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7月16日(水) 昨日の続き。
――さて。それでは、海お姉ちゃんの家族内部における役割とは。
(昨日の続き)
実のところ海お姉ちゃんは、家族の構成要素としては、特に何の役割も果たしていなかったりします。
いや別に、海お姉ちゃんが柊家にとって、いらん子であるという話ではありません。ただ、父的存在がいて、母性があって、子供たちの上と下がそれぞれに家族の役割を果たしている以上、ひとまず形のうえでは、家族モノの話を構成するために必要な部品は、高嶺までで事足りてしまっているのです。
(ちなみに空也はというと、おおよそ家族内の役割としては、悲しいかな、愛玩動物の域を出ていないと思われます。いや、理想的な家庭の中でのペットというのはある意味非常に良いものであり、むしろ愛玩動物的立場だからこそ、姉しょというゲームが心地よいということもできます。というか絶対にそう。だって俺、あの家で飼われたいもん。すなわち理想系>愛玩動物)
このあたりの理屈、自分でもあまりうまく説明できていないような気もしますが、上記の論拠の一つとして、姉しょの発売前までは、海お姉ちゃんの人気がいまいちだったというのがあります。
姉しょという作品が巧みだったのが、発売前のゲームの煽り方で、俺などはむしろ、ゲームが発売する前ですでに十分6800円分の元が取れるほどに、姉しょの世界を楽しんでしまっていた感すらあります。(もちろん発売後、それ以上に楽しみましたが)
これはもう、乱暴に言ってしまえば、設定勝ちのようなもの。姉しょの存在を知った人のパターンとしては、公式サイトの情報などを読んで「攻略キャラが全員姉の超純度を誇る比類なき姉ゲー!」というところから始まり、「じゃあ、どんな姉が?」「6人」「(サド系)北都南キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」「えっ、長女ロリ?」「ねぇねぇって、呼び方……?(でもエロそう)」「ツインテール。基本であり、頂点!」「ともねえともねえともねえともねえともねえ(以下20行くらい略)」「眼鏡もアリか」などと多々に雑感を抱き、それら個々のキャラを脳内で楽しんでいるうちに、この姉妹設定が、いわゆる家族モノとしても深く味わえるのではないか、というところに行き着くケースが多いと思われます。(特に「家族モノ」と自覚していなくても、無意識のうちにそういう味わい方をしている、という場合も含めて)
で、そのあたりまで深く姉しょ世界に親しむようになると、「この設定のなかで、海お姉ちゃんだけ、ちょっとだけ浮いていないだろうか?」と感じられるようになります(ちなみに俺の場合がそうだった)。いかにもお姉ちゃん的な甘やかし属性を持っていて、しかも眼鏡だけど、ちょっと記号的に過ぎるというか、他の5人のお姉ちゃんが、キャラ設定を知った時点ですでに、どういうキャラなのかがダイレクトに伝わってくるのに対し(実際、他の5人のお姉ちゃん達のイメージが、ゲームをプレイしてから変わったという人はあまり多くないはず)、海お姉ちゃんだけ今ひとつキャラクターがしっくり来ない(というか弱い)部分があったと思います。よって、人気投票の結果もさほど芳しくなくなる。その大きな理由こそが、海お姉ちゃんの家族内部での役割がよく分からないという点だと思うのです。キャラというものは、ふさわしい場があってこそ生きるので。
しかし。
今日の一番最初に、「家族モノの話を構成するために必要な部品は、高嶺までで事足りてしまっている」と書きましたが、これはあくまでも、最低限のベースレベルでの話。ピザでいえば、生地が完成して、さあ、ここに用意してある具やソースを、どうやってステキなピザに仕上げてくれようか、という段階です。ここから、具体的な場面描写やシナリオ構成といった、直接的な味付けの段階に移らなければなりません。それはつまり、実際にプレイしなければ味が分からない部分。
そこで生きてくるのが海お姉ちゃんなのです。海お姉ちゃんは、ゲームの仕込みの段階においては、特に何の役割も果たしていないということは今述べたとおりですが、逆にそういう立場だからこそ、具体的な味付けの段階になると、どんな制約にも縛られることなく、縦横に活躍することができるわけです。
さて、その味付けとは何か。
一つは、これはやはり言うまでもなく、あの強烈な甘やかし。「お姉ちゃんいっぱいの姉ゲー」という献立を出している以上、まさにその味こそが最も必要とされるわけで、これは海お姉ちゃんに限らず、どのお姉ちゃんもそれぞれに独特の、ステキな甘やかしの味を醸していますが、やはりその味は、仕込みの段階における役割に、ある程度制限されることになります。比較的自由に甘やかしてくれそうなねぇねぇやともねえだって、実はけっこうその「役割」によって甘やかし方を定められているような部分がありますし、要芽や高嶺に至っては、それは非常に分かりやすい。
ところが、そのリミッターが全く用意されていないのが海お姉ちゃん。もうやりたい放題です。というか、実際にやりまくってます。何か、人間が妄想しうる限界すら超えるようなバカップル的甘やかしは、姉しょをプレイした人の脳裏には鮮烈に焼きついていることでしょう。かつて、すずねえという名の快楽に人類の頂点を垣間見た俺をしてさえ、「これほどのものかッッ!」と戦慄せずにはいられない超甘ステキワールドの極点でした。先ほどのピザの例でいえば、極甘のミルクチョコレートを具に使っているようなものです。ピザにチョコレートって、基本的にタブーなんですよ。なぜなら、焼くとき絶対焦げるので。でも海お姉ちゃんの場合、それが成立してしまっている。何故か。お姉ちゃんだからさ。もうワケわかりません。
まじめな話をすれば、別に海お姉ちゃんは、ピザの生地でも具でもないので、オーブンで焼きあがった後でふりかけるチョコレートソースになることができるわけです。焼くときに焦げるからこそタブーなので、焼かれる際にオーブンの中にいなければ、別にタブーなんて関係ない。焼きあがった後のピザなら、好きなだけ甘くステキにチョコまみれにできるのです。その結果、どれだけ甘くステキなピザが味わえたかというと、それは上記の通り。この(無茶ではありますが)例から見ると、いかに海お姉ちゃんがキャラ的においしい場所にいるかというのが、なんとなくわかるでしょう。
さらに海お姉ちゃんは、他にも非常に美味しい味付け役として、それぞれの具の役割を果たしている他のお姉ちゃん達と、高い自由度で絡ませることができます。姉対妹みたいな、具と具のぶつかり合いみたいな味の絡み方ではなくて、その味わいを引き立てるようなソースの役割で。たとえば、高嶺の例のシーンでの、「あんた、わがまま」(ねぇねぇ)「高飛車」(ひなのん)「ツインテール」(・ ε ・)のおもしろ系の掛け合い。いかにもコメディチックで楽しげな場面ですが、しかしてその会話分を分析してみると、海お姉ちゃん以外が、単にいきがっている高嶺をたしなめているというだけのシーンでもあるのです。では、何がそんなに面白くしているのか。言うまでもなく(・ ε ・)です。いわゆる不意打ち系のボケ含みツッコミ(俺造語)ですが、これを放てるのは、柊家においては海お姉ちゃんのみ。(空也なら言えないこともありませんが、そこで殴られて終了します)
他にも海お姉ちゃんがらみのこういうシーンは、枚挙にいとまがないでしょう。大部分がおもしろい味や甘い系の味ですが、それだけでなく、たとえばともねえの、「それって逃げてるだけだよね〜」なんて、非常に苦みばしった味になりますし(別に直接ともねえと絡んでいるわけでもないのに)、要芽と絡むと、非常に緊迫した味にもなります。とにかく、自由気ままに動ける海お姉ちゃんがいることで、柊家というピザが、何倍にも美味しく、深みのある味わいになっているということは間違いないでしょう。
……と、2日かけて色々と語ってきたわけですが、俺が言いたかったのは、単に海お姉ちゃんがとにかくステキだということだけだったりします。よく練られた、極上のピザ生地のような肉感のお尻を、俺は、今日もしゃぶって貪って■■■■■■■■■。