2変数関数の偏微分可能・偏微分係数・偏導関数の定義 : トピック一覧 

・定義:2変数関数の偏微分可能・偏微分係数の定義 [原意/定義/操作化1/操作化2] 
・定義:2変数関数の偏導関数の定義
・定義:2変数関数の連続微分可能・C1級の定義/偏微分する 

【関連ページ】
・2変数関数の微分定義:
  微分演算子/高階偏微分/方向微分/全微分/高階全微分 

・2変数関数微分の応用:
  合成関数の微分/平均値定理・テイラーの定理/極値問題
  陰関数定理/逆関数定理/ラグランジュ未定乗数法 

・2変数関数―微分以外:
  2変数関数の諸属性/極限/連続/極限の性質/矩形上の積分/点集合上の積分 

・偏微分 ― 2変数関数以外:
  1変数関数の微分/n変数関数の偏微分/ベクトル値関数の偏微分 


総目次 

定義:z=f (x,y)は 点P0=(x0, y0)において偏微分可能 partially differentiable
        点P0=(x0, y0)における偏微分係数 partially differential coefficient   

【図解】

y=20-x2-4y2x= y= における に関する偏微分係数を
ピンクの切断面上で
緑の接線がもつ傾き(の増分1に対するzの増分)が偏微分係数


偏微分可能/係数の原意 
偏微分可能/係数の定義
偏微分可能/係数の操作化1 
偏微分可能/係数の操作化2
偏微分可能/係数の計算

原意:( x0, y0 )における f (x,y)xに関する偏微分可能/偏微分係数

 step1.
   「z=f (x,y)が表す曲面」{(x,y,z) | z=f (x,y) }を、
  「( x0,y0, f (x0,y0))を通ってxz軸に平行な平面{(x,y,z) | y =y0 }で、
  切断する。 

 step2.
  切り口に
   「1変数関数z=g(x)=f (x,y0)が表す曲線」{(x,y0,z) | z=g(x)=f (x,y0) }
  が現れる。

 step3.
   「1変数関数z=g (x)=f (x,y0)が表す曲線」{(x,y0,z) | z=g (x)=f (x,y0) }に、
    ( x0,y0, f ( x0,y0 ))で接する
   平面{(x, y, z) | y=y0 }上の接線
    { ( x, y0 , z ) | z=g (x0)+ A(xx0) = f (x0,y0 )+A(xx0) } 
   を、
   ただひとつ引けることを、
   「z=f (x,y )は、( x0, y0 )において、xに関して偏微分可能である」いい、
    この接線の平面{(x, y, z) | y=y0 }上の傾きAを、
   「( x0, y0 )における f (x,y)xに関する偏微分係数」と呼ぶ。

 step4.
   「( x0, y0 )における f (x,y)xに関する偏微分係数」を、
   以下の記号で表す。
     
    f x ( x0, y0 ) 
      →小形『多変数の微分積分』22;杉浦『解析入門』U§3 (p.109)



原意:( x0, y0 )における f (x,y) のyに関する偏微分係数

 step1.
   「z=f (x,y )が表す曲面」{( x, y, z ) | z=f (x,y) } を、
  「(x0, y0, f ( x0, y0 ))を通ってy軸z軸に平行な平面」{ (x, y, z) | x =x0 }で、
  切断する。 

 step2.
  切り口に
   「1変数関数z=h ( y ) = f (x0, y )が表す曲線」{ (x0, y, z ) | z=h ( y )  = f (x0, y ) }
  が現れる。

 step3.
   「1変数関数z=h ( y )=f (x0, y )が表す曲線」{ (x0, y, z ) | z=h ( y ) =f (x0, y ) } に、
   (x0, y0, f ( x0, y0 ))で接する
   平面{ (x, y, z) | x =x0 }上の接線
    { (x0, y, z ) | z=h (y0) + B (y−y0)=f ( x0, y0 ) + B (yy0) } 
   を、
   ただひとつ引けることを、
   「z=f (x,y )は、( x0, y0 )において、yに関して偏微分可能である」いい、
    この接線の平面{ (x, y, z) | x =x0 } 上の傾きBを、
   「( x0, y0 )におけるf (x,y )yに関する偏微分係数」と呼ぶ。

 step4.
   「( x0, y0 )におけるf (x,y )yに関する偏微分係数」を、
   以下の記号で表す。
    
     fy ( x0, y0 ) 
      →小形『多変数の微分積分』22;杉浦『解析入門』U§3 (p.109)




 


偏微分可能/係数の図解 
偏微分可能/係数の原意 
偏微分可能/係数の定義
偏微分可能/係数の操作化1 
偏微分可能/係数の操作化2
偏微分可能/係数の計算

※上記の「偏微分可能」「偏微分係数」の原意は、
  1変数関数の「微分可能」「微分係数」の概念をつかって、
  次のように定義される。

   


定義


z=f (x,y )を、平面R2上のある領域Dで定義された2変 数関数
 
(x0, y0)領域D属する一 つのとする。 

yy0に固定してxだけの1変 数関数としたf (x, y0)が、
 
x = x0において、xについて微分可能であることを、
  「
f (x,y ) (x0, y0)においてxについて偏微分可能partially differentiable
 といい、 
 
x1変 数関数f (x, y0)x = x0における微分係数を、
  「
(x0, y0)におけるf (x,y )
     
xに関する偏微分係数 partially differential coefficient
 とよぶ。
 「
( x0, y0 )におけるf (x,y )xに関する偏微分係数」を、
 以下の記号で表す。
     
   
f x ( x0, y0 ) 

xx0に固定してyだけの1変 数関数としたf (x0, y)が、
 
y = y0において、yについて微分可能であることを、
  「
f (x,y )(x0, y0)においてyについて偏微分可能partially differentiable
 といい、 
 
x1変 数関数f (x0, y)y= y0における微分係数を、
  「
(x0, y0)におけるf (x,y )
    
yに関する偏微分係数 partially differential coefficient
 とよぶ。
 「
( x0, y0 )におけるf (x,y )yに関する偏微分係数」を、
 以下の記号で表す。
    
    
f y ( x0, y0 ) 

1変数関数の「微分可能」「微分係数」の二通りの操作化に従って、
 「偏微分可能」「偏微分係数」の定義も、
 二通りに操作化される。  

[文献]
・岡田『経済学・経営学のための数学』1.6(p.42)
・入谷久我『数理経済学入門』定義 7.1(p.163) :n変数実関数. 
・de la Fuente, Mathematical Methods and Models for Economists, PartI-4-2-Definition2.2 (pp.163-4) :n変数実数値関数.
・杉浦『解析入門』U§3定義2 (p.108):n変数m値ベクトル値関数;
・杉浦『解析演習』U 章§2-2.1(p. 88) :n変数実数値関数
・清野「多変数関 数の微分-第3回」(東京大学07 年度全学自由研究ゼミナール)
・原・梶井『経 済学のための数学』1.3.1偏微分(p.8).

cf. 1 変数関数の微分係数/ n変数関数の偏微分/ベクトル値 関数の偏微分
cf.2 変数関数の全微分/方 向微分 



偏微分可能/係数の図解 
偏微分可能/係数の原意 
偏微分可能/係数の定義
偏微分可能/係数の操作化1 
偏微分可能/係数の操作化2
偏微分可能/係数の計算

操作化1

・「f (x,y ) (x0, y0)においてxについて偏微分可能である」とは、
  有限な
極限値
    
 …()
  が存在すること、
  つまり、
  
x x0で、{ f ( x , y0 ) f ( x0 , y0 ) }( x x0 ) が有限値に収束する
  ないし、
  
h 0で、{ f ( x0 + h, y0 )f ( x0, y0 ) }hが有限値に収束する
  ことをいう。

  
 *(※)の右極限右微分係数と(※)の左極限左微分係数
  ともに存在して
  一致することが含意されていることに注意。

 

・「( x0, y0 )におけるf (x,y )xに関する偏微分係数
     
    
f x ( x0, y0 ) 
 とは、
  
f (x,y ) (x0, y0)においてxについて偏微分可能であるときの、
  有限な
極限値
   
 
  をさす。

 

・「f (x,y ) (x0, y0)においてyについて偏微分可能である」とは、
  有限な
極限値
    
 …()
  が存在すること、
  つまり、
  
yy0で、{ f ( x0 , y ) f ( x0 , y0 ) }( yy0 ) が有限値に収束する
  ないし、
  
h 0で、{ f ( x0 + h, y0 )f ( x0, y0 ) }hが有限値に収束する
  ことをいう。

  
 *(※)の右極限右微分係数と(※)の左極限左微分係数
  ともに存在して
  一致することが含意されていることに注意。

  ・「 ( x0, y0 )におけるf (x,y )yに関する偏微分係数
    
    
f y ( x0, y0 ) 
 とは、
  
f (x,y ) (x0, y0)においてyについて偏微分可能であるときの、
  有限な
極限値
    
  
  をさす。
 
[→偏微分係数の先頭に戻る]



偏微分可能/係数の図解 
偏微分可能/係数の原意 
偏微分可能/係数の定義
偏微分可能/係数の操作化1 
偏微分可能/係数の操作化2
偏微分可能/係数の計算


操作化2

・「f (x,y )(x0, y0)xについて偏微分可能であって、
  
f (x,y )(x0, y0)におけるxに関する偏微分係数A
 
とは、
  「点
x0に対して、ある一定の実数Aが存在して、 
     
f ( x, y0 )−(f ( x0, y0 )+A(xx0) )=o ( xx0)  (xx0) 
   を満たす」
 ことをいう。

 
 

・「f (x,y )(x0, y0)yについて偏微分可能であって、
  
f (x,y )(x0, y0)におけるyに関する偏微分係数B
 
とは、
  「点
y0に対して、ある一定の実数Bが存在して、 
     
f ( x0, y )−(f ( x0, y0 )+A(yy0) )=o ( yy0)  (yy0) 
   を満たす」
 ことをいう。

 
 
[→偏微分係数の先頭に戻る]


偏微分可能/係数の図解 
偏微分可能/係数の原意 
偏微分可能/係数の定義
偏微分可能/係数の操作化1 
偏微分可能/係数の操作化2
偏微分可能/係数の計算

計算

[手計算]
 たとえば、
 点
( -1, 1 )におけるz=f (x,y )=20-x2-4y2 のxに関する偏微分係数を求めるならば、
 以下の手順で求められる。
  
1. z=f (x,y )=20-x2-4y2 のグラフを平面 y =1で切断すると現れる曲線を求める。
   →ただ、
z=f (x,y )=20-x2-4y2 に、y=1を代入するだけ。
    つまり、
z=f (x, 1 )=16-x2 が、z=f (x,y )=20-x2-4y2y =1で切断すると現れる曲線。
  
2. z =16-x2 に、(-1, 1, f ( -1, 1))で接するy =1上の接線の傾きを求める。
   
1変数関数の導関数の公式を用いて、z =16-x2 の導関数を求めると、
     
z' =-2x 
    だから、
x=-1では、z' =2
    したがって、
z =16-x2 に、(-1, 1, f ( -1, 1))で接するy =1上の接線の傾きは、2
 以上より、     
 点
( -1, 1 )におけるz=f (x,y )=20-x2-4y2 のxに関する偏微分係数は、2。  

 

[Mathematicaに対して偏微分係数を計算させる命令]  
 ・次のコードを実行すると、
  点
(2,1)におけるf (x,y)=20-x^2-4y^2 xに関する偏微分係数が
  計算される。   
      
Module[{f}, f[x_,y_]:=20-x^2-4y^2;Derivative[1,0][f][2,1]]  
 ・次のコードを実行すると、
  点
(2,1)におけるf (x,y)=20-x^2-4y^2 yに関する偏微分係数が
  計算される。   
      
Module[{f}, f[x_,y_]:=20-x^2-4y^2;Derivative[0,1][f][2,1]]  
 
* 解説
  
Derivative[n,m][f][x,y]とは、
  関数
fを、xについてnyについてm偏導関数が、点(x,y)でとる値 
  を求める命令。 


[文献]
・小林道正『Mathematicaによる微積分』10.2(p.93)




偏微分可能/係数の図解 
偏微分可能/係数の原意 
偏微分可能/係数の定義
偏微分可能/係数の操作化1 
偏微分可能/係数の操作化2
偏微分可能/係数の計算
→[トピック一覧:2変数関数の偏微分]
総目次
 

定義:偏導関数 partial derivative

【文献】岡田『経済学・経営学のための数学』1.6(p.42)/小形『多変数の微分積分』22.

【定義】


z=f (x,y)領域Dの各xに関して偏微分可能であるとき、
 点( x0, y0 )Dにおけるxに関する偏微分係数 
  
 の値は、( x0, y0 )によって変わってくるから、領域D上の( x0, y0 )の関数。
 x0, y0x,yと書き直した領域D上の関数
    
 を、xに関するz=f (x,y)偏導関数と呼ぶ。

z=f (x,y)領域Dの各yに関して偏微分可能であるとき、
 点( x0, y0 )Dにおけるyに関する偏微分係数 
  
 の値は、( x0, y0 ) によって変わってくるから、領域D上の( x0, y0 )の関数。
 x0, y0x,y と書き直した領域D上の関数
    
 を、yに関するz=f (x,y)偏導関数と呼ぶ。

【記法】


z=f (x,y)xに関する偏導関数を表す記号。 
   fx  zx  
       
z=f (x,y) のyに関する偏導関数を表す記号。 
   fx  zx  
       
※「 デルf デルx 」と読む。

【注】


 ・2変数関数の偏導関数は当然2つできる。これを並べると、勾配ベクトル(ナブラ)になる。

 ・偏微分可能から連続性は出てこない。 [小平『解析入門IIp.266]   
   →1変数関数の微分可能性と連続性/2変数関数の全微分可能性/2変数関数の連続性 

【計算】


[手計算]


 たとえば、
 z=f (x,y)=20-x2-4y2 のxに関する偏導関数を求めるならば、
 1. z=f (x,y)=20-x2-4y2 のyを定数とみなし、
  z=f (x,y)=20-x2-4y2 を、
   x1変数関数z=g (x)= -x2+(20-4y2)
  として扱う。
 2. 1変数関数の導関数の公式をつかって、
  z=g (x)= -x2+(20-4y2)の導関数を求める。
 3. 求まったz=g (x)= -x2+(20-4y2)の導関数g'(x)=-2xが、
  xに関する偏導関数である。

[Mathematicaに対して偏微分係数を計算させる命令]  

 ・次のコードを実行すると、
  f (x,y)=20-x^2-4y^2 のxに関する偏導関数が
  計算される。   
      Module[{f}, f[x_,y_]:=20-x^2-4y^2;Derivative[1,0][f][x,y]]  
 ・次のコードを実行すると、
  点(2,1)におけるf (x,y)=20-x^2-4y^2 のyに関する偏導関数が
  計算される。   
      Module[{f}, f[x_,y_]:=20-x^2-4y^2;Derivative[0,1][f][x,y]]  
 * 解説
  Derivative[n,m][f][x,y]とは、
  関数fを、xについてnyについてm偏導関数を求める命令。


→[トピック一覧:2変数関数の偏微分]
総目次

定義:連続微分可能・C1

【定義】

z=f (x,y)領域Dの各x,yに関して偏導関数が存在して連続であるとき、
  「f (x,y)領域D連続微分可能」「f (x,y)領域DC1
 であるという。

【類概念】
 ・1変数関数の連続微分可能性/1変数関数のCn
 ・2変数関数のCn
【文献】
 ・岡田『経済学・経営学のための数学』1.6(p.43)
 ・小平『解析入門II』p.272;
 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』p.162.
 

定義:偏微分する

f (x,y)偏導関数を求めることを偏微分するという。
・1変数関数の導関数の公式 をそのまま適 用して良い。


→[トピック一覧:2変数関数の偏微分]
総目次

reference

高木貞治『解析概論 改訂第三版』岩波書店、1983年、2章21偏微分(p. 54).
日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年。
矢野健太郎・田代嘉宏『社会科学者のための基礎数学 改訂版』裳華房、pp.91-3.
神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、pp.223-225.
小平邦彦『解析入門II』 (軽装版)岩波書店、2003年 p.265;272.。
和達三樹『理工系の数学入門コース1・微分積分』岩波書店、1988年、pp.116-119.
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年。pp.161-4.
杉浦光夫『解析入門』岩波書店、1980年、pp.107-112.  ただし、いきなり多次元。
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、pp.57-58。
高橋陽一郎『岩波講座現代数学への入門:微分と積分2』 岩波書店、1995年、pp.72-77。