ウードロウ・ウィルソン/リチャード・ウォーレン・シアーズ/ライト兄弟/ジョン・サイラス・リード)
5.カポネの時代
(ヘンリー・フォード/ハーディングとクーリッジ/スタットラーとヒルトン/サッコとヴァンゼッティ/ベーブ・ルース/アル・カポネ/ルイ・アームストロング/チャールズ・リンドバーグ)
6.大戦の時代
(フランクリン・J・ローズヴェルト/チャリー・チャップリン/アーネスト・ヘミングウェイ/ウォルト・ディズニー/ジョゼフ・クラーク・グルー/J・ロバート・オッペンハイマー/ダグラス・マッカーサー/ジョーゼフ・マッカーシー)
7.ケネディの時代
(エドガー・フーバー/ジョン・F・ケネディ/ハワード・ヒューズ/ジョン・フォードとジョン・ウェイン/ビリー・ホリディ/ジャッキー・ロビンソン/マリリン・モンロー/J・ウィリアム・フルブライト)
8.激動の現代
(ヘンリー・キッシンジャー/ヘレン・G・ブラウンとヒュー・ヘフナー/マーティン・ルーサー・キング/カーネル・サンダース/モハメッド・アリ/エルビス・プレスリー/ウォルター・クロンカイト/アンディ・ウォーホール)

『人物アメリカ史(上・下)』
ロデリック・ナッシュ著、足立康訳(新潮社、1989年)
著者は歴史学、環境学の学者。歴史というと政治の変遷といった血の通わないものになりがちです。でも、それらはすべて人間が行ったもので、人間不在の歴史はないはず。そんなコンセプトからこの本は成っています。14人の人物を選びその生涯を概観していくことで、アメリカ史を見通すことになるという構成です。
各章は、それぞれの人物の生涯が、特にポイントとなる時期を中心に簡明にまとめられています。時代背景も適切に説明されているので、何がその時代の問題だったのか理解しやすく書かれています。
上巻:クリストファー・コロンブス/ジョン・ウインスロッップ/ベンジャミン・フランクリン/トマス・ジェファーソン/テクムシ/ジブ・ブリジャー/フレデリック・ダグラス/マーク・トウェイン
下巻:ジェーン・アダムズ/ギフォード・ピンショー/ヘンリー・フォード/マーティン・ルーサー・キング(ジュニア)/リチャード・ニクソン/ボブ・ディラン

『フロンティアの英雄たち』
津神久三著(角川書店、1982)
著者はアメリカ・フロンティア期の研究家。ここでは、「パイオニアたち」と「アウトローたち」という2部構成で、前半は開拓期の道や町を作っていった人たち、後半はまだ法や規律がしっかりしない社会を腕力で生き抜いた者たちを取り上げています。フロンティアのヒーローと言えば西部劇に見られるように、過度に神話化・超人化されがちです。著者は、実証にもとづきながらも、神話的部分も否定せず、人物の魅力を描こうという姿勢のように思われます。
(パイオニアたち)
ダニエル・ブーン/デビー・クロケット/ジョン・サター/フォーティーナイナー/ウエルス・ファーゴとバタフィールド/テキサス・カウボーイ/ジョン・マッコイ
(アウトローたち)
トム・スミス/ワイルド・ビル・ヒコック/ブラック・バート/ジェシー・ジェームズ/バット・マスターソン/ワイアット・アープ

『アメリカ人の原像:フロンティアズマンの系譜』
津神久三著(中央公論社、1985)
アメリカ人の国民性にはフロンティア経験が大きく影響している、というのが著者の考え方のようです。なかでも、「流動的な社会」、「豊かな天然資源」、「恵まれた未来への機会」という3つが重要な要素であると言います。ここでは、フロンティアを象徴する5人の人物像から、それが具体的にどういうものであるのかを探ろうとしています。アメリカ人とは誰を指すのかという問題はありますが、現代に続くアメリカ社会はこうした傾向を伝えてきたという意味では、興味深い視点です。
ジェッド・スミス/ジョン・フリモント/チャールズ・グッドナイト/ブッチ・キャシディ/チャーリー・ラッセル/

『ガンマンは二度死ぬ』
津神久三著(晶文社、1986)
源義経は衣川では死なずに逃げ延びて、ジンギスカンになったという伝説があります。英雄のなかには、「実はそこでは死ななかった」伝説のある人が少なくありませんん。フロンティア期に活躍した人物のなかにも、そういう伝説を持つ人がいました。この本で著者は、彼らの活躍とその後の伝説検証していきます。どこまでが真実で、どこまでが偶然の一致か、それがはっきりしないところが「伝説」のおもしろさでしょう。推理もののような興味で読み進められる本です。扱われている人物は次の通り。
・ブッチ・キャシディとサンダンス・キッド
・ジェシーとフランクのジェームズ兄弟
・ワイアット・アープとカーリー・ビル

『アメリカのイヴたち』
亀井俊介(文藝春秋社、1983)
著者は、「霊のままに生きる」アメリカ女性に惹かれると言います。そのなかから5人を選んで、それぞれの人生を追いかけたのがこの本。「霊」には「デーモン」というルビがふってありますが、わたしにはそれは「自由」と言い換えてもいいように受け取れました。「自由の国」アメリカで、彼女たちの生き方は賞賛され、それ以上に否定されました。いくら否定されてもそれに屈することなかった彼女たちを、著者は「アメリカのイブ」と呼び、わがヒロインとしています。
ヴィクトリア・ウッドハル/ケイト・ショパン/イサドラ・ダンカン/ゼルダ・フィッツジェラルド/マリリン・モンロー/

『アメリカを揺り動かしたレディたち』
猿谷要著(NTT出版株式会社、2004)
著者はアメリカ史の専門家。マイノリティーの歴史を追っていくなかで、数の上では少なくないものの、社会的にずっとマイノリティーの立場に立たされてきた「女性」というグループに気づいたと言います。本書は、ポカホンタスからヒラリー・クリントンまで22人の女性を選び、その生き方からアメリカの歴史を見ようとしたもの。一人あたり約10ページという紙数なので、伝記的な事実というよりも、著者から見た人物像が語られています。
本サイト関係では、次の人たちを収録。
ポカホンタス、サカガウィーア、ハリエット・ストウ、ハリエット・タブマン、エリザベス・スタントン、アメリア・エアハート。

『アメリカ史重要人物101』
猿谷要編(新書館、2001)
タイトル通り、アメリカの歴史上の重要人物を101人選んで、見開き一人ずつを解説した本です。人物の選択は、20世紀が6割、19世紀以前が4割という割合。可能な限り肖像写真も付いています。それぞれに関連文献があげられているのも参考になります。

"The American People: Stories, Legends, Tales, Traditions, and Songs"
B. A. Botkin, Transaction Publishers, 1997
アメリカを象徴するような人々の物語を、民話、伝説や伝承歌などから集めてきた本。「英雄とほら自慢たち」、「宣伝屋とけなし屋たち」、「道化たち」、「うそつきたち」、「民話と伝説」、「歌と詞」という6つのテーマに分類されています。本サイト関係では次のような人々の話を収録。
Davy Crockett/Mike fink/Buffalo Bill/Paul Bunyan/Casey Jones/Joe Magarac/Johnny Appleseed/Jack-O-My-Lantern/Stormalong/

"Outlaw tales"
Richard and Judy Dockrey Young(ed.), August House, 1992
19世紀半ばに生きた西部の無法者たちの話です。彼らの多くは、十代で南北戦争に参戦し、南部のゲリラ隊などで戦い、戦後も平和な世の中に適応せず、ほとんどが四十を待たずに死んでいます。ここでは、「酒場と痰壺」、「盗賊、暴漢、ペテン師、ポン引き」、「首つり判事」などの章に分けて多くエピソードが語られます。本サイト関係では、ワイルド・ビル・ヒコック、ジェシー・ジェイムズ、ブッチ・キャシディなどの話を収録。

"The Real Deadwood"
John Ames, (Chamberlain Bros., 2004)
デッドウッドは、アメリカの中北部・サウスダゴタ州の町。19世紀後半に金鉱が発見されたことでできた町のひとつです。ここには、荒くれ者や売春婦などが集まり、そういう意味で有名だったようです。そこには、サンダンス・キッド、ワイルド・ビル・ヒコックやカラミティー・ジェーンといった「有名人」がいました。この本は章ごとに、町の「顔」だった人たちを取り上げ、ここで何をしたのかが書かれています。『本当のデッドウッド』と題され、本当の話だと書かれていますが、それが本当に本当なのかはわかりません。逆に言えば、それくらい伝説や尾ヒレのついた逸話が多いということでしょう。本サイト関係で言えば、"Deadwood's Cussin' Angel"でカラミティー・ジェーンが、"The Death Hug's A-Comin'"でワイルド・ビル・ヒコックの話が語られています。

"Tales of Famous Americans"
Peter & Connie Roopほか著, Scholastic Reference, 2007
特徴ある似顔絵のイラストが楽しい絵本です。ポカホンタスから現代のミア・ハムまで、実在した人物19人が取り上げられています。一人(一組)あたり6ページ(そのうち文章は4ページ)という紙数のため、詳しい説明は望めませんが、ポイントをつかむことはできます。収録された人物の構成(半分近くが女性、人種的配慮が見える等)に、アメリカの現在が見えてくる気がします。
収録されている人物は次の通り。
Pocahontas/ Bejamin Franklin/ George Washington/ Davy Crockett/ Abraham Lincoln/ Susan B. Anthony/ Elizabeth Cady Stanton/ Harriet Tubman/ Sitting Bull/ Thomas Edison/ Madam C. J. Walker/ Wilbur & Orville Wright/ Helen Keller/ Jackie Robinson/ Martin Luther King Jr./ Dolores Huerta/ Yo Yo Ma/ Mia Hamm/
映像

"Gunfighters"
(Wellspring, 2004)
フロンティア期の西部、荒くれ者が幅をきかせた時代、腕力で有名になった男たちは何度も西部劇に取り上げられました。これはそうしたアウトローたちをドラマ化したシリーズ。どれも約1時間の長さです。映画に比べると見劣りはしますし、人物像を深く描いたというものでもありません。でも、有名なエピソードは押さえられていて、この人物がどう見られ、なぜ有名なのかはわかります。英語版で字幕は(英語・日本語とも)入っていません。 収録されている人物は次の通り。
Wild Bill Hickok/Wyatt Earp/Jesse James/Butch Cassidy and the Sundance Kid/The Dalton Gang/ Billy the Kid/Tom Horn/Bat Masterson/John Wesley Hardin/Elfego Baca/