1変数関数の極限の定義 : トピック一覧

 ・xx0  : 普通の極限(数列との関連)  / 左極限(数列との関連)  / 右極限(数列との関連)
         片側極限 /  包括的な 極限(数列 との関連)
         発散
 ・x→+/−∞: 極 限/発散 

 1変数関数の諸概念: 1変数関数とその属性 / 極限の性質 / 無限小解析 / 連 続性 / 微 分 / リー マン積分 
 極限関連ページ:
   数列の極限の定義/2 変数関数の極限/n変 数関数の極限/実数値関数一般の極限/n変数ベクトル値関数の極限/写像の極限  
 総目次

定義:関数の収束convergence・極限値limit 





【ビギナー向け定義】


f(x)α (xx0 )

lim

 f(x)α とは、

xx0

  変数xが、x0 以外の値をとりながらx0 に限りなく近づくとき、f (x)実数αに限りなく近づくということ。

・「xx0に近づくとき、f(x)が 収束する」 、「 

lim

 f(x)  が存在する 」 とは、 

xx0

    f(x)α (xx0 )

lim

 f(x)α を満たす実数αが存在すると いうこと。

xx0

* もっと詳しく → ビギナー向け定義   




 上記【ビギナー向け定義】は、あいまいすぎて証明等に耐えられない。→【日常言語による定義の限界】
 そこで、下記定義の登場となる。 
 






【厳密な定義:近傍 概念を用いない表現】


f(x)α (xx0 )

lim

 f(x)α とは、

xx0

 論理記号
 ε>0 δ>0 xf定義域》 ( 0<|xx0|<δ | f (x)α|<ε)
 ということ。










* 言葉で説明すると? → ε-δ 法による厳密な表現 
* どう読むの?    → 論理記号読下しサンプル 
* どういうこと?   → 考え方
* どういう fx0に対して定義できるの? → 極 限値を定義可能な範囲 
* もっと論理的に!  → 論理にこだわって










【厳密な定義:近傍 概念を用いた表現】


f(x)α (xx0 )

lim

 f(x)α とは、

xx0

 論理記号
  ε>0 δ>0 ( f ( U*δ(x0) f定義域) Uε(α)  )
 ということ。










* 言葉で説明すると? →  近傍 概念を用いた表現 
* どういうこと?   → 考え方
* どういう fx0に対して定義できるの? → 極 限値を定義可能な範囲 










【関連】

・1変数関数の極限概念:右極限/左極限/片側極限/包括的な極限/x→+/−∞での極限/発散

・関数一般に拡張された極限概念:

 →2変数関数の極限/n変数関数の極限/実数値関数一般の極限/n変数ベクトル値関数の極限/写像の極限   

 →数列の極限       

【活用例】

 無限小/連続性の定義/微分可能性・微分係数の定義  








 


定理:《関数の極限》と《数列の極限》の関係





下記命題P,Qは互いに言い換え可能。
【命題P   f (x)A (xx0)
【命題Q
 「xn x0 (n→∞)」 を満たすすべての数列{ xn }(ただし、xnx0 )に対して、
  数列 { f (xn) }が「f (xn) A (n→∞)」 を満たす。










* どういうこと? → 詳細/証明










下記命題P,Qは互いに言い換え可能。
【命題P   f (x)A (xx0に近づくときf (x)収束する。 
【命題Q
 「xn x0 (n→∞)」 を満たすすべての数列{ xn }(ただし、xnx0 )に対して、
  数列 { f (xn) }が収 束する










* どういうこと? → 詳 細/証 明








→[トピック一覧:1変数関数の収束・極限値]  
総目次 


定義:右極限

 





はじめに読むべき定義
ε-δ法による厳密な定義 
近傍概念を用いた定義

【関連概念】

 極限/左極限/片側極限/これらを包括した極限定義

【活用例】

 右連続の定義/右微分可能・右微分係数の定義   






【はじめに読むべき定義】


 xx0のもとでxx0 に近づけるとき、これを xx0+0と表し、
 このときの関数f(x)の極限を

 

 lim f(x) あるいは

 f (x0+0)

xx0+0


 とかき、右極限右側極限と呼ぶ。

 ※ x→0+0は、x→+0  と略記される。




[文献]

 ・松坂『解析入門1』3.1-F(p.102):別の記号.limの下に「x>x0,x→x0」
 ・笠原『微分積分学』1.4[1](p.26)
 ・小平『解析入門Ip.79;
 ・細井『はじめて学ぶイプシロン・デルタ』4章(p.31)
 ・青本『微分と積分1』§1.4(c)(pp.35-36):別の記号↓とか使う。
 ・吹田新保『理工系の微分積分学』21;
 ・住友『大学一年生の微積分学』25
 ・Fischer, Intermediate Real Analysis, pp.224








【ε-δ法による厳密な定義】


 A≠±∞のとき、




  lim
f(x)  = A 
xx0+0

 とは、

   任意の正数εに対して、ある正の実数δが存在して、
       「 0< xx0 <δならば| f(x)A|<ε 」
   すなわち「 x0xx0+δならばA−ε<f(x)A+ε 」
   すなわち「 x ( x0 , x0)ならば、 f(x) ( A−ε, A+ε) 」
   を成り立たせる、

 ということである。

 論理記号で表せば、すなわち ε>0   δ>0  ( x ) ( 0< xx0<δ| f (x)A |<ε) 



【近傍概念を用いた定義】 

 A≠±∞のとき、




  lim
f(x)  = A 
xx0+0
 
 とは、

 任意の(どんな)点Aのε近傍Uε(A)に対して(でも)、
        「 f ( U*+δ(x0) ) Uε(A) 」
 を満たすx0の右からの除外δ近傍U*+δ(x0)が存在する、
         論理記号で表せば、( Uε(A) ) (U*+δ(x0) ) ( f ( U*+δ(x0)) Uε(A) ) 
 ということ。

 すなわち、
  任意の(どんな)正の実数εに対して(でも)、ある正の実数δが存在して
         「 f ( U*+δ(x0)) Uε(A) 」
     すなわち「 xU*+δ(x0) ならば、 f (x) Uε(A)  」
  を成り立たせる、
       論理記号で表せば、 ε>0   δ>0  ( f ( U*+δ(x0)) Uε(A) )  
                ( ε>0 ) ( δ>0 ) ( xU*+δ(x0) f (x) Uε(A)  ) 
 ということ。   




[文献]
 ・笠原『微分積分学』1.4[1](p.26)
 ・Fischer, Intermediate Real Analysis, ChapterV.5.OnesidedLimits(p.224).




 

定理:《関数の右極限》と《数列の極限》の関係







下記命題P,Qは互いに言い換え可能。
【命題P   f(x)A (xa+0)
【命題Q
   条件1:xn a (n→∞)
   条件2:a<《{xn}の全
 を満たすすべての数列{ xn }は、
   f (xn) A (n→∞) 
 を満たす。













* どういうこと? → 詳細/証明











下記命題P,Qは互いに言い換え可能。
【命題P  f(x)A (xa+0)
【命題Q
  条件1:xn a (n→∞)
  条件2:a<…<xn<…<x3x2x1
 を満たすすべての数列{ xn }は、
   f (xn) A (n→∞) 
 を満たす。










* どういうこと? → 詳細/証明










【命題Q1】 f(x)( x0, a )狭 義単調減少 
【命題Q2】 以下を満たす数列{ xn }が最低一つは存在する
      1. {xn}の全(x0,a)の範囲に収まる。
      2. xnx0  (n→∞)    
      3. f ( xn )A (n→∞)
 ならば 
【命題P  f(x)A (xx0+0)
 は成り立つ。










* どういうこと? → 詳細/証明










【命題Q1】 f(x)( x0, a )狭 義単調増加
【命題Q2】
 以下を満たす数列{ xn }が最低一つは存在する
      1. {xn}の全(x0,a)の範囲に収まる。
      2. xnx0  (n→∞)    
      3. f ( xn )A (n→∞)
 ならば 
【命題P  f(x)A (xx0+0)
 は成り立つ。










* どういうこと? → 詳細/証明







 




→[トピック一覧:1変数関数の収束・極限値]  
総目次 
 

定義:左極限

 





はじめに読むべき定義
ε-δ法による厳密な定義 
近傍概念を用いた定義  

【関連概念】

 極限/右極限/片側極限/これらを包括した極限定義

【活用例】

 左連続の定義/左微分可能・左微分係数の定義   








【はじめに読むべき定義】


 xx0のもとでxx0に近づけるとき、これをxx0−0と表し、
 このときの関数f(x)の極限を

 

 lim f(x) あるいは

 f (x0−0)

xx0−0


 とかき、左極限と呼ぶ。

 ※ x→0−0は、x→−0  と略記される。




[文献]
 ・小平『解析入門Ip.79.
 ・細井『はじめて学ぶイプシロン・デルタ』4章(p.32)
 ・青本『微分と積分1』§1.4(c)(pp.35-36)
 ・吹田新保『理工系の微分積分学p.21.
 ・Fischer, Intermediate Real Analysis, p.224.






【ε-δ法による厳密な定義】


A≠±∞のとき、

 

 lim f(x) = A

xx0−0

とは、
   任意の正数εに対して、ある正の実数δが存在して、
       「−δ< xx0 <0 ならば| f(x)A|<ε   」
   すなわち「 x0−δ< xx0 ならばA−ε< f(x)A+ε 」
   すなわち「 x ( x0−δ, x0)ならば、 f(x) ( A−ε, A+ε) 」
   を成り立たせる、
ということである。
 論理記号で表せば、すなわち
   ( ε>0 ) ( δ>0 ) ( x ) (−δ< xx0<0 | f (x)A |<ε) 
   ないし、 ( ε>0 ) ( δ>0 ) ( x ) ( x ( x0 −δ, x0) f(x) ( A−ε,A+ε) ) 
       と書いても同じ。



【近傍概念を用いた定義】 


  A≠±∞のとき、
 





lim
f(x)  = A  
xx0−0
 とは、

 任意の(どんな)点Aのε近傍Uε(A)に対して(でも)、
        「 f ( U*−δ(x0) Uε(A) 」
 を満たすx0の左からの除外δ近傍U*−δ(x0)が存在する
 ということ。

 論理記号で表すと、
      ( Uε(A) ) ( U*−δ(x0) ) ( f ( U*−δ(x0) Uε(A) ) 




[文献]
 ・Fischer, Intermediate Real Analysis, ChapterV.5.OnesidedLimits(p.224).





 すなわち、

 任意の(どんな)正の実数εに対して(でも)、ある正の実数δが存在して、
                    「 f ( U*−δ(x0) Uε(A) 」
                すなわち 「 xU*−δ(x0) ならば、 f (x) Uε(A)  」
 を成り立たせる、
       論理記号で表すと、  
         ( ε>0 ) ( δ>0 ) ( f ( U*−δ(x0) Uε(A) )
         ( ε>0 ) ( δ>0 ) ( xU*−δ(x0)  f (x) Uε(A) ) 
 ということ。

定理:《関数の左極限》と《数列の極限》の関係







下記命題P,Qは互いに言い換え可能。
【命題P   f(x)A (xx0-0)
【命題Q
   条件1: xn x0 (n→∞)
   条件2: 《{xn}の全》<x0
   を満たすすべての数列{ xn }は、
   f (xn) A (n→∞) 
 を満たす。













* どういうこと? → 詳細/証明











下記命題P,Qは互いに言い換え可能。
【命題P  f(x)A (xx0-0)
【命題Q
  条件1:xn x0 (n→∞)
  条件2:x1x2x3<…<xn<…<x0  
 を満たすすべての数列{ xn }は、
   f (xn) A (n→∞) 
 を満たす。










* どういうこと? → 詳細/証明










【命題Q1】 f(x)( a, x0 )狭 義単調減少 
【命題Q2】 以下を満たす数列{ xn }が最低一つは存在する
      1. {xn}の全(a, x0)の範囲に収まる。
      2. xnx0  (n→∞)    
      3. f ( xn )A (n→∞)
 ならば 
【命題P  f(x)A (xx0-0)
 は成り立つ。










* どういうこと? → 詳細/証明










【命題Q1】 f(x)( a, x0 )狭 義単調増加
【命題Q2】
 以下を満たす数列{ xn }が最低一つは存在する
      1. {xn}の全(a, x0)の範囲に収まる。
      2. xnx0  (n→∞)    
      3. f ( xn )A (n→∞)
 ならば 
【命題P  f(x)A (xx0-0)
 は成り立つ。










* どういうこと? → 詳細/証明







 



定義:片側極限

[吹田・新保『理工系の微分積分学』p. 21.] 
  右極限左極限を総称して、片側極限という。


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定義:xB内でx0 に近づくときのf(x)の極限

 xB内でx0に近づくときの f(x) の極限 「 

lim

 f (x) = A 」  「 f (x) A (xx0 , xB) 」 とは、 

xx0
xB


  ε>0  δ>0  xB  ( | xx0|<δ |  f (x)A |<ε)  

 ということ。

 どういうこと?→詳細 


定理:関数の収束の、数列の収束への言い換え(普通の極限片側極限を包括して)

[杉浦『解析入門I 』p.53] 

※以下の議論は、

 B= (f(x)の定義域){ x |xx0}とすると、普通の極限と数列の収束の関係についての議論になり、
   ∵
B= { x |x x0}なら「xBかつ | xx0 |<δならば」を「0| xx0 |<δならば」と言い換えても同じ。
 
B= (f(x)の定義域){ x |xx0}とすると、右極限、と数列の収束の関係についての議論になり、
   ∵
B= { x |xx0}なら「xBかつ | xx0 |<δならば」を「0xx0<δならば」と言い換えても同じ。
 
B= (f(x)の定義域){ x |xx0}とすると、左極限と数列の収束の関係についての議論になる。
   ∵
B= { x |xx0}なら「xBかつ | xx0 |<δならば」を「−δ<xx00ならば」と言い換えても同じ。

【設定】


以下で登場するB, x0については、
 B:関数f(x)の定義域の部分集合    (つまり、集合Bは定義域に含まれる何らかの区間及びその合併
 x0x0B閉包 (BB境界」) 」 (つまり、x0Bで表される区間の内部か境界にある)
   ※
x0は後出の数列 { xn }の第0項という意味ではないので、混乱なきよう。
としておく。

【本題】 


以下の命題Pと命題Qは互いに言い換え可能(つまりPQ)。

命題P: xB内でx0に近づくとき、f(x)A収束する
   すなわち、f(x)A (xx0 , xB)
   あるいは、
        
命題Q: xn x0  (n→∞)  (つまりx0収束する) x0は後出の数列 { xn }の第0項という意味ではないので注意
     
かつ
    ・
任意のnN についてxnB 、(つまり全項がBに属する)
   を満たす限りで
任意につくった(どんな)数列{ xn }={ x1 , x2, x3,…}に対しても、
    f(xn) A (n→∞)   (つまり数列 { f (xn) }={ f ( x1 ) , f ( x2 ), f ( x3 ),…}がAに収束する)
※なぜ?→証明  
cf.普通の極限/右極限/左極限の場合
※利用例:コーシーの判定条件(十分性の証明)、


 

→[トピック一覧:1変数関数の収束・極限値]  
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定義:発散 divergence 

  収束しないときは、発散であるdivergentまたは発散するdivergeという。

定義:∞に発散する 


 [吹田新保『理工系の微分積分学pp. 18-19.;松坂『解析入門1』3.1-E(p.101)]

 【情緒的な定義】

   xx0 のとき、f(x)の値が限りなく大きくなる場合、
   f(x)は、xx0 のとき∞に発散するといい、
        f(x)→∞ (xx0) または ,
   とかく。

 【厳密な定義】


   任意のKに対して、ある正数δをとると、  
       f(x)K  ( 0<| xx0 |<δ )   
   が成りたつ。

  (例) y=1/x 
 

定義:−∞に発散する


 [吹田・新保『理工系の微分積分学pp.18-19.;松坂『解析入門1』3.1-E(p.101)]
  xx0 のとき、f(x)の値が限りなく小さくなる場合、
 f(x)は、xx0 のとき−∞に発散するといい、
 f(x)→−∞ (xx0) または ,
とかく。


定義:上極限・下極限

    [高木『解析概論:改訂第3版』p. 23.]
 →数列の上極限・下極限
 →利用例:特異点・不連続点
 

→[トピック一覧:1変数関数の収束・極限値]  
総目次 

定義:x→+/−∞のときの収束・極限値


[ルディン『現代解析学』4.32-33(p.98);細井『はじめて学ぶイプシロン・デルタ』4章(pp.32-33);松坂『解析入門1』3.1-G(p.103)]


【情緒的な定義】


 f(x)が無限区間(a,∞)で定義されているとする。
 xの値を限りなく大きくしていくと、f(x)の値が限りなく一定の値Aに近づくならば、
 f(x)x→∞のとき収束して極限値Aを持つという。

【厳密な定義】


 
とは、
任意の正数εに対して、ある数Kをとると、
 | f(x)A|<ε ( xK ) 
が成り立つことである。
(例) y=1/x 

【関連】

 数列の極限の定義の拡張。
 


→[トピック一覧:1変数関数の収束・極限値]  
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定義:x→+/−∞のときの発散

[吹田・新保『理工系の微分積分学』p. 22.;ルディン『現代解析学』4.32-33(p.98);黒田『微分積分』問題3.2.6 (p.100;p.414);]

【情緒的な定義】


 f(x)が無限区間(a,∞)で定義されているとする。
 xの値を限りなく大きくしていくと、f(x)の値が限りなく大きくなる場合、
 f(x)は∞に発散するという。

【厳密な定義】



とは、
任意の数Lに対して、ある数Kをとると、
 f(x)L ( xK ) 
が成り立つことである。

【関連】

 数列の発散の定義の拡張。

 ↓文献が見つからないので、コレは自分で考えてみただけ。これで本当にいいかどうかは、わからない。 
問題:
  x →∞のとき、f(x)A収束するための必要十分条件は
  ∞に発散するどんな数列 { xn }に対しても、
  数列 { f ( xn ) }A収束することである、
  といえるのだろうか?
  (ボクの考察)
  必要性:f(x)が収束する→{ f ( xn ) }が収束する   
    仮定: f(x)A x→∞ )       …@
        xn→∞( n→∞ )       …A
    結論: f(xn)A n→∞ )    
    証明:       
       関数の収束の定義に従うと、@はすなわち、
       任意の正数εに対して、ある数Kをとると、
         | f(x)A|<ε ( xK ) 
       が成り立つ…C
       ということ。
       数列の発散の定義に従うと、Aはすなわち、
          任意のK’に対して(でも)、
           xn>K’ (n N)
          を成り立たたせるある(十分大きな)自然数Nが存在する  …D
       ということ。 
       K’はどんな実数でもいいというので、
       K’としてCで定まるKをとっても、Dはそのまま成り立つ。
       すなわち、
         Cで定まったどんなKに対して(でも)、
           xn>K (n N)
          を成り立たたせるある(十分大きな)自然数Nが存在する  …E
       ということ。 
       
       Eで定まった自然数N以上の項についてみると、   
           xn>K  
       が成り立つ。
       ならば、Cより、Eで定まった自然数N以上の項については、
          はじめに決めた任意の正数εに対して  
          | f(xn)A|<ε  ( nN )   
       が成り立つといえる。
       数列の収束の定義から、これを以下の様に表現してよい。
           f(xn)A  ( n→∞ )      
  十分性:∞に発散するどんな数列 { xn }に対しても{ f ( xn ) }が収束する→f(x)が収束する   
    仮定: f(xn)A n→∞ )       …@
        数列 { xn }は、
          xn→∞( n→∞ )       …A
        を満たすあらゆる数列。
    結論: f(x)A x→∞ )         …C
    証明:対偶を示す。つまり、
        結論:Cf(x)A x→∞ )が成り立たないなら、
        仮定:@f(xn)A n→∞ )({ xn }は、Aを満たすあらゆる数列)  
        も成り立たない  
       ことを示す。
     [C:f(x)A x→∞ )が成り立たないという仮定をきちんというと、]
       C:f(x)A x→∞ )が成り立たないと仮定する。
       この仮定は、関数の収束の定義より、
           任意の実数ε0に対して、
           | f(x)A|<ε0 ( xK)
           を成り立たせる、ある数Kが存在する
       ことを否定していることになる。
       つまり、
            ある実数ε0が存在して、どんな(大きな)Kを取ろうとも、
                xK かつ | f(x)A|≧ε0  
            を満たすxが存在する …D  
      (あるε0に対してKを調整してxKの範囲をどうとっても、
         A−ε0f(x)A+ε0の範囲からf(x)の値を飛び出させてしまうようなxが存在する) 
       ことを、この仮定は意味していることになる。
          ※きっちりCの命題の否定を作れるようになるには論理式の勉強が必要。
     [C:f(x)A x→∞ )が成り立たないという仮定のもとでは…]  
      すると、∞に発散する数列として、
        各自然数n1に対して、
         xnn を満たし、…E
        かつ
         | f(xn)A|≧ε0 を満たす  …F
            (∵KnとするとDの仮定からこのようなxnが存在することになる) 
      ようなxn が存在する。
      これらのx1, x2,xn,…を並べた数列 { xn }は、EよりAを満たすが、
      そのfによる像を並べた数列{ f(xn) }はFより@を満たさない。
      @は、Aを満たす全ての数列について成立することを主張する命題であるから、
      このような反例が一つでもあれば、否定される。
      
      以上から、対偶、すなわち
        結論:Cf(x)A x→∞ )が成り立たないなら、
        仮定:@f(xn)A n→∞ )({ xn }は、Aを満たすあらゆる数列)  
        も成り立たない  
      ことが示された。
      ゆえに、
       仮定:@f(xn)A n→∞ )({ xn }は、Aを満たすあらゆる数列)が成り立てば、
       結論:Cf(x)A x→∞ )も成り立つ。
  (以上の考察のベースとしたもの)  
  定理x x0 のとき、f(x)A収束するための必要十分条件は
     x0 収束するどんな数列 { xn }に対しても、数列 { f ( xn ) }がAに収束することである。」
  へ吹田・新保が『理工系の微分積分学』p. 19で与えた証明。
 

 

→[トピック一覧:1変数関数の収束・極限値]  
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reference

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