2変数関数の極値問題  ― トピック一覧

 ・定義:広義の極小点・極小値/狭義の極小点・極小値/広義の極大点・極大値/狭義の極大点・極大値
     広義の極値/狭義の極値/臨界点・臨界値/停留点・停留値/鞍点・峠点
 ・定理:極値の必要条件:極大極小の1階の必要条件/極大極小の2階の必要条件 
     極値の十分条件極大の2階十分条件/極小の2階十分条件/鞍点の2階十分条件
極値問題関連ページ:1変数関数の極大極小/n変数関数の極値定義/n変数関数の極値問題  
2変数関数の微分関連ページ:偏微分/高次の偏微分/微分演算子/全微分/方向微分
2変数関数の微分の応用関連:合成関数の微分/平均値定理・テイラーの定理/極値問題/陰関数定理/逆関数定理/ラグランジュ未定乗数法
総目次 

定義:2変数関数の広義の極小/極小点、広義の極小値
[直感的な定義と図解] cf.n変数関数の広義極小 


・「f(x0,y0)は、f点集合Aにおける最小値である」「(x0,y0)は、2変数関数f点集合Aにおける最小点である」という主張は、
  点集合A全体を見渡したときに、
  f(x0,y0)が、点集合A上で関数fがとる様々なのなかで最小であることを要求する。

・これに対して、
 「2変数関数fは、(x0,y0)で極小になる」「(x0,y0)は、2変数関数f極小点である」という主張は、
 「この中だけでみれば、局所的には、f(x0,y0)最小値になる」と言える範囲を、
  (x0,y0)の周りに、少なくとも一つは設定できる、
  ということだけを、意味する。


[図例:回 転放物面z=f(x,y)=x2+ y2グ ラフ]

回転放物面z=x^2+y^2


左図は、回転放物面z=f(x,y)=x2+ y2グラフ
(0,0)で、z=f(x,y)=x2+ y2がとる値0は、 
定義域R2全体を見渡して、最小になっているから、
f(0,0)は、定義域R2におけるf最小値
(0,0)は、定義域R2におけるf最小点
と言ってよい。
また、 「(0,0)でf極小」「(0,0)はf極小点」と言ってもよい。
「この中だけでみれば、局所的には、f(x0,y0)最小値になる」と言える範囲を、
(x0,y0)の周りに設定することも、当然できるから。
  

[図例:z=f(x,y)=sin (x2+ y2)グ ラフ]
2変数関数の極小点


左図は、z=f(x,y)=sin (x2+ y2)グラフ

(0,0)は、
  定義域R2におけるf(x,y)=sin (x2+ y2)最小点ではない
ものの、
  f(x,y)=sin (x2+ y2)極小点ではある
とは言える。

してみると分かるように、
z=f(x,y)=sin (x2+ y2)グラフは、火山のカルデラのような形状をしている。
(0,0)が、山頂の噴火口。
火口の周りは一旦盛り上がるものの、
そこから、ふもとに向けて、下っていく。



[図例:z=sin (x2+ y2)y=0で切断した断面:真横]

2変数関数の極小点:断面図


真横からみると、こんな感じ。
定義域R2全体を見渡せば、
f(0,0)sin (02+ 02)=0よりも、小さな値を、fはとっている。
たとえば、火山のふもとのあたり。
だから、断じて、f(0,0)は、定義域R2におけるf最小値ではない。

[図例:z=sin (x2+ y2)y=0で切断した断面:真横]


けれども、
「カルデラの中」という狭い範囲を設定して、
その中だけを見れば、
f(0,0)は、その範囲における局所的な最小値になっている。
だから、f(0,0)は、極小点だとは言ってよい。

[厳密な定義]

設定

D平面R2上 の任意の点集合  
f(P)=f(x,y) :Dで定義された2変数関数
P0=(x0,y0) :Dに 属す 
[文献]
・小林『続 微分積分読本―多変数』1章10.(p.58):2変数関数
・笠原『微分積分学』6.1(pp.191-2)
・高橋『微分と積分2』 §3.3(p.78)2変数関数

定義


[近傍を使わない厳密な定義]
 2変数関数fは、(x0,y0)で広義の極小になる」
 「(x0,y0)は、2変数関数f広義の極小点である」
 とは、
 正の実数εをうまく決めてあげることによって、
 「|x-a|<εかつ |y-b|<ε」を満たす全ての(x,y)に対して、
     f(x,y)f(x0,y0) 
 を成り立たせられることをいう。

[近傍を使った
厳密な定義]
 
2変数関数fは、(x0,y0)で広義の極小になる」
 「(x0,y0)は、2変数関数f広義の極小点である」
 とは、
 (x0,y0)の近傍をうまくとると、
 その近傍に属すあらゆる(x,y)に対して、
     f(x,y)f(x0,y0) 
 が成り立つことをいう。
 論理記号で表すと、
   
(ε>0) ((x,y)Uε(x0,y0) ) ( f(x,y)f(x0,y0) )

[近傍最小値使った厳密な定義]
 
2変数関数fは、(x0,y0)で広義の極小になる」
 「(x0,y0)は、2変数関数f広義の極小点である」
 とは、
 (x0,y0)の近傍をうまくとることによって、
  その近傍上の最小値に、 f(x0,y0)をできることをいう。
 論理記号で表すと、(ε>0) ( f(x0,y0)min f ( Uε(x0,y0) )

定義

・「2変数関数f広義の極小値」とは、
 とは、
  2変数関数f広義の極小点においてとるのことをいう。
 つまり、
 f広義の極小点(x0,y0)にたいして、f(x0,y0)広義の極小値と呼ぶ。


関連

1変数関数の極小/n変数関数の広義の極小広義の極小値

→[トピック一覧:2変数関数の極値問題]
総目次



定義:2変数関数の狭義の極小/極小点、狭義の極小値

設定

D平面R2上 の任意の点集合  
f(P)=f(x,y) :Dで定義された2変数関数
P0=(x0,y0) :Dに 属す 
[文献]
・高橋『微分と積分2』 §3.3(p.78)2変数関数

定義

[近傍を使った定義]
 「2変数関数fは、P0=(x0,y0)で狭義の極小になる」
 「P0=(x0,y0)は、2変数関数f狭義の極小点である」
 とは、
 P0=(x0,y0)の近傍をうまくとると、
 その近傍に属すP0以外のあらゆるP=(x,y)に対して、
     f(P)>f(P0) すなわち f(x,y)>f(x0,y0) 
 が成り立つことをいう。
 論理記号で表すと、(ε>0) (PU*ε(P0) ) ( f(P)>f(P0) )

[近傍を使わない定義]
 「2変数関数fは、(x0,y0)で狭義の極小になる」
 「(x0,y0)は、2変数関数f狭義の極小点である」
 とは、
 正の実数εをうまくとると、
 「0<|x-a|<εかつ0<|y-b|<ε」を満たす全ての(x,y)に対して、
     f(x,y)>f(x0,y0) 
 が成り立つことをいう。  
  
※以上の定義は、次のようにも表現できる。
  (ε>0) (PD ) (0<PP0ε   f(P)>f(P0) ) 
cf.n変数関数の狭義極小狭義極小値

  (ε>0)(Δx,Δy)R2)(0<(Δx,Δy)ε  f(x0+Δx,y0+Δy)f(x0,y0)  )
  (ε>0) (Δx,Δy)U*ε(0,0)) ( f(x0+Δx,y0+Δy)f(x0,y0) )

定義

・「2変数関数f狭義の極小値」とは、
 とは、
  2変数関数f狭義の極小点においてとるのことをいう。
 つまり、
 f狭義の極小点P0=(x0,y0)にたいして、f(P0)狭義極小値と呼ぶ。


関連

1変数関数の極小/n変数関数の狭義極小狭義極小値

→[トピック一覧:2変数関数の極値問題]
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定義:2変数関数の広義の極大/極大点、広義の極大値
[直感的な定義と図解] cf.n変数関数の広義極大 


・「f(x0,y0)は、f点集合Aにおける最大値である」「(x0,y0)は、2変数関数f点集合Aにおける最大点である」という主張は、
  点集合A全体を見渡したときに、
  f(x0,y0)が、点集合A上で関数fがとる様々なのなかで最大であることを要求する。

・これに対して、
 「2変数関数fは、(x0,y0)で極大になる」「(x0,y0)は、2変数関数f極大点である」という主張は、
 「この中だけでみれば、局所的には、f(x0,y0)最大値になる」と言える範囲を、
  (x0,y0)の周りに、少なくとも一つは設定できる、
  ということだけを、意味する。




[図例:z=f(x,y)=−sin (x2+ y2)グ ラフ]
2変数関数の極大点


左図は、z=f(x,y)=sin (x2+ y2)グラフ

(0,0)は、
  定義域R2におけるf(x,y)=sin (x2+ y2)最大点ではない
ものの、
  f(x,y)=sin (x2+ y2)極大点ではある
とは言える。

してみると分かるように、
z=f(x,y)=sin (x2+ y2)グラフは、
全体として、山に囲まれた盆地になっており、
その盆地の中心部に、
(0,0)を頂点とする低い丘がある、
という形状。



[図例:z=sin (x2+ y2)y=0で切断した断面:真横]

2変数関数の極大点:断面図


真横からみると、こんな感じ。
定義域R2全体を見渡せば、
f(0,0)sin (02+ 02)=0よりも、大きな値を、fはとっている。
たとえば、盆地を囲む周囲の山なみ。
だから、断じて、f(0,0)は、定義域R2におけるf最大値ではない。

[図例:z=sin (x2+ y2)y=0で切断した断面:真横]


けれども、
(0,0)を頂点とする低い丘」という狭い範囲を設定して、
その範囲の中だけを見れば、
f(0,0)は、その範囲における局所的な最大値になっている。
だから、f(0,0)は、極大点だとは言ってよい。

[厳密な定義]

設定

D平面R2上 の任意の点集合  
f(P)=f(x,y) :Dで定義された2変数関数
P0=(x0,y0) :Dに 属す 
[文献]
・小林『続 微分積分読本―多変数』1章10.(p.58):2変数関数
・笠原『微分積分学』6.1(pp.191-2)
・高橋『微分と積分2』 §3.3(p.78)2変数関数

定義

2変数関数fは、P0広義の極大になる」
P0は、2変数関数f広義の極である」
とは、
  P0におけるfの値が、
  (定義域D全体の最大値でないとしても)
  少なくとも、
  P0の周辺に限って見たときに、局所的な最大値になっていることをいう。
このことは、
厳密には、以下のように定義される。  

[近傍を使わない定義]
 2変数関数fは、P0=(x0,y0)で広義の極大になる」
 「P0=(x0,y0)は、2変数関数f広義の極大点である」
 とは、
 正の実数εをうまくとると、
 「|x-a|<εかつ |y-b|<ε」を満たす全ての(x,y)に対して、
     f(x,y)f(x0,y0) 
 が成り立つことをいう。

[近傍を使った定義]
 
2変数関数fは、P0=(x0,y0)で広義の極大になる」
 「P0=(x0,y0)は、2変数関数f広義の極大点である」
 とは、
 P0=(x0,y0)の近傍をうまくとると、
 その近傍に属すあらゆるP=(x,y)に対して、
     f(P)f(P0) すなわち f(x,y)f(x0,y0) 
 が成り立つことをいう。
 論理記号で表すと、(ε>0) (PUε(P0) ) ( f(P)f(P0) )

[近傍最大値使った定義]
 
2変数関数fは、P0=(x0,y0)で広義の極大になる」
 「P0=(x0,y0)は、2変数関数f広義の極大点である」
 とは、
 P0=(x0,y0)の近傍をうまくとることによって、
  その近傍上の最大値に、f(P0)f(x0,y0)をできることをいう。
 論理記号で表すと、(ε>0) ( f(P0)max  f( Uε(P0) )


定義

・「2変数関数f広義の極大値」とは、
 とは、
  2変数関数f広義の極大点においてとるのことをいう。
 つまり、
 f広義の極大点P0=(x0,y0)にたいして、f(P0)広義の極大値と呼ぶ。


関連

1変数関数の極大/n変数関数の広義の極大広義の極大値

→[トピック一覧:2変数関数の極値問題]
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定義:2変数関数の狭義の極大/極大点、狭義の極大値

設定

D平面R2上 の任意の点集合  
f(P)=f(x,y) :Dで定義された2変数関数
P0=(x0,y0) :Dに 属す 
[文献]
・高橋『微分と積分2』 §3.3(p.78)2変数関数

定義

[近傍を使った定義]
 「2変数関数fは、P0=(x0,y0)で狭義の極大になる」
 「P0=(x0,y0)は、2変数関数f狭義の極である」
 とは、
 P0=(x0,y0)の近傍をうまくとると、
 その近傍に属すP0以外のあらゆるP=(x,y)に対して、
     f(P)f(P0) すなわち f(x,y)f(x0,y0) 
 が成り立つことをいう。
 論理記号で表すと、(ε>0) (PU*ε(P0) ) ( f(P)f(P0) )

[近傍を使わない定義]
 「2変数関数fは、P0=(x0,y0)で狭義の極大になる」
 「P0=(x0,y0)は、2変数関数f狭義の極である」
 とは、
 正の実数εをうまくとると、
 「0<|x-a|<εかつ0<|y-b|<ε」を満たす全ての(x,y)に対して、
     f(x,y)>f(x0,y0) 
 が成り立つことをいう。

※以上の定義は、次のようにも表現できる。
  (ε>0) (PD ) (0<PP0ε   f(P)f(P0) ) 


  (ε>0)(Δx,Δy)D)(0<(Δx,Δy)ε  f(x0+Δx,y0+Δy)f(x0,y0)  )
  (ε>0) (Δx,Δy)U*ε(0,0)) ( f(x0+Δx,y0+Δy)f(x0,y0) )

定義

・「2変数関数f狭義の極」とは、
 とは、
  2変数関数f狭義の極においてとるのことをいう。
 つまり、
 f狭義の極P0=(x0,y0)にたいして、f(P0)狭義と呼ぶ。


関連

1変数関数の極大/n変数関数の広義極大広義極大値

→[トピック一覧:2変数関数の極値問題]
総目次


定義:2変数関数の広義の極値


広義の極値とは、
広義の極小値極大値の総称。


cf.1変数関数の極値n変数関数の広義の極値
定義:2変数関数の狭義の極値


狭義の極値とは、
狭義の極小値極大値の総称


cf.1変数関数の極値n変数関数の狭義の極値

→[トピック一覧:2変数関数の極値問題]
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定義:2変数関数の臨界点critical point・臨界値critical value、停留点stationary point・停留値stationary value
[直感的な定義と図例]


・「(x0,y0)は、2変数関数f臨界点・停留点である」とは、
  fに、(x0,y0)で接する接平面が、水平であることをいう。
・臨界点は、
  極小点極大点である場合もあれば、
  鞍点である場合もある。 


[図例:臨界点―極大点でもあるケース]
2変数関数の臨界点―極大点でもあるケース


[図例:臨界点―鞍点であるケース]


2変数関数の臨界点―鞍点であるケース
[厳密な定義]


設定

D平面R2上 の任意の点集合
f(P)=f(x,y) :Dで定義された2変数関数
P0=(x0,y0) :Dに 属す

[文献]
・高木『解析概論』§26(pp.68-71)
・杉浦『解析入門1』U§8(p.150)
・小林『続 微分積分読本―多変数』1章10.(p.61):2変数関数
・高橋『微分と積分2』定義3.20(p.79)
・小形『多変数の微分積分p.75
Chiang236.

cf. n変数関数の臨界点・停留点臨界値・停留値
定義 ・「P0=(x0,y0)は、2変数関数f臨界点・停留点である」
 とは、
  P0=(x0,y0)において、f勾配ベクトル零ベクトルとなること
 つまり、
   grad f (x0,y0)=f(x0,y0)/∂x,f (x0,y0)/∂x(0, 
 が満たされることをいう。

定義 ・「2変数関数f臨界値・停留値」とは、
  2変数関数fが臨界点・停留点においてとるのことをいう。
  つまり、
  fの臨界点・停留点P0=(x0,y0)にたいして、
  f(P0)臨界値・停留値と呼ぶ。


2変数関数fP0=(x0,y0)で()微分可能ならば
P0=(x0,y0)は、2変数関数f臨界点・停留点である」とは、
P0=(x0,y0)においてf微分係数零ベクトルとなることを指す。
なぜなら、
定理によって、
2変数関数fP0=(x0,y0)で()微分可能ならば
P0=(x0,y0)におけるf微分係数は、
P0=(x0,y0)におけるf勾配ベクトルに等しくなるから。 

臨界点が極小点極大点鞍点になる条件→極値の判定
注意
臨界点・停留点の語義について、テキストのあいだで相違がみられる。
(1) fがすべての変数について偏微分可能かつ grad f (x0,y0)=(0,を満たす点を臨界点・停留点と定義したテキスト。
 ・黒田『21世紀の数学1:微分積分学』定義8.12(p.307)は、
   fがすべての変数について偏微分可能かつ grad f(x0,y0)=(0,が満たされる点を、臨界点または停留点と定義。
   (つまり、臨界点または停留点は、そこでの()微分可能を要求しない。)  
   そのうえで、臨界点または停留点には、「極値点になる臨界点」と「鞍点になる臨界点」があると指摘。
 ・松坂『解析入門3』14.3-A(p.164)、小林『続 微分積分読本―多変数』1章10.(p.61)は、
   fがすべての変数について偏微分可能かつ grad f (a1,a2,…,an)=(0,,…0)が満たされる点を、臨界点と定義。
   (つまり、臨界点は、そこでの(全)微分可能を要求しない。)  
   そのうえで、臨界点には、「極値点になる臨界点」と「鞍点になる臨界点」があると指摘。
 ・小形『多変数の微分積分p.75、布川ほか『線形代数と凸解析』定義9.3(p.206)は、
   grad f (x0,y0)=(0,が満たされる点を、停留点と定義。
  つまり、停留点には、「極値点になる停留点」と「鞍点になる停留点」があることになる。
 ・加藤『微分積分学原論』15.3定義15.4(p.189)は、 grad f (x0,y0)=(0,が満たされる点を、危点と定義。
  危点は、critical pointの新訳?
(2) f()微分可能かつ微分係数(0,を満たす点を、臨界点と定義したテキスト。
  ・杉浦『解析入門1』U§8(p.150)、
  ・高橋『微分と積分2』定義3.20(p.79)は、
  このテキストに従えば、臨界点には、「極値点になる臨界点」と「鞍点になる臨界点」があることになる。 
(3)高木『解析概論』§26(pp.68-71)は、grad f(x0,y0)=(0,を満たすが、極値点にならない点を、停留点と呼んでいる。
(4)『岩波数学辞典』333L(p.986)は、
  f()微分可能かつ微分係数(0,を満たす点を臨界点と定義し、「臨界点における関数の値」を停留値と定義している。



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定義:2変数関数の鞍点(あんてん)saddle point・峠点

設定

D
平面R2上 の任意の点集合
f(P)=f(x,y) :Dで定義された2変数関数
P0=(x0,y0) :Dに 属す

cf.n変数関数の鞍点 

[文献]
・高橋『微分と積分2』 §3.3(p.79):2変数関数
・小林『続微分積分読本―多変数』1章10(p.61):2変数関数。

定義

・ 「P0=(x0,y0)は、2変数関数f鞍点・峠点である」とは、
 定義域D上の方向によって、
 P0=(x0,y0)がf極小点にも極大点にもなることをいう。

・たとえば、
  P0=(x0,y0)から、
  y方向には動かず
  x方向にΔxだけ(Δx≠0ならプラスでもマイナスでもよい)だけ動いた任意の点P=(x0+Δx,y0)を
  どのようにとっても、
   f(P)>f(P0)  すなわち  f ( x0+Δx,y0 ) > f ( x0,y0 )
  が成り立つが、
  P0=(x0,y0) から、
  x方向には動かず
  y方向にΔyだけ(Δy≠0ならプラスでもマイナスでもよい)動いた任意の点P=(x0,y0+Δy)を
  どのようにとっても、
   f(P)f(P0)  すなわち  f ( x0, y0+Δy ) < f (x0,y0)
 が成り立つ
 といった場合、
 P0=(x0,y0)は、2変数関数f鞍点・峠点である。 

典型的な例は、
f (x,y)=ax2-by2 (a,b>0) の(0,0)


2変数関数の鞍点

・下図は、z=x2-y2グラフ
  (0,0)は、z=x2-y2鞍点・峠点となっている。




双曲放物面z=x^2-y^2のグラフ




飯倉交差点=外苑東通り×桜田通り
 
  →詳細は現場にて。







  

→[トピック一覧:2変数関数の極値問題]
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定理:2変数関数の極大極小の1階の必要条件 the first-order necessary condition


設定
D平面R2上 の任意の点集合
P0=(x0,y0) :Dに 属す
f(P)=f(x,y) :Dで定義された2変数関数
        P0=(x0,y0)の近くで偏微分可能とする。


定理


次の命題P,命題Qについて、
   命題Pが成り立つならば、命題Qが成り立つ。
   すなわち、命題P命題Q

しかし、逆は成り立たない。
 ( grad f =(0,0)だとしても、
     P0で極値をとらず、鞍点になることもある )   

命題P2変数関数fP0=(x0,y0)で極小または極大
    すなわち、
      (ε>0) (PUε(P0) ) ( f(P)f(P0) )
      または
      (ε>0) (PUε(P0) ) ( f(P)f(P0) )  

命題QP0=(x0,y0)は、2変数関数f臨界点である。
    すなわち、
     grad f (x0,y0)= fx(x0, y0), fy(x0, y0)(0, 


[文献-2変数関数のみについて]
・小林『続微分積分読本-多変数』1章10定理1(p.59)
・笠原『微分積分学』6.1命題6.3(p.192)
・高橋『微分と積分2』定理3.19(p.79)
・小島『ゼロから学ぶ微分積分』4章(p.134)

[文献-n変数関数一般について]
・杉浦『解析入門1』U§8定理8.1(p.150)
・松坂『解析入門3』14.3-A定理1(p.164)
・黒田『21世紀の数学1:微分積分学』定理8.15(p.307)
・岡田『経済学・経営学のための数学』3.3定理3.4(p.123)
・入谷久我『数理経済学入門』定義7.7(p.173)
・神谷浦井『経済学のための数学入門』7.3.2(pp.271-5)

一般化:n変数関数の極大極小の1階の必要条件 
 
   

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定理:2変数関数の極大の2階必要条件 the second-order necessary condition


設定
D平面R2上 の任意の点集合
P0=(x0,y0) :Dに 属す
f(P)=f(x,y) :Dで定義された2変数関数
        P0=(x0,y0)の近くでC2とする。


定理

2変数関数fP0=(x0,y0)極大ならば
下記の
同値な条件P,Q,Rが満たされる。
すなわち、

 条件
P条件Q条件R
 であって、 
 (ε>0) (PUε(P0) ) ( f(P)f(P0) )  条件P,Q,R

※一般化:n変数関数のケース  

[文献-2変数関数のみについて]
・小林『続微分積分読本―多変数』1章10-定理1(p.59)


[文献-n変数関数一般について]
・岡田『経済学・経営学のための数学
         3.3定理3.5;3.7(p.124;126)
・入谷久我『数理経済学入門』定理7.7(p.173).
・神谷浦井『経済学のための数学入門』定理7.3.3(p.275)







  
 

[条件P :2次形式・行列を持ち出さない表現]
任意の(Δx,Δy)≠(0,0)に対して、
Q
(Δx,Δy)=(Δx)2 fxx(x0, y0)+2(Δx)(Δy)  fxy(x0, y0)+(Δy)2 fyy(x0, y0)

が非正値。

           

 

[条件Q :負値定符号2次形式を持ち出す表現]
P0=(x0,y0)における2変数関数fヘッセ行列Hf(x0,y0)によって定まる二次形式
半負値定符号  
すなわち、
任意の2次元数ベクトルh= (Δx,Δy)≠(0,0)に対して、
      二次形式 thHf(x0,y0)h≦0 

 

[条件R :ヘッセ行列と負値定符号行列を持ち出す表現]
P0=(x0,y0)における2変数関数fヘッセ行列Hf(x0,y0)
非正値定符号行列
   すなわち、
   任意の2次元数ベクトルh= (Δx,Δy)≠(0,0)に対して、
      二次形式 thHf(x0,y0)h≦0 

 
   

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定理:2変数関数の極小の2階必要条件 the second-order necessary condition


設定
D平面R2上 の任意の点集合
P0=(x0,y0) :Dに 属す
f(P)=f(x,y) :Dで定義された2変数関数
        P0=(x0,y0)の近くでC2とする。


定理

n変数実数値関数fA=(a1,a2,…,an)で極小ならば
下記の同値な条件P,Q,Rが満たされる
すなわち、
 (ε>0) (PUε(A) ) (f (P)f(A) )  条件P,Q,R
 であって、
 条件P条件Q条件R 

※一般化:n変数関数のケース  

[文献-2変数関数のみについて]
・小林『続微分積分読本―多変数』 
           1章10-定理1(p.59)

[文献-n変数関数一般について]
・岡田『経済学・経営学のための数学
    3.3定理3.5;3.7(p.124;126)
・入谷久我『数理経済学入門』定理7.7(p.173).
・神谷浦井『経済学のための数学入門
             定理7.3.3(p.275)
・西村和夫『経済数学早分かり』3章定理4.1(p.136)

 

[条件P :2次形式・行列を持ち出さない表現]
任意の(Δx,Δy)≠(0,0)に対して、
  Q
(Δx,Δy)=(Δx)2 fxx(x0, y0)+2(Δx)(Δy)  fxy(x0, y0)+(Δy)2 fyy(x0, y0)
が非負値。

 

[条件Q :負値定符号2次形式を持ち出す表現]
P0=(x0,y0)における2変数関数fヘッセ行列Hf(x0,y0)によって定まる二次形式半正値定符号  
すなわち、
任意の2次元数ベクトルh= (Δx,Δy)≠(0,0)に対して、
二次形式 thHf(x0,y0)h≧0

 

[条件R :ヘッセ行列と負値定符号行列を持ち出す表現]
P0=(x0,y0)における2変数関数fヘッセ行列Hf(x0,y0)非負値定符号行列
すなわち、任意の2次元数ベクトルh= (Δx,Δy)≠(0,0)に対して、二次形式 thHf(x0,y0)h≧0 


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定理:2変数関数の極大・極小・鞍点の判定

設定

D平面R2上 の任意の点集合  
(x0,y0):Dに 属す 
f(x,y):Dで定義された2変数関数
        (x0,y0)の近くでC2とする。
       定理より、この設定のもとで、fxy(x0,y0)=fyx(x0,y0)           

[文献]
*高橋『微分と積分2』§3.3(p.83-4):ヘッセ行列不使用.2変数2次形式から。
*黒田『微分積分学』定理8.16(p.310):ヘッセ行列不使用.2変数2次形式から。
・松坂『解析入門3』14.3-D定理3(p.173):2変数関数。ヘッセ行列不使用。2変数2次形式から。
・小林『続微分積分読本―多変数』1章10(p.61):2変数関数ヘッセ行列不使用。
・笠原『微分積分学』6.1定理6.5(p.192):2変数関数。ヘッセ行列の符号。

定理

あるで、C22変数関数極値をとるかどうかは、
そのにおける2次偏導関数の値を使って、
以下の基準にしたがって判定できる。


[ケースI]  ※詳細→極小の2階十分条件
  条件1:grad f (x0,y0) = (0,0)
  かつ
  条件2:fxx (x0,y0) fyy (x0,y0)−{ fxy (x0,y0)}2 >0
  かつ
  条件3:fxx (x0,y0)>0
  かつ
  条件4:fyy (x0,y0)>0
  ならば
  P0=(x0,y0)で f(x,y)は狭義極小
 
詳細は、極小の2階十分条件を参照。
注意:いつでも{ fxy (x0,y0)}2 ≧0であるから、
    「条件2かつ条件3」が成り立っているとき、
     条件4はいつも成り立っており、
    「条件2かつ条件4」が成り立っているとき、
    条件3はいつも成り立っている。
    したがって、左記判定条件のうち、
    条件3・条件4のいずれか一方は不要。
    また、このことから、条件2が成立する場合は、
    このケースTと、次のケースUの二通りで全てだとわかる。
条件2の左辺は「(x0,y0)におけるfヘッシアン」と呼ばれる。

[ケースU]  ※詳細→極大の2階十分条件
  条件1:grad f (x0,y0) = (0,0)
  かつ
  条件2:fxx (x0,y0) fyy (x0,y0)−{ fxy (x0,y0)}2 >0
  かつ
  条件3:fxx (x0,y0)<0
  かつ
  条件4:fyy (x0,y0)<0
  ならば
  P0=(x0,y0)で f(x,y)は狭義極大
 
詳細は、極大の2階十分条件を参照。
注意:いつでも{ fxy (x0,y0)}2 ≧0であるから、
    「条件2かつ条件3」が成り立っているとき、
     条件4はいつも成り立っており、
    「条件2かつ条件4」が成り立っているとき、
    条件3はいつも成り立っている。
    したがって、左記判定条件のうち、
    条件3・条件4のいずれか一方は不要。
    また、このことから、条件2が成立するケースは、
    前のケースTと、このケースUのの二通りで全てだとわかる。
条件2の左辺は「(x0,y0)におけるfヘッシアン」と呼ばれる。    

[ケースV]  ※詳細→鞍点の2階十分条件
  条件1:grad f (x0,y0) = (0,0)
  かつ
  条件2:fxx (x0,y0) fyy (x0,y0)−{ fxy (x0,y0)}2 <0
  ならば
  P0=(x0,y0)は、 f(x,y)の鞍点

詳細は、鞍点の2階十分条件を参照。
条件2の左辺は「(x0,y0)におけるfヘッシアン」と呼ばれる。 

[ケースW:判定不能] 
  条件1:grad f (x0,y0) = (0,0)
  かつ
  条件2:fxx (x0,y0) fyy (x0,y0)−{ fxy (x0,y0)}2 =0
  ならば
  2次偏導関数の値だけでは、
  極小であるとも、極大であるとも、そのどちらでもないとも、
  いえない。
  もっと高次の偏導関数の値に依存して、
  極小だったり、極大だったり、
  そのどちらでもなかったり、
  する。
  
条件2の左辺は「(x0,y0)におけるfヘッシアン」と呼ばれる。





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定理:2変数関数の狭義極大の2階十分条件the second-order sufficient condition


cf. n変数関数の狭義極大の2階十分条件  


設定
D平面R2上 の任意の点集合  
(x0,y0)=2次元数ベクトルx0Dに 属す 
f(x,y):Dで定義された2変数関数
        (x0,y0)の近くでC2とする。
       定理より、この設定のもとで、fxy(x0,y0)=fyx(x0,y0) 


定理


下記の同値な条件Q,R,S,T,Uが満たされるならば
2変数関数f(x0,y0)=x0狭義極大
すなわち、
条件Q条件R条件S条件T条件U条件V
であって、
条件Q,R,S,T,U,V
  (ε>0)((x,y)U*ε(x0,y0))(f(x,y)f(x0,y0) )


[文献]
・小林『続微分積分読本―多変数
 1章10-定理1(p.59):2変数関数;ヘッセ行列不使用.
・松坂『解析入門3』14.3-D定理3(p.173):
      2変数関数。ヘッセ行列不使用.
・小島『ゼロから学ぶ微分積分』4章(pp.164-5):
      2変数関数。ヘッセ行列不使用.



・笠原『微分積分学』6.1定理6.5(p.192):
      2変数関数。ヘッセ行列の符号。
*黒田『微分積分学』定理8.16(p.310):ヘッセ行列不使用.2変数2次形式から。
*高橋『微分と積分2』 §3.3(p.83-4):ヘッセ行列不使用.2変数2次形式から。

  [条件Q:2次形式―行列を持ち出さない表現]
Q1: (x0,y0)は、2変数関数f臨界点。すなわち、grad f(x0,y0) = (0,0)
かつ
Q2: 任意の(Δx,Δy)≠(0,0)に対して、
      Q
(Δx,Δy)=(Δx)2 fxx(x0, y0)+2(Δx)(Δy)  fxy(x0, y0)+(Δy)2 fyy(x0, y0)
   がマイナスになる。

 ※条件Q⇒「点(x0,y0)で狭義極大」の証明   
 ※条件Qを一般的な表現に改めたのが、下記の条件R,S
  n変数関数のケースへ拡張するには、このような一般的な表現が有利。
  「条件Q2⇔条件R2⇔条件S2」の証明 

→[トピック一覧:2変数関数の極値問題]

[文献]
・高橋『微分と積分2』 §3.3(p.83-4):ヘッセ行列不使用.2変数2次形式から。

 

[条件R2次形式―ヘッセ行列と負値定符号2次形式を持ち出す表現]
R1: (x0,y0)は、2変数関数f臨界点。すなわち、 grad f(x0,y0)=(0,0)
かつ
R2: (x0,y0)における2変数関数fヘッセ行列Hf(x0,y0)によって定まる二次形式
   負値定符号  
   すなわち、
   任意の実数の組(Δx,Δy)(0,0)に対して、
      二次形式 (Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy)<0 
      ※ここでf(x,y)はC2と設定されたから、
       定理より、この設定のもとで、fxy(x0,y0)=fyx(x0,y0) となっており、
       したがって、右辺の正方行列は、対称行列となることに注意。
 ※条件R⇒「点(x0,y0)で狭義極大」の証明   
 ※「条件Q2⇔条件R2⇔条件S2」の証明 

→[トピック一覧:2変数関数の極値問題]


 

[条件S2次形式―ヘッセ行列と負値定符号行列を持ち出すベクトル行列表現]
S1: x0=(x0,y0)は、2変数関数f臨界点。すなわち、 grad f(x0)=
かつ
S2: x0=(x0,y0)における2変数関数fヘッセ行列Hf(x0)負値定符号行列
   すなわち、
   任意の2次元縦ベクトルhに対して、二次形式 thHf(x0)h<0 

 ※条件S⇒「点A=(x0,y0)で狭義極大」の証明  
 ※「条件Q2⇔条件R2⇔条件S2」の証明

→[トピック一覧:2変数関数の極値問題]


 

[条件T :ヘッセ行列の固有値]
T1: (x0,y0)は、2変数関数f臨界点。すなわち、 grad f(x0,y0)=(0,0)
かつ
T2: (x0,y0)における2変数関数fヘッセ行列Hf(x0,y0)の全ての固有値が負。

 条件S条件Tなのは、なぜ? →負値定符号行列になるための必要十分条件〜固有値に関連して   

→[トピック一覧:2変数関数の極値問題]


[文献]


[条件Uヘッセ行列の主小行列―ヘッセ行列も主小行列も持ち出さない表現]
U1: (x0,y0)は、2変数関数f臨界点。すなわち、 grad f(x0,y0)=(0,0)
かつ
U2:fxx (x0,y0) fyy (x0,y0)−{ fxy (x0,y0)}2 >0
かつ
U3:fxx (x0,y0)<0
かつ
U4:fyy (x0,y0)<0
注意:いつでも{ fxy (x0,y0)}2 ≧0であるから、
    「条件U2かつ条件U3」が成り立っているとき、条件U4はいつも成り立っており、
    「条件U2かつ条件U4」が成り立っているとき、条件U3はいつも成り立っている。
    したがって、左記判定条件のうち、条件U3・条件U4のいずれか一方は不要。
    つまり、
    条件Uは、
    「条件U1かつ条件U2かつ条件U3」または「条件U1かつ条件U2かつ条件U4」のいずれかを
    要求しているに過ぎない。

※条件Uを一般的な表現に改めたのが、下記の条件V
  n変数関数のケースへ拡張するには、このような一般的な表現が有利。

条件S条件Qなのは、なぜ? →2変数二次形式の符号判定〜行列を使わずに:ケースU   

→[トピック一覧:2変数関数の極値問題]


[文献]
*高橋『微分と積分2』§3.3(p.83-4):ヘッセ行列不使用.2変数2次形式から。
*黒田『微分積分学』定理8.16(p.310):ヘッセ行列不使用.2変数2次形式から。
・松坂『解析入門3』14.3-D定理3(p.173):2変数関数。ヘッセ行列不使用。2変数2次形式から。
・小林『続微分積分読本―多変数』1章10(p.61):2変数関数ヘッセ行列不使用。

 

[条件Vヘッセ行列の主小行列―ヘッセ行列の主小行列を持ち出す表現]
V1: (x0,y0)は、2変数関数f臨界点。すなわち、 grad f(x0,y0)=(0,0)
かつ
V2:「(x0,y0)における2変数関数fヘッセ行列Hf(x0,y0) 」の、
    以下にあげる主小行列D1,D2のうち、
      奇数番が付いたD1行列式がマイナス、
      偶数番が付いたD2行列式がプラス。
    つまり、(-1)kdet Dk >0  ( k = 1,2) 



     ・D1:『(x0,y0)における2変数関数fの2行2列ヘッセ行列Hf(x0,y0)から、同じ番号の行・列を、後から1個潰してできた1行1列の主小行列
         すなわち、D1fxx (x0,y0) 
     ・D2:『(x0,y0)における2変数関数fの2行2列ヘッセ行列Hf(x0,y0)から、同じ番号の行・列を、後から0個潰してできた2行2列の主小行列
         すなわち、D2

 条件S条件Vとなるのは、なぜ? → 負値定符号行列になるための必要十分条件〜主小行列式に関連して 

→[トピック一覧:2変数関数の極値問題]


   

[条件Q⇒「点(x0,y0)で狭義極大」の証明]

仮定Q1:grad f(x0,y0) = ( fx(x0, y0),fy(x0, y0))=(0,0) 
仮定Q2:任意の(Δx,Δy)≠(0,0)に対して、 Q(Δx,Δy)<0
[文献]
・松坂『解析入門3』14.3-A定理2(p.170)

     ただし、Q(Δx,Δy)=(Δx)2 fxx(x0, y0)+2(Δx)(Δy)  fxy(x0, y0)+(Δy)2 fyy(x0, y0)
T.
テイラー展開の公式によって、
 f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0)+(Δx)  fx(x0, y0)+(Δy) fy(x0, y0)+(1/2)Q(Δx,Δy)+R3
 とおくと、
   (Δx,Δy) 0 とすると、R3  0 
  かつ 
   (Δx,Δy) 0 とすると、R3(Δx,Δy)2R3/{(Δx)2+(Δy)2 0 
 が満たされる。
したがって、ここでは、
仮定Q1「grad f(x0,y0) = ( fx(x0, y0),fy(x0, y0))=(0,0)」より、
    f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0)=(1/2)Q(Δx,Δy)+R3  …I-(1)  
  かつ 
   (Δx,Δy) 0 とすると、R3  0   …I-(2) 
  かつ 
   (Δx,Δy) 0 とすると、R3(Δx,Δy)2R3/{(Δx)2+(Δy)2 0  …I-(3)
が満たされる。
 
U.
任意の非零2次元数ベクトル(Δx,Δy)≠(0,0)に対して、
  Q(Δx,Δy) /(Δx,Δy)2Q(Δx,Δy) /{(Δx)2+(Δy)2   
を、(Δx,Δy)の関数としてみると、
   Q(Δx,Δy) /(Δx,Δy)2Q(Δx,Δy) /{(Δx)2+(Δy)2  最 大値Lが存在し[∵下記理由]、
仮定Q2より、
L<0
を満たす。
つまり、
(Δx,Δy) )( (Δx,Δy)≠(0,0)  Q(Δx,Δy) /(Δx,Δy)2Q(Δx,Δy) /{(Δx)2+(Δy)2}≦L<0

なお、
   (Δx,Δy)=(0,0)  (Δx,Δy)=0  
だから、
(Δx,Δy) )( (Δx,Δy)≠0  Q(Δx,Δy) /(Δx,Δy)2Q(Δx,Δy) /{(Δx)2+(Δy)2}≦L<0)
と言っても同じことである。

* * * * * *
別様に書くと、
R2上の点集合
 D{(Δx,Δy)R2|(Δx,Δy)(0,0)}{(Δx,Δy)R2|(Δx,Δy)≠0} (∵ノルムの定義: (Δx,Δy)(0,0)  (Δx,Δy)=0 )
において、
Q(Δx,Δy)  / (Δx,Δy) 2  最 大値Lが存在し、L<0
つまり、
(Δx,Δy) D)(Q(Δx,Δy) /(Δx,Δy)2 L<0


* * * * * *
Q(Δx,Δy) /(Δx,Δy)2Q(Δx,Δy) /{(Δx)2+(Δy)2}の最 大値L」の存在証明:最大値最小値定理から。 

  Q(Δx,Δy) /(Δx,Δy)2
    =Q(Δx,Δy) /{(Δx)2+(Δy)2
   ={(Δx)2 fxx(x0, y0)+2(Δx)(Δy)  fxy(x0, y0)+(Δy)2 fyy(x0, y0)} /{(Δx)2+(Δy)2
   =(Δx)2 fxx(x0, y0) /{(Δx)2+(Δy)2}+ 2(Δx)(Δy)  fxy(x0, y0) /{(Δx)2+(Δy)2}+ (Δy)2 fyy(x0, y0) /{(Δx)2+(Δy)2
   = fxx(x0, y0)(Δx)2 /{(Δx)2+(Δy)2}+ 2  fxy(x0, y0)(Δx)(Δy) /{(Δx)2+(Δy)2}+  fyy(x0, y0) (Δy)2/{(Δx)2+(Δy)2
   = fxx(x0, y0){Δx/2 + 2  fxy(x0, y0){Δx/}{Δy/}+  fyy(x0, y0){Δy/2 
   = fxx(x0, y0){Δx/(Δx,Δy)2 + 2  fxy(x0, y0){Δx/(Δx,Δy)}{Δy/(Δx,Δy)}+  fyy(x0, y0){Δy/(Δx,Δy)2 
   
 すると、 「Q(Δx,Δy) /(Δx,Δy)2Q(Δx,Δy) /{(Δx)2+(Δy)2} は、
     2変数2値ベクトル値関数
      φ(Δx,Δy)( Δx/, Δy/ )( Δx/(Δx,Δy), Δy/(Δx,Δy) )
     と
     2変数実数値関数
      ψ(h1,h2)= fxx(x0, y0)h12 + 2  fxy(x0, y0)h1h2+  fyy(x0, y0)h22
     との合成関数
 である。
  つまり、
    Q(Δx,Δy) /(Δx,Δy)2Q(Δx,Δy) /{(Δx)2+(Δy)2}=ψ( φ(Δx,Δy) )   
任意の非零2次元数ベクトル(Δx,Δy)≠(0,0)に対して、
     φ(Δx,Δy) =1
 を満たす。  
 つまり、
 定義域D{(Δx,Δy)R2|(Δx,Δy)(0,0)}{(Δx,Δy)R2|(Δx,Δy)≠0} に対して、
 φ(Δx,Δy)( Δx/, Δy/  )の値域は、   
       {(h1,h2)R2|(h1,h2) =1 } 
 これは、要するに、原点を中心とする半径1の円周である。

{(h1,h2)R2|(h1,h2) =1 }  は、有界な閉集合であって、      
  ψ( h1,h2 ) は、{(h1,h2)R2|(h1,h2) =1 } で連続(∵h1,h2の多項式で定義されるh1,h2の2変数関数は連続)。 
 したがって、最大値最小値定理より、
  {(h1,h2)R2|(h1,h2) =1 }におけるψ( h1,h2 )最大値最小値が存在する。 
・上記二点をあわせて考えると、
  合成関数 ψ( φ(Δx,Δy) ) は、
   DD{(Δx,Δy)R2|(Δx,Δy)(0,0)}{(Δx,Δy)R2|(Δx,Δy)≠0} において、
  最大値最小値を有す
 と結論できる。

V.  [ I-(3)を分析、Uに統合 ]

・I-(3)「 (Δx,Δy) 0 とすると、R3(Δx,Δy)2R3/{(Δx)2+(Δy)2 0 」 
 を、極限の定義に遡って書き下すと、
   (ε>0)(δ>0)( R)(0<<δ  | R3/{(Δx)2+(Δy)2|<ε )
これは、実質的には、
   (ε>0)(δ>0)( (Δx,Δy)R2)(0<<δ  | R3/{(Δx)2+(Δy)2|<ε )
   除外近傍の概念を使うと、
   (ε>0)(δ>0)((Δx,Δy)  U*δ(0,0))(  R3/{(Δx)2+(Δy)2 Uε(0)
・だから、Uで出てきた
   「 Q(Δx,Δy) /(Δx,Δy)2Q(Δx,Δy) /{(Δx)2+(Δy)2}の {(Δx,Δy)R2| (Δx,Δy)≠0}における最 大値L(<0)
 から作った正値 |L/2|を、εの具体的な値としても、上記命題は成り立つ。
 ε= |L/2|とすると、上記命題は、以下のようになる。
 「ε= |L/2|にたいして、ある実数δ>0が存在し、
         ( (Δx,Δy)R2)(0<<δ  | R3/{(Δx)2+(Δy)2|<ε=|L/2|
  を満たす。」
 除外近傍の概念を使うと、
 「ε=|L/2|にたいして、ある実数δ>0が存在し、
         ((Δx,Δy)  U*δ(0,0) )( R3/{(Δx)2+(Δy)2 Uε=|L/2|(0)  ) 
 を満たす。」
・つまり、
 Uで出てきた「 Q(Δx,Δy) /{(Δx)2+(Δy)2}の {(Δx,Δy)R2|(Δx,Δy)≠0}における最 大値L(<0)に対して、
  ( (Δx,Δy)R2)(0<<δ  L/2< R3/{(Δx)2+(Δy)2}<−L/2 )
 を満たす正数δが存在するといえる。
    (δ>0)( (Δx,Δy)R2)(0<<δ  L/2< R3/{(Δx)2+(Δy)2}<−L/2 )
    (δ>0)( (Δx,Δy)U*δ(0,0) )( L/2< R3/{(Δx)2+(Δy)2}<−L/2 )

W  [U,I-(3)→Vから、I-(1)右辺への示唆]

δを、「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δであるとする。
U,Vより、
(Δx,Δy)R2)(0<<δ  (1/2)Q(Δx,Δy)/{(Δx)2+(Δy)2}+R3/{(Δx)2+(Δy)2}≦L/2 +R3/{(Δx)2+(Δy)2} <0 )
ということは、不等式の最左辺・最右辺に{(Δx)2+(Δy)2} (>0)をかけて、
(Δx,Δy)R2)(0<<δ  (1/2)Q(Δx,Δy)+R3 <0 )
とできる。
つまり、
Vで存在が示された正数δをつかった(Δx,Δy)の範囲に対する制限「0<<δ」
を満たす限りで任意の(Δx,Δy)に対して、
   (1/2)Q(Δx,Δy)+R3 <0
が満たされる。
除外近傍の概念を使って表現すると、((Δx,Δy) U*δ(0,0)) ( (1/2)Q(Δx,Δy)+R3 <0 )

V. 結論
δを、「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δであるとする。
I-(1)とWより、
  ( (Δx,Δy)R2)(0<<δ  f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0)=(1/2)Q(Δx,Δy)+R3<0 
ということは、不等式の最左辺・最右辺だけに着目すると
 ( (Δx,Δy)R2)(0<δ  f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0) 

つまり、
  Vで存在が示された正数δをつかった(Δx,Δy)の範囲に対する制限「0<(Δx,Δy)<δ
  を満たす限りで任意の(Δx,Δy)に対して、
     f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0)
  が成立する。
以上を、
除外近傍の概念を使って表現すると、
「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δに対して、
  (Δx,Δy) U*δ(0,0)) ( f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0) )

よって、仮定Q1,Q2のもとで、
  (δ>0)( (Δx,Δy)R2)(0<δ  f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0) )
  ないし
  (δ>0) ( (Δx,Δy) U*δ(0,0) ) ( f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0) )
が示されたことになる。

(x0+Δx, y0+Δy)を(x,y)と書くと、上記命題は、
  (δ>0)((x,y)R2)(0<(x,y)(x0, y0)<δ   f(x, y) f(x0, y0) )
  ないし
  (δ>0) ((x,y) U*δ(x0,y0) ) ( f(x, y) f(x0, y0) )
となるから、
仮定Q1,Q2のもとで、
(x0,y0)で、f狭義極大である。


  [→狭義極大の二階十分条件冒頭へ戻る]


[条件R⇒「点(x0,y0)で狭義極大」の証明]


仮定R1:  grad f(x0,y0)=(0,0)
仮定R2: (x0,y0)における2変数関数fヘッセ行列Hf(x0,y0)によって定まる二次形式負値定符号
     すなわち、
      任意の実数の組(Δx,Δy)(0,0)に対して、
        二次形式 (Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy)<0 

T.
テイラー展開の公式によって、
 f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0)grad f(x0,y0) (Δx,Δy)+ (1/2)(Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy)R3
 とおくと 

   R3  0  ( (Δx,Δy) 0 )
  かつ 
   R3 / (Δx,Δy)2  0 ( (Δx,Δy) 0 )  
が満たされる。
したがって、ここでは、
仮定R1「grad f(x0,y0)=(0,0)」より、
  f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0)grad f(x0,y0) (Δx,Δy)+ (1/2)(Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy)R3  …I-(1)  
  かつ 
   R3  0  ( (Δx,Δy) 0 )   …I-(2) 
  かつ 
   R3 / (Δx,Δy)2  0 ( (Δx,Δy) 0 )  …I-(3)
が満たされる。

U.
任意の非零2次元数ベクトル(Δx,Δy)≠(0,0)に対して、
  (Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) / (Δx,Δy)2
を、(Δx,Δy)関数としてみると、
   (Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) / (Δx,Δy)2
  最 大値Lが存在し[∵単位ベクトル化の二次形式の最大値・最小値定理]、
仮定R2より、
L<0
を満たす。
つまり、
(Δx,Δy) )( (Δx,Δy)(0,0)  (Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) / (Δx,Δy)2L<0

なお、
ノルムの定義より、
   (Δx,Δy)(0,0)  (Δx,Δy)=0  
だから、
(Δx,Δy) )( (Δx,Δy)≠0  (Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) / (Δx,Δy)2L<0)
と言っても同じことである。  
* * * * * *
別様に書くと、
R2上の点集合
 D{(Δx,Δy)R2|(Δx,Δy)(0,0)}{(Δx,Δy)R2|(Δx,Δy)≠0}  
          (∵ノルムの定義: (Δx,Δy)(0,0)  (Δx,Δy)=0 )
において、
  (Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) / (Δx,Δy)2  最 大値Lが存在し、L<0
つまり、
(Δx,Δy) D)( (Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) / (Δx,Δy)2 ≦L<0)

V.  [ I-(3)を分析、Uに統合 ]
・I-(3)「 R3 / (Δx,Δy)2  0 ( (Δx,Δy) 0 ) 」 
 を、極限の定義に遡って書き下すと、
   (ε>0)(δ>0)( (Δx,Δy) )(0<(Δx,Δy)<δ  | R3/{(Δx,Δy)2|<ε )
 これは、実質的には、
   (ε>0)(δ>0)((Δx,Δy)R2)(0<(Δx,Δy)<δ  | R3/(Δx,Δy)2|<ε )
   除外近傍の概念を使うと、
   ( ε>0 ) ( δ>0 ) ((Δx,Δy)R2)( (Δx,Δy)U*δ(0,0) R3/(Δx,Δy)2 Uε(0)  ) 
・だから、Uで出てきた
 「  (Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) / (Δx,Δy)2 の {(Δx,Δy)R2|(Δx,Δy)≠0} における最 大値L(<0)
 から作った正値 |L/2|を、εの具体的な値としても、上記命題は成り立つ。
 ε= |L/2|とすると、上記命題は、以下のようになる。
 「ε= |L/2|にたいして、ある実数δ>0が存在し、
         ((Δx,Δy)R2)(0<(Δx,Δy)<δ  | R3/(Δx,Δy)2|<ε= |L/2|
  を満たす。」
 除外近傍の概念を使うと、
 「ε= |L/2|にたいして、ある実数δ>0が存在し、
         ((Δx,Δy)U*δ(0,0) )( R3/(Δx,Δy)2 Uε=|L/2|(0)  ) 
 を満たす。」
・つまり、
 Uで出てきた「(Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) / (Δx,Δy)2 の{(Δx,Δy)R2|(Δx,Δy)≠0} における最 大値L(<0)に対して、
  ((Δx,Δy)R2)(0<(Δx,Δy)<δ  L/2< R3/(Δx,Δy)2<−L/2 )
 を満たす正数δが存在するといえる。
    (δ>0)((Δx,Δy)R2)(0<(Δx,Δy)<δ  L/2< R3/(Δx,Δy)2<−L/2 )

W  [U,I-(3)→Vから、I-(1)右辺への示唆]

δを、「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δであるとする。
U,Vより、
(Δx,Δy)R2)(0<(Δx,Δy)<δ  (1/2)(Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) / (Δx,Δy)2R3/(Δx,Δy)2 ≦ L/2 +R3/(Δx,Δy)2 <0 )
ということは、不等式の最左辺・最右辺に(Δx,Δy))2 (>0)をかけて、
(Δx,Δy)R2)(0<(Δx,Δy)<δ  (1/2)(Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) R3 <0 )
とできる。
つまり、
Vで存在が示された正数δをつかった(Δx,Δy)の範囲に対する制限「0<(Δx,Δy)<δ
を満たす限りで任意の(Δx,Δy)に対して、
   (1/2) (Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) R3 <0
が満たされる。
除外近傍の概念を使って表現すると、((Δx,Δy)U*δ(0,0)) ( (1/2)(Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) R3 <0 )

V. 結論
δを、「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δであるとする。
I-(1)とWより、
 ((Δx,Δy)R2)(0<(Δx,Δy)<δ  f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0)=(1/2)(Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) R3 <0 )
ということは、不等式の最左辺・最右辺だけに着目すると、
 ((Δx,Δy)R2)(0<(Δx,Δy)<δ  f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0) )

つまり、
  Vで存在が示された正数δをつかった(Δx,Δy)の範囲に対する制限「0<(Δx,Δy)<δ」
  を満たす限りで任意の(Δx,Δy)に対して、
   f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0) 
  が成立する。
以上を、
除外近傍の概念を使って表現すると、
「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δに対して、
 ((Δx,Δy)U*δ(0,0)) (  f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0) )

よって、仮定R1,R2のもとで、
  (δ>0)((Δx,Δy)R2)(0<(Δx,Δy)<δ  f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0) )
  ないし
  (δ>0) ((Δx,Δy)U*δ(0,0)) (  f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0) )
が示されたことになる。

(x0+Δx, y0+Δy)を(x,y)と書くと、上記命題は、
  (δ>0)((x,y)R2)(0<(x,y)(x0, y0)<δ   f(x, y) f(x0, y0) )
  ないし
  (δ>0) ((x,y) U*δ(x0,y0)) ( f(x, y) f(x0, y0) )
となるから、
仮定R1,R2のもとで、
(x0,y0)は、f狭義の極大点である。

 [→狭義極大の二階十分条件冒頭へ戻る]




[条件S⇒「点A=(x0,y0)で狭義極大」の証明]


仮定S1: grad f(x0)=
仮定S2:任意の2次元縦ベクトルhに対して、
     2変数関数fx0におけるヘッセ行列Hf(x0) によって定まる二次形 式 Hf(x0)[h] thHf(x0)h<0 
T.
テイラー展開の公式によって、
f(x0+h) f(x0)grad f(x0)h+ (1/2)Hf(x0)[h] R3
とおくと、
  R3  0  ( h 0 )
  かつ 
  R3 / h2  0 ( h 0 )  
が満たされる。
したがって、仮定S1「 grad f(x0)=」より、
   f(x0+h)f(x0) =  (1/2)Hf(x0)[h] R3  …I-(1)
  かつ 
  R3  0  ( h 0 ) …I-(2) 
  かつ 
  R3 / h2  0 ( h 0 )  …I-(3)
が満たされる。

U.
Hf(x0)[h] / h2   
を、hの関数としてみると、
任意の 2次元数ベクトルhに対して、
   Hf(x0)[h]/ h2  最 大値Lが存在し[∵単位ベクトル化の二次形式の最大値・最小値定理]、
仮定S2より、
 L<0
を満たす。
つまり、
h )( h  Hf(x0)[h] / h2 ≦<0)

なお、
ノルムの定義より、
   h  h=0  
だから、
h )( h  Hf(x0)[h] / h2 ≦L <0)
と言っても同じことである。

* * * * * *
別様に書くと、
R2上の点集合D={hR2|h}={hR2|h} (∵ノルムの定義: h  h=0 )
において、
Hf(x0)[h] /h2 最 大値Lが存在し、L<0
つまり、
h D)(Hf(x0)[h] /h2 ≦L <0)

V.  [ I-(3)を分析、Uに統合 ]
・I-(3)「R3 / h2  0 ( h 0 ) 」 
 を、極限の定義に遡って書き下すと、
   (ε>0)(δ>0)( h )(0<h<δ  | R3/{h2|<ε )
 これは、実質的には、
   (ε>0)(δ>0)(hR2)(0<h<δ  | R3/h2|<ε )
   除外近傍の概念を使うと、
   ( ε>0 ) ( δ>0 ) (hR2)( h U*δ(0,0) R3/h2 Uε(0)  ) 
・だから、Uで出てきた
   「Hf(x0)[h] /h2 の {hR2|h≠0}における最 大値L (<0)
 から作った正値 |L/2| を、εの具体的な値としても、上記命題は成り立つ。
 ε= |L/2|とすると、上記命題は、以下のようになる。
 「ε= |L/2|にたいして、ある実数δ>0が存在し、
         (hR2)(0<h<δ  | R3/h2|<ε=|L/2|
  を満たす。」
 除外近傍の概念を使うと、
 「ε=|L/2|にたいして、ある実数δ>0が存在し、
         (hU*δ(0,0))( R3/h2 Uε=|L/2|(0)  ) 
 を満たす。」

・つまり、
 Uで出てきた「Hf(x0)[h] /h2 の {hR2|h≠0}における最 大値L(<0)に対して、
  (hR2)(0<h<δ  L/2< R3/h2<−L/2 )
 を満たす正数δが存在するといえる。
    (δ>0)(hR2)(0<h<δ  L/2< R3/h2<−L/2 )

W  [U,I-(3)→Vから、I-(1)右辺への示唆]

δを、「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δであるとする。
U,Vより、
hR2)(0<h<δ  (1/2)Hf(x0)[h]  /h2R3/h2 ≦ L/2 +R3/h2 <0 )
ということは、不等式の最左辺・最右辺にh2 (>0)をかけて、
hR2)(0<h<δ  (1/2)Hf(x0)[h]R3 <0 )
とできる。
つまり、
Vで存在が示された正数δをつかったhの範囲に対する制限「0<h<δ」
を満たす限りで任意のhに対して、
   (1/2)Hf(x0)[h]R3<0
が満たされる。
除外近傍の概念を使って表現すると、(hU*δ(0,0)) ( (1/2)Hf(x0)[h] R3 <0 )

V. 結論
δを、「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δであるとする。
I-(1)とWより、
 (hR2)(0<h<δ  f(x0+h)f(x0)(1/2)Hf(x0)[h] R3 <0 )
ということは、不等式の最左辺・最右辺だけに着目すると、
 (hR2)(0<h<δ  f(x0+h)f(x0)<0 )

つまり、
  Vで存在が示された正数δをつかったhの範囲に対する制限「0<h<δ」
  を満たす限りで任意のhに対して、
   f(x0+h)f(x0)  
  が成立する。
以上を、
除外近傍の概念を使って表現すると、
「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δに対して、
 (hU*δ(0,0)) (  f(x0+h)f(x0)  )

よって、仮定S1,S2のもとで、
  (δ>0)(hR2)(0<h<δ  f(x0+h)f(x0)  )
  ないし
  (δ>0) (hU*δ(0,0)) ( f(x0+h)f(x0) )
が示されたことになる。

x0+hxと書くと、上記命題は、
  (δ>0)(xR2)(0<xx0<δ  f(x)f(x0) )
  ないし
  (δ>0) (x U*δ(x0))  ( f(x)f(x0) )
となるから、
仮定S1,S2のもとで、
x0は、f狭義の極大点である。

 [→狭義極大の二階十分条件冒頭へ戻る]


→[トピック一覧:2変数関数の極値問題]
総目次


 
定理:2変数関数の狭義極小の2階十分条件the second-order sufficient condition

cf. n変数関数の狭義極小の2階十分条件


設定


D
平面R2上 の任意の点集合  
(x0,y0)=2次元数ベクトルx0Dに 属す 
f(x,y):Dで定義された2変数関数
        (x0,y0)の近くでC2とする。
       定理より、この設定のもとで、fxy(x0,y0)=fyx(x0,y0) 

[→トピック一覧:2変数関数の極値問題]

定理

下記の同値な条件Q,R,S,T,U,Vが 満たされるならば
2 変数関数f(x0,y0)=x0狭義極小
すなわち、
 条件Q条件R条件S条件T条件U条件V
 であって、
 条件Q,R,S,T,U,V
  (ε>0)((x,y)U*ε(x0,y0))(f(x,y)f(x0,y0)) 


[文献]
・小林『続微分積分読本―多変数
 1章10-定理1(p.59):2変数関数。ヘッセ行列不使用。
・松坂『解析入門3』14.3 -D定理3(p.173):
      2変数関数。ヘッセ行列不使用。
・小島『ゼロから学ぶ微分積分』4 章(pp.164-5):
      2変数関数。ヘッセ行列不使用。



・笠原『微分積分学』6.1定理 6.5(p.192):2変数関数。ヘッセ行列の符号。
*黒田『微分積分学』定理 8.16(p.310):ヘッセ行列不使用
*高橋『微分と積分2』 §3.3(pp.83-4):ヘッセ行列不使用.2変数2次形式から。。

 

[条件Q :2次形式―行列を持ち出さない表現]
Q1: (x0,y0)は、2変数関数f臨界点
    すなわち、grad f(x0,y0) = (0,0)
かつ 

[文献]
・高橋『微分と積分2』 §3.3(p.83-4):ヘッセ行列不使用.2変数2次形式から。


Q2: 任意の(Δx,Δy)≠(0,0)に対して、
      Q
(Δx,Δy)=(Δx)2 fxx(x0, y0)+2(Δx)(Δy)  fxy(x0, y0)+(Δy)2 fyy(x0, y0)
   がプラスになる。
 ※条件Q⇒「fは点(x0,y0)で狭義極小」の証明  
 ※「条件Q2⇔条件R2⇔条件S2」の証明


 

[条件R :ヘッセ行列と正値定符号行列・正値定符号2次形式を持ち出す表現]
R1: (x0,y0)は、2変数関数f臨界点。すなわち、 grad f(x0,y0)=(0,0)
かつ
R2: (x0,y0)における2変数関数fヘッセ行列Hf(x0,y0)によって定まる二次形式正値定符号行列
   すなわち、
   任意の実数の組(Δx,Δy)(0,0)に対して、
      二次形式 (Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy)>0 
      ※ここでf(x,y)はC2と設定されたから、
       定理より、この設定のもとで、fxy(x0,y0)=fyx(x0,y0) となっており、
       したがって、右辺の正方行列は、対称行列となることに注意。 

 ※条件R⇒「fは点(x0,y0)で狭義極小」の証明  
 ※「条件Q2⇔条件R2⇔条件S2」の証明 

[→狭義極小の二階十分条件冒頭へ戻る]

[→狭義極小の二階十分条件冒頭へ戻る]
[→トピック一覧:2変数関数の極値問題]
 

[条件S :ヘッセ行列と正値定符号行列を持ち出すベクトル行列表現]
S1: x0=(x0,y0)は、2変数関数f臨界点。すなわち、 grad f(x0)=
かつ
S2: x0=(x0,y0)における2変数関数fヘッセ行列Hf(x0)正値定符号行列
   すなわち、
   任意の2次元縦ベクトルhに対して、二次形式 thHf(x0)h>0 

 ※条件S⇒「fは点(x0,y0)で狭義極小」の証明  
 ※「条件Q2⇔条件R2⇔条件S2」の証明 

[→狭義極小の二階十分条件冒頭へ戻る]

[→狭義極小の二階十分条件冒頭へ戻る]
[→トピック一覧:2変数関数の極値問題]
 

[条件T :ヘッセ行列の固有値を持ち出す表現]
T1: (x0,y0)は、2変数関数f臨界点。すなわち、 grad f(x0,y0)=(0,0)
かつ
T2: (x0,y0)における2変数関数fヘッセ行列Hf(x0,y0)の全ての固有値が正。

 条件S条件Tなのは、なぜ? →正値定符号行列になるための必要十分条件〜固有値に関連して   

[→狭義極小の二階十分条件冒頭へ戻る]

[→狭義極小の二階十分条件冒頭へ戻る]
[→トピック一覧:2変数関数の極値問題]

[条件Uヘッセ行列の主小行列―ヘッセ行列も主小行列も持ち出さない表現]
U1: (x0,y0)は、2変数関数f臨界点。すなわち、 grad f(x0,y0)=(0,0)
かつ
U2:fxx (x0,y0) fyy (x0,y0)−{ fxy (x0,y0)}2 >0
かつ
U3:fxx (x0,y0)>0
かつ
U4:fyy (x0,y0)>0
注意:いつでも{ fxy (x0,y0)}2 ≧0であるから、
    「条件U2かつ条件U3」が成り立っているとき、条件U4はいつも成り立っており、
    「条件U2かつ条件U4」が成り立っているとき、条件U3はいつも成り立っている。
    したがって、左記判定条件のうち、条件U3・条件U4のいずれか一方は不要。
    つまり、
    条件Uは、
    「条件U1かつ条件U2かつ条件U3」または「条件U1かつ条件U2かつ条件U4」のいずれかを
    要求しているに過ぎない。
条件Uを一般的な表現に改めたのが、下記の条件V
  n変数関数のケースへ拡張するには、このような一般的な表現が有利。

[→狭義極小の二階十分条件冒頭へ戻る]

[→狭義極小の二階十分条件冒頭へ戻る]
[→トピック一覧:2変数関数の極値問題]
 

[条件V :ヘッセ行列の主小行列を持ち出す表現]
V1: (x0,y0)は、2変数関数f臨界点。すなわち、 grad f(x0,y0)=(0,0)
かつ
V2:「(x0,y0)における2変数関数fヘッセ行列Hf(x0,y0) 」の、
    以下にあげる主小行列D1,D2行列式が、どれも、プラス。
    つまり、det Dk >0  (k=1,2) 

[→狭義極小の二階十分条件冒頭へ戻る]
[→トピック一覧:2変数関数の極値問題]

     ・D1:『(x0,y0)における2変数関数fの2行2列ヘッセ行列Hf(x0,y0)から、同じ番号の行・列を、後から1個潰してできた1行1列の主小行列
         すなわち、D1fxx (x0,y0) 
     ・D2:『(x0,y0)における2変数関数fの2行2列ヘッセ行列Hf(x0,y0)から、同じ番号の行・列を、後から0個潰してできた2行2列の主小行列
         すなわち、D2

 条件S条件Uとなるのは、なぜ? → 正値定符号行列になるための必要十分条件〜主小行列式に関連して 

[→狭義極小の二階十分条件冒頭へ戻る]
[→トピック一覧:2変数関数の極値問題]


[条件Q⇒「点(x0,y0)で狭義極小」の証明]

仮定Q1:grad f(x0,y0) = ( fx(x0, y0),fy(x0, y0))=(0,0) 
仮定Q2:任意の(Δx,Δy)≠(0,0)に対して、 Q(Δx,Δy)>0
     ただし、Q(Δx,Δy)=(Δx)2 fxx(x0, y0)+2(Δx)(Δy)  fxy(x0, y0)+(Δy)2 fyy(x0, y0)
T.
テイラー展開の公式によって、
 f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0)+(Δx)  fx(x0, y0)+(Δy) fy(x0, y0)+(1/2)Q(Δx,Δy)+R3
 とおくと、
   (Δx,Δy) 0 とすると、R3  0 
  かつ 
   (Δx,Δy) 0 とすると、R3(Δx,Δy)2R3/{(Δx)2+(Δy)2 0 
 が満たされる。
したがって、ここでは、
仮定Q1「grad f(x0,y0) = ( fx(x0, y0),fy(x0, y0))=(0,0)」より、
    f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0)=(1/2)Q(Δx,Δy)+R3  …I-(1)  
  かつ 
   (Δx,Δy) 0 とすると、R3  0   …I-(2) 
  かつ 
   (Δx,Δy) 0 とすると、R3(Δx,Δy)2R3/{(Δx)2+(Δy)2 0  …I-(3)
が満たされる。
 
U.
任意の非零2次元数ベクトル(Δx,Δy)≠(0,0)に対して、
  Q(Δx,Δy) /(Δx,Δy)2Q(Δx,Δy) /{(Δx)2+(Δy)2   
を、(Δx,Δy)の関数としてみると、
   Q(Δx,Δy) /(Δx,Δy)2Q(Δx,Δy) /{(Δx)2+(Δy)2  最小値Lが存在し[∵下記理由]、
仮定Q2より、
L>0
を満たす。
つまり、
(Δx,Δy) )( (Δx,Δy)≠(0,0)  Q(Δx,Δy) /(Δx,Δy)2Q(Δx,Δy) /{(Δx)2+(Δy)2}≧L>0
なお、
   (Δx,Δy)=(0,0)  (Δx,Δy)=0  
だから、
(Δx,Δy) )( (Δx,Δy)≠0  Q(Δx,Δy) /(Δx,Δy)2Q(Δx,Δy) /{(Δx)2+(Δy)2}≧L>0)
と言っても同じことである。

* * * * * *
別様に書くと、
R2上の点集合
 D{(Δx,Δy)R2|(Δx,Δy)(0,0)}{(Δx,Δy)R2|(Δx,Δy)≠0} (∵ノルムの定義: (Δx,Δy)(0,0)  (Δx,Δy)=0 )
において、
Q(Δx,Δy)  / (Δx,Δy) 2  最小値Lが存在し、L>0
つまり、
(Δx,Δy) D)(Q(Δx,Δy) /(Δx,Δy)2 L>0

* * * * * *
Q(Δx,Δy) /(Δx,Δy)2Q(Δx,Δy) /{(Δx)2+(Δy)2}の最小値L」の存在証明:最大値最小値定理から。 

  Q(Δx,Δy) /(Δx,Δy)2
    =Q(Δx,Δy) /{(Δx)2+(Δy)2
   ={(Δx)2 fxx(x0, y0)+2(Δx)(Δy)  fxy(x0, y0)+(Δy)2 fyy(x0, y0)} /{(Δx)2+(Δy)2
   =(Δx)2 fxx(x0, y0) /{(Δx)2+(Δy)2}+ 2(Δx)(Δy)  fxy(x0, y0) /{(Δx)2+(Δy)2}+ (Δy)2 fyy(x0, y0) /{(Δx)2+(Δy)2
   = fxx(x0, y0)(Δx)2 /{(Δx)2+(Δy)2}+ 2  fxy(x0, y0)(Δx)(Δy) /{(Δx)2+(Δy)2}+  fyy(x0, y0) (Δy)2/{(Δx)2+(Δy)2
   = fxx(x0, y0){Δx/2 + 2  fxy(x0, y0){Δx/}{Δy/}+  fyy(x0, y0){Δy/2 
   = fxx(x0, y0){Δx/(Δx,Δy)2 + 2  fxy(x0, y0){Δx/(Δx,Δy)}{Δy/(Δx,Δy)}+  fyy(x0, y0){Δy/(Δx,Δy)2 
   
 すると、 「Q(Δx,Δy) /(Δx,Δy)2Q(Δx,Δy) /{(Δx)2+(Δy)2} は、
     2変数2値ベクトル値関数
      φ(Δx,Δy)( Δx/, Δy/ )( Δx/(Δx,Δy), Δy/(Δx,Δy) )
     と
     2変数実数値関数
      ψ(h1,h2)= fxx(x0, y0)h12 + 2  fxy(x0, y0)h1h2+  fyy(x0, y0)h22
     との合成関数
 である。
  つまり、
    Q(Δx,Δy) /(Δx,Δy)2Q(Δx,Δy) /{(Δx)2+(Δy)2}=ψ( φ(Δx,Δy) )   
任意の非零2次元数ベクトル(Δx,Δy)≠(0,0)に対して、
     φ(Δx,Δy) =1
 を満たす。  
 つまり、
 定義域D{(Δx,Δy)R2|(Δx,Δy)(0,0)}{(Δx,Δy)R2|(Δx,Δy)≠0} に対して、
 φ(Δx,Δy)( Δx/, Δy/  )の値域は、   
       {(h1,h2)R2|(h1,h2) =1 } 
 これは、要するに、原点を中心とする半径1の円周である。

{(h1,h2)R2|(h1,h2) =1 }  は、有界な閉集合であって、      
  ψ( h1,h2 ) は、{(h1,h2)R2|(h1,h2) =1 } で連続(∵h1,h2の多項式で定義されるh1,h2の2変数関数は連続)。 
 したがって、最大値最小値定理より、
  {(h1,h2)R2|(h1,h2) =1 }におけるψ( h1,h2 )最大値最小値が存在する。 
・上記二点をあわせて考えると、
  合成関数 ψ( φ(Δx,Δy) ) は、
   D{(Δx,Δy)R2|(Δx,Δy)(0,0)}{(Δx,Δy)R2|(Δx,Δy)≠0} において、
  最大値最小値を有す
 と結論できる。

V.  [ I-(3)を分析、Uに統合 ]

・I-(3)「 (Δx,Δy) 0 とすると、R3(Δx,Δy)2R3/{(Δx)2+(Δy)2 0 」 
 を、極限の定義に遡って書き下すと、
   (ε>0)(δ>0)( R)(0<<δ  | R3/{(Δx)2+(Δy)2|<ε )
これは、実質的には、
   (ε>0)(δ>0)( (Δx,Δy)R2)(0<<δ  | R3/{(Δx)2+(Δy)2|<ε )
   除外近傍の概念を使うと、
   (ε>0)(δ>0)((Δx,Δy)  U*δ(0,0))(  R3/{(Δx)2+(Δy)2 Uε(0)
・だから、Uで出てきた
   「 Q(Δx,Δy) /(Δx,Δy)2Q(Δx,Δy) /{(Δx)2+(Δy)2}の {(Δx,Δy)R2| (Δx,Δy)≠0}における最小値L(>0)
 から作った正値 L/2を、εの具体的な値としても、上記命題は成り立つ。
 ε= L/2とすると、上記命題は、以下のようになる。
 「ε= L/2にたいして、ある実数δ>0が存在し、
         ( (Δx,Δy)R2)(0<<δ  | R3/{(Δx)2+(Δy)2|<ε=L/2 )
  を満たす。」
 除外近傍の概念を使うと、
 「ε=L/2にたいして、ある実数δ>0が存在し、
         ((Δx,Δy)  U*δ(0,0) )( R3/{(Δx)2+(Δy)2 Uε=L/2(0)  ) 
 を満たす。」
・つまり、
 Uで出てきた「 Q(Δx,Δy) /{(Δx)2+(Δy)2}の {(Δx,Δy)R2|(Δx,Δy)≠0}における最 大値L(<0)に対して、
  ( (Δx,Δy)R2)(0<<δ  −L/2< R3/{(Δx)2+(Δy)2}<L/2 )
 を満たす正数δが存在するといえる。
    (δ>0)( (Δx,Δy)R2)(0<<δ  −L/2< R3/{(Δx)2+(Δy)2}<L/2 )
    (δ>0)( (Δx,Δy)U*δ(0,0) )( −L/2< R3/{(Δx)2+(Δy)2}<L/2 )

W  [U,I-(3)→Vから、I-(1)右辺への示唆]

δを、「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δであるとする。
U,Vより、
(Δx,Δy)R2)(0<<δ  (1/2)Q(Δx,Δy)/{(Δx)2+(Δy)2}+R3/{(Δx)2+(Δy)2}≧L/2 +R3/{(Δx)2+(Δy)2} >0 )
ということは、不等式の最左辺・最右辺に{(Δx)2+(Δy)2} (>0)をかけて、
(Δx,Δy)R2)(0<<δ  (1/2)Q(Δx,Δy)+R3 >0 )
とできる。
つまり、
Vで存在が示された正数δをつかった(Δx,Δy)の範囲に対する制限「0<<δ」
を満たす限りで任意の(Δx,Δy)に対して、
   (1/2)Q(Δx,Δy)+R3 >0
が満たされる。
除外近傍の概念を使って表現すると、((Δx,Δy) U*δ(0,0)) ( (1/2)Q(Δx,Δy)+R3 >0 )

V. 結論
δを、「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δであるとする。
I-(1)とWより、
  ( (Δx,Δy)R2)(0<<δ  f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0)=(1/2)Q(Δx,Δy)+R3>0 
ということは、不等式の最左辺・最右辺だけに着目すると
 ( (Δx,Δy)R2)(0<δ  f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0) 

つまり、
  Vで存在が示された正数δをつかった(Δx,Δy)の範囲に対する制限「0<(Δx,Δy)<δ
  を満たす限りで任意の(Δx,Δy)に対して、
     f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0)
  が成立する。
以上を、
除外近傍の概念を使って表現すると、
「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δに対して、
  (Δx,Δy) U*δ(0,0)) ( f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0) )

よって、仮定Q1,Q2のもとで、
  (δ>0)( (Δx,Δy)R2)(0<δ  f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0) )
  ないし
  (δ>0) ( (Δx,Δy) U*δ(0,0) ) ( f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0) )
が示されたことになる。

(x0+Δx, y0+Δy)を(x,y)と書くと、上記命題は、
  (δ>0)((x,y)R2)(0<(x,y)(x0, y0)<δ   f(x, y) f(x0, y0) )
  ないし
  (δ>0) ((x,y) U*δ(x0,y0) ) ( f(x, y) f(x0, y0) )
となるから、
仮定Q1,Q2のもとで、
(x0,y0)で、f狭義極小である。


[→狭義極小の二階十分条件冒頭へ戻る]

[条件R⇒「点(x0,y0)で狭義極小」の証明]



仮定R1:  grad f(x0,y0)=(0,0)
仮定R2: (x0,y0)における2変数関数fヘッセ行列Hf(x0,y0)によって定まる二次形式正値定符号行列
     すなわち、
      任意の実数の組(Δx,Δy)(0,0)に対して、
        二次形式 (Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy)>0 
T.
テイラー展開の公式によって、
 f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0)grad f(x0,y0) (Δx,Δy)+ (1/2)(Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy)R3
 とおくと 

   R3  0  ( (Δx,Δy) 0 )
  かつ 
   R3 / (Δx,Δy)2  0 ( (Δx,Δy) 0 )  
が満たされる。
したがって、ここでは、
仮定R1「grad f(x0,y0)=(0,0)」より、
  f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0)grad f(x0,y0) (Δx,Δy)+ (1/2)(Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy)R3  …I-(1)  
  かつ 
   R3  0  ( (Δx,Δy) 0 )   …I-(2) 
  かつ 
   R3 / (Δx,Δy)2  0 ( (Δx,Δy) 0 )  …I-(3)
が満たされる。

U.
任意の非零2次元数ベクトル(Δx,Δy)≠(0,0)に対して、
  (Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) / (Δx,Δy)2
を、(Δx,Δy)関数としてみると、
   (Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) / (Δx,Δy)2
  最小値Lが存在し[∵単位ベクトル化の二次形式の最大値・最小値定理]、
仮定R2より、
L>0
を満たす。
つまり、
(Δx,Δy) )( (Δx,Δy)(0,0)  (Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) / (Δx,Δy)2L>0

なお、
ノルムの定義より、
   (Δx,Δy)(0,0)  (Δx,Δy)=0  
だから、
(Δx,Δy) )( (Δx,Δy)≠0  (Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) / (Δx,Δy)2L>0)
と言っても同じことである。  
* * * * * *
別様に書くと、
R2上の点集合
 D{(Δx,Δy)R2|(Δx,Δy)(0,0)}{(Δx,Δy)R2|(Δx,Δy)≠0}  
          (∵ノルムの定義: (Δx,Δy)(0,0)  (Δx,Δy)=0 )
において、
  (Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) / (Δx,Δy)2  最小値Lが存在し、L>0
つまり、
(Δx,Δy) D)( (Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) / (Δx,Δy)2 ≧L>0)

V.  [ I-(3)を分析、Uに統合 ]
・I-(3)「 R3 / (Δx,Δy)2  0 ( (Δx,Δy) 0 ) 」 
 を、極限の定義に遡って書き下すと、
   (ε>0)(δ>0)( (Δx,Δy) )(0<(Δx,Δy)<δ  | R3/{(Δx,Δy)2|<ε )
 これは、実質的には、
   (ε>0)(δ>0)((Δx,Δy)R2)(0<(Δx,Δy)<δ  | R3/(Δx,Δy)2|<ε )
   除外近傍の概念を使うと、
   ( ε>0 ) ( δ>0 ) ((Δx,Δy)R2)( (Δx,Δy)U*δ(0,0) R3/(Δx,Δy)2 Uε(0)  ) 
・だから、Uで出てきた
 「  (Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) / (Δx,Δy)2 の {(Δx,Δy)R2|(Δx,Δy)≠0} における最小値L(>0)
 から作った正値 L/2を、εの具体的な値としても、上記命題は成り立つ。
 ε= L/2とすると、上記命題は、以下のようになる。
 「ε= L/2にたいして、ある実数δ>0が存在し、
         ((Δx,Δy)R2)(0<(Δx,Δy)<δ  | R3/(Δx,Δy)2|<ε= L/2 )
  を満たす。」
 除外近傍の概念を使うと、
 「ε= |L/2|にたいして、ある実数δ>0が存在し、
         ((Δx,Δy)U*δ(0,0) )( R3/(Δx,Δy)2 Uε=L/2(0)  ) 
 を満たす。」
・つまり、
 Uで出てきた「(Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) / (Δx,Δy)2 の{(Δx,Δy)R2|(Δx,Δy)≠0} における最小値L(>0)に対して、
  ((Δx,Δy)R2)(0<(Δx,Δy)<δ  −L/2< R3/(Δx,Δy)2L/2 )
 を満たす正数δが存在するといえる。
    (δ>0)((Δx,Δy)R2)(0<(Δx,Δy)<δ  −L/2< R3/(Δx,Δy)2L/2 )

W  [U,I-(3)→Vから、I-(1)右辺への示唆]

δを、「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δであるとする。
U,Vより、
(Δx,Δy)R2)(0<(Δx,Δy)<δ  (1/2)(Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) / (Δx,Δy)2R3/(Δx,Δy)2 ≧ L/2 +R3/(Δx,Δy)2 >0 )
ということは、不等式の最左辺・最右辺に(Δx,Δy))2 (>0)をかけて、
(Δx,Δy)R2)(0<(Δx,Δy)<δ  (1/2)(Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) R3 >0 )
とできる。
つまり、
Vで存在が示された正数δをつかった(Δx,Δy)の範囲に対する制限「0<(Δx,Δy)<δ
を満たす限りで任意の(Δx,Δy)に対して、
   (1/2) (Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) R3 >0
が満たされる。
除外近傍の概念を使って表現すると、((Δx,Δy)U*δ(0,0)) ( (1/2)(Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) R3 >0 )

V. 結論
δを、「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δであるとする。
I-(1)とWより、
 ((Δx,Δy)R2)(0<(Δx,Δy)<δ  f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0)=(1/2)(Δx,Δy)Hf(x0,y0) t(Δx,Δy) R3 >0 )
ということは、不等式の最左辺・最右辺だけに着目すると、
 ((Δx,Δy)R2)(0<(Δx,Δy)<δ  f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0) )

つまり、
  Vで存在が示された正数δをつかった(Δx,Δy)の範囲に対する制限「0<(Δx,Δy)<δ」
  を満たす限りで任意の(Δx,Δy)に対して、
   f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0) 
  が成立する。
以上を、
除外近傍の概念を使って表現すると、
「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δに対して、
 ((Δx,Δy)U*δ(0,0)) (  f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0) )

よって、仮定R1,R2のもとで、
  (δ>0)((Δx,Δy)R2)(0<(Δx,Δy)<δ  f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0) )
  ないし
  (δ>0) ((Δx,Δy)U*δ(0,0)) (  f(x0+Δx, y0+Δy) f(x0, y0) )
が示されたことになる。

(x0+Δx, y0+Δy)を(x,y)と書くと、上記命題は、
  (δ>0)((x,y)R2)(0<(x,y)(x0, y0)<δ   f(x, y) f(x0, y0) )
  ないし
  (δ>0) ((x,y) U*δ(x0,y0)) ( f(x, y) f(x0, y0) )
となるから、
仮定R1,R2のもとで、
(x0,y0)で、f狭義極小である。

[→狭義極小の二階十分条件冒頭へ戻る]

[条件S⇒「点A=(x0,y0)で狭義極小」の証明]

仮定S1: grad f(x0)=
仮定S2:任意の2次元縦ベクトルhに対して、
     2変数関数fx0におけるヘッセ行列Hf(x0) によって定まる二次形 式 Hf(x0)[h] thHf(x0)h>0 
T.
テイラー展開の公式によって、
f(x0+h) f(x0)grad f(x0)h+ (1/2)Hf(x0)[h] R3
とおくと、
  R3  0  ( h 0 )
  かつ 
  R3 / h2  0 ( h 0 )  
が満たされる。
したがって、仮定S1「 grad f(x0)=」より、
   f(x0+h)f(x0) =  (1/2)Hf(x0)[h] R3  …I-(1)
  かつ 
  R3  0  ( h 0 ) …I-(2) 
  かつ 
  R3 / h2  0 ( h 0 )  …I-(3)
が満たされる。

U.
Hf(x0)[h] / h2   
を、hの関数としてみると、
任意の 2次元数ベクトルhに対して、
   Hf(x0)[h]/ h2  最小値Lが存在し[∵単位ベクトル化の二次形式の最大値・最小値定理]、
仮定S2より、
 L>0
を満たす。
つまり、
h )( h  Hf(x0)[h] / h2 ≧>0)

なお、
ノルムの定義より、
   h  h=0  
だから、
h )( h  Hf(x0)[h] / h2 ≧>0)
と言っても同じことである。

* * * * * *
別様に書くと、
R2上の点集合D={hR2|h}={hR2|h} (∵ノルムの定義: h  h=0 )
において、
Hf(x0)[h] /h2 最 大値Lが存在し、L>0
つまり、
h D)(Hf(x0)[h] /h2 ≧>0)

V.  [ I-(3)を分析、Uに統合 ]
・I-(3)「R3 / h2  0 ( h 0 ) 」 
 を、極限の定義に遡って書き下すと、
   (ε>0)(δ>0)( h )(0<h<δ  | R3/{h2|<ε )
 これは、実質的には、
   (ε>0)(δ>0)(hR2)(0<h<δ  | R3/h2|<ε )
   除外近傍の概念を使うと、
   ( ε>0 ) ( δ>0 ) (hR2)( h U*δ(0,0) R3/h2 Uε(0)  ) 
・だから、Uで出てきた
   「Hf(x0)[h] /h2 の {hR2|h≠0}における最小値L (>0)
 から作った正値 L/2 を、εの具体的な値としても、上記命題は成り立つ。
 ε= L/2とすると、上記命題は、以下のようになる。
 「ε= L/2にたいして、ある実数δ>0が存在し、
         (hR2)(0<h<δ  | R3/h2|<ε=L/2 )
  を満たす。」
 除外近傍の概念を使うと、
 「ε=L/2にたいして、ある実数δ>0が存在し、
         (hU*δ(0,0))( R3/h2 Uε=L/2(0)  ) 
 を満たす。」

・つまり、
 Uで出てきた「Hf(x0)[h] /h2 の {hR2|h≠0}における最小値L (>0)に対して、
  (hR2)(0<h<δ  −L/2< R3/h2L/2 )
 を満たす正数δが存在するといえる。
    (δ>0)(hR2)(0<h<δ  −L/2< R3/h2L/2 )

W  [U,I-(3)→Vから、I-(1)右辺への示唆]

δを、「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δであるとする。
U,Vより、
hR2)(0<h<δ  (1/2)Hf(x0)[h]  /h2R3/h2 ≧ L/2 +R3/h2 >0 )
ということは、不等式の最左辺・最右辺にh2 (>0)をかけて、
hR2)(0<h<δ  (1/2)Hf(x0)[h]R3 >0 )
とできる。
つまり、
Vで存在が示された正数δをつかったhの範囲に対する制限「0<h<δ」
を満たす限りで任意のhに対して、
   (1/2)Hf(x0)[h]R3>0
が満たされる。
除外近傍の概念を使って表現すると、(hU*δ(0,0)) ( (1/2)Hf(x0)[h] R3 >0 )

V. 結論
δを、「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δであるとする。
I-(1)とWより、
 (hR2)(0<h<δ  f(x0+h)f(x0)(1/2)Hf(x0)[h] R3 >0 )
ということは、不等式の最左辺・最右辺だけに着目すると、
 (hR2)(0<h<δ  f(x0+h)f(x0)>0 )

つまり、
  Vで存在が示された正数δをつかったhの範囲に対する制限「0<h<δ」
  を満たす限りで任意のhに対して、
   f(x0+h)f(x0)  
  が成立する。
以上を、
除外近傍の概念を使って表現すると、
「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δに対して、
 (hU*δ(0,0)) (  f(x0+h)f(x0)  )

よって、仮定S1,S2のもとで、
  (δ>0)(hR2)(0<h<δ  f(x0+h)f(x0)  )
  ないし
  (δ>0) (hU*δ(0,0)) ( f(x0+h)f(x0) )
が示されたことになる。

x0+hxと書くと、上記命題は、
  (δ>0)(xR2)(0<xx0<δ  f(x)f(x0) )
  ないし
  (δ>0) (x U*δ(x0))  ( f(x)f(x0) )
となるから、
仮定S1,S2のもとで、
x0は、f狭義極小である。


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2変数関数の鞍点の二階十分条件the second-order sufficient condition
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[文献]

*黒田『微分積分学』定理8.16(pp.310-2):ヘッセ行列不使用
*高橋『微分と積分2』 §3.3(p.83-4):ヘッセ行列不使用.2変数2次形式から。
・松坂『解析入門3』14.3-D定理3(p.173):
      2変数関数。ヘッセ行列不使用。
・小林『続微分積分読本―多変数』1章10-定理1(p.59):
      2変数関数。ヘッセ行列不使用。
・小島『ゼロから学ぶ微分積分』4章(pp.164-5):
      2変数関数。ヘッセ行列不使用。
・笠原『微分積分学』6.1定理6.5(p.192):
      2変数関数。ヘッセ行列の符号。






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n変数関数の極大極小


Chiang, Fundamental Methods of Mathematical Economics: Third Edition, McGraw Hill,1984,pp.307-337. 奥行きが深い説明。


(reference)

小形正男『理工系数学のキーポイント7:多変数の微分積分』岩波書店、1996、pp. 74-84. お奨め。判定条件の導出はテイラー展開してHessianに突っ込む。
高橋陽一郎『岩波講座現代数学への入門:微分と積分2』 岩波書店、1995年、pp.78-91;98-105; お奨め。奥行きが深い説明。2変数関数ではテイラー展開みたいなものをみせて、判別式の符号で判定。n変数関数への拡張をとおして、ヘッセ行列が登場、その2次形式の符号で正定値行列うんぬんを見、結論がでる。
高木貞治『解析概論 改訂第三版』岩波書店、1983年、pp. 67-73.
小林道正『Mathematicaによる微積分』朝倉書店、1995年、pp.169-176. 木貞二の説明と同一。
神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、pp.269-285.いきなりn変数関数。ヘッセ行列はでてこない。2次形式。
Chiang, Fundamental Methods of Mathematical Economics: Third Edition, McGraw Hill,1984,pp.307-337. 奥行きが深い説明。おそらく、一番丁寧で詳しい。
杉浦光夫『解析入門』岩波書店、1980年、p.92;149-161.詳しいが難解。ほかのテキストに眼を通し終えてから読むとよい。
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年。pp.175-178. 必要な定義・証明だけを過不足なく。判定条件の導出はテイラー展開して。Hessianとか2次形式とかは表に出さない。
和達三樹『理工系の数学入門コース1:微分積分』岩波書店、1988年、pp. 130-133.ざっと理解するにはよいのでは。ただ、奥行きがなく広がっていかない。判定条件の導出はテイラー展開して。Hessianとか2次形式とかは表に出さない。
矢野健太郎・田代嘉宏『社会科学者のための基礎数学 改訂版』裳華房、pp.93-95.結果だけ簡潔に。
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、p.162。結果だけ簡潔に。

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