金運をつかんだ男、つかみ損なった男
金運という言葉に皆さんはどんなイメージをお持ちですか? ギャンブルで大儲けする、宝くじが当たる、そんな想像をする方が多いことでしょう。でも、中国ではちょっと違います。
昔、中国の越国に范蠡 [はんれい] という大臣がいました。彼は敗戦で焦土と化した国土を再建し、敵の呉国を滅ぼすことに成功しました。 しかし彼は最大の功労者として絶頂にいる時、越国を逃げ出しました。
呉を滅ぼすまでは王は自分を必要とするが、その後は邪魔者として殺されると分かっていたからでした。范蠡 [はんれい] は、陶に移り住み、名を朱と改めて新興商人として瞬く間に巨万の富を手に入れました。
彼の名を高めたのは、手にした富を惜しげもなく使って地域社会の活性化を図り、貧しい者たちへ分け与え、社会全体を豊かにしたからでした。国家事業でも難しい、社会福祉と地域振興を個人で成功させたのです。
老いて息子に商売を譲り、陶の地で穏やかな老後を楽しみました。范蠡 [はんれい] 亡き後も一族は陶の地で栄え、後世の人々から [陶朱公] と呼ばれ、大商人の代名詞とされました。
一方、金瓶梅という奇書にこんな人物の話が載っています。北宋に西門慶という新興商人がいました。彼は薬の販売で一財を築き、巨万の富を手に入れたのですが、自分の楽しみだけにうつつを抜かし、得た富の殆どを貯めこみました。
その後、あっけなく死んでしまい、財産は寄って集ってむしり取られて一族は離散しました。
「施しという善行を積んだ者は報われ、世に吝嗇で淫蕩に励んだ者は晩節を汚す」 と言う教訓話をしたかったのではありません。中国での良金運とは一族全てが豊かになることで、またこの話の中には風水の極意も隠されています。
風水では流れを好しとし、澱みを嫌います。金運も同じで、流れている状態が良金運です。世の財を自分一人で溜め込めば、流れは細り金運は停滞します。集めた財を流してやれば、金運が上がり更に大きな財となって流れ戻ってくる、風水とはそういうものなのです。
村上瑞祥
初出掲載日:2010年9月13日
最終更新日:2025年3月20日
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