1変数関数の極大・極小 : トピック一覧

 ・定義:極小点・極小値/極大点・極大値/極点・極値/停留点・停留値・臨界値/inflection point
    最大値/最小値  
 ・定理:極大・極小の1階の必要条件/極大・極小の2階の必要条件/極大・極小の2階の十分条件
     Nth-Derivative test for relative extremum  
極値問題関連ページ:2変数関数の極大極小
1変数関数の微分関連ページ:微分の定義/微分公式/ロルの定理・平均値の定理/テイラーの定理/テイラー展開・マクローリン展開/高階導関数  
多変数関数の微分関連ページ:2変数関数の偏微分/2変数関数の全微分

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定義:極小点、極小値 relative minimum or local minimum ※ (pl.)minima 

 関数 f (x) が定義域内の一点aとその近くの任意のxに対して
   f (a) < f (x)  ( xa )
 であるとき、
 「 f (x) はa極小になる」といい、f (a)極小値という。

 すなわち、
 aR が 
   ε>0 xUε(a( f (x)f (a)     
 を満たすなら、「f (x)a極小になる」といい、f(a)極小値という。

定義:極大点、極大値 relative maximum , local maximum ※(pl.) maxima 

 関数 f (x) が定義域内の一点aとその近くの任意のxに対して
   f (a) > f (x)  (xa)
 であるとき、
 「f(x)はa極大になる」といい、f (a)極大値という。
 すなわち、
  aRが 
   ε>0 xUε(a) ( f (x)f (a) )   
 を満たすなら、「f (x)はa極大になる」といい、f (a)極大値という。

定義:極点turning point・極値extreme value ; relative extremum or local extremum ※(pl.)extrema 

 極大点極小点を総称して極点という。
 極大値極小値を総称して極値という。


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定義:停留点 stationary point・停留値 stationary value ・臨界値 ctitical value  

  f ' ( a ) = 0 となる点aを、関数f停留点stationary point
  f ( a )なる値を停留値stationary value
  値a臨界値ctitical value という。 [杉浦『解析入門』150. Chiang236.] 

 ※停留点が極小点極大点となるかは分からない。inflection pointに過ぎないかもしれない。→極値の判定
 例:  f(x)=x3  における 点(0,0)。 

定義: inflection point

  f ' (a) が極値となるが、f ( a )は、極値とはならない点aを、関数 finflection pointとよぶ。 [Chiang236-7.] 

定義:最大値・最小値 absolute maximum/minimum , global maximum/minimum

【設定】
 ・f :Dで定義された1変数関数 
 ・I :f定義域Dに含まれる区間 
 ・c :区間I属す実数   

【はじめに読む定義】


・「『区間I属す実数cは、関数 f (x)区間Iにおける最大点である」
 「『区間I属す実数cにおける f の値 f (c)は、
           関数 f (x)区間Iにおける最大値である」
 とは、

 cが 
 「区間I属すすべての実数xにたいして、 f (x)f (c)」  xI f (x)f (c) 
 を満たすということ。

・「『区間I属す実数cは、関数 f (x)区間Iにおける最小点である」
 「『区間I属す実数cにおける f の値 f (c)は、関数 f (x)区間Iにおける最小値である」とは、
 cが 
 「区間I属すすべての実数xにたいして、 f (x)f (c)」  xI f (x)f (c)   
 を満たすということ。




[文献−定義A]
 ・松坂『解析入門1』4.2-A(p.130)
 ・青本『微分と積分1』§1.4(j)定理1.77(p.51)

[文献−定義B]  
 ・赤『実数論講義』§9.2定義 9.21(p.258)
 ・松坂『解析入門1』3.2-F定理3(p.114)




 





maximum,minimumの複数形は、maxima,minima
 


区間Iで定義された関数 f (x) に、
 区間Iに おける最大点(値)最小点(値)が存在するとは限らない。
 最大点(値)最小点(値)が存在する関数もあれば、
 最大点(値)最小点(値)が存在しない関数もある。
 また、複数の最大点・最小点が存在する関数もある

【存在する関数のタイプ】
 最 大値最小値定理 

【関数一般への拡張】 2変数関数の最大値・最大点・最小値・最小点/n変数関数の最大値・最大点・最小値・最小点/実数値関数一般の最大値・最大点・最小値・最小点
           数列の最大値最小値     






・「関数 f (x) には区間Iにおける最大点(値)が存在する」とは、
 「区間I属すすべての実数xにたいして、 f (x)f (c)」を満たす実数c区間Iに存在する
    cI xI f (x)f (c)   
 ということ。

・「関数 f (x) には区間Iにおける最小点(値)が存在する」
 とは、
 「区間I属すすべての実数xにたいして、 f (x)f (c)」を満たす実数c区間Iに存在する
    cI xI f (x)f (c) 
 ということ。

【簡潔な定義〜最大元・最小元をもちいて】


・「関数 f (x)区間Iにおける最大値」とは、
 「 区間Ifによる」の(実数の集合としての)最大元 max f (I) のこと。

・「関数 f (x)区間Iにおける最小値」とは、
 「 区間Ifによる」の(実数の集合としての)最小元 min f (I) のこと。



トピック一覧:極大極小
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極大・極小 : 1階必要条件  first-order condition

  関数 f が、x=aの近くで微分可能であるとする。
   x = a極大値極小値をとるならば、 f ' ( a ) = 0   
 しかし、逆は成り立たない。( f ' ( a ) = 0だとしても、x = a極値をとるとは限らない。)

極大・極小 : 2階必要条件 second-order necessary condition 

 C2関数fが、
 x = a極大値をとるならば、 f '' ( a ) ≦ 0   
 x = a極小値をとるならば、 f '' ( a ) ≧ 0   
 (しかし、逆は成り立たない)  

極大・極小 : 2階十分条件 second-order sufficient condition

 C2関数fが、
  f ' ( a ) = 0 かつ f '' ( a ) < 0 なら、 x = a極大値をとる。  
  f ' ( a ) = 0 かつ f '' ( a ) > 0 なら、 x = a極小値をとる。  
  f ' ( a ) = 0 かつ f '' ( a ) = 0 なら、判断できない。

定理:Nth-Derivative test for relative extremum of a function of one variable

 [吹田・新保『理工系の微分積分学』.55-56;. 高橋『経済学とファイナンスのための数学』64-67. Chiang266.]
 f (x) はx=a近傍Cnで、 
 f ' ( a ) = f '' ( a ) =…= f (n−1) ( a ) =0かつ f ( n ) ( a ) ≠0 とする。 
 このとき、 
 (i) nが偶数であれば、f ( x )は x = a極値をとり、 
  f ( n ) ( a ) >0 ならば極小、  
  f ( n ) ( a ) <0 ならば極大。 

 (ii) nが奇数であれば、f ( x ) は x = a極値をとらず、inflection pointとなる。
 
 【証明】

   テイラーの定理を用いる。  [吹田・新保『理工系の微分積分学』56; Chiang266]
 
  

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reference

矢野健太郎・田代嘉宏『社会科学者のための基礎数学 改訂版』裳華房、pp.75-81.
和達三樹『理工系の数学入門コース1・微分積分』岩波書店、1988年、pp.54-57.
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年、pp.55-56.
神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、pp.253-269.
杉浦光夫『解析入門』岩波書店、1980年、p.92;149-161.詳しいが難解。ほかのテキストに眼を通し終えてから読むとよい。
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、pp.64-67.
小林道正『Mathematicaによる微積分』朝倉書店、1995年、pp.169-176.
Chiang, Fundamental Methods of Mathematical Economics: Third Edition, McGraw Hill,1984,pp.231-267.