n変数関数のグラディエント・ヤコビアン・ヘッシアン・ラプラシアン

 ・定義:n変数関数の勾配ベクトル/ヤコビ行列・ヤコビアン・ヤコビ行列式・関数行列式
 ・定義:ヘッセ行列・ヘッシアン・ヘッセ行列式/ラプラスの演算子・ラプラシアン

【関連ページ】

 ・n変数関数について            : 偏微分/高次の偏微分/全微分/高階全微分/合成関数の微分/平均値定理・テイラーの定理/極値問題/陰関数定理/逆関数定理/ラグランジュ未定乗数法
 ・グラディエント・ヤコビアン・ヘッシアンについて : 2変数関数の勾配ベクトル・ヤコビアン・ヘッシアン/ベクトル値関数の勾配ベクトル・ヤコビアン・ヘッシアン
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定義 : n変数関数の勾配ベクトル gradient vector 


定義


n変数関数y=f (x1,x2,,xn )勾配ベクトルグラディエントgradientとは、
  
y=f (x1,x2,,xn )x1に関する偏導関数,
  y=f (x1,x2,,xn )x2に関する偏導関数,
               :
               :
  
y=f (x1,x2,,xn )xnに関する偏導関数
を並べたベクトルのこと。
すなわち、
 

[文献]
・岡田『経済学・経営学のための数学』3.3(p.124)
・西村『経済数学早わかり』3章-3.3 (p.125);
・神谷浦井『経済学のための数学入門』6.3.2 (p. 227) ;補題7.3.1-2(pp.281-4):凸性の判定
・黒田『微分積分学』8.3.3 (p.288);
・松坂『解析入門4』18.2H定理5(p.113):関数の凸性の判定。
cf.2変数関数の勾配ベクトル
 

 

記法

n変数関数y=f (x1,x2,,xn )勾配ベクトルグラディエントを、
  
f  grad f  
 などとあらわす。
 なお、記号
は「ナブラ」と呼ばれる。
・点
(a1,a2,,an)におけるf勾配ベクトルグラディエントの値を、
  
f(a1,a2,,an)  grad f (a1,a2,,an)  
 などとあらわす。
   

 
解釈:fの最大傾斜方向を表し、その長さは傾きの最大値を与える
活用例:臨界点臨界値、極値、関数の凸性の判定、ラグランジュの未定乗数法

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定義:n変数関数のヤコビ行列 Jacobian Matrix ・ ヤコビアン(ヤコビ行列式Jacobian Determinants・関数行列式functional determinant


定義


m個の n変数関数 f 1 (x1,x2,,xn ), f 2 (x1,x2,, xn ),, f m (x1,x2,,xn )勾配ベクトル
    
grad f 1 =f 1 , grad f 2 =f 2 ,, grad f m =fm 
を、
縦に並べた以下の
mn行列ヤコビ行列と呼ぶ。  
 
 

[文献]
神谷浦井『経済学のための数学入門』6.3.2 (p. 227) ;
西村『経済数学早わかり』3章-5.0 (p.149);
黒田『微分積分学』8.3.5 (p.292);
小平『解析入門II』363;
Rudin『現代解析学』9.27(p.225)
Chiang,Fundamental Methods of Mathematical Economics 7.6 (p.184)

定義

ヤコビ行列の行列式  
   
 を、関数行列式ないしはヤコビアンと呼び、簡略化して表す場合には、
 記号J(x,y)
   
 などを用いる。

活用例: 積分の変数変換、逆関数の定理



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定義:n変数関数のヘッセ行列・ヘッシアンHessian(ヘッ セ行列式)


定義


・「
n変数関数y=f (x1,x2,,xn )ヘッセ行列」とは、
  
n変数関数y=f (x1,x2,,xn )のすべての第二次偏導関数を、
  以下のように
n nに並べた行列のこと。
    
  この
ヘッセ行列(i,j)成分には、
  
f (x1,x2,,xn )xi に関する偏導関数を、xjで偏微分して出てきた2階偏導関数
  が置かれている。
・「
(a1, a2,,an)における n変数関数y=f (x1,x2,,xn )ヘッセ行列」とは、
  
n変数関数y=f (x1,x2,,xn )のすべての第二次偏導関数(a1, a2,,an)でとる値を、
  以下のように
n nに並べた行列のこと。
     
 


[文献]
・松坂『解析入門4』 18.2-Gヘッセ行列(p.110);H定理6(p.115):関数の凸性の判定。
・神谷浦井『経済学のための数 学入門』6.3.2(pp.227-8)定理7.3.8(p.284):凸性の判定
・黒田『微分積分 学』8.6 (p.306):2次の項までのテイラー展開の表現。
・西村『経済数学早わ かり』3章§4 (p.138)
・布川ほか『線形代数と凸 解析』8.4凸関数の一般化(p.198)。

cf.2変 数関数のヘッセ行列・ヘッシアン

 

・ヘッセ行列の行列式を、ヘッシアンと呼ぶ。

 

記法

・「(a1, a2,,an)における n変数関数y=f (x1,x2,,xn )ヘッセ行列」は、
  
Hf(a1, a2,,an)  H (a1, a2,,an) 
 などと表す。 

 

   

活用例:n変 数関数のテイラー展開の二次の項の表現/極 大の2階十分条件/極 小の2階十分条件/関数の凸性の判定、 

定義:n変数関数のラプラスの演算子(ラプラシアンLaplacian)  記法:Δf  

【定義】
 
 n変数関数f ( x1 , x2 , …,  xn )の各変数に関する第二次偏導関数の和
    
【文献】

 黒田『微分積分学』8.4.1 (p.298);


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定義:n変数関数の発散 divergence  記法:divA

→ガウスの定理
[文献]
小形『多変数の微分積分』165-170:div;


定義:ローテーション rotation  記法:rotA

→ストークスの定理



reference

布川昊,谷野哲三,中山弘隆『線形代数と凸解析』コロナ社、1991年、8.4凸関数の一般化(p.198)。
西村和雄『経済数学早わかり』日本評論社、1982年、3章§4極値問題-定符号行列(p.138)。
黒田成俊『21世紀の数学1:微分積分学』共立出版株式会社、2002年、8.6多変数関数の極大極小(p.306)。

小形正男『理工系数学のキーポイント7:多変数の微分積分』岩波書店、1996、pp. 53-55:gradient;86-110:Jacobian;78:Hessian;.33:Laplacian.165-170:div;177-181:rot 1.
笠原皓司『微分積分学』サイエンス社、1974年、5.3節(pp.164-5)7.3節 (pp.266-270)。
神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、p.227-
.
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年。pp.174-5:grad.;204:ヤコビアン;.227-30:∇・ラプラシアン
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、p.148。
高橋陽一郎『岩波講座現代数学への入門:微分と積分2』 岩波書店、1995年、pp.85-86。ヘッセ行列と極値。
小平邦彦『解析入門II』 (軽装版)岩波書店、2003年、p.363.。ヤコビ行列のみ。
和達三樹『理工系の数学入門コース1・微分積分』岩波書店、1988年、pp.135ラプラシアン;pp.ヤコビアン152-53.
杉浦光夫『解析入門』岩波書店、1980年、pp.124-126 grad;. 132-135.ヤコビアン ただし、いきなり多次元。
高木貞治『解析概論 改訂第三版』岩波書店、1983年、p. 316:gradF;297:関数行列式.
竹之内脩『経済・経営系数学概説』新世社、1998年、pp.110-113:2変数関数のヘッシアンと極値。
住友洸(たけし)『大学一年生の微積分学』現代数学社、1987年,pp.83-84:Laplacian;92:Jacobian;
日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年。