n変数関数の偏微分可能・偏微分係数・偏導関数の定義  

 定義n変数関数の偏微分可能・偏微分係数の定義/偏導関数の定義
 ・
定義n変数関数の連続微分可能・C1級の定義/偏微分する 

 n変数関数の微分関連ページ:微分演算子/高次の偏微分/方向微分/全微分/高階全微分/
 ※微分定義関連ページ:1変数関数の微分/2変数関数の偏微分/2変数関数の全微分
 
n変数関数微分の応用:合成関数の微分/平均値定理・テイラーの定理/極値問題
              陰関数定理/逆関数定理/ラグランジュ未定乗数法
文献総目次 

定義:y=f (x1, x2, ,xn) A=(a1, a2, ,an)においてxiについて偏微分可能 partially differentiable
        点A=(a1, a2, ,an)におけるxiに関する偏微分係数 partially differential coefficient   


定義


(1)
・「 n変数関数y=f (x1,x2,,xn )
     
(a1, a2, …,an)においてx1に関して偏微分可能partially differentiable
 とは、
 
x2,,xnをそれぞれa2, …,anに固定して、x1だけの1変数関数としたf (x1, a2, …,an)が、
 
x1=a1において、x1について微分可能であること、
  すなわち、
     

     が有限値に
収束すること
     ないし、
     

     が有限値に
収束すること 
 をいう。
    
* ここで、
      
     の
右極限右微分係数左極限左微分係数
     ともに存在して
     一致することが含意されていることに注意。
・「
(a1, a2, …,an)における n変数関数y=f (x1,x2,,xn )
     
x1に関する偏微分係数partially differential coefficient1偏微係数
    
 とは、
 
x2,,xnをそれぞれa2, …,anに固定して、x1だけの1変数関数としたf (x1, a2, …,an)の、
 
x1=a1における微分係数
   すなわち、 
     

   ないし、
     

 のことをいう。


[文献-数学]
黒田『微分積分学8.3.1偏導関数の定義(p.282);
杉浦『解析入門』U§3 (p.108):ベクトル値関数.
小平『解析入門II』§6.4 (p.310).

[
文献-数理経済学]
岡田『経済学・経営学のための数学1.6(p.47)
西村『経済数学早わかり3章§3 (p.118);
神谷浦井『経済学のための数学入門6.3.1 (p. 223)
Chiang,
Fundamental Methods of Mathematical Economics 7.4 (p.174)
cf.
1変数関数の微分係数/2変数関数の偏微分/
  ベクトル値関数の偏微分

 

(2)
・「 n変数関数y=f (x1,x2,,xn )
     
(a1, a2, a3, …,an)においてx2に関して偏微分可能partially differentiable
 とは、
 
x1,x3,,xnをそれぞれa1, a3, …,anに固定して、x2だけの1変数関数としたf (a1, x2 , a3, …,an)が、
 
x2=a2において、x2について微分可能であること、
  すなわち、
     

     が有限値に
収束すること
     ないし、
     

     が有限値に
収束すること 
 をいう。
    
*ここで、
     
    の
右極限右微分係数左極限左微分係数
    ともに存在して
    一致することが含意されていることに注意。
・「
(a1, a2, a3, …,an)における n変数関数y=f (x1,x2,,xn )
       
x2に関する偏微分係数partially differential coefficient2偏微係数
   
 とは、
 
x1,x3,,xnをそれぞれa1, a3, …,anに固定して、x2だけの1変数関数としたf (a1, x2 , a2, …,an)の、
 
x2=a2における微分係数
   すなわち、 
     

   ないし、
     

 のことをいう。

 




(n)
・「 n変数関数y=f (x1,x2,,xn )(a1, a2, …, an1, an)においてxnに関して偏微分可能partially differentiable
 とは、
 
x1,x2,,xn1をそれぞれa1, a2, …, an1に固定して、xnだけの1変数関数としたf (a1, a2, …, an1, xn)が、
 
xn=anにおいて、xnについて微分可能であること、
  すなわち、
     

     が有限値に
収束すること
     ないし、
     

     が有限値に
収束すること 
 をいう。
    
*ここで、
     
    の
右極限右微分係数左極限左微分係数
    ともに存在して
    一致することが含意されていることに注意。
・「
(a1, a2, …, an1, an)における n変数関数y=f (x1,x2,,xn )
       
xnに関する偏微分係数partially differential coefficientn偏微係数
    
 とは、
 
x1,x2,,xn1をそれぞれa1, a2, …, an1に固定して、xnだけの1変数関数としたf (a1, a2, …, an1, xn)の、
 
xn=anにおける微分係数
   すなわち、 
     

   ないし、
     

 のことをいう。

   
 

[ トピック一覧:n変数関数の偏微分]
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定義:偏導関数 partial derivative


定義


(1) n変数関数y=f (x1,x2,,xn )x1に関する偏導関数partially derivative」とは?
 
y=f (x1,x2,,xn )が各で、x1に関して偏微分可能であるとき、
 定
(a1, a2, …,an)におけるx1に関する偏微分係数
   
 
 の値は、定
(a1, a2, …,an)のとりかたによって変わってくるから、
 定
(a1, a2, …,an) n変数関数
 定
(a1, a2, …,an)を動(x1, x2, …,xn)として書き改めた n変数関数
   

 を、
n変数関数y=f (x1,x2,,xn )x1に関する偏導関数1偏導関数と呼ぶ。

(2) n変数関数y=f (x1,x2,,xn )x2に関する偏導関数partially derivative」とは?
 
y=f ( x1,x2, x3,,xn )が各で、x2に関して偏微分可能であるとき、
 定
(a1, a2, a3, …,an)におけるx2に関する偏微分係数
   

 の値は、定
(a1, a2, a3, …,an)のとりかたによって変わってくるから、
 定
(a1, a2, a3, …,an) n変数関数
 定
(a1, a2, …,an)を動(x1, x2, …,xn)として書き改めた n変数関数
   

 を、
n変数関数y=f (x1,x2,,xn )x2に関する偏導関数2偏導関数と呼ぶ。



(n) n変数関数y=f (x1,x2,,xn )xnに関する偏導関数partially derivative」とは?
 
y=f ( x1,x2,, xn1,xn )が各で、xnに関して偏微分可能であるとき、
 定
(a1, a2, …, an1, an)におけるxnに関する偏微分係数
   

 の値は、定
(a1, a2, …, an1, an)のとりかたによって変わってくるから、
 定
(a1, a2, …, an1, an) n変数関数
 定
(a1, a2, …, an1, an)を動(x1, x2, …,xn1,xn)として書き改めた n変数関数
  

 を、
n変数関数y=f (x1,x2,,xn )xnに関する偏導関数n偏導関数と呼ぶ。


[文献-数学]
・黒田『微分積分学8.3.1 (p.282);
・杉浦『解析入門』U§3 (p.108);
・小平『解析入門II』§6.4 (p.310) ;
・高木『解析概論21偏微分(p. 54) ;
・和達『
微分積分5-2 (pp.117-118) ;
・小形『多変数の微分積分p.22:2変数
[文献-数理経済学]
・岡田『経済学・経営学のための数学1.6(p.47)
・西村『経済数学早わかり3章§3 (p.119);
・神谷浦井『経済学のための数学入門6.3.1 (p. 224) ;
・入谷久我『数理経済学入門』定義7.1(p.163)
Chiang,Fundamental Methods of Mathematical Economics 7.4 (p.174)
cf.
1変数関数の微分係数/2変数関数の偏微分
cf. 

記法

(1) n変数関数y=f (x1,x2,,xn )x1に関する偏導関数は、
     
   ∂
f /x1  ∂y /x1 
   
fx1 (x1,x2,,xn)  Dx1 f (x1,x2,,xn )  D1f (x1,x2,,xn ) 
  等の記号で表される。   

(2) n変数関数y=f ( x1,x2, x3,,xn )x2に関する偏導関数は、
     
   ∂
f /x2  ∂y /x2 
   
fx2 (x1,x2,,xn)  Dx2f (x1,x2,,xn )  D2f (x1,x2,,xn ) 
  等の記号で表される。



(n) n変数関数y=f (x1,x2,,xn )xnに関する偏導関数は、
     
   ∂
f /xn  ∂y /xn 
   
fxn (x1,x2,,xn)  Dxnf (x1,x2,,xn )  Dnf (x1,x2,,xn ) 
  等の記号で表される。

* 記号の読み方
・∂は、「丸い
d」「ラウンドデルタ」等と呼ばれる。 
・∂
f /x1は、「デルf デルx1 」等と読む。
   
[小形『多変数の微分積分p.22]
   [入谷久我『数理経済学入門』定義7.1(p.163)]

活用

勾配ベクトル(ナブラ) n変数関数 y=f (x1,x2,,xn )n個の偏導関数を並べたもの。

偏微分可能から連続性は出てこない。    
1変数関数の微分可能性と連続性
n変数関数の全微分可能性
n変数関数の連続性 

 
   

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定義:連続微分可能・C1


定義


y=f (x1,x2,,xn )連続微分可能」「y=f (x1,x2,,xn )C1」とは、
y=f (x1,x2,,xn )が各x1,x2,,xnの各々に関して偏微分可能
 
x1,x2,,xnの各々に関する偏導関数
  ∂
f /x1 (x1,x2,,xn) , f /x2(x1,x2,,xn), , f /xn(x1,x2,,xn)
 がすべて存在し、 
かつ
x1,x2,,xnの各々に関するy=f (x1,x2,,xn )偏導関数
  ∂
f /x1 (x1,x2,,xn), f /x2 (x1,x2,,xn), ,f /xn (x1,x2,,xn)
 がすべて連続関数であるということ
をいう。


[文献]
・岡田『経済学・経営学のための数学1.6(p.47)
・神谷浦井『経済学のための数学入門6.3.1 (p. 224)
・杉浦『解析入門』U§3 (p.108).
・小平『解析入門II』§6.4 (p.310).

類概念

1変数関数の連続微分可能性1変数関数のCn
2変数関数のCn

 
   

定義:偏微分する


定義


n変数関数y=f (x1,x2,,xn )偏導関数を求めることを
偏微分するという。

[文献]
神谷浦井『経済学のための数学入門6.3.1 (p. 224)
杉浦『解析入門』U§3 (p.108).
小平『解析入門II』§6.4 (p.310).
Chiang,
Fundamental Methods of Mathematical Economics 7.4 (p.174)

1変数関数の導関数の公式 をそのまま適用して良い

 
   

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reference

黒田成俊『21世紀の数学1:微分積分学』共立出版株式会社、2002年、8.3.1偏導関数の定義(p.282)
西村和雄『
経済数学早わかり』日本評論社、1982年、3章§3多変数関数の微分(p.118)

神谷和也・浦井憲『
経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、6.3.1偏微分(pp. 233-5)
入谷純・久我清『数理経済学入門』有斐閣、1999年。
杉浦光夫『
解析入門』東京大学出版会、1980年、U§3方向微分と偏微分(pp.107-112).  
小平邦彦『
解析入門II (軽装版)岩波書店、2003年、§6.4 (p.310)
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、5.2-V方向微分(p.149)
和達三樹『
理工系の数学入門コース1・微分積分』岩波書店、1988年、5-2偏微分(pp.117-118).
高木貞治『解析概論 改訂第三版』岩波書店、1983年、221偏微分(p. 54).

 

 

日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版) 岩波書店、1985年。

矢野健太郎・田代嘉宏『社会科学者のための基礎数学 改訂版』裳華房、pp.91-3.