n変数関数の極値問題  ― トピック一覧

 ・定義: 広義の極小点/広義の極小値/狭義の極小点/狭義の極小値/広義の極大点/広義の極大値/狭義の極大点/狭義の極大値/
      広義の極値/狭義の極値/臨界点/臨界値/鞍点・峠点
 ・定理:極大極小の1階の必要条件/極大の2階必要条件/極小の2階必要条件/極大の2階十分条件/極小の2階十分条件 

極値問題関連ページ:1変数関数の極大極小/2変数関数の極値問題  
n変数関数の微分関連ページ: 偏微分/高次の偏微分/微分演算子/全微分/
n変数関数の微分の応用関連:合成関数の微分極値問題陰関数定理逆関数定理/テイラーの定理/ラグランジュ未定乗数法
総目次 

   

定理:n変数関数の極大極小の1階の必要条件



次の命題P,命題Qについて、
   命題Pが成り立つならば、命題Qが成り立つ。
   すなわち、命題P命題Q
  
命題Pn変数実数値関数fA=(a1,a2,…,an)で極小または極大
    すなわち、
      (ε>0) (PUε(A) ) ( f (P)f (A) )
      または (ε>0) (PUε(A) ) (f (P)f (A) )  

命題QAは、n変数実数値関数f臨界点である。
    すなわち、
      grad f (a1,a2,…,an)=(0,0,…0)


[文献−数学]
・『岩波数学辞典』333L(p.986)
*松坂『解析入門3』14.3-A定理1(p.164)
・黒田『21世紀の数学1:微分積分学』定理8.15(p.307)
*杉浦『解析入門1』U§8定理8.1(p.150)

[文献−数理経済]
・岡田『経済学・経営学のための数学』3.3定理3.4(p.123)
・入谷久我『数理経済学入門』定義7.7(p.173).
*神谷浦井『経済学のための数学入門』7.3.2(pp.271-5)
*西村和雄『経済数学早分かり』3章4.1(p.133)
・西村清彦『経済学のための最適化理論入門』2.2.1(p.43)

   
   

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定理:n変数関数の極大の2階必要条件


n変数実数値関数fA=(a1,a2,…,an)極大ならば
下記の
同値な条件P,Q,Rが満たされる。
すなわち、

 条件
P条件Q条件R
 であって、 
 (ε>0) (PUε(A) ) (f (P)f (A) )  条件P,Q,R


[文献−数学:未確認]
*松坂『解析入門3』14.3-A定理1(p.164)
・黒田『21世紀の数学1:微分積分学』定理8.15(p.307)
*杉浦『解析入門1』U§8定理8.1(p.150)

[文献−数理経済]
・岡田『経済学・経営学のための数学』3.3定理3.5;3.7(p.124;126)
・入谷久我『数理経済学入門』定理7.7(p.173).
・神谷浦井『経済学のための数学入門』定理7.3.3(p.275)
*西村和夫『経済数学早分かり』3章定理4.1(p.136)

 
 

[条件P :2次形式・行列を持ち出さない表現]
任意の(h1,h2,…,hn)≠(0,0,…,0)に対して、
 Q(h1,h2,…,hn)
   =
     
     :
     …
 が非正値。

   すなわち、任意の(h1,h2,…,hn)≠(0,0,…,0)に対して、
           

 

[条件Q :負値定符号2次形式を持ち出す表現]
A=(a1,a2,…,an)における n変数実数値関数fヘッセ行列Hf(a1,a2,…,an)によって定まる二次形式
半負値定符号  
すなわち、
任意の n次元数ベクトルh= (h1,h2,…,hn)≠(0,0,…,0)に対して、
      二次形式 thHf(a1,a2,…,an)h≦0 

 
 

[条件R :ヘッセ行列と負値定符号行列を持ち出す表現]
A=(a1,a2,…,an)における n変数実数値関数fヘッセ行列Hf(a1,a2,…,an)非正値定符号行列
   すなわち、
   任意の n次元数ベクトルh= (h1,h2,…,hn)≠(0,0,…,0)に対して、
      二次形式 thHf(a1,a2,…,an)h≦0 

 
     

   
   

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定理:n変数関数の極小の2階必要条件


n変数実数値関数fA=(a1,a2,…,an)で極小ならば
下記の同値な条件P,Q,Rが満たされる
すなわち、
 (ε>0) (PUε(A) ) (f (P)f (A) )  条件P,Q,R
 であって、
 条件P条件Q条件R 


[文献−数学:未確認]
*松坂『解析入門3』14.3-A定理1(p.164)
・黒田『21世紀の数学1:微分積分学』定理8.15(p.307)
*杉浦『解析入門1』U§8定理8.1(p.150)

[文献−数理経済]
・岡田『経済学・経営学のための数学』3.3定理3.5;3.7(p.124;126)
・入谷久我『数理経済学入門』定理7.7(p.173).
・神谷浦井『経済学のための数学入門』定理7.3.3(p.275)
*西村和夫『経済数学早分かり』3章定理4.1(p.136)

 

[条件P :2次形式・行列を持ち出さない表現]
任意の(h1,h2,…,hn)≠(0,0,…,0)に対して、
Q(h1,h2,…,hn)
 =
  
  :
  
が非負値。

すなわち、任意の(h1,h2,…,hn)≠(0,0,…,0)に対して、
           

 

[条件Q :負値定符号2次形式を持ち出す表現]
A=(a1,a2,…,an)におけるn変数実数値関数fヘッセ行列Hf(a1,a2,…,an)によって定まる二次形式半正値定符号  
すなわち、任意のn次元数ベクトルh=(h1,h2,…,hn)≠(0,0,…,0)に対して、二次形式 thHf(a1,a2,…,an)h≧0 

 
 

[条件R :ヘッセ行列と負値定符号行列を持ち出す表現]
A=(a1,a2,…,an)におけるn変数実数値関数fのヘッセ行列Hf(a1,a2,…,an)非負値定符号行列
すなわち、任意の n次元数ベクトルh=(h1,h2,…,hn)≠(0,0,…,0)に対して、二次形式 thHf(a1,a2,…,an)h≧0 

 

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定理:n変数関数の狭義極大の2階十分条件


cf. 2変数関数の狭義極大の2階十分条件

定理


下記の同値な条件Q,R,S,T,Uが満たされるならば
n変数実数値関数fA=(a1,a2,…,an)で狭義極大
すなわち、
 条件Q条件R条件S条件T条件U
 であって、
 条件Q,R,S,T,U
    (ε>0) (PU*εA ) (f(P)f(A) )

[文献−数学]
・『岩波数学辞典』333L(p.986)
*松坂『解析入門3』14.3-A定理2(p.169): 2次形式。
*松坂『解析入門4』18.2-G定理4(p.111):ヘッセ行列の正負。
・高橋『微分と積分2』 定理3.29(p.85):ヘッセ行列の正負。
*黒田『微分積分学』定理8.18(p.314):ヘッセ行列固有値
*杉浦『解析入門1
  U§8定理8.4(p.158): 2次形式の正負。
   定理8.4系(p.159): ヘッセ行列の固有値→行列式
・小島『ゼロから学ぶ微分積分』4章(p.164)


[文献−数理経済]
*岡田『経済学・経営学のための数学』3.3定理3.6(p.125)
・入谷久我『数理経済学入門』定理7.8(p.174).
*神谷浦井『経済学のための数学入門』定理7.3.4(p.276) :ヘッセ行列の正負
*西村和夫『経済数学早分かり』3章定理4.1(p.136);定理4.4(p.141)

  [条件Q:2次形式・行列を持ち出さない表現]
Q1: A=(a1,a2,…,an)は、 n変数実数値関数f臨界点
   すなわち、 grad f (a1,a2,…,an)=(0,0,…,0)
かつ
Q2: 任意の(h1,h2,…,hn)≠(0,0,…,0)に対して、
   Q(h1,h2,…,hn)   
    =
     
      :
     …
   がマイナスになる。
   すなわち、任意の(h1,h2,…,hn)≠(0,0,…,0)に対して、
           
 ※条件Q⇒「点A=(a1,a2,…,an)で狭義極大」の証明
 ※「条件Q2⇔条件R2⇔条件S2」の証明   


[文献]
・岡田『経済学・経営学のための数学』3.3定理3.6(p.125)
・西村和夫『経済数学早分かり』3章定理4.1(p.136);

 

[条件R :ヘッセ行列と負値定符号2次形式を持ち出す表現]
R1: (a1,a2,…,an)は、n変数実数値関数f臨界点
   すなわち、 grad f (a1,a2,…,an)=
かつ
R2: (a1,a2,…,an)における n変数実数値関数fヘッセ行列Hf(a1,a2,…,an)によって定まる二次形式
   負値定符号  
   すなわち、
   任意の n次元数ベクトル(h1,h2,…,hn)≠(0,0,…,0)に対して、
      二次形式(h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) <0 
 ※条件R⇒「点A=(a1,a2,…,an)で狭義極大」の証明   
 ※「条件Q2⇔条件R2⇔条件S2」の証明 

[文献]
・『岩波数学辞典』333L(p.986)
・松坂『解析入門3』14.3-A定理2(p.169):行列を用いない2次形式。
・杉浦『解析入門1』U§8定理8.4(p.158) : 行列を用いない2次形式の正負
・松坂『解析入門3』14.3-A定理2(p.169): 2次形式。

 

[条件S :ヘッセ行列と負値定符号行列を持ち出すベクトル行列表現]
S1: a=(a1,a2,…,an)は、n変数実数値関数f臨界点
   すなわち、 grad f (a)=(0,0,…,0)
かつ
S2: a=(a1,a2,…,an)におけるn変数実数値関数fヘッセ行列Hf(a)負値定符号行列
   すなわち、
   任意のn次元縦ベクトルhに対して、
      二次形式 thHf(a)h<0 
 ※条件S⇒「点A=(a1,a2,…,an)で狭義極大」の証明  
 ※「条件Q2⇔条件R2⇔条件S2」の証明  


[文献]
・松坂『解析入門4』18.2-G定理4(p.111):
・高橋『微分と積分2』 定理3.29(p.85):
・岡田『経済学・経営学のための数学』3.3定理3.6(p.126)

 

[条件T :ヘッセ行列の固有値を持ち出す表現]
T1: A=(a1,a2,…,an)は、 n変数実数値関数f臨界点
   すなわち、 grad f (a1,a2,…,an)=(0,0,…0)
かつ
T2: A=(a1,a2,…,an)における n変数実数値関数fヘッセ行列Hf(a1,a2,…,an) の全ての固有値が負。

 条件S条件Tなのは、なぜ? →負値定符号行列になるための必要十分条件〜固有値に関連して   


[文献]
・黒田『微分積分学』定理8.18(p.314):ヘッセ行列固有値

 

[条件U :ヘッセ行列の主小行列を持ち出す表現]
U1: A=(a1,a2,…,an)は、 n変数実数値関数f臨界点
   すなわち、 grad f (a1,a2,…,an)=(0,0,…0)
かつ
U2:「A=(a1,a2,…,an)におけるn変数実数値関数fヘッセ行列Hf(a1,a2,…,an) 」の、
    以下にあげる主小行列D1,D2,…,Dnのうち、
      奇数番が付いたD1,D3,D5,…の行列式がどれもマイナス、
      偶数番が付いたD2,D4,D6,…の行列式がどれもプラス。
    つまり、(-1)kdet Dk >0  ( k = 1,2,…,n ) 

[文献]
・黒田『微分積分学』定理8.19(p.315).
・杉浦『解析入門1』U§8定理8.4系(p.159) : ヘッセ行列の小行列式
・西村和夫『経済数学早分かり』3章定理4.4(p.141)


     ・D1:『A=(a1,a2,…,an)におけるn変数実数値関数fnnヘッセ行列Hf(a1,a2,…,an)から、同じ番号の行・列を、後から(n−1)個潰してできた1行1列の主小行列
         すなわち、D1
     ・D2:『A=(a1,a2,…,an)におけるn変数実数値関数fnnヘッセ行列Hf(a1,a2,…,an)から、同じ番号の行・列を、後から(n−2)個潰してできた2行2列の主小行列
         すなわち、D2
     ・D3:『A=(a1,a2,…,an)におけるn変数実数値関数fnnヘッセ行列Hf(a1,a2,…,an)から、同じ番号の行・列を、後から(n−3)個潰してできた3行3列の主小行列
         すなわち、D3 
     :
     ・Dn-1:『A=(a1,a2,…,an)におけるn変数実数値関数fnnヘッセ行列Hf(a1,a2,…,an)から、同じ番号の行・列を、後から1個潰してできた(n−1)行(n−1)列の主小行列
         すなわち、Dn-1     
     ・Dn:『A=(a1,a2,…,an)におけるn変数実数値関数fnnヘッセ行列Hf(a1,a2,…,an)から、同じ番号の行・列を、後から0個潰してできたn行列の主小行列
         すなわち、DnHf(a1,a2,…,an) 
 条件S条件Uとなるのは、なぜ? → 負値定符号行列になるための必要十分条件〜主小行列式に関連して 


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証明

[条件Q2条件R2条件S2の証明]
 n次元縦ベクトルht(h1,h2,…,hn)とすると、
  thHf(a)h=(h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn)

      =
      =
              ∵行列積の定義 
      =
       
        :
       …  
               ∵横ベクトルと縦ベクトルとの積の定義  




証明


[条件Qn変数実数値関数fA=(a1,a2,…,an)で狭義極大」]
仮定Q1: grad f (a1,a2,…,an)=(0,0,…,0)
仮定Q2:任意の(h1,h2,…,hn)≠(0,0,…,0)に対して、Q(h1,h2,…,hn)<0

多変数テイラー定理/その誤差項のオーダー 
[文献]
・松坂『解析入門3』14.3-A定理2(p.170)
・岡田『経済学・経営学のための数学』3.3定理3.8(p.126):テイラーの定理と連続性から。不十分。

    ただし、
    
 Q(h1,h2,…,hn)
     =
       
        +…
        :
        …
T.

テイラー展開の公式によって、
 f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn)= f (a1,a2,…,an)gradf(a1,a2,…,an)(h1,h2,…,hn)+(1/2)Q(h1,h2,…,hn)+R3       
とおくと、
   R3  0  ( (h1,h2,…,hn) 0 )
  かつ 
   R3 / (h1,h2,…,hn)2  0 ( (h1,h2,…,hn) 0 )  
が満たされる。
したがって、ここでは、
仮定Q1「grad f (a1,a2,…,an)=(0,0,…,0)」より、
  f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn)f (a1,a2,…,an)=(1/2)Q(h1,h2,…,hn)+R3  …I-(1)  
  かつ 
   R3  0  ( (h1,h2,…,hn) 0 )   …I-(2) 
  かつ 
   R3 / (h1,h2,…,hn)2  0 ( (h1,h2,…,hn) 0 )  …I-(3)
が満たされる。
 
U.

任意の非零n次元数ベクトル(h1,h2,…,hn)≠(0,0,…,0)に対して、
  Q(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2
を、(h1,h2,…,hn)の関数としてみると、
   Q(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2  最 大値Lが存在し[∵下記理由]、
仮定Q2より、
L<0
を満たす。
つまり、
(h1,h2,…,hn) )( (h1,h2,…,hn)≠(0,0,…,0)  Q(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2<0

なお、
ノルムの定義より、
   (h1,h2,…,hn)(0,0,…,0)  (h1,h2,…,hn)‖=0  
だから、
(h1,h2,…,hn) )( (h1,h2,…,hn)≠0  Q(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2L<0)
と言っても同じことである。

* * * * * *
別様に書くと、
Rn上の点集合
 D{(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)(0,0,…,0)}{(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)≠0} (∵ノルムの定義: (h1,h2,…,hn)(0,0,…,0)  (h1,h2,…,hn)‖=0 )
において、
Q(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2  最 大値Lが存在し、L<0
つまり、
(h1,h2,…,hn) D)(Q(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2L<0)


* * * * * *
Q(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2最 大値L」の存在証明:最大値最小値定理から。 

 Q(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2

 = 
       
        +…
         :
         …  (h1,h2,…,hn)2
 = 
     
      +…
       :
       …

 = 
     
      +…
       :
       … 
 = 
    
     +…
      :
      …
 すると、Q(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2 は、
     n変数n値ベクトル値関数φ(h1,h2,…,hn)=(h1/ (h1,h2,…,hn) ,h2/ (h1,h2,…,hn) ,…,hn/ (h1,h2,…,hn) )
     と
     n変数実数値関数
      ψ(h'1,h'2,…,h'n)=
               
                +…
                 :
                 …
    との合成関数
 である。
  つまり、
    Q(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2ψ( φ(h1,h2,…,hn) )   
φ(h1,h2,…,hn) とは、(h1,h2,…,hn) の単位ベクトル化に他ならないから、
 任意の非零n次元数ベクトル(h1,h2,…,hn)≠(0,0,…,0)に対して、 φ(h1,h2,…,hn) =1を満たす。  
 つまり、
 定義域D{(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)(0,0,…,0)}{(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)≠0} に対して、
 φ(h1,h2,…,hn)=(h1/ (h1,h2,…,hn) ,h2/ (h1,h2,…,hn) ,…,hn/ (h1,h2,…,hn) )の値域は、   
       {(h'1,h'2,…,h'n)Rn|(h'1,h'2,…,h'n) =1 } 
 これは、要するに、原点を中心とする半径1のn次元球体の表面である。
{(h'1,h'2,…,h'n)Rn|(h'1,h'2,…,h'n) =1 } は、有界な閉集合であって、      
  ψ( h'1,h'2,…,h'n ) は、{(h'1,h'2,…,h'n)Rn|(h'1,h'2,…,h'n) =1 } で連続∵二次形式で定義される多変数関数は連続)。 
 したがって、最大値最小値定理より、
 {(h'1,h'2,…,h'n)Rn|(h'1,h'2,…,h'n) =1 } におけるψ( h'1,h'2,…,h'n )最大値最小値が存在する。 
・上記二点をあわせて考えると、
  合成関数 ψ( φ(h1,h2,…,hn) ) は、
   D{(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)(0,0,…,0)}{(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)≠0} において、
  最大値最小値を有す
 と結論できる。            

V.  [ I-(3)を分析、Uに統合 ]

・I-(3)「 R3 / (h1,h2,…,hn)2  0 ( (h1,h2,…,hn) 0 ) 」 
 を、極限の定義に遡って書き下すと、
   (ε>0)(δ>0)((h1,h2,…,hn)Rn )(0<(h1,h2,…,hn)<δ  | R3/(h1,h2,…,hn)2|<ε )
   除外近傍の概念を使うと、
   ( ε>0 ) ( δ>0 ) ((h1,h2,…,hn)Rn )( (h1,h2,…,hn) U*δ(0) R3/(h1,h2,…,hn)2 Uε(0)  ) 
・だから、Uで出てきた
   「Q(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2 の {(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)≠0}における最 大値L(<0)
 から作った正値 |L/2|を、εの具体的な値としても、上記命題は成り立つ。
 ε= |L/2|とすると、上記命題は、以下のようになる。
 「ε= |L/2|にたいして、ある実数δ>0が存在し、
         ((h1,h2,…,hn)Rn )(0<(h1,h2,…,hn)<δ  | R3/(h1,h2,…,hn)2|<ε=|L/2|
  を満たす。」
 除外近傍の概念を使うと、
 「ε=|L/2|にたいして、ある実数δ>0が存在し、
         ((h1,h2,…,hn)U*δ(0,0,…,0) )( R3/(h1,h2,…,hn)2 Uε=|L/2|(0)  ) 
 を満たす。」
・つまり、
 Uで出てきた「Q(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2 の{(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)≠0}における最大値L(<0)に対して、
  ((h1,h2,…,hn)Rn)(0<(h1,h2,…,hn)<δ  L/2< R3/(h1,h2,…,hn)2<−L/2 )
 を満たす正数δが存在するといえる。
    (δ>0)((h1,h2,…,hn)Rn )(0<‖(h1,h2,…,hn)<δ  L/2< R3/(h1,h2,…,hn)2<−L/2 )

W  [U,I-(3)→Vから、I-(1)右辺への示唆]

δを、「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δであるとする。
U,Vより、
(h1,h2,…,hn)Rn )(0<‖(h1,h2,…,hn)<δ  (1/2)Q(h1,h2,…,hn)  /(h1,h2,…,hn)2R3/(h1,h2,…,hn)2L/2 +R3/(h1,h2,…,hn)2 <0 )
ということは、不等式の最左辺・最右辺に(h1,h2,…,hn))2 (>0)をかけて、
(h1,h2,…,hn)Rn )(0<‖(h1,h2,…,hn)<δ  (1/2)Q(h1,h2,…,hn)+R3 <0 )
とできる。
つまり、
Vで存在が示された正数δをつかった(h1,h2,…,hn)の範囲に対する制限「0<(h1,h2,…,hn)<δ」
を満たす限りで任意の(h1,h2,…,hn)に対して、
   (1/2)Q(h1,h2,…,hn)+R3 <0
が満たされる。
除外近傍の概念を使って表現すると、((h1,h2,…,hn)U*δ(0)) ( (1/2)Q(h1,h2,…,hn)+R3 <0 )

V. 結論
δを、「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δであるとする。
I-(1)とWより、
 ((h1,h2,…,hn)Rn )(0<(h1,h2,…,hn)<δ  f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn)− f (a1,a2,…,an)(1/2)Q(h1,h2,…,hn)+R3 <0 
ということは、不等式の最左辺・最右辺だけに着目すると
 ((h1,h2,…,hn)Rn )(0<(h1,h2,…,hn)<δ  f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn) f (a1,a2,…,an) 

つまり、
  Vで存在が示された正数δをつかった(h1,h2,…,hn)の範囲に対する制限「0<(h1,h2,…,hn)<δ
  を満たす限りで任意の(h1,h2,…,hn)に対して、
   f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn)f (a1,a2,…,an)  
  が成立する。
以上を、
除外近傍の概念を使って表現すると、
「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δに対して、
 (h1,h2,…,hn)U*δ(0)) (  f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn)f (a1,a2,…,an) )

よって、仮定Q1,Q2のもとで、
  (δ>0)((h1,h2,…,hn)Rn )(0<‖(h1,h2,…,hn)<δ  f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn) f (a1,a2,…,an) )
  ないし
  (δ>0) ((h1,h2,…,hn)U*δ(0)) (  f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn)f (a1,a2,…,an) )
が示されたことになる。

(a1+h1,a2+h2,…,an+hn)を(x1,x2,…,xn)と書くと、上記命題は、
  (δ>0)((x1,x2,…,xn)Rn )(0<(x1,x2,…,xn)(a1,a2,…,an)<δ  f (x1,x2,…,xn) f (a1,a2,…,an) )
  ないし
  (δ>0) ((x1,x2,…,xn) U*δ(a1,a2,…,an)) (f (x1,x2,…,xn)f (a1,a2,…,an) )
となるから、
仮定Q1,Q2のもとで、
A=(a1,a2,…,an)は、f狭義の極大点である。




「狭義極大の2階十分条件」冒頭へ戻る 


証明


[条件Rn変数実数値関数f(a1,a2,…,an)で狭義極大]
仮定R1: grad f (a1,a2,…,an)=(0,0,…,0)
仮定R2: 任意のn次元数ベクトル (h1,h2,…,hn)≠(0,0,…,0)に対して、
                     二次形式  (h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) <0 

T.
テイラー展開の公式によって、
 f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn)= f (a1,a2,…,an)gradf(a1,a2,…,an)(h1,h2,…,hn)+(1/2) (h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn)R3       
とおくと、
   R3  0  ( (h1,h2,…,hn) 0 )
  かつ 
   R3 / (h1,h2,…,hn)2  0 ( (h1,h2,…,hn) 0 )  
が満たされる。
したがって、ここでは、
仮定R1「grad f (a1,a2,…,an)=(0,0,…,0)」より、
  f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn)f (a1,a2,…,an)=(1/2) (h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn)R3  …I-(1)  
  かつ 
   R3  0  ( (h1,h2,…,hn) 0 )   …I-(2) 
  かつ 
   R3 / (h1,h2,…,hn)2  0 ( (h1,h2,…,hn) 0 )  …I-(3)
が満たされる。

U.
任意の非零n次元数ベクトル(h1,h2,…,hn)≠(0,0,…,0)に対して、
  (h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2
を、(h1,h2,…,hn)関数としてみると、
   (h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2  最大値Lが存在し[∵単位ベクトル化の二次形式の最大値・最小値定理]、
仮定R2より、
L<0
を満たす。
つまり、
(h1,h2,…,hn) )( (h1,h2,…,hn)(0,0,…,0)  (h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2L<0

なお、
ノルムの定義より、
   (h1,h2,…,hn)(0,0,…,0)  (h1,h2,…,hn)=0  
だから、
(h1,h2,…,hn) )( (h1,h2,…,hn)≠0  (h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2L<0)
と言っても同じことである。  
* * * * * *
別様に書くと、
Rn上の点集合
 D{(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)(0,0,…,0)}{(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)≠0} 
          (∵ノルムの定義: (h1,h2,…,hn)(0,0,…,0)  (h1,h2,…,hn)‖=0 )
において、
(h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2  最大値Lが存在し、L<0
つまり、
(h1,h2,…,hn) D)((h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2L<0)

V.  [ I-(3)を分析、Uに統合 ]
・I-(3)「 R3 / (h1,h2,…,hn)2  0 ( (h1,h2,…,hn) 0 ) 」 
 を、極限の定義に遡って書き下すと、
   (ε>0)(δ>0)((h1,h2,…,hn)Rn )(0<(h1,h2,…,hn)<δ  | R3/(h1,h2,…,hn)2|<ε )
   除外近傍の概念を使うと、
   ( ε>0 ) ( δ>0 ) ((h1,h2,…,hn)Rn )( (h1,h2,…,hn) U*δ(0) R3/(h1,h2,…,hn)2 Uε(0)  ) 
・だから、Uで出てきた
 「(h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn)/ (h1,h2,…,hn)2 の {(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)≠0}における最大値L(<0)
 から作った正値 |L/2|を、εの具体的な値としても、上記命題は成り立つ。
 ε= |L/2|とすると、上記命題は、以下のようになる。
 「ε= |L/2|にたいして、ある実数δ>0が存在し、
         ((h1,h2,…,hn)Rn )(0<(h1,h2,…,hn)<δ  | R3/(h1,h2,…,hn)2|<ε= |L/2|
  を満たす。」
 除外近傍の概念を使うと、
 「ε= |L/2|にたいして、ある実数δ>0が存在し、
         ((h1,h2,…,hn)U*δ(0) )( R3/(h1,h2,…,hn)2 Uε=|L/2|(0)  ) 
 を満たす。」
・つまり、
 Uで出てきた「(h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2 の{(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)≠0}における最大値L(<0)に対して、
  ((h1,h2,…,hn)Rn)(0<(h1,h2,…,hn)<δ  L/2< R3/(h1,h2,…,hn)2<−L/2 )
 を満たす正数δが存在するといえる。
    (δ>0)((h1,h2,…,hn)Rn )(0<‖(h1,h2,…,hn)<δ  L/2< R3/(h1,h2,…,hn)2<−L/2 )

W  [U,I-(3)→Vから、I-(1)右辺への示唆]

δを、「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δであるとする。
U,Vより、
(h1,h2,…,hn)Rn )(0<‖(h1,h2,…,hn)<δ  (1/2)(h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn)   /(h1,h2,…,hn)2R3/(h1,h2,…,hn)2 ≦ L/2 +R3/(h1,h2,…,hn)2 <0 )
ということは、不等式の最左辺・最右辺に(h1,h2,…,hn))2 (>0)をかけて、
(h1,h2,…,hn)Rn )(0<‖(h1,h2,…,hn)<δ  (1/2)(h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) R3 <0 )
とできる。
つまり、
Vで存在が示された正数δをつかった(h1,h2,…,hn)の範囲に対する制限「0<(h1,h2,…,hn)<δ
を満たす限りで任意の(h1,h2,…,hn)に対して、
   (1/2) (h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) R3 <0
が満たされる。
除外近傍の概念を使って表現すると、((h1,h2,…,hn)U*δ(0)) ( (1/2)(h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) R3 <0 )

V. 結論
δを、「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δであるとする。
I-(1)とWより、
 ((h1,h2,…,hn)Rn )(0<‖(h1,h2,…,hn)<δ  f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn)− f (a1,a2,…,an) =(1/2)(h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) R3 <0 )
ということは、不等式の最左辺・最右辺だけに着目すると、
 ((h1,h2,…,hn)Rn )(0<‖(h1,h2,…,hn)<δ  f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn) f (a1,a2,…,an) )

つまり、
  Vで存在が示された正数δをつかった(h1,h2,…,hn)の範囲に対する制限「0<(h1,h2,…,hn)<δ」
  を満たす限りで任意の(h1,h2,…,hn)に対して、
   f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn)f (a1,a2,…,an)  
  が成立する。
以上を、
除外近傍の概念を使って表現すると、
「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δに対して、
 ((h1,h2,…,hn)U*δ(0)) (  f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn)f (a1,a2,…,an) )

よって、仮定R1,R2のもとで、
  (δ>0)((h1,h2,…,hn)Rn )(0<‖(h1,h2,…,hn)<δ  f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn) f (a1,a2,…,an) )
  ないし
  (δ>0) ((h1,h2,…,hn)U*δ(0)) (  f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn)f (a1,a2,…,an) )
が示されたことになる。

(a1+h1,a2+h2,…,an+hn)を(x1,x2,…,xn)と書くと、上記命題は、
  (δ>0)((x1,x2,…,xn)Rn )(0<(x1,x2,…,xn)(a1,a2,…,an)<δ  f (x1,x2,…,xn) f (a1,a2,…,an) )
  ないし
  (δ>0) ((x1,x2,…,xn) U*δ(a1,a2,…,an)) (f (x1,x2,…,xn)f (a1,a2,…,an) )
となるから、
仮定R1,R2のもとで、
A=(a1,a2,…,an)は、f狭義の極大点である。

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証明


[条件Sn変数実数値関数fa=(a1,a2,…,an)で狭義極大]
仮定S1: grad f (a)=
仮定S2:任意の n次元数ベクトルh= (h1,h2,…,hn)≠に対して、
      n変数実数値関数faにおけるヘッセ行列Hf(a)によって定まる二次形式 Hf(a)[h] thHf(a)h<0 

T.
テイラー展開の公式によって、
f (a+h)= f (a)gradf(a)h+(1/2)Hf(a)[h] R3  
とおくと、
  R3  0  ( h 0 )
  かつ 
  R3 / h2  0 ( h 0 )  
が満たされる。
したがって、仮定S1「grad f (a)=」より、
   f (a+h)f (a) =  (1/2)Hf(a)[h] R3  …I-(1)
  かつ 
  R3  0  ( h 0 ) …I-(2) 
  かつ 
  R3 / h2  0 ( h 0 )  …I-(3)
が満たされる。

U.
Hf(a)[h] / h2   
を、hの関数としてみると、
任意の n次元数ベクトルh= (h1,h2,…,hn)≠に対して、
   Hf(a)[h] / h2  最大値Lが存在し[∵単位ベクトル化の二次形式の最大値・最小値定理]、
仮定S2より、
 L<0
を満たす。
つまり、
h )( h  Hf(a)[h] / h2 ≦<0)

なお、
ノルムの定義より、
   h  h=0  
だから、
h )( h  Hf(a)[h] / h2 ≦L <0)
と言っても同じことである。

* * * * * *
別様に書くと、
Rn上の点集合D={hRn|h}={hRn|h} (∵ノルムの定義: h  h=0 )
において、
Hf(a)[h] /h2 最大値Lが存在し、L<0
つまり、
h D)(Hf(a)[h] /h2 ≦L <0)

V.  [ I-(3)を分析、Uに統合 ]
・I-(3)「R3 / h2  0 ( h 0 ) 」 
 を、極限の定義に遡って書き下すと、
   (ε>0)(δ>0)(hRn )(0<h<δ  | R3/h2|<ε )
   除外近傍の概念を使うと、
   ( ε>0 ) ( δ>0 ) (hRn )( h U*δ(0) R3/h2 Uε(0)  ) 
・だから、Uで出てきた
   「Hf(a)[h] / h2 の {hRn|h≠0}における最大値L (<0)
 から作った正値 |L/2| を、εの具体的な値としても、上記命題は成り立つ。
 ε= |L/2|とすると、上記命題は、以下のようになる。
 「ε= |L/2|にたいして、ある実数δ>0が存在し、
         (hRn )(0<h<δ  | R3/h2|<ε=|L/2|
  を満たす。」
 除外近傍の概念を使うと、
 「ε=|L/2|にたいして、ある実数δ>0が存在し、
         (hU*δ(0) )( R3/h2 Uε=|L/2|(0)  ) 
 を満たす。」

・つまり、
 Uで出てきた「Hf(a)[h] / h2 の {hRn|h≠0}における最大値L(<0)に対して、
  (hRn)(0<h<δ  L/2< R3/h2<−L/2 )
 を満たす正数δが存在するといえる。
    (δ>0)(hRn )(0<h<δ  L/2< R3/h2<−L/2 )

W  [U,I-(3)→Vから、I-(1)右辺への示唆]

δを、「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δであるとする。
U,Vより、
hRn )(0<h<δ  (1/2)Hf(a)[h]  /h2R3/h2 ≦ L/2 +R3/h2 <0 )
ということは、不等式の最左辺・最右辺にh2 (>0)をかけて、
hRn )(0<h<δ  (1/2)Hf(a)[h] R3 <0 )
とできる。
つまり、
Vで存在が示された正数δをつかったhの範囲に対する制限「0<h<δ」
を満たす限りで任意のhに対して、
   (1/2)Hf(a)[h] R3<0
が満たされる。
除外近傍の概念を使って表現すると、(hU*δ(0)) ( (1/2)Hf(a)[h] R3 <0 )

V. 結論
δを、「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δであるとする。
I-(1)とWより、
 (hRn )(0<h<δ  f (a+h)f (a)(1/2)Hf(a)[h] R3 <0 )
ということは、不等式の最左辺・最右辺だけに着目すると、
 (hRn )(0<h<δ  f (a+h)f (a) <0 )

つまり、
  Vで存在が示された正数δをつかったhの範囲に対する制限「0<h<δ」
  を満たす限りで任意のhに対して、
   f (a+h)f (a)  
  が成立する。
以上を、
除外近傍の概念を使って表現すると、
「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δに対して、
 (hU*δ(0)) (  f (a+h)f (a)  )

よって、仮定S1,S2のもとで、
  (δ>0)(hRn )(0<h<δ  f (a+h)f (a)  )
  ないし
  (δ>0) (hU*δ(0)) ( f (a+h)f (a) )
が示されたことになる。

a+hxと書くと、上記命題は、
  (δ>0)(xRn )(0<xa<δ  f (x) f (a) )
  ないし
  (δ>0) (x) U*δ(a))  ( f (x)f (a) )
となるから、
仮定S1,S2のもとで、
aは、f狭義の極大点である。



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定理:n変数関数の狭義極小の2階十分条件


cf. 2変数関数の狭義極小の2階十分条件



定理



下記の同値な条件Q,R,S,T,Uが満たされるならば
n変数実数値関数fA=(a1,a2,…,an)で狭義極小
すなわち、
 条件Q条件R条件S条件T条件U
 であって、
 条件Q,R,S,T,U
    (ε>0) (PU*εA) (f(P)f(A) )

[文献−数学]
・『岩波数学辞典』333L(p.986)
松坂『解析入門3』14.3-A定理2(p.169): 2次形式。
松坂『解析入門4』18.2-G定理4(p.111):ヘッセ行列の正負。
・高橋『微分と積分2』 定理3.29(p.85):ヘッセ行列の正負。
・黒田『微分積分学』定理8.18(p.314):ヘッセ行列固有値
杉浦『解析入門1
    U§8定理8.4(p.158):2次形式の正負。
       定理8.4系(p.159):ヘッセ行列の固有値→行列式
・小島『ゼロから学ぶ微分積分』4章(p.164)


[文献−数理経済]
岡田『経済学・経営学のための数学』3.3定理3.8(p.126)
神谷浦井『経済学のための数学入門』定理7.3.6(p.278) :ヘッセ行列の正負
西村和夫『経済数学早分かり』3章定理4.1(p.136);定理4.4(p.141)

 

[条件Q :2次形式・行列を持ち出さない表現]
Q1: A=(a1,a2,…,an)は、 n変数実数値関数f臨界点
   すなわち、 grad f (a1,a2,…,an)=(0,0,…,0)
かつ 

[文献]
・岡田『経済学・経営学のための数学』3.3定理3.8(p.126)
・西村和夫『経済数学早分かり』3章定理4.1(p.136);


Q2: 任意の(h1,h2,…,hn)≠(0,0,…,0)に対して、
 Q(h1,h2,…,hn)
   =
     
      :
     …
  
   がプラスになる。
   すなわち、任意の(h1,h2,…,hn)≠(0,0,…,0)に対して、
          
 ※条件Q⇒「fは点A=(a1,a2,…,an)で狭義極小」の証明  
 ※「条件Q2⇔条件R2⇔条件S2」の証明 
 

[条件R :ヘッセ行列と正値定符号行列・正値定符号2次形式を持ち出す表現]
R1: (a1,a2,…,an)は、n変数実数値関数f臨界点
   すなわち、 grad f (a1,a2,…,an)=(0,0,…,0)
かつ
R2:(a1,a2,…,an)におけるn変数実数値関数fヘッセ行列Hf(a1,a2,…,an)正値定符号行列
   別の言い方をすると、
      (a1,a2,…,an)におけるn変数実数値関数fのヘッセ行列Hf(a1,a2,…,an)によって定まる二次形式正値定符号。 
    数式で表すと、
     任意のn次元横ベクトル (h1,h2,…,hn)≠(0,0,…,0)に対して、
                     二次形式  (h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) >0 

 ※条件R⇒「fは点A=(a1,a2,…,an)で狭義極小」の証明  
 ※「条件Q2⇔条件R2⇔条件S2」の証明 

[文献]
・『岩波数学辞典』333L(p.986)
・松坂『解析入門3』14.3-A定理2(p.169):行列を用いない2次形式。
・杉浦『解析入門1』U§8定理8.4(p.158) : 行列を用いない2次形式の正負
・松坂『解析入門3』14.3-A定理2(p.169): 2次形式。

 

[条件S :ヘッセ行列と正値定符号行列を持ち出すベクトル行列表現]
S1: a=(a1,a2,…,an)は、n変数実数値関数f臨界点
   すなわち、 grad f (a)=
かつ
S2: a=(a1,a2,…,an)におけるn変数実数値関数fヘッセ行列Hf(a)正値定符号行列
   すなわち、
   任意のn次元縦ベクトルhに対して、
      二次形式 thHf(a)h>0 

 ※条件S⇒「fは点A=(a1,a2,…,an)で狭義極小」の証明  
 ※「条件Q2⇔条件R2⇔条件S2」の証明 


[文献]
・松坂『解析入門4』18.2-G定理4(p.111):
・高橋『微分と積分2』 定理3.29(p.85)
・岡田『経済学・経営学のための数学』3.3定理3.8(p.127)

 

[条件T :ヘッセ行列の固有値を持ち出す表現]
T1: A=(a1,a2,…,an)は、 n変数実数値関数f臨界点
   すなわち、 grad f (a1,a2,…,an)=(0,0,…,0)
かつ
T2: A=(a1,a2,…,an)におけるn変数実数値関数fヘッセ行列Hf(a1,a2,…,an) の全ての固有値が正。

 条件S条件Tなのは、なぜ? →正値定符号行列になるための必要十分条件〜固有値に関連して   


[文献]
・黒田『微分積分学』定理8.18(p.314):ヘッセ行列固有値

 

[条件U :ヘッセ行列の主小行列を持ち出す表現]
U1: A=(a1,a2,…,an)は、 n変数実数値関数f臨界点
   すなわち、 grad f (a1,a2,…,an)=(0,0,…0)
かつ
U2:「A=(a1,a2,…,an)におけるn変数実数値関数fヘッセ行列Hf(a1,a2,…,an) 」の、
    以下にあげる主小行列D1,D2,…,Dn行列式が、どれも、プラス。
    つまり、det Dk >0  (k=1,2,…,n) 

[文献]
・黒田『微分積分学』定理8.19(p.315).
・西村和夫『経済数学早分かり』3章定理4.4(p.141)
・杉浦『解析入門1』U§8定理8.4系(p.159) : ヘッセ行列の小行列式


     ・D1:『A=(a1,a2,…,an)におけるn変数実数値関数fnnヘッセ行列Hf(a1,a2,…,an)から、同じ番号の行・列を、後から(n−1)個潰してできた1行1列の主小行列
         すなわち、D1
     ・D2:『A=(a1,a2,…,an)におけるn変数実数値関数fnnヘッセ行列Hf(a1,a2,…,an)から、同じ番号の行・列を、後から(n−2)個潰してできた2行2列の主小行列
         すなわち、D2
     ・D3:『A=(a1,a2,…,an)におけるn変数実数値関数fnnヘッセ行列Hf(a1,a2,…,an)から、同じ番号の行・列を、後から(n−3)個潰してできた3行3列の主小行列
         すなわち、D3 
     :
     ・Dn-1:『A=(a1,a2,…,an)におけるn変数実数値関数fnnヘッセ行列Hf(a1,a2,…,an)から、同じ番号の行・列を、後から1個潰してできた(n−1)行(n−1)列の主小行列
         すなわち、Dn-1     
     ・Dn:『A=(a1,a2,…,an)におけるn変数実数値関数fnnヘッセ行列Hf(a1,a2,…,an)から、同じ番号の行・列を、後から0個潰してできたn行列の主小行列
         すなわち、DnHf(a1,a2,…,an)
 条件S条件Uとなるのは、なぜ? → 正値定符号行列になるための必要十分条件〜主小行列式に関連して 
証明

[条件Q2条件R2条件S2の証明]
 n次元縦ベクトルht(h1,h2,…,hn)とすると、
  thHf(a)h=(h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn)

      =
      =
              ∵行列積の定義 
      =
       
        :
       …  
               ∵横ベクトルと縦ベクトルとの積の定義

「狭義極小の2階十分条件」冒頭へ戻る

証明 条件U(ε>0) (PUε(A) ) (f(P)f(A) ) [文献]
・杉浦『解析入門1』U§8定理8.4の証明
証明 [条件Qn変数実数値関数fA=(a1,a2,…,an)で狭義極小]
仮定Q1: grad f (a1,a2,…,an)=(0,0,…,0)
仮定Q2:任意の(h1,h2,…,hn)≠(0,,…,0)に対して、Q(h1,h2,…,hn)>0
[文献]
・松坂『解析入門3』14.3-A定理2(p.170) 完全な証明
・岡田『経済学・経営学のための数学』3.3定理3.8(p.126):テイラーの定理と連続性から。不十分。

    ただし、
    
 Q(h1,h2,…,hn)
     =
       
        +…
        :
        …  

T.

テイラー展開の公式によって、
 f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn)= f (a1,a2,…,an)gradf(a1,a2,…,an)(h1,h2,…,hn)+(1/2)Q(h1,h2,…,hn)+R3       
とおくと、
   R3  0  ( (h1,h2,…,hn) 0 )
  かつ 
   R3 / (h1,h2,…,hn)2  0 ( (h1,h2,…,hn) 0 )  
が満たされる。
したがって、ここでは、
仮定Q1「grad f (a1,a2,…,an)=(0,0,…,0)」より、
  f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn)f (a1,a2,…,an)=(1/2)Q(h1,h2,…,hn)+R3  …I-(1)  
  かつ 
   R3  0  ( (h1,h2,…,hn) 0 )   …I-(2) 
  かつ 
   R3 / (h1,h2,…,hn)2  0 ( (h1,h2,…,hn) 0 )  …I-(3)
が満たされる。
 
U.

任意の非零n次元数ベクトル(h1,h2,…,hn)≠(0,0,…,0)に対して、
  Q(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2
を、(h1,h2,…,hn)の関数としてみると、
   Q(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2  最小値Lが存在し[∵下記理由]、
仮定Q2より、
L>0
を満たす。
つまり、
(h1,h2,…,hn) )( (h1,h2,…,hn)≠(0,0,…,0)  Q(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2≧L>0

なお、
ノルムの定義より、
   (h1,h2,…,hn)(0,0,…,0)  (h1,h2,…,hn)‖=0  
だから、
(h1,h2,…,hn) )( (h1,h2,…,hn)≠0  Q(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2≧L>0)
と言っても同じことである。

* * * * * *
別様に書くと、
Rn上の点集合
 D{(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)(0,0,…,0)}{(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)≠0} (∵ノルムの定義: (h1,h2,…,hn)(0,0,…,0)  (h1,h2,…,hn)‖=0 )
において、
Q(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2  最小値Lが存在し、L>0
つまり、
(h1,h2,…,hn) D)(Q(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2>0)


* * * * * *
Q(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2最小値L」の存在証明:最大値最小値定理から。 

 Q(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2

 = 
       
        +…
         :
         …  (h1,h2,…,hn)2
 = 
     
      +…
       :
       …

 = 
     
      +…
       :
       … 
 = 
    
     +…
      :
      …
 すると、Q(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2 は、
     n変数n値ベクトル値関数φ(h1,h2,…,hn)=(h1/ (h1,h2,…,hn) ,h2/ (h1,h2,…,hn) ,…,hn/ (h1,h2,…,hn) )
     と
     n変数実数値関数
      ψ(h'1,h'2,…,h'n)=
               
                +…
                 :
                 …
    との合成関数
 である。
  つまり、
    Q(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2ψ( φ(h1,h2,…,hn) )   
φ(h1,h2,…,hn) とは、(h1,h2,…,hn) の単位ベクトル化に他ならないから、
 任意の非零n次元数ベクトル(h1,h2,…,hn)≠(0,0,…,0)に対して、 φ(h1,h2,…,hn) =1を満たす。  
 つまり、
 定義域D{(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)(0,0,…,0)}{(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)≠0} に対して、
 φ(h1,h2,…,hn)=(h1/ (h1,h2,…,hn) ,h2/ (h1,h2,…,hn) ,…,hn/ (h1,h2,…,hn) )の値域は、   
       {(h'1,h'2,…,h'n)Rn|(h'1,h'2,…,h'n) =1 } 
 これは、要するに、原点を中心とする半径1のn次元球体の表面である。
{(h'1,h'2,…,h'n)Rn|(h'1,h'2,…,h'n) =1 } は、有界な閉集合であって、      
  ψ( h'1,h'2,…,h'n ) は、{(h'1,h'2,…,h'n)Rn|(h'1,h'2,…,h'n) =1 } で連続∵二次形式で定義される多変数関数は連続)。 
 したがって、最大値最小値定理より、
 {(h'1,h'2,…,h'n)Rn|(h'1,h'2,…,h'n) =1 } におけるψ( h'1,h'2,…,h'n )最大値最小値が存在する。 
・上記二点をあわせて考えると、
  合成関数 ψ( φ(h1,h2,…,hn) ) は、
   D{(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)(0,0,…,0)}{(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)≠0} において、
  最大値最小値を有す
 と結論できる。            

V.  [ I-(3)を分析、Uに統合 ]

・I-(3)「 R3 / (h1,h2,…,hn)2  0 ( (h1,h2,…,hn) 0 ) 」 
 を、極限の定義に遡って書き下すと、
   (ε>0)(δ>0)((h1,h2,…,hn)Rn )(0<(h1,h2,…,hn)<δ  | R3/(h1,h2,…,hn)2|<ε )
   除外近傍の概念を使うと、
   ( ε>0 ) ( δ>0 ) ((h1,h2,…,hn)Rn )( (h1,h2,…,hn) U*δ(0) R3/(h1,h2,…,hn)2 Uε(0)  ) 
・だから、Uで出てきた
   「Q(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2 の {(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)≠0}における最小値L
 から作った正値 L/2 を、εの具体的な値としても、上記命題は成り立つ。
 ε=L/2とすると、上記命題は、以下のようになる。
 「ε=L/2にたいして、ある実数δ>0が存在し、
         ((h1,h2,…,hn)Rn )(0<(h1,h2,…,hn)<δ  | R3/(h1,h2,…,hn)2|<ε=L/2 )
  を満たす。」
 除外近傍の概念を使うと、
 「ε=L/2にたいして、ある実数δ>0が存在し、
         ((h1,h2,…,hn)U*δ(0) )( R3/(h1,h2,…,hn)2 Uε=L/2(0)  ) 
 を満たす。」
・つまり、
 Uで出てきた「Q(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2 の{(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)≠0}における最小値Lに対して、
  ((h1,h2,…,hn)Rn)(0<(h1,h2,…,hn)<δ  −L/2< R3/(h1,h2,…,hn)2L/2 )
 を満たす正数δが存在するといえる。
    (δ>0)((h1,h2,…,hn)Rn )(0<‖(h1,h2,…,hn)<δ  −L/2< R3/(h1,h2,…,hn)2L/2 )
    除外近傍の概念を使うと、
    (δ>0)((h1,h2,…,hn)U*δ(0)) (  R3/(h1,h2,…,hn)2 UL/2(0) )


W  [U,I-(3)→Vから、I-(1)右辺への示唆]

δを、「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δであるとする。
U,Vより、
(h1,h2,…,hn)Rn )(0<‖(h1,h2,…,hn)<δ  (1/2)Q(h1,h2,…,hn)  /(h1,h2,…,hn)2R3/(h1,h2,…,hn)2 ≧ L/2 +R3/(h1,h2,…,hn)2 >0 )
ということは、不等式の最左辺・最右辺に(h1,h2,…,hn))2 (>0)をかけて、
(h1,h2,…,hn)Rn )(0<‖(h1,h2,…,hn)<δ  (1/2)Q(h1,h2,…,hn)+R3 >0 )
とできる。
つまり、
Vで存在が示された正数δをつかった(h1,h2,…,hn)の範囲に対する制限「0<(h1,h2,…,hn)<δ」
を満たす限りで任意の(h1,h2,…,hn)に対して、
   (1/2)Q(h1,h2,…,hn)+R3 >0
が満たされる。
除外近傍の概念を使って表現すると、((h1,h2,…,hn)U*δ(0)) ( (1/2)Q(h1,h2,…,hn)+R3 >0 )


V. 結論
δを、「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δであるとする。
I-(1)とWより、
 ((h1,h2,…,hn)Rn )(0<‖(h1,h2,…,hn)<δ  f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn)− f (a1,a2,…,an) =(1/2)Q(h1,h2,…,hn)+R3 >0 )
ということは、不等式の最左辺・最右辺だけに着目すると、
 ((h1,h2,…,hn)Rn )(0<‖(h1,h2,…,hn)<δ  f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn) f (a1,a2,…,an) )

つまり、
  Vで存在が示された正数δをつかった(h1,h2,…,hn)の範囲に対する制限「0<(h1,h2,…,hn)<δ」
  を満たす限りで任意の(h1,h2,…,hn)に対して、
   f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn) > f (a1,a2,…,an)  
  が成立する。
以上を、
除外近傍の概念を使って表現すると、
「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δに対して、
 ((h1,h2,…,hn)U*δ(0)) (  f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn)f (a1,a2,…,an) )

よって、仮定Q1,Q2のもとで、
  (δ>0)((h1,h2,…,hn)Rn )(0<‖(h1,h2,…,hn)<δ  f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn) f (a1,a2,…,an) )
  ないし
  (δ>0) ((h1,h2,…,hn)U*δ(0)) (  f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn)f (a1,a2,…,an) )
が示されたことになる。

(a1+h1,a2+h2,…,an+hn)を(x1,x2,…,xn)と書くと、上記命題は、
  (δ>0)((x1,x2,…,xn)Rn )(0<(x1,x2,…,xn)(a1,a2,…,an)<δ  f (x1,x2,…,xn) f (a1,a2,…,an) )
  ないし
  (δ>0) ((x1,x2,…,xn) U*δ(a1,a2,…,an)) (f (x1,x2,…,xn)f (a1,a2,…,an) )
となるから、
仮定Q1,Q2のもとで、
A=(a1,a2,…,an)は、f狭義の極小点である。

「狭義極小の2階十分条件」冒頭へ戻る 

証明

[条件Rn変数実数値関数f(a1,a2,…,an)で狭義極小]
仮定R1: grad f (a1,a2,…,an)=(0,0,…,0)
仮定R2: 任意のn次元数ベクトル (h1,h2,…,hn)≠(0,0,…,0)に対して、
                     二次形式  (h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) >0 

T.
テイラー展開の公式によって、
 f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn)= f (a1,a2,…,an)gradf(a1,a2,…,an)(h1,h2,…,hn)+(1/2) (h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn)R3       
とおくと、
   R3  0  ( (h1,h2,…,hn) 0 )
  かつ 
   R3 / (h1,h2,…,hn)2  0 ( (h1,h2,…,hn) 0 )  
が満たされる
したがって、ここでは、
仮定R1「grad f (a1,a2,…,an)=(0,0,…,0)」より、
  f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn)f (a1,a2,…,an)=(1/2) (h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn)R3  …I-(1)  
  かつ 
   R3  0  ( (h1,h2,…,hn) 0 )   …I-(2) 
  かつ 
   R3 / (h1,h2,…,hn)2  0 ( (h1,h2,…,hn) 0 )  …I-(3)
が満たされる。

U.
任意の非零n次元数ベクトル(h1,h2,…,hn)≠(0,0,…,0)に対して、
  (h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2
を、(h1,h2,…,hn)関数としてみると、
   (h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2  最小値Lが存在し[∵下記理由]、
仮定R2より、
L>0
を満たす。
つまり、
(h1,h2,…,hn) )( (h1,h2,…,hn)(0,0,…,0)  (h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2L>0

なお、
ノルムの定義より、
   (h1,h2,…,hn)(0,0,…,0)  (h1,h2,…,hn)=0  
だから、
(h1,h2,…,hn) )( (h1,h2,…,hn)≠0  (h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2≧L>0)
と言っても同じことである。  
* * * * * *
別様に書くと、
Rn上の点集合
 D{(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)(0,0,…,0)}{(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)≠0} (∵ノルムの定義: (h1,h2,…,hn)(0,0,…,0)  (h1,h2,…,hn)‖=0 )
において、
(h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2  最小値Lが存在し、L>0
つまり、
(h1,h2,…,hn) D)((h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2>0)

**********
[ (h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2  最小値Lの存在証明:最大値最小値定理から]
  
(h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2 は、 
  n変数n値ベクトル値関数φ(h1,h2,…,hn)=(h1/ (h1,h2,…,hn) ,h2/ (h1,h2,…,hn) ,…,hn/ (h1,h2,…,hn) )
  n変数実数値関数ψ(h'1,h'2,…,h'n)= (h'1,h'2,…,h'n) Hf(a1,a2,…,an) t(h'1,h'2,…,h'n)
  との合成関数
 である。
 つまり、
    (h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2 =ψ( φ(h1,h2,…,hn) )   
  なぜなら、
  ((h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn)/(h1,h2,…,hn)2 
          =((h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn))(1/(h1,h2,…,hn))(1/(h1,h2,…,hn))     
          =((h1,h2,…,hn)/(h1,h2,…,hn)Hf(a1,a2,…,an)t(h1,h2,…,hn)/(h1,h2,…,hn))  ∵行列積とスカラー積の混合式の性質 
          =((h1,h2,…,hn)/(h1,h2,…,hn)Hf(a1,a2,…,an) t((h1,h2,…,hn)/(h1,h2,…,hn))    ∵行列のスカラー倍と転置の性質 
  したがって、φ(h1,h2,…,hn)=(h1/ (h1,h2,…,hn) ,h2/ (h1,h2,…,hn) ,…,hn/ (h1,h2,…,hn) ) 、ψ(h'1,h'2,…,h'n)= (h'1,h'2,…,h'n) Hf(a1,a2,…,an) t(h'1,h'2,…,h'n) とおくと、
   (h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2 =(φ(h1,h2,…,hn))Hf(a1,a2,…,an) t(φ(h1,h2,…,hn))=Hf(a1,a2,…,an)[φ(h1,h2,…,hn)] =ψ( φ(h1,h2,…,hn) ) 
  である。

φ(h1,h2,…,hn) とは、(h1,h2,…,hn)単位ベクトル化に他ならないから、
 任意の非零n次元数ベクトル(h1,h2,…,hn)(0,0,…,0)に対して、 φ(h1,h2,…,hn) =1を満たす。  
 つまり、
 定義域D={(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)(0,0,…,0)}={(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)(0,0,…,0)} に対して、
 φ(h1,h2,…,hn)(h1,h2,…,hn)/(h1,h2,…,hn)の値域は、 {(h'1,h'2,…,h'n)Rn|(h'1,h'2,…,h'n)=1 } 。
 これは、要するに、原点を中心とする半径1のn次元球体の表面である。

{(h'1,h'2,…,h'n)Rn|(h'1,h'2,…,h'n)=1 } は、有界な閉集合であって、      
  ψ(h'1,h'2,…,h'n) は、{(h'1,h'2,…,h'n)Rn|(h'1,h'2,…,h'n)=1 } で連続∵二次形式で定義される多変数関数は連続)。 
 したがって、最大値最小値定理より、
  {(h'1,h'2,…,h'n)Rn|(h'1,h'2,…,h'n)=1 }におけるψ( h'1,h'2,…,h'n )最大値最小値が存在する。 
・上記二点をあわせて考えると、
  合成関数 ψ( φ(h1,h2,…,hn) ) は、
   D={(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)(0,0,…,0)}={(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)(0,0,…,0)}  において、
  最大値最小値を有す
 と結論できる。

V.  [ I-(3)を分析、Uに統合 ]
・I-(3)「 R3 / (h1,h2,…,hn)2  0 ( (h1,h2,…,hn) 0 ) 」 
 を、極限の定義に遡って書き下すと、
   (ε>0)(δ>0)((h1,h2,…,hn)Rn )(0<(h1,h2,…,hn)<δ  | R3/(h1,h2,…,hn)2|<ε )
   除外近傍の概念を使うと、
   ( ε>0 ) ( δ>0 ) ((h1,h2,…,hn)Rn )( (h1,h2,…,hn) U*δ(0) R3/(h1,h2,…,hn)2 Uε(0)  ) 
・だから、Uで出てきた
   「(h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn)/ (h1,h2,…,hn)2 の {(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)≠0}における最小値L
 から作った正値 L/2 を、εの具体的な値としても、上記命題は成り立つ。
 ε=L/2とすると、上記命題は、以下のようになる。
 「ε=L/2にたいして、ある実数δ>0が存在し、
         ((h1,h2,…,hn)Rn )(0<(h1,h2,…,hn)<δ  | R3/(h1,h2,…,hn)2|<ε=L/2 )
  を満たす。」
 除外近傍の概念を使うと、
 「ε=L/2にたいして、ある実数δ>0が存在し、
         ((h1,h2,…,hn)U*δ(0) )( R3/(h1,h2,…,hn)2 Uε=L/2(0)  ) 
 を満たす。」
・つまり、
 Uで出てきた「(h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) / (h1,h2,…,hn)2 の{(h1,h2,…,hn)Rn|(h1,h2,…,hn)≠0}における最小値Lに対して、
  ((h1,h2,…,hn)Rn)(0<(h1,h2,…,hn)<δ  −L/2< R3/(h1,h2,…,hn)2L/2 )
 を満たす正数δが存在するといえる。
    (δ>0)((h1,h2,…,hn)Rn )(0<‖(h1,h2,…,hn)<δ  −L/2< R3/(h1,h2,…,hn)2L/2 )
    除外近傍の概念を使うと、
    (δ>0)((h1,h2,…,hn)U*δ(0)) (  R3/(h1,h2,…,hn)2 UL/2(0) )

W  [U,I-(3)→Vから、I-(1)右辺への示唆]

δを、「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δであるとする。
U,Vより、
(h1,h2,…,hn)Rn )(0<‖(h1,h2,…,hn)<δ  (1/2)(h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn)   /(h1,h2,…,hn)2R3/(h1,h2,…,hn)2 ≧ L/2 +R3/(h1,h2,…,hn)2 >0 )
ということは、不等式の最左辺・最右辺に(h1,h2,…,hn))2 (>0)をかけて、
(h1,h2,…,hn)Rn )(0<‖(h1,h2,…,hn)<δ  (1/2)(h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) R3 >0 )
とできる。
つまり、
Vで存在が示された正数δをつかった(h1,h2,…,hn)の範囲に対する制限「0<(h1,h2,…,hn)<δ
を満たす限りで任意の(h1,h2,…,hn)に対して、
   (1/2) (h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) R3 >0
が満たされる。
除外近傍の概念を使って表現すると、((h1,h2,…,hn)U*δ(0)) ( (1/2)(h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) R3 >0 )

V. 結論
δを、「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δであるとする。
I-(1)とWより、
 ((h1,h2,…,hn)Rn )(0<‖(h1,h2,…,hn)<δ  f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn)− f (a1,a2,…,an) =(1/2)(h1,h2,…,hn) Hf(a1,a2,…,an) t(h1,h2,…,hn) R3 >0 )
ということは、不等式の最左辺・最右辺だけに着目すると、
 ((h1,h2,…,hn)Rn )(0<‖(h1,h2,…,hn)<δ  f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn) f (a1,a2,…,an) )

つまり、
  Vで存在が示された正数δをつかった(h1,h2,…,hn)の範囲に対する制限「0<(h1,h2,…,hn)<δ」
  を満たす限りで任意の(h1,h2,…,hn)に対して、
   f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn) > f (a1,a2,…,an)  
  が成立する。
以上を、
除外近傍の概念を使って表現すると、
「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δに対して、
 ((h1,h2,…,hn)U*δ(0)) (  f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn)f (a1,a2,…,an) )

よって、仮定R1,R2のもとで、
  (δ>0)((h1,h2,…,hn)Rn )(0<‖(h1,h2,…,hn)<δ  f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn) f (a1,a2,…,an) )
  ないし
  (δ>0) ((h1,h2,…,hn)U*δ(0)) (  f (a1+h1,a2+h2,…,an+hn)f (a1,a2,…,an) )
が示されたことになる。

(a1+h1,a2+h2,…,an+hn)を(x1,x2,…,xn)と書くと、上記命題は、
  (δ>0)((x1,x2,…,xn)Rn )(0<(x1,x2,…,xn)(a1,a2,…,an)<δ  f (x1,x2,…,xn) f (a1,a2,…,an) )
  ないし
  (δ>0) ((x1,x2,…,xn) U*δ(a1,a2,…,an)) (f (x1,x2,…,xn)f (a1,a2,…,an) )
となるから、
仮定R1,R2のもとで、
A=(a1,a2,…,an)は、f狭義の極小点である。


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証明

[条件Sn変数実数値関数fa=(a1,a2,…,an)で狭義極小]
仮定S1: grad f (a)=
仮定S2:任意の n次元数ベクトルh= (h1,h2,…,hn)≠に対して、
     n変数実数値関数faにおけるヘッセ行列Hf(a)によって定まる二次形式 Hf(a)[h] thHf(a)h>0 

T.
テイラー展開の公式によって、
f (a+h)= f (a)gradf(a)h+(1/2)Hf(a)[h] R3  
とおくと、
  R3  0  ( h 0 )
  かつ 
  R3 / h2  0 ( h 0 )  
が満たされる。
したがって、仮定S1「grad f (a)=」より、
   f (a+h)f (a) =  (1/2)Hf(a)[h] R3  …I-(1)
  かつ 
  R3  0  ( h 0 ) …I-(2) 
  かつ 
  R3 / h2  0 ( h 0 )  …I-(3)
が満たされる。

U.
Hf(a)[h] / h2        
を、hの関数としてみると、
任意の n次元数ベクトルh= (h1,h2,…,hn)≠に対して、
   Hf(a)[h] / h2  最小値Lが存在し[∵下記理由]、
仮定S2より、
 L>0
を満たす。
つまり、
h )( h  Hf(a)[h] / h2 ≧L >0)

なお、
ノルムの定義より、
   h  h=0  
だから、
h )( h  Hf(a)[h] / h2 ≧L >0)
と言っても同じことである。

* * * * * *
別様に書くと、
Rn上の点集合D={hRn|h}={hRn|h} (∵ノルムの定義: h  h=0 )
において、
Hf(a)[h] /h2 最小値Lが存在し、L>0
つまり、
h D)(Hf(a)[h] /h2L>0
   
**********
[Hf(a)[h] / h2  最小値Lの存在証明:最大値最小値定理から]
  
Hf(a)[h] / h2 は、 
  n変数n値ベクトル値関数φ(h)=h/h と n変数実数値関数ψ(h')=Hf(a)[h'] th' Hf(a)h'
  との合成関数
 である。
 つまり、
    Hf(a)[h] / h2 =ψ( φ(h) )   
  なぜなら、
  Hf(a)[h] /h2=(thHf(a)h/h2 
            ∵ n変数実数値関数faにおけるヘッセ行列Hf(a)によって定まる二次形式を表す記号
                                           Hf(a)[h]の定義

          =(thHf(a)h)(1/h)(1/h)     
          =(th/hHf(a)h/h)   ∵行列積とスカラー積の混合式の性質 
          =t(h/hHf(a)h/h)       ∵行列のスカラー倍と転置の性質 
  したがって、φ(h)=h/h 、ψ(h')=Hf(a)[h'] th' Hf(a)h'とおくと、
   Hf(a)[h] / h2 =t(φ(h))Hf(a)(φ(h))=Hf(a)[φ(h)] =ψ( φ(h) ) 
  である。

φ(h) とは、h単位ベクトル化に他ならないから、
 任意の非零n次元数ベクトルhに対して、 φ(h) =1を満たす。  
 つまり、
 定義域D={hRn|h}={hRn|h} に対して、
 φ(h)h/hの値域は、 {h'Rn|h=1 } 。
 これは、要するに、原点を中心とする半径1のn次元球体の表面である。

{h'Rn|h'=1 } は、有界な閉集合であって、      
  ψ(h') は、{h'Rn|h'=1 } で連続∵二次形式で定義される多変数関数は連続)。 
 したがって、最大値最小値定理より、
  {h'Rn|h'=1 }におけるψ( h' )最大値最小値が存在する。 
・上記二点をあわせて考えると、
  合成関数 ψ( φ(h) ) は、
   D={hRn|h}={hRn|h}  において、
  最大値最小値を有す
 と結論できる。

V.  [ I-(3)を分析、Uに統合 ]

・I-(3)「R3 / h2  0 ( h 0 ) 」 
 を、極限の定義に遡って書き下すと、
   (ε>0)(δ>0)(hRn )(0<h<δ  | R3/h2|<ε )
   除外近傍の概念を使うと、
   ( ε>0 ) ( δ>0 ) (hRn )( h U*δ(0) R3/h2 Uε(0)  ) 
・だから、Uで出てきた
   「Hf(a)[h] / h2 の {hRn|h≠0}における最小値L
 から作った正値 L/2 を、εの具体的な値としても、上記命題は成り立つ。
 ε=L/2とすると、上記命題は、以下のようになる。
 「ε=L/2にたいして、ある実数δ>0が存在し、
         (hRn )(0<h<δ  | R3/h2|<ε=L/2 )
  を満たす。」
 除外近傍の概念を使うと、
 「ε=L/2にたいして、ある実数δ>0が存在し、
         (hU*δ(0) )( R3/h2 Uε=L/2(0)  ) 
 を満たす。」

・つまり、
 Uで出てきた「Hf(a)[h] / h2 の {hRn|h≠0}における最小値Lに対して、
  (hRn)(0<h<δ  −L/2< R3/h2L/2 )
 を満たす正数δが存在するといえる。
    (δ>0)(hRn )(0<h<δ  −L/2< R3/h2L/2 )
    除外近傍の概念を使うと、
    (δ>0)(hU*δ(0)) (  R3/h2 UL/2(0) )

W  [U,I-(3)→Vから、I-(1)右辺への示唆]

δを、「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δであるとする。
U,Vより、
hRn )(0<h<δ  (1/2)Hf(a)[h]  /h2R3/h2 ≧ L/2 +R3/h2 >0 )
ということは、不等式の最左辺・最右辺にh2 (>0)をかけて、
hRn )(0<h<δ  (1/2)Hf(a)[h] R3 >0 )
とできる。
つまり、
Vで存在が示された正数δをつかったhの範囲に対する制限「0<h<δ」
を満たす限りで任意のhに対して、
   (1/2)Hf(a)[h] R3>0
が満たされる。
除外近傍の概念を使って表現すると、(hU*δ(0)) ( (1/2)Hf(a)[h] R3 >0 )

V. 結論
δを、「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δであるとする。
I-(1)とWより、
 (hRn )(0<h<δ  f (a+h)f (a) =(1/2)Hf(a)[h] R3 >0 )
ということは、不等式の最左辺・最右辺だけに着目すると、
 (hRn )(0<h<δ  f (a+h)f (a) >0 )

つまり、
  Vで存在が示された正数δをつかったhの範囲に対する制限「0<h<δ」
  を満たす限りで任意のhに対して、
   f (a+h)f (a)  
  が成立する。
以上を、
除外近傍の概念を使って表現すると、
「『Uで出てきたL』に対して、Vで存在が示された」正数δに対して、
 (hU*δ(0)) (  f (a+h)f (a)  )

よって、仮定S1,S2のもとで、
  (δ>0)(hRn )(0<h<δ  f (a+h)f (a)  )
  ないし
  (δ>0) (hU*δ(0)) ( f (a+h)f (a) )
が示されたことになる。

a+hxと書くと、上記命題は、
  (δ>0)(xRn )(0<xa<δ  f (x) f (a) )
  ないし
  (δ>0) (x) U*δ(a))  ( f (x)f (a) )
となるから、
仮定S1,S2のもとで、
aは、f狭義の極小点である。

[文献]
・松坂『解析入門3』14.3-A定理2(p.170) 完全な証明
・岡田『経済学・経営学のための数学』3.3定理3.8(p.126):テイラーの定理と連続性から。不十分。

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n変数関数の鞍点の二階十分条件
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[文献]
・高橋『微分と積分2』 定理3.29(p.85):ヘッセ行列の正負。





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