……唐突ですが、いきなり総評的な感想を言わせて頂きますと、この3巻目も、そのボリュームにふさわしい、非常に充実した内容でした。事実上、オレポケ後日談系のSS集と言ってもいい巻なのですが、その作品のどれもが、オレポケという作品が好きな人ならば、楽しめる内容になっていると思います。
1、2巻も含め、このシリーズを読むことができて、本当に良かったです。
……さて。総評は、ひとまずこのへんで小休止。
なぜかというと。そういう総合的な感想とはまた別に、ひとつ、みなさまに伝えなければならないことがあるからです。
そう。それは――俺がこの巻を読んで覚えた、戦慄としか言い表せない感情について――
「血迷われたか。
隻腕の剣士に骨を断つことはできぬ。
盲目の剣士には皮を切ることすらできぬ。
ならば、この勝負……」
「――否!
見られい。
不屈の精神を持った剣士にあっては、
自己(おのれ)に与えられた過酷な運命こそ、
かえってその若い闘魂(たましい)を揺さぶり、
ついには……」
〜 漫画・山口貴由、原作・南篠範夫、『シグルイ』(秋田書店)より引用 〜
スク水の似合う幼女に、欲情することは出来るのか?
それより更に幼い童女に、勃起することは出来るのか?
(秀晃には)
出来る
(オレポケ主人公、江田秀晃には)
出来るのだ
本巻収録の二作品。綾瀬ユーキ『妊娠騒動』。神沼すず『茂造は見ていた!』。ともにどう考えても、倫理以前に肉体的な問題で性交が可能とは思えない二人に対し、この男と来たら……素で欲情して、あんなことも! こんなことも!
気持ちのうえでは幾許かの逡巡はみせながらも、その実行為だけを見れば、何のためらいもありません。――秀晃、怖い子!(←本当の意味で怖い子なのは、もちろん幼女二人なのですが)
……いや、これが、初めからそういう性癖があるという設定なのでしたら、ここまでインパクトはないんですよ。でも、オレポケをプレイしても分かるとおり、基本的に性的嗜好はノーマルじゃないですか。コンプレックスとか、そういう性癖が芽生えるきっかけとか、いざその瞬間以外には見られなかったじゃないですか。そこが何より恐ろしい。
つまり、本巻の別話でちんまい先輩も言った通り、この江田秀晃は恐らく幼女趣味の持ち主なのではなく、ただ単純な意味で節操なしの性欲魔人なのではないかと思われます。……いや、本文を読むに、ユーキとすず本人が、そもそも一番の性欲魔人という気もするのですけれど。
そういう意味での衝撃はもちろんのこと、この二編、話のつくり的にも、そのあたりのどうしようもなさを実に上手く活かしており、大変面白い仕上がりにもなっております。恵留に(例のあの設定で)筒抜けだったり、茂造がうろたえたり。
以前からそのタイトルのインパクトから気になっていた『妊娠騒動』のオチも素晴らしく致命的なのですが、『茂造は見ていた!』の方のそれは、ある意味もう絶対に救われない展開だと思うのですが。最も傷の少ない言い逃れが出来たとしても、家族会議は免れないでしょうし。
ユーキ編のほうでも、あのときの恵留の心境をかんがみるに、空恐ろしいものが。ここは是非、最も知られてはならないナズナに知られる展開を希望したいところ。ExtraStageがある意味そんな感じではありますが。
で、その二編だけでなく、それぞれのお話も、萌えありエロあり、オレポケ的に良質な補完ありと、見せ所はたくさんありました。桐子のヘッドドレス登校と、みのりんの弟君受難話は、まさに本巻中最萌えを争う素敵シチュ。ちんまいの医学生としての奮闘(+性欲魔人との清く爛れた性生活)はいいお話でしたし、桐子と円の仲直り話は、心から読みたいと思っていたものであり、この小説でようやくそれが叶えられたという気分です。ExtraStageもはっちゃけてて面白かったし、HOOK新作『Like Life』のプレSSもなかなかに気になりました。
……なんだか約一名、まるで出番のなかったメイン級ヒロインが一人居るような気もしなくはないのですが、まあ彼女の場合、その扱いでこそ彼女の彼女たる立場が確立できるような気もするので、ご愛嬌ということで。いや、けっこう好きなのですけれども>サッキー
……ともかく。最初の総評で書いたとおり、この小説シリーズ、オレポケという作品が気に入った人間にとっては、これでもかというほどに楽しめる3作でした。作品のアフターフォローというか、楽しみ方を持続できるという意味でも素晴らしいものですし、何よりも、こうして楽しみ続けることで、最初から少なからずあったオレポケへの愛着が、さらに深まりました。こうして、深く楽しめる作品と、そのフォロー作品に出会えたことに、改めて感謝を。