水まわりは西に、女性はサルに?
昔から 「虫の知らせ」 「虫の居所が悪い」 など、「むし」 を使う表現が多くありました。赤子が夜泣きするのは 「疳の虫」 のせいだとも言ったものです。最近の若い人にはあまり馴染みがない言葉かもしれませんが、私と同世代以上の方々には聞きなれた言葉かと思います。
この 「虫」 は、実は風水の起源と同じ、道教の教えからでたもので、古代中国では 「人は生まれながらにして体内に3匹の虫を宿している」 と言われていました。
そして3匹の虫は人の感情や考え方に影響を与え、庚申(こうしん) の日の深夜寝静まった頃に、身体を抜け出して天帝に悪行を報告し、寿命を縮めると言われていました。
つまり道徳訓です。
この教えは、風水などと一緒に5世紀の後半頃に日本へ渡ってきました。そして形を変えて、日本独自の信仰へと発展しました。
庚申の日、宿主が寝た後に虫が天帝に悪事を密告するのなら、庚申の日に一晩中起きていれば虫は体から出られないので密告されることもないだろうと、夜通し宴会をする
「庚申待ち」 という逆説信仰になったのです。
つまり、どんな悪事を働いても、「庚申待ち」 さえしていれば、天帝に密告されないので寿命は縮まないというわけです。
有名どころでは、織田信長がこの庚申信仰の信者で、部下を集めて庚申待ちをしたと記録が残されています。その時に頻繁にトイレに立つ明智光秀に対し、中座することを咎めて槍を持って追いかけまわしたことが、後の本能寺の変へとつながったとの一説があるのが面白いですね。
ちなみに庚申とは、方位では西を指し、五行では女性を表しています。ですから家相では、女性を表す場所が水まわりで、その水回りは西に置くのが吉と言われているのです。
また、庚申は 「賢い猿」 の意味もあることから、「見ざる、言わざる、聞かざる」 の三猿が付きものとなっています。 昔の人は、女性が 「賢い三猿」 になれば家内繁栄だと言っているのですが、今のご時世には果たしてどうでしょうか。
村上瑞祥
初出掲載日:2011年9月13日
最終更新日:2025年3月20日
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