実数における順序概念 : トピック一覧


 ・最大元max・最小元min/上界・上に有界/下界・下に有界/有界

 ・上限sup・最小上界lub/m=supAの必要十分条件/supmaxの関係

 ・下限inf・最大下界glb/m=infAの必要十分条件/infminの関係  



実数関連ページ:

 ・実数体・実数の定義/デデキントの公理

 ・実数の性質:加法/乗法/加法・乗法の関係/不等式/不等式と加法・乗法の関係  

総目次

定義:実数の集合の最大元・最小元、最大数・最小数、最大値・最小値 Max, Min

設定

 R
: 実数体  
 ≦: 実数体の定義によって、
    実数体R上に定められている順序関係(特に全順序となるよう定められている)。
    もちろん、実数体R順序""とを組み合わせた(R,)は、順序集合
    (実数体の定義によって、(R,)は、特に、全順序集合となるよう定められている)
 A:  R部分集合。ただし、空集合は除く。つまり、AR , Aφ  
   実数の集合。Rの部分集合。
 m:  A。つまり、 mA

本題1




[文献]
 ・斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』1章§3順序1.3.5(p.22)
 ・松坂『集合・位相入門』第3章§1-C(p.90)
 ・『岩波数学辞典(第三版)』項目168.順序B諸定義 (pp.440-1)
 ・杉浦『解析入門I』(p.4, pp.6-7)
 ・高木『解析概論』§3.数の集合・上限・下限(pp.4-5)
 ・笠原『微分積分学』1.1実数(p.3)
 ・神谷浦井『経済学のための数学入門』定義2.1.4(p.60):順序集合全般について。
 ・本橋『新しい論理序説』5.3a例2(p.91):論理記号での表現。


 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』(p.3)


 ・集合A属す実数mが「集合A最大元(最大数最大値)」である
     m = max A
  とは、
  集合A属すあらゆる実数aにたいして、amが成り立つこと
   つまり、mAが、( aA ) ( am ) を満たすこと
   さらに言うと、「(aA) ( am )かつmA」であること[本橋5.3a例2(p.91)] 

  をいう。

 ・集合Aの最大元maxAが存在するとは、(mA)( aA ) ( am )のこと。

 ・最大元は、存在することもあれば、存在しないこともある。[→存在する場合] 

 ・最大元が存在する場合、ひとつしかない。





用語のばらつき: 最大元→杉浦『解析入門I』(p.4) 

         最大数→高木『解析概論』(pp.4-5);笠原『微分積分学』1.1実数(p.3)
         最大値→吹田・新保『理工系の微分積分学』(p.3); 
関連項目:上に有界、上限supとの関係 
活用例 :数列の最大値/1変数関数の最大値/2変数関数の最大値/n変数関数の最大値/実数値関数一般の最大値
一般化 :順序集合の部分集合の最大元 






本題2

 ・集合A属す実数mが「集合A最小元(最小数最小値)」である
     m = min A
  とは、
  集合A属すあらゆる実数aにたいして、maが成り立つこと
    つまり、mAが、( aA ) ( ma ) を満たすこと。
  をいう。

 ・集合Aの最小元 min A が存在するとは、(mA)( aA ) ( ma )のこと。

 ・最小元は、存在することもあれば、存在しないこともある。[→存在する場合]

 ・最小元が存在する場合、ひとつしかない。


 



最大元最小元は互いの双対概念
実数体は、順序集合の特殊例(実数体の定義を見よ)。
  上記の、実数体における「最大元最小元」の定義は、
   一般の順序集合(X,≦)における「最大元・最小元」の定義を、
   そのまま、(R,≦)に適用したもの。










用語のばらつき: 最小元→杉浦『解析入門I』(p.4) 

         最小数→高木『解析概論』(pp.4-5);笠原『微分積分学』1.1実数(p.3)
         最小値→吹田・新保『理工系の微分積分学』(p.3); 

関連項目:下に有界・下限infとの関係 
活用例 :数列の最小値/1変数関数の最小値/2変数関数の最小値/n変数関数の最小値/実数値関数一般の最小値
一般化 :順序集合の部分集合の最小元   







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総目次 

定義 : 実数の集合が上に有界 bounded from above ・ 実数の集合の上界 upper bound 


・「上に有界な《実数の集合》」とは、

  「属してる元は、すべて、この実数以下」

 と言える《実数の集合》。
 
 《この実数》を、その《実数の集合》の上界と呼ぶ。

  厳密には?
   →【厳密な定義−予備知識なしに】
   →【論理にこだわって…】


・「上に有界でない実数の集合》」とは、

  「属してる元は、すべて、この実数以下」

 と言えない《実数の集合》。

 【例】 自然数をすべてあつめた集合N (アルキメデスの原理)

  厳密には?
   →【厳密な定義−予備知識なしに】
   →【論理にこだわって…】

 
* 上界が存在する「実数の集合」(上に有界な「実数の集合」)もあれば、
  上界が存在しない「実数の集合」(上に有界でない「実数の集合」)もある。

  上界が存在する「実数の集合」(上に有界数列)に限ってみても、
  その上界は、
  複数存在するかもしれないし、
  無数に存在するかもしれない。





【類概念・関連概念】

適用対象を一般化:順序集合の部分集合が「上に有界」であることの定義/順 序集合の部分集合の上界の定義 
適用対象を具体化:上に有界な数列/数列の上界/上に有界な1変数 関数 
          自然数をすべてあつめた集合Nは「上に有界でない《実数の集合》」(アルキメデスの原理)    
概念を複雑化  :上限sup/有界  
双対概念下界・下に有界 










[文献]
 ・杉浦『解析入門I』§1実数[2]順序-定義1(pp.5-6)
 ・高木『解析概 論』§3.数の集合・上限・下限(pp.4-5)
 ・笠原『微分積分学』1.1実数(p.5)
 ・小平『解 析入門I』§1.5-a上限下限(pp.36-7.)
 ・ルディン『現代解析学』1.33(p.12)
 ・小林昭七『微分 積分読本:1変数』 1章4-[上界下界上限下限](p.8):数直線上に図解
 ・神谷浦井『経済 学のための数学入門』定義2.1.2(p.59):順序集合全般において。
 ・本橋『新 しい論理序説』5.3a例1(p.91):論理記号での表現。


 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』(p.3)



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総目次 
 

定義:実数の集合の下界 lower bound ・下に有界 bounded from below    


・「下に有界な《実数の集合》」とは、

  「属してる元は、すべて、この実数以上」

 と言える《実数の集合》。
 
 《この実数》を、その《実数の集合》の下界と呼ぶ。


  厳密には?
  →【厳密な定義−予備知識なしに】
  →【論理にこだわって…】


・「下に有界でない実数の集合》」とは、

  「属してる元は、すべて、この実数以上」

 と言えない《実数の集合》。

  厳密には?
  →【厳密な定義−予備知識なしに】
  →【論理にこだわって…】

 
* 下界が存在する「実数の集合」(下に有界な「実数の集合」)もあれば、
  下界が存在しない「実数の集合」(下に有界でない「実数の集合」)もある。

  下界が存在する「実数の集合」(下に有界数列)に限ってみても、
  その下界は、
  複数存在するかもしれないし、
  無数に存在するかもしれない。




【類概念・関連概念】

適用対象を一般化:順序集合の部分集合が「下に有界」であることの定義/順序集合の部分集合の下界の定義 
適用対象を具体化:下に有界な数列/数列の下界/下に有界な1変数関数 
概念を複雑化  :下限inf/有界
双対概念上界・上に有界 









[文献]
 ・杉浦『解析入門I』§1実数[2]順序-定義1(pp.5-6)
 ・高木『解析概論』§3.数の集合・上限・下限(pp.4-5)
 ・笠原『微分積分学』1.1実数(p.5)
 ・小平『解析入門I』§1.5-a上限下限(pp.36-7.)
 ・ルディン『現代解析学』1.33(p.12)
 ・小林昭七『微分積分読本:1変数』 1章4-[上界下界上限下限](p.8):数直線上に図解
 ・神谷浦井『経済学のための数学入門』定義2.1.2(p.59):順序集合全般において。


 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』(p.3)


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定義:実数の集合についての有界  bounded  


・「有界な《実数の集合》」とは、

  上に有界かつ下に有界な「実数の集合」

  すなわち、

  「この実数以上、あの実数以下に、属してる元は、すべておさまる」

  と言える《実数の集合》のこと。
 
 《この実数》を、その《実数の集合》の下界
 《あの実数》を、その《実数の集合》の上界と呼ぶ。


  厳密には?
 →【厳密な定義−予備知識なしに】
 →【論理にこだわって…】


・「有界でない実数の集合》」とは、

  「この実数以上、あの実数以下に、属してる元は、すべておさまる」

 と言えない《実数の集合》のこと。

  厳密には?
 →【厳密な定義−予備知識なしに】
 →【論理にこだわって…】


・「有界でない実数の集合》」は、

  (1) 上に有界でないが、下に有界な「実数の集合」
  (2) 下に有界でないが、上に有界な「実数の集合」
  (3) 上にも下にも有界でない実数の集合」

 に分類される。 

 (1) 上に有界でないが、下に有界な「実数の集合」とは、

  「属してる元は、すべて、この実数以上」とは言えるが、
  「属してる元は、すべて、あの実数以下」とは言えない《実数の集合》。
  
 (2) 下に有界でないが、上に有界な「実数の集合」とは、
 
  「属してる元は、すべて、あの実数以下」とは言えるが、
  「属してる元は、すべて、この実数以上」とは言えない《実数の集合》。

 (3) 上にも下にも有界でない実数の集合」とは、
  「属してる元は、すべて、この実数以上」とは言えるが、
  「属してる元は、すべて、あの実数以下」とは言えない《実数の集合》。





【類概念・関連概念】

適用対象を一般化:順序集合の部分集合が有界であることの定義  
適用対象を具体化:有界数列/1変数有界関数/2変数有界関数/n変数有界関数/実数値有界関数  
関連概念    :上界・上に有界/下界・下に有界/有界/上限sup/下限inf 
 








[文献]
 ・杉浦『解析入門I』§1実数[2]順序-定義1(pp.5-6)
 ・高木『解析概論』§3.数の集合・上限・下限(pp.4-5)
 ・笠原『微分積分学』1.1実数(p.5)
 ・小平『解析入門I』§1.5-a上限下限(pp.36-7.)
 ・ルディン『現代解析学』1.33(p.12)
 ・神谷浦井『経済学のための数学入門』定義2.1.2(p.59):順序集合全般において。


 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』(p.3)

* このように、
  上界下界がともに存在する「実数の集合」(有界な「実数の集合」)もあれば、
  上界は存在しないが、下界のみ存在する「実数の集合」(下に有界な「実数の集合」)、
  下界は存在しないが、上界のみ存在する「実数の集合」(上に有界な「実数の集合」)、
   上界下界がともに存在しない「実数の集合」(上にも下にも有界でない実数の集合」)もある。

  上界が存在する「実数の集合」(上に有界数列)に限ってみても、
  その上界は、
  複数存在するかもしれないし、
  無数に存在するかもしれない。

  さらに、下界が存在する「実数の集合」(下に有界数列)に限ってみても、
  その下界は、
  複数存在するかもしれないし、
  無数に存在するかもしれない。


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定義:実数の集合の上限 supremum 最小上界 least upper bound 

設定

 R
: 実数体 
 ≦: 実数体の定義によって、
    実数体R上に定められている順序関係(特に全順序となるよう定められている)。
    もちろん、実数体R順序""とを組み合わせた(R,)は、順序集合
    (実数体の定義によって、(R,)は、特に、全順序集合となるよう定められている)
 A:  R部分集合。ただし、空集合は除く。つまり、AR , Aφ  
   
実数の集合。Rの部分集合。
 b :  実数のひとつ。つまり、bR 。  
 a :  実数のひとつで、特に、A属すもの。つまり、aA

定義

【簡潔な定義】

  集合Aの(Rでの)「最小上界 least upper bound」「上限 supremum」とは、  
  集合Aの(Rのなかでの)上界をすべてあつめた集合の最小元のこと。

最小元の語義に遡った定義】

  集合Aの(Rでの)「最小上界 least upper bound」「上限 supremum」とは、  
  集合Aの(Rでの)任意の上界bにたいして、
   b*b
  を満たす集合Aの(Rでの)上界b*
  のこと。   

最小元,上界の語義に遡った定義】

  集合Aの(Rでの)「最小上界 least upper bound」「上限 supremum」とは、  
  以下の2条件をともに満たすRb* のことをいう。
  条件1. (aA) ( ab* )    
  条件2. (aA) ( ab ) を満たす限りで任意のbRにたいして、 b*b 
            つまり、 (bR )( (aA) ( ab ) ( b*b ) ) 

記法

・集合Aの最小上界・上限を、l.u.b. Aないしsup Aと書く。

・集合A上に有界でないことを、supA=+∞と書くこともあるが、
 supA=+∞はあくまで「Aが上に有界でない」という意味であって、
  「+∞という数があって、supAが+∞に等しい」という意味ではない。
    [笠原『微分積分学』1.1実数(p.6);吹田・新保『理工系の微分積分学』(p.5)]




 



 実数体は、順序集合の特殊例(実数体の定義を見よ)。
 上記の、実数体における上限・最小上界の定義は、
 一般の順序集合(X,≦)における「上限・最小上界」の定義を、
 そのまま、(R,≦)に適用したもの。










[文献]
 ・杉浦『解析入門I』§1実数[2]順序-定義2(p.6)
 ・高木『解析概論』§3.数の集合・上限・下限(pp.4-5)
 ・笠原『微分積分学』1.1実数(pp.6-7)
 ・小平『解析入門I』§1.5-a上限下限(pp.36-7.)
 ・松坂『集合・位相入門』第3章§1-C(p.92)
 ・小林昭七『微分積分読本:1変数』 1章4-[上界下界上限下限](p.8):数直線上に図解
 ・神谷浦井『経済学のための数学入門』定義2.1.3(p.59):順序集合全般について。


 ・本橋『新しい論理序説』5.3a問題4(p.91):論理記号での表現









【類概念・関連概念】

適用対象を一般化:順序集合の部分集合の上限sup   
適用対象を具体化:数列の上限
基礎となる概念 :上界 
双対概念    :下限 inf 













・集合Aが(Rのなかで)上に有界で、(Rのなかでの)上界が存在するならば

 集合Aの(Rでの)最小上界・上限は、必ず存在する
  (→実数体の定義―条件E:連続の公理・順序完備)。       [杉浦『解析入門I』(p.7); ]

・集合Aが(Rのなかで)上に有界で、集合Aの最小上界・上限が存在するとしても、
 それが集合Aに属すこともあれば、属さないこともある。
 集合Aの最小上界・上限が集合Aに属すならば、集合Aの最小上界・上限は集合Aの最大元である。
  [斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』1章§31.3.5(p.23);松坂『集合・位相入門』3章§1-C(p.92):証明付] 
 








→[トピック一覧:実数における順序概念]  
総目次 


定理:実数の集合の上限・最小上界の定義の言い換え(必要十分条件)

設定

 R
: 実数体  
 ≦: 実数体の定義によって、
    実数体R上に定められている順序関係(特に全順序となるよう定められている)。
    もちろん、実数体R順序""とを組み合わせた(R,)は、順序集合
    (実数体の定義によって、(R,)は、特に、全順序集合となるよう定められている)
 A:  R部分集合。ただし、空集合は除く。つまり、AR , Aφ  
   
実数の集合。Rの部分集合。
 b* :  実数のひとつ。つまり、b*R 。  

本題




[文献]
 ・杉浦『解析入門I』命題1.3(p.6)証明付
 ・高木『解析概論』§3.数の集合・上限・下限(p.4)
 ・笠原『微分積分学』1.1実数定理1.4(p.7)証明付;
 ・小平『解析入門I』§1.5-a上限下限(pp.36-7.)
 ・ルディン『現代解析学』1.34(pp.12-13)
 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』(p.4)
 ・斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』2.5.1-命題2)(p.53)







・b*=supA の必要十分条件は、
  [条件1] b*A上界の一つであり、
  かつ
  [条件2] b*より小さな実数はすべて、A上界ではない、
 ということ。

・つまり、
 b*=supA     
   [条件1] (aA) ( ab* )
    かつ
    [条件2]  bb*を満たす限りで任意のbRにたいして、
              ba を満たすaAが存在する。  

         つまり、(bR )( ( bb* ) (aA) ( ba ) ) 
                (あるいは、 (ε>0 )( (aA) ( b*−εa ) ))    

この2条件をsupAの定義としているテキストも多い。
   →ルディン『現代解析学』1.34(pp.12-3) ;吹田・新保『理工系の微分積分学』(p.4);

上記が「b*=supA」の必要十分条件となるのは、
 実数体のみならず、実数体をふくめた順序体全般において。
 [斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』2.5.1-命題2)(p.53)] 

証明
 b*=supA の定義は、
  条件1. (aA) ( ab* )
    かつ
  条件2. (bR )( (aA) ( ab ) ( b*b ) )
 であった。
 条件1は、全く同じであるから、
 条件2が同値であると示しさえすればよい。
 (bR )( (aA) ( ab ) ( b*b ) )は、
   (bR )( ¬( b*b ) ¬((aA) ( ab )) ) 

     ∵ ¬( b*b ) ¬((aA) ( ab )) は (aA) ( ab ) ( b*b ) の対偶だから。
   (bR )( ( bb*) ¬((aA) ( ab )) )     
   (bR )( ( bb*) (aA) ( ba ) ) ∵全称記号の否定 


→[トピック一覧:実数における順序概念]  
総目次 

定理 : 実数の集合の上限と最大元の関係

設定

 R
: 実数体  
 ≦: 実数体の定義によって、
    実数体R上に定められている順序関係(特に全順序となるよう定められている)。
    もちろん、実数体R順序""とを組み合わせた(R,)は、順序集合
    (実数体の定義によって、(R,)は、特に、全順序集合となるよう定められている)
 A:  R部分集合。ただし、空集合は除く。つまり、AR , Aφ  
   
実数の集合。Rの部分集合。

本題




[文献]
 ・杉浦『解析入門I』命題1.3系(p.6)証明付
 ・高木『解析概論』§3.数の集合・上限・下限(p.4)
 ・笠原『微分積分学』1.1実数定理1.4系(p.7);
 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』(pp.3-4)
 ・斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』1章§3順序1.3.5(p.23)
 ・松坂『集合・位相入門』第3章§1-C(p.92)








 1. 集合AmaxAが存在するならば、集合A上に有界で、supAmaxA
 2. 集合Aが上に有界sup A が存在し(→実数体の定義―条件E:連続の公理・順序完備)、
  なおかつsup A が集合Aに属すならば
  supAmaxA
   [斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』1章§31.3.5(p.23);松坂『集合・位相入門』3章§1-C(p.92):証明付]
 3. 集合A上に有界ならば
  集合AmaxAが存在しなくても、sup Aは存在するが(→実数体の定義―条件E:連続の公理・順序完備)、
  この場合、sup A は集合Aに属さない。[松坂『集合・位相入門』第3章§1-C(p.92)] 
 4. 集合A上に有界でないならばsup A も、maxAも存在しない。[松坂『集合・位相入門』第3章§1-C(p.92)] 


1の証明


  集合AmaxAが存在するならば、
   (mA)( aA ) ( am ) ∵maxAの定義 
  このmは、m=supAとなるための必要十分条件を満たしている。
  まず、このmが、[条件1] (aA) ( am )  を満たすことは自明。
  また、このmは、[条件2] (b )( ( bm ) (aA) ( ba ) )も満たす。
  mAだから、 (aA) のamと置くことができ、実際、そう置いてみると、
   (bR )( ( bm ) ( bm ) ) 
  となって、つねに成り立つことがわかる。
      
        
[杉浦『解析入門I』命題1.3系(p.6):証明付; 笠原『微分積分学』1.1定理1.4系(p.7);]

2の証明
 

 集合Asup A=b*が存在し、かつsup A=b*Aならば
   sup Aの定義−条件1より (b*R)(aA) ( ab* )      …(1) 
   sup Aの定義−条件2より (b*R)(bR )( (aA) ( ab ) ( b*b ) ) …(2) 
   仮定より、(1)(2)で存在が主張されるb*AR  …(3) 
 (1)と(3)を合わせると、
 集合Asup A=b*が存在し、かつsup A=b*A ならば、(b*AR)(aA) ( ab* )
 ここで、(b*A)(aA) ( ab* ) は、b*maxAの定義にほかならないから、
 集合Asup A=b*が存在し、かつsup A=b*A ならばb*=maxA   
            [松坂『集合・位相入門』第3章§1-C(p.92)]



→[トピック一覧:実数における順序概念]  
総目次 

定義 : 実数の集合の下限 infimum  最大下界 greatest lower bound

設定

 R
: 実数体 
 ≦: 実数体の定義によって、
    実数体R上に定められている順序関係(特に全順序となるよう定められている)。
    もちろん、実数体R順序""とを組み合わせた(R,)は、順序集合
    (実数体の定義によって、(R,)は、特に、全順序集合となるよう定められている)
 A:  R部分集合。ただし、空集合は除く。つまり、AR , Aφ  
   
実数の集合。Rの部分集合。
 b :  実数のひとつ。つまり、bR 。  
 a :  実数のひとつで、特に、A属すもの。つまり、aA

定義 

【簡潔な定義】

  集合Aの(Rでの)「最大下界greatest lower bound」「下限infimum」とは、  
  集合Aの(Rのなかでの)下界をすべてあつめた集合の最大元のこと。

最大元の語義に遡った定義】

  集合Aの(Rでの)「最大下界greatest lower bound」「下限infimum」とは、  
  集合Aの(Rでの)任意の下界bにたいして、
   bb* 
  を満たすAの(Rでの)下界b*
  のこと。   

最大元,下界の語義に遡った定義】

  集合Aの(Rでの)「最大下界greatest lower bound」「下限infimum」とは、  
  以下の2条件をともに満たすRb*のことをいう。
  条件1. (aA) ( b*a )    
  条件2. (aA) ( ba ) を満たす限りで任意のbRにたいして、 bb* 
             つまり、 (bR )( (aA) ( ba ) ( bb* ) ) 

記法

 ・集合Aの最大下界greatest lower bound・下限infimumを、
  g.l.b. Aないしinf Aと書く。

 ・A下に有界でないことを、inf A=−∞と書くこともあるが、
  inf A=−∞はあくまで「Aが下に有界でない」という意味であって、
  「−∞という数があって、inf Aが−∞に等しい」という意味ではない。
     [笠原『微分積分学』1.1実数(p.6);吹田・新保『理工系の微分積分学』(p.5)]



 



 実数体は、順序集合の特殊例(実数体の定義を見よ)。
 上記の、実数体における下限・最大下界の定義は、
 一般の順序集合(X,≦)における「下限・最大下界」の定義を、
 そのまま、(R,≦)に適用したもの。










[文献]
 ・杉浦『解析入門I』§1実数[2]順序-定義2(p.6)
 ・高木『解析概論』§3.数の集合・上限・下限(pp.4-5)
 ・笠原『微分積分学』1.1実数(pp.6-7)
 ・小林昭七『微分積分読本:1変数』 1章4-[上界下界上限下限](p.8):数直線上に図解
 ・小平『解析入門I』§1.5-a上限下限(pp.36-7.)
 ・神谷浦井『経済学のための数学入門』定義2.1.3(p.59):順序集合全般について。













【類概念・関連概念】

適用対象を一般化:順序集合の部分集合の下限inf  
適用対象を具体化:数列の下限
基礎となる概念 :下界 
双対概念上限sup  












・集合Aが(Rのなかで)下に有界で、(Rのなかでの)下界が存在するならば

 集合Aの(Rでの)最大下界下限は、必ず存在する
  (→実数体の定義―条件E:連続の公理・順序完備)。   [杉浦『解析入門I』(p.7) ]

・集合Aが(Rのなかで)下に有界で、集合A最大下界下限が存在するとしても、
 それが集合Aに属すこともあれば、属さないこともある。
 集合A最大下界下限が集合Aに属すならば、集合A最大下界下限は集合A最小元である。
   [斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』1章§31.3.5(p.23);松坂『集合・位相入門』3章§1-C(p.92):証明付]
 













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定理 : 実数の集合の下限・最大下界の定義の言い換え(必要十分条件)

設定

 R
: 実数体  
 ≦: 実数体の定義によって、
    実数体R上に定められている順序関係(特に全順序となるよう定められている)。
    もちろん、実数体R順序""とを組み合わせた(R,)は、順序集合
    (実数体の定義によって、(R,)は、特に、全順序集合となるよう定められている)
 A:  R部分集合。ただし、空集合は除く。つまり、AR , Aφ  
   
実数の集合。Rの部分集合。
 b* :  実数のひとつ。つまり、b*R

本題




[文献]
 ・杉浦『解析入門I』命題1.3(p.6)証明付
 ・高木『解析概論』§3.数の集合・上限・下限(p.4)
 ・笠原『微分積分学』1.1実数定理1.4(p.7)証明付;
 ・ルディン『現代解析学』1.34(pp.12-13)
 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』(p.4)







 ・b*=infA の必要十分条件は、
   [条件1]b*A下界の一つであり、かつ、[条件2]b*より大きな実数はすべて、A下界ではない、
  ということ。

 ・つまり、
  b*=infA 
    [条件1] (aA) ( b*a )
     かつ
     [条件2]  b*bを満たす限りで任意のbRにたいして、 ab を満たすaAが存在する。  
               つまり、 (bR )( ( b*b ) (aA) ( ab ) ) 
                  (あるいは、 (ε>0 )( (aA) ( ab*+ε ) ))    
 この2条件をinfAの定義としているテキストも多い。
   →ルディン『現代解析学』1.34(pp.12-3) ;吹田・新保『理工系の微分積分学』(p.4);
証明
 b*=infA の定義は、

   条件1. (aA) ( b*a )  かつ、 条件2. (bR )( (aA) ( ba ) ( bb* ) )
 であった。条件1は、全く同じであるから、条件2が同値であると示しさえすればよい。
 (bR )( (aA) ( ba ) ( bb* ) )
   (bR )( ¬( bb* ) ¬((aA) ( ba )) ) 
      ∵ ¬( bb* ) ¬((aA) ( ba )) は (aA) ( ba ) ( bb* ) の対偶だから。
   (bR )( ( b*b) ¬((aA) ( ba )) )     
   (bR )( ( bb*) (aA) ( ab ) ) ∵全称記号の否定 


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定理 : 実数の集合の下限と最小元の関係

設定

 R
: 実数体  
 ≦: 実数体の定義によって、
    実数体R上に定められている順序関係(特に全順序となるよう定められている)。
    もちろん、実数体R順序""とを組み合わせた(R,)は、順序集合
    (実数体の定義によって、(R,)は、特に、全順序集合となるよう定められている)
 A:  R部分集合。ただし、空集合は除く。つまり、AR , Aφ  
   
実数の集合。Rの部分集合。

本題




[文献]
 ・杉浦『解析入門I』命題1.3系(p.6)証明付
 ・高木『解析概論』§3.数の集合・上限・下限(p.4)
 ・笠原『微分積分学』1.1実数定理1.4系(p.7);
 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』(pp.3-4)
 ・斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』1章§3順序1.3.5(p.23)
 ・松坂『集合・位相入門』第3章§1-C(p.92)







 
 1. 集合Amin Aが存在するならば、集合A下に有界で、inf Amin A
 2. 集合A下に有界inf Aが存在し(→実数体の定義―条件E:連続の公理・順序完備)、
  なおかつinf A が集合Aに属すならば
  inf Amin A
   [斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』1章§31.3.5(p.23);松坂『集合・位相入門』3章§1-C(p.92):証明付]
 3. 集合A下に有界ならば
  集合Amin Aが存在しなくても、inf Aは存在するが(→実数体の定義―条件E:連続の公理・順序完備)、
  この場合、inf A は集合Aに属さない。[松坂『集合・位相入門』第3章§1-C(p.92)] 
 4. 集合A下に有界でないならばinf A も、min Aも存在しない。[松坂『集合・位相入門』第3章§1-C(p.92)] 

1の証明

  集合Amin Aが存在するならば、
  (mA)( aA ) ( ma ) ∵min Aの定義 
  このmは、m=inf A となるための必要十分条件を満たしている。
  まず、このmが、[条件1] (aA) ( ma )  を満たすことは自明。
  また、このmは、[条件2] (bR )( ( mb ) (aA) ( ab ) )も満たす。
  mAだから、 (aA) のamと置くことができ、実際、そう置いてみると、
    (bR )( ( mb ) ( mb ) ) 
  となって、つねに成り立つことがわかる。

   [杉浦『解析入門I』命題1.3系(p.6):証明付; 笠原『微分積分学』1.1定理1.4系(p.7);] 
 
2の証明

 集合Ainf A=b*が存在し、かつinf A=b*Aならば
   inf Aの定義−条件1より (b*R)(aA) ( b*a )      …(1) 
   inf Aの定義−条件2より (b*R)(bR )( (aA) ( ba ) ( b*b ) ) …(2) 
   仮定より、(1)(2)で存在が主張されるb*AR  …(3) 
 (1)と(3)を合わせると、
 集合Ainf A=b*が存在し、かつinf A=b*A ならば、(b*AR)(aA) ( b*a )
 ここで、(b*A)(aA) ( b*a ) は、b*min Aの定義にほかならないから、
 集合Ainf A=b*が存在し、かつinf A=b*A ならばb*=min A    
         [松坂『集合・位相入門』第3章§1-C(p.92)]  


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reference

日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、項目156A.実数の公理系 (pp. 417-418), 168.順序 (pp.440-441). 項目183数:E.実数 (p. 475).
斉藤正彦『数学の基礎:集合・数・位相』東大出版会、2002年。第2章自然数から実数体の定義まで§5定義2.5.13 (p.58)
本橋信義『新しい論理序説』(森毅・斎藤正彦・野崎昭弘編集『すうがくぶっくす』16巻) 朝倉書店、1997年、5.3節a. (p.91)。

解析学テキストのなかで。
小平邦彦『解析入門I』(軽装版)岩波書店、2003年、§1.5-a上限下限(pp.36-7.)。
高木貞二『解析概論改訂第三版』岩波書店、1983年、§3.数の集合・上限・下限(pp.1-5.)
杉浦光夫『解析入門I』岩波書店、1980年、§1実数(pp.1-9).
笠原皓司『微分積分学』サイエンス社、1974年、1.1実数(pp.1-7).。
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年、pp.3-5.
黒田成俊『21世紀の数学1:微分積分学』共立出版株式会社、2002年、2.2実数の四則演算と順序(pp.23-9);2.4.1連続性の公理(p.35)。
赤攝也『実数論講義』SEG出版、1996年。
Walter Rudin,Principles of Mathematical Analysis,Mcgraw-Hill,1953-1976.
=ウォ−ルタ−・ルディン『現代解析学』共立出版、1971年、第1章.

数理経済学テキストのなかで。
神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、pp.56-64