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6月22日(日)
かつて、千堂かずきという男がいたことを覚えている。
いや、この人物は、ご存知『こみっくパーティー』(リーフ)の主人公であり、こみパ逆移植版が出たばかりの現在、いたという過去形はふさわしくないと思われるかもしれないが、今、俺が彼の事を語るための文脈としては、過去の人物として扱わなければならない。
『突然言葉責め』――言葉のままの意味である。みなさんは、この言葉にピンと来るものはあるだろうか。およそみなさんのような幾多のエロゲーという名の戦場を潜り抜けてきた海千山千の猛者であれば、彼以外にも、このような人物を何人かは見たことがあると思う。
ヤツらは、恐るべき豹変を遂げる。いざ肉合という場面に際し、突如人が変わったかのようにサディスティックな内面を露にし、不可解なまでに粘着な言葉責めを行うのだ。その鮮烈なる異常行為は、多くの人々を狼狽させ、後にはしばし嘲笑の的となった。
――しかし彼らは、俺にとって英雄である。
何故――何故、初体験が青姦なのだろうか。童貞であるにも関わらず、どうして一人称「小生」という感じのエロ小説ばりの淫語を繰りつつ初体験を行えるのか。少し前まで、永遠の愛を語らっていたにも関わらず、突然そんなにも人格がサディスティックになってしまう理由はなんなのか――という疑問はしかし、俺が彼らに対して抱く憧憬の前では、価値のあるものではなかった。それほどまでに俺にとって、執拗な言葉責めというものは魅惑的であり、加えて、こういった「突然言葉責め」のように、その前後関係が異常であればあるほど、その興奮が大きなものとなることもまた確かだった。
だが、程度は激しくなくて良いのである。ほんの少し。ほんの少しだけ、少し前までの童貞らしからぬ、扇情的な言葉遣いで、相手に恥辱と興奮を与えるだけで良かった。それだけで、俺はほんのりと、しかし確かに幸せになれるのだった。
――さてみなさんは、この俺YU-SHOWの、ここ数日の日記を目の当たりにして、俺が現在、こちらのブルマーによるエロス的諸行為によって、まるで絞りカスのようになっているだろうと推測されていることと思われる。その予想は全くもって正しく、俺は昨夜、ようやくの思いでたどり着いたナズナ・プレミアえちぃと第一種接近遭遇を果たし、そして■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■り、その結果、まるでDIOに血を吸われきったジョセフ・ジョースターのように干からびた体と成り果て、朝を迎えることとなった。
正直に告白すれば、俺は今、微妙に腰が抜けそうな感覚が取れないでいるし、もっとぶっちゃけた話、
ちんちんが微妙に痛いのである。痛いというか、じんじんするというか、ともかく俗に言うところの、赤玉が出る寸前まで来ていることは想像に難くない。
以下、ナズナシナリオのえちぃシーンの詳細について言及する。シナリオの内容についてまでは触れないが、気になるという方はおのおのの判断で読むのを回避されるべし。
ナズナのえちぃシーン。一度目は、それなりだった。実際の性行為に至るまでの、心の機微というものの描写は悪くなかった。処女と童貞(……だよなあ?)がハプニング的な状況で、ラブホテルへ――というシチュエーションは、それはステキなものであり、お風呂のマジックミラーなどに一喜一憂する姿は、俺としても大いに満足だった。しかし、いざBそして挿入というシーンは、部分部分において、これはなかなか――と思うものがなかったわけでもないが、しかし全体としては、いわゆる純愛エロゲーのテンプレートにそのまま沿ったような、ごくありきたりのものであった。
そのような初体験自体は、まったりとした情感もあり、決して悪くはないのであるが――しかし、俺はその先をこそ求めていた。より飛躍したものを求めていた。欲を言えば、もう少し童貞らしい狼狽とハッスルが欲しいところであったし(その点、それ散るなどは見事の一言だった)、そして、もっと具体的に言えば――。
俺はふと、千堂かずきのことを思い出していた。
二度目。これは。この性交は。俺は感嘆の吐息を漏らした。ブルマー。体育倉庫。ブルマーにこだわっていたのは、このための伏線か。素晴らしいエロ描写。恥辱、恐怖、そして押さえきれぬ快感。全てが備わっていた。ナズナの台詞により、このような交合が、初体験以後、ひっきりなしに行われていると匂わせているのも、非常にポイントが高かった。エロい。これはエロい。CGがまた素晴らしい。もはや処女の硬さなど微塵も残さぬ肉体。涎をたらして歓ぶ、エロい表情。B87のたっぷりとした肉付きの体が、体操服によってはちきれんばかりに包まれており、そしてそれが実に美味そうに剥かれていく様が絶品だった。
そして、言葉責めがあった。素晴らしい。さほど異常というほどではないが、なかなかにいやらしい責めっぷり。味をやるではないか。俺は興奮した。そして羞恥。肉の欲を覚えても、これを無くしていては少々困るものがある。その点において、ナズナはぬかりなかった。人に見られるやも知れない恐怖に身をすくめ、それがさらに刺激となる。基本といえば基本であるが、ハマればこれほどに実用的なシーンはない。
素晴らしい、高レベルのえちぃシーン。何の不満もない。
何の不満もない、はずだったが――
まだ。まだ、もう少し、何かあったのではないか。あるべきではなかったのか。贅沢を言っているのかも知れない。――しかし、このシチュで、この精神状況で、そして、ナズナというキャラのポテンシャルであれば、もっと――具体的にどうとは言えない、これが最高レベルのえちぃのはずなのに――もっと、想像を絶するかのようなえちぃシーンが、見られたのではないか。
俺はどういうわけか、そんな思いに捕らわれてしかたなかった。
三度目。シナリオの締めくくりとしての、えちぃ。悪くはなかった。エロス的にもなかなかのものだった。しかし、より純粋に不純な視点からすれば、このシーンそのものよりはむしろ、「ホテルに姉弟としてチェックインしたから。私がお姉さんで、君が弟」という悪戯な発言の方が、より淫らに妄想の翼をはためかせられるものであったと言うこともできた。
こんなものか。俺は思った。
レベルは高かった。かなりのものだった。しかし――
プレミアHシーンがある。そのことを、忘れていたわけではなかった。俺はしばしシナリオの余韻にふけったあと、再攻略を開始した。本編のナズナの「こいつ、ヒイヒイ言わせてやりてえ!」的な可愛らしさに悶絶しながらも、ようやく当該フラグを立て、そして――プレミアHへと突入する。
――俺は、エロに出会った。
ネタバレ注意を促しておいてなんではあるが、ここからの詳細は、あえて書かないものとする。このシーンを見てYU-SHOWがどうなったか。それは、日頃呑んだこともないエビオスを毎食後摂取しているという事実などから推測してもらいたい。
ただ、一つだけ言っておきたいことがある。『突然言葉責め』――これは、俺にとって最高のエロ言語ファクターだった。そう、「だった」のだ。今は違う。突然主人公の人格が豹変して淫らな言葉で相手を責めたてるよりも、もっと鮮烈に、もっとエロく、俺のような歪んだ者の精神を容易に引き裂くものが存在したのである。
『突然淫語』――今は、この言葉だけを残しておこう。
この新たなチャンピオンエロファクターと、そして、萌えとエロのミューズである、北都南ボイス。これらが組み合わさったとき、俺の理性は、性腺刺激ホルモンによって無残に駆逐し尽くされることとなった。 俺にとって、千堂かずきという男が占める地位は、そのまま、「綾瀬ナズナ」と変えられることとなった。
一日に、十回。
この、人間の限界を超えた数字に届くまで、あと――