2変数二次形式 quadratic form ・二次同次関数― トピック一覧   [数学についてのwebノート]

 ・定義:2変数の二次形式/正値定符号二次 形式/正値定符号行列/半正値定符号二次形式/半正値定符号行列
     負値定符号二次形式/負値定符号行列/半負値定符号二次形式/半負値定符号行列
 ・定理:単位ベクトル化の二次形式の計算/単位ベクトル化の二次形式の最大値・最小値定理
     二次形式の基底変換公式/二次形式の標準化 
     2変数二次形式の符号判定〜行列を使わずに                    
     正値定の必要十分条件-固有値/負値定の必要十分条件-固有値/正値定の必要条件-行列式/負値定の必要条件-行列式/
     正値定の必要十分条件-主小行列式/負値定の必要十分条件-主小行列式

※応用:2変数関数の極値問題 
※一般化:n変数の二次形式 
線形代数目次/総目次 




定理:2変数二次形式の符号判定 〜 行列を使わずに


2変数二次形式 Q (x,y) = ax2+2 bxy + c y2 (a,b,cは定数) 
のプラス/マイナスについて、
以下が成り立つ。

[文献]
*松坂『解析入門3』14.3-D-補題 (p.172):証明つき。

cf.2次関数の符号と判別式:『高等学校数学I』啓林館。5章4(pp.134-7)

[Q(x,y)の係数条件:ケースT]
  条件1:acb2 >0
  かつ
  条件2:a>0
  かつ
  条件3:c>0
  ならば
  Q(x,y) = ax2+2 bxy + c y2 は、正値定符号二次形式

  ※主小行列式を用いた表現n変数の二次形式への拡張に有利)
注意:いつでもb2≧0であるから、
    「条件1かつ条件2」が成り立っているとき、
     条件3はいつも成り立っており、
    「条件1かつ条件3」が成り立っているとき、
    条件2はいつも成り立っている。
    したがって、左記判定条件のうち、
    条件2・条件3のいずれか一方は不要。
    また、このことから、条件1が成立する場合は、
    このケースTと、次のケースUの二通りで全てだとわかる。

[Q(x,y)の係数条件:ケースU]
  条件1:acb2 >0
  かつ
  条件2:a<0
  かつ
  条件3:c<0
  ならば
  Q(x,y) = ax2+2 bxy + c y2 は、負値定符号二次形式

  ※主小行列式を用いた表現n変数の二次形式への拡張に有利)
注意:いつでもb2≧0であるから、
    「条件1かつ条件2」が成り立っているとき、
     条件3はいつも成り立っており、
    「条件1かつ条件3」が成り立っているとき、
    条件2はいつも成り立っている。
    したがって、左記判定条件のうち、
    条件2・条件3のいずれか一方は不要。
    また、このことから、条件1が成立する場合は、
    前のケースTと、このケースUの二通りで全てだとわかる。

[Q(x,y)の係数条件:ケースV]
  acb2 <0 ならば
  Q(x,y) = ax2+2 bxy + c y2 は、不定符号二次形式




[Q(x,y)の係数条件:ケースW]
  acb2 =0 ならば
  Q(x,y) = ax2+2 bxy + c y2 は、半定符号二次形式

 詳しくみると、
 ・「acb2=0かつa>0」またはacb2=0かつa=0かつc>0」
   ならば
   Q(x,y) 半正値定符号二次形式
 ・「acb2=0かつa<0」またはacb2=0かつa=0かつc<0」
   ならば
   Q(x,y) は、半負値定符号二次形式
 ・「acb2=0かつa=0かつc=0」ならば
   恒等的に、Q(x,y) =0。


活用例:2変数関数の極値問題 


→[トピック一覧:二次形式]
[証明]

[方針]
・1変数の2次関数の符号問題に帰着させる。
・具体的には、
  y=0を満たす点(x,y)と、y≠0を満たす点(x,y)にわけ、
  y=0を満たす点(x,y)については、
     1変数x の2次関数ax2の符号問題に帰着させる。  
  y≠0を満たす点(x,y)については、
Q (x,y) = ax2+2 bxy + c y2  = y2 { a (x/y)2+2 b(x/y) + c }
  として、
   a≠0ならば、
    (x/y) という1変数の2次関数の符号問題に帰着させ、
   a=0ならば、
    (x/y) という1変数の1次関数の符号問題に帰着させる。


[文献]
*松坂『解析入門3』14.3-D-補題 (p.172)



[step1:定義域内を区域別に検討]
[step1-0:準備] 
 二次形式Q(x,y)の符号判定では、原点(0,0)={(x,y)R2|x=0かつy=0}におけるQ(x,y)の符号については、関心がもたれていない。
  →正値定符号・負値定符号等の定義(x=0かつy=0を満たす点でのQ(x,y)の値が、定義から除外されていることに注意)、
 だから、原点を除く平面{(x,y)R2| ¬(x=0かつy=0)}{(x,y)R2| x≠0またはy≠0)}においてだけ、Q(x,y)の符号について考える。
 便宜上、原点を除く平面{(x,y)R2| ¬(x=0かつy=0)}{(x,y)R2| x≠0またはy≠0)}を、次の二つの区域に分割する。
  区域A={(x,y)R2|y=0かつx≠0}  [→下図のピンクの領域]
  区域B={(x,y)R2|y≠0}     [→下図の緑の領域]
    
[step1-1:区域AでのQ(x,y)の符号判定]
 区域A={(x,y)R2|y=0かつx≠0}においては、
      a
>0ならばQ(x,y) = ax2+2 bxy + c y2>0 
      a
=0ならばQ(x,y) = ax2+2 bxy + c y2=0 
      
a<0ならばQ(x,y) = ax2+2 bxy + c y2<0 
  なぜなら、
   ・y=0を満たす各点においては、Q(x,y)Q(x,0)ax2+2 bx・0+ c・02ax2 
   ・x≠0を満たす各点においては、x2 >0  (
   であるので、
   区域A={(x,y)R2|y=0かつx≠0}においては、     
      a>0ならばQ(x,y)Q(x,0)==ax2 >0 (
      a=0ならばQ(x,y)Q(x,0)==ax2 =0 
      
a<0ならばQ(x,y)Q(x,0)==ax2 <0 (
   が成り立つ。
[step1-2:区域BでのQ(x,y)の符号判定―ケース1]
 区域B={(x,y)R2|y≠0}において、a≠0 ならば
   Q(x,y)の符号は、t=x/y として定義される変数tの2次関数f(t)=a t2+2 bt + c の符号判定に依存する。
   つまり、区域B={(x,y)R2|y≠0}において、a≠0 ならば
    b2ac <0 かつ a>0 ならばtの値にかかわらず常にf(t)は正であるから、Q(x,y)tの値にかかわらず常に正。
    b2ac <0 かつ a<0 ならばtの値にかかわらず常にf(t)は負であるから、Q(x,y)tの値にかかわらず常に負。
    b2ac >0  ならばf(t)は正負ともにとるので、Q(x,y)も正負ともにとる。
    b2ac =0 かつ a>0 ならばf(t)≧0なので、Q(x,y)≧0。 
    b2ac =0 かつ a<0 ならばf(t)≦0なので、Q(x,y)≦0。  
 なぜなら…
   ・区域B={(x,y)R2|y≠0}においては、y≠0だから、yで割ることも可能なので、
    Q (x,y) = ax2+2 bxy + c y2  = y2 { a (x/y)2+2 b(x/y) + c } 
    と書いてよい。
    ここで、t=x/y と置くと、
       Q (x,y) =  y2 { a t2+2 bt + c } 
    区域B={(x,y)R2|y≠0}においては、y≠0だから、y2 >0となるので、
     Q (x,y) =  y2 { a t2+2 bt + c } 全体の正負は、変数tの2次関数f(t)=a t2+2 bt + c の正負を反映する。(
   ・二次関数の符号判定に従うと、
     b2ac <0 かつ a>0 ならばtの値にかかわらず常にf(t)は正。
     b2ac <0 かつ a<0 ならばtの値にかかわらず常にf(t)は負。
     b2ac >0        ならばf(t)>0になるtの値の範囲も、f(t)=0になるtの値の範囲も、f(t)<0になるtの値の範囲も存在する。
     b2ac =0 かつ a>0 ならばf(t)=0になるtの値と、f(t)>0となるtの値の範囲が存在する。 
     b2ac =0 かつ a<0 ならばf(t)=0になるtの値と、f(t)<0となるtの値の範囲が存在する。
   ・したがって、 
     b2ac <0 かつ a>0 ならば、区域Bにおいて常にQ(x,y)は正。
    b2ac <0 かつ a<0 ならば区域Bにおいて常にQ(x,y)は負。
    b2ac >0       ならば区域Bには、Q(x,y)を正にする点も、Q(x,y)を負にする点も存在する。
    b2ac =0 かつ a>0 ならば、区域Bでは、Q(x,y)≧0。 
    b2ac =0 かつ a<0 ならば区域Bでは、Q(x,y)≦0。      
[step1-3:区域BでのQ(x,y)の符号判定―ケース3]
 区域B={(x,y)R2|y≠0}において、a=0ならば
   Q(x,y)の符号は、t=x/y として定義される変数tの1次関数g(t)=2b t+ c の符号判定に依存する。
 つまり、区域B={(x,y)R2|y≠0}において、
    ・a=0かつb≠0ならば
          g(t)>0になるtの値の範囲も、g(t)=0になるtの値も、g(t)<0になるtの値の範囲も存在するから、
          Q(x,y)>0になるも、Q(x,y)=0になるも、Q(x,y)<0になるも、区域Bに存在する。
    ・a=0かつb=0かつc>0ならば、区域BのどこでもQ(x,y)>0
    ・a=0かつb=0かつc<0ならば、区域BのどこでもQ(x,y)<0
    ・a=0かつb=0かつc=0ならば、区域BのどこでもQ(x,y)=0
なぜなら…
   ・区域B={(x,y)R2|y≠0}においては、y≠0だから、yで割ることも可能なので、
    Q (x,y) = ax2+2 bxy + c y2  = y2 { a (x/y)2+2 b(x/y) + c } 
    と書いてよい。
    ここで、t=x/y と置くと、
       Q (x,y) =  y2 { a t2+2 bt + c } 
   ・だから、区域B={(x,y)R2|y≠0}において、a=0ならば
       Q (x,y) =  y2 { 2 bt + c }
    となる。 
    区域B={(x,y)R2|y≠0}においては、y≠0だから、y2 >0となるので、
    a=0ならば
     Q (x,y) =  y2 { 2 bt + c } 全体の正負は、変数tの1次関数g(t)=2b t+ cの正負を反映する。(
   ・1次関数g(t)=2b t+ cの正負について、以下が成り立つ。
      ・b≠0ならば、1次関数g(t)は、傾き2b≠0の直線だから、
            g(t)>0になるtの値の範囲も、g(t)=0になるtの値も、g(t)<0になるtの値の範囲も存在する
      ・b=0ならば、1次関数g(t)は、傾き2b=0で、ずっと、定数cのままだから、
             c>0ならばtの値にかかわらず、g(t)>0
             c<0ならばtの値にかかわらず、g(t)<0
             c=0ならばtの値にかかわらず、g(t)=0
   ・したがって、
    ・a=0かつb≠0ならば
          Q(x,y)>0になるも、Q(x,y)=0になるも、Q(x,y)<0になるも、区域Bに存在する。
    ・a=0かつb=0かつc>0ならば、区域BのどこでもQ(x,y)>0
    ・a=0かつb=0かつc<0ならば、区域BのどこでもQ(x,y)<0
    ・a=0かつb=0かつc=0ならば、区域BのどこでもQ(x,y)=0

[step2:上記結果をQ(x,y)の係数条件別に再検討]
[step2-1:係数条件ケースTのもとでのQ(x,y)の符号判定]

Q(x,y)の係数条件:ケースT
   条件1:acb2 >0
   かつ
   条件2:a>0
   かつ
   条件3:c>0
 のもとでのQ(x,y)の符号を検討する。
・ケースTのもとでは、区域A={(x,y)R2|y=0かつx≠0}において、Q(x,y)>0 となる。
 なぜなら、
  step1-1より、
  区域A={(x,y)R2|y=0かつx≠0}においては、
      a
>0ならば、常にQ(x,y)>0 
  となるから、
   ケースTのもとでは、条件2がa>0が満すので、区域A={(x,y)R2|y=0かつx≠0}において常に、Q(x,y)>0 
・ケースTのもとでは、区域B={(x,y)R2|y≠0}において、Q(x,y)>0 となる。
 なぜなら、
  step1-2より、区域B={(x,y)R2|y≠0}においては、
     b2ac <0 かつ a>0 ならば、区域Bにおいて常にQ(x,y)>0
 となるから、
 ケースTのもとでは、条件1がb2ac<0を満たし、条件2がa>0を満たすので、区域Bにおいて常にQ(x,y)>0となる。
・区域Aと区域Bで、原点を除く平面R2 をすべて網羅しているので、
 ケースTのもとでは、原点を除く平面R2 上のどこでも、Q(x,y)>0
 つまり、ケースTのもとでは、Q(x,y)正値定符号二次形式

[step2-2:係数条件ケースUのもとでのQ(x,y)の符号判定]

Q(x,y)の係数条件:ケースU
  条件1:acb2 >0
  かつ
  条件2:a<0
  かつ
  条件3:c<0
 のもとでのQ(x,y)の符号を検討する。
・ケースUのもとでは、区域A={(x,y)R2|y=0かつx≠0}において、Q(x,y)<0 となる。
 なぜなら、
  step1-1より、
  区域A={(x,y)R2|y=0かつx≠0}においては、
      a<0ならばQ(x,y)<0 
  となるから、
   ケースUのもとでは、条件2がa<0が満すので、区域A={(x,y)R2|y=0かつx≠0}において常に、Q(x,y)<0 
・ケースUのもとでは、区域B={(x,y)R2|y≠0}において、Q(x,y)<0 となる。
 なぜなら、
  step1-2より、区域B={(x,y)R2|y≠0}においては、
     b2ac <0 かつ a<0 ならば、区域Bにおいて常にQ(x,y)<0
 となるから、
 ケースUのもとでは、条件1がb2ac<0を満たし、条件2がa<0を満たすので、区域Bにおいて常にQ(x,y)<0となる。
・区域Aと区域Bで、原点を除く平面R2 をすべて網羅しているので、
 ケースUのもとでは、原点を除く平面R2 上のどこでも、Q(x,y)<0
 つまり、ケースUのもとでは、Q(x,y)負値定符号二次形式
[step2-3:係数条件ケースVのもとでのQ(x,y)の符号判定]
Q(x,y)の係数条件:ケースV
   acb2<0
 のもとでのQ(x,y)の符号を検討する。
 便宜上、ケースVを、
  ケースV-1:acb2<0かつa>0   
  ケースV-2:acb2<0かつa<0    
  ケースV-3:acb2<0かつa=0  (このとき、b2>0になっていることにも注意)  
 の三つに分ける。
[係数条件ケースV-1]
・ケースV-1「acb2<0かつa<0」のもとでは、区域A={(x,y)R2|y=0かつx≠0}において、
  step1-1より、Q(x,y) >0 
 となる。
・ケースV-1「acb2<0かつa<0」のもとでは、区域B={(x,y)R2|y≠0}において、
  step1-2より、Q(x,y) が正になるも、Q(x,y) が負になるも存在する。      
・区域Aと区域Bで、原点を除く平面R2 をすべて網羅しているので、
 以上から、ケースV-1のもとでは、
    原点を除く平面R2上での、Q(x,y) の正負は決まっておらず、
    原点を除く平面R2上には、Q(x,y) が正になるも、Q(x,y) が負になるもある、
 という結論になる。
 つまり、ケースV-1のもとでは、Q(x,y) は、不定符号二次形式である。

[係数条件ケースV-2]
・ケースV-2「acb2<0かつa<0」のもとでは、区域A={(x,y)R2|y=0かつx≠0}において、
  step1-1より、Q(x,y) <0 
 となる。 
・ケースV-2「acb2<0かつa<0」のもとでは、区域B={(x,y)R2|y≠0}において、
  step1-2より、Q(x,y) が正になるも、Q(x,y) が負になるも存在する。      
 となる。
・区域Aと区域Bで、原点を除く平面R2 をすべて網羅しているので、
 以上から、ケースV-2のもとでは、   
    原点を除く平面R2上での、Q(x,y) の正負は決まっておらず、
    原点を除く平面R2上には、Q(x,y) が正になるも、Q(x,y) が負になるもある、
 という結論になる。
 つまり、ケースV-2のもとでは、Q(x,y) は、不定符号二次形式である。

[係数条件ケースV-3]
・ケースV-3「acb2<0かつa=0」のもとでは、区域A={(x,y)R2|y=0かつx≠0}において、
      step1-1より、 Q(x,y) =0 
 となる。 
・ケースV-3「acb2<0かつa=0」のもとでは、区域B={(x,y)R2|y≠0}において、
 Q(x,y) が正になるも、Q(x,y) が負になるも存在する 。 
 なぜなら、
  ケースV-3「acb2<0かつa=0」のもとでは、b2>0だから、b≠0。
  すると、この条件下では、step1-3より、Q(x,y) が正になるも、Q(x,y) が負になるも区域Bに存在する。 
・区域Aと区域Bで、原点を除く平面R2 をすべて網羅しているので、
 以上から、ケースV-3のもとでは、   
    原点を除く平面R2上での、Q(x,y) の正負は決まっておらず、
    原点を除く平面R2上には、Q(x,y) が正になるも、Q(x,y) が負になるもある、
 という結論になる。
 つまり、ケースV-3のもとでは、Q(x,y) は、不定符号二次形式である。

[係数条件ケースV総論]
Q(x,y)の係数条件-ケースV「acb2<0」は、
    ケースV-1「acb2<0かつa>0」   
    ケースV-2「acb2<0かつa<0」   
    ケースV-3「acb2<0かつa=0」  
 で網羅されている。
・上記検討から、
  ケースV-1、ケースV-2、ケースV-3のいずれにおいても、Q(x,y) 不定符号二次形式である
 と、明らかにされた。
・したがって、Q(x,y)の係数条件-ケースV「acb2<0」全般において、Q(x,y) 不定符号二次形式であると結論づけられる。


[step2-4:係数条件ケースWのもとでのQ(x,y)の符号判定]
Q(x,y)の係数条件:ケースW
   acb2=0
 のもとでのQ(x,y)の符号を検討する。
 便宜上、ケースWを、
  ケースW-1:acb2=0かつa>0 (b2≧0だから、このとき、c≧0になっていることがわかる)  
  ケースW-2:acb2=0かつa<0 (b2≧0だから、このとき、c≦0になっていることがわかる)  
  ケースW-3:acb2=0かつa=0  (このとき、b2=0、したがって、b=0)  
 の三つに分ける。

[ケースW-1]
・ケースW-1「acb2=0かつa>0」のもとでは、区域A={(x,y)R2|y=0かつx≠0}において、  
  step1-1より、Q(x,y)>0 
・ケースW-1「acb2=0かつa>0」のもとでは、区域B={(x,y)R2|y≠0}において、
  step1-2より、Q(x,y)≧0 
・区域Aと区域Bで、原点を除く平面R2 をすべて網羅しているので、
 以上から、ケースW-1のもとでは、   
    原点を除く平面R2上のどこでも、Q(x,y)≧0   
 という結論になる。
 つまり、ケースW-1のもとでは、Q(x,y) は、半正値定符号二次形式である。

[ケースW-2]
・ケースW-2「acb2=0かつa<0」のもとでは、区域A={(x,y)R2|y=0かつx≠0}において、  
  step1-1より、Q(x,y)<0 
・ケースW-2「acb2=0かつa<0」のもとでは、区域B={(x,y)R2|y≠0}において、
  step1-2より、Q(x,y)≦0 
・区域Aと区域Bで、原点を除く平面R2 をすべて網羅しているので、
 以上から、ケースW-2のもとでは、
    原点を除く平面R2上のどこでも、Q(x,y)≦0 
 という結論になる。
 つまり、ケースW-2のもとでは、Q(x,y) は、半負値定符号二次形式である。

[ケースW-3]
・ケースW-3「acb2=0かつa=0」のもとでは、区域A={(x,y)R2|y=0かつx≠0}において、
  step1-1より、Q(x,y)=0 
・ケースW-3「acb2=0かつa=0」のもとでは、区域B={(x,y)R2|y≠0}において、
    c>0ならば、区域BのどこでもQ(x,y)>0
    c<0ならば、区域BのどこでもQ(x,y)<0
    c=0ならば、区域BのどこでもQ(x,y)=0
 なぜなら…
   「acb2=0かつa=0」のもとでは、b2=0、したがって、b=0。
   だから、step1-3より、ケースW-3「acb2=0かつa=0(かつb=0)」のもとでは、区域B={(x,y)R2|y≠0}において、
    c>0ならば、区域BのどこでもQ(x,y)>0
    c<0ならば、区域BのどこでもQ(x,y)<0
    c=0ならば、区域BのどこでもQ(x,y)=0
   となる。
・区域Aと区域Bで、原点を除く平面R2 をすべて網羅しているので、
 以上から、ケースW-3のもとでは、
    c>0ならば、原点を除く平面R2上のどこでも、Q(x,y)≧0
    c<0ならば、原点を除く平面R2上のどこでも、Q(x,y)≦0
    c=0ならば、原点を除く平面R2上のどこでも、Q(x,y)=0
 という結論になる。
 つまり、ケースW-3のもとでは、
    c>0ならばQ(x,y)半正値定符号二次形式
    c<0ならばQ(x,y)半負値定符号二次形式
    c=0ならば、原点を除く平面R2上のどこでも、Q(x,y)=0
 ざっくり言えば、ケースW-2のもとでは、Q(x,y) は、半定符号二次形式である。

 次の説明のほうが、簡単ではある。
   ケースW-3「acb2=0かつa=0」のもとでは、b2=0、したがって、b=0。
   だから、ケースW-3のもとでは、Q(x,y) = ax2+2 bxy + c y2cy2     
   すると、ケースW-3のもとでは、
        c>0ならばQ(x,y)cy2≧0 (等号は、y=0のときのみ )
        c<0ならばQ(x,y)cy2≦0 (等号は、y=0のときのみ )
        c=0ならばQ(x,y)cy2=0 (すべてのyの値に対して)


[係数条件ケースW総論]
Q(x,y)の係数条件-ケースW「acb2=0」は、
    ケースW-1「acb2=0かつa>0」   
    ケースW-2「acb2=0かつa<0」   
    ケースW-3「acb2=0かつa=0」  
 で網羅されている。
・上記検討から、
  ケースW-1、ケースW-2、ケースW-3のいずれにおいても、Q(x,y) 半定符号二次形式である
 と、明らかにされた。
・したがって、Q(x,y)の係数条件-ケースV「acb2<0」全般において、Q(x,y) 半定符号二次形式であると結論づけられる。
・もう少し詳しく分類すると、
   ・ケースW-1「acb2=0かつa>0」またはケースW-3-1「acb2=0かつa=0かつc>0」ならば
                 Q(x,y) は、半正値定符号二次形式
   ・ケースW-2「acb2=0かつa<0」またはケースW-3-1「acb2=0かつa=0かつc<0」ならば
                 Q(x,y) は、半負値定符号二次形式
   ・ケースW-3-3「acb2=0かつa=0かつc=0」ならば
                恒等的に、Q(x,y) =0。





→[トピック一覧:二次形式]
→[線形代数目次/総目次] 


定理:正値定符号行列になるための必要十分条件〜固有値に関連して


定理


次の二つの命題は同値

命題S:対称行列A= は、正値定符号行列 。
    つまり、Q(x,y) = ax2+2 bxy + c y2 は、正値定符号二次形式
  
命題T:対称行列A=固有値が全て正


[文献−線型代数]
・佐武『線型代数学』W§4 (p.161)
・永田『理系のための線形代数の基礎』系5.3.10(p.149);
・川久保『線形代数学』11.3定理11.3.2(p.290)
・木村『線形代数:数理科学の基礎』4.6(pp.93-95)。
Chiang, Fundamental Methods of Mathematical Economics,pp.326-330.

[文献−解析]
・松坂『解析入門4』18.2-E 定理2(p.107);
杉浦『解析入門1』U§8定理8.3(p.156):「命題S命題T」の証明付。   
 
[文献−数理経済]
・岡田『経済学・経営学のための数学』2.7定理2.34(p.114)
・戸田・山田『計量経済学の基礎:統計的手法の理論とプログラミング』2.9.2(pp.117-8)
・岩田『経済分析のための統計的方法』定理12.26(p.314)

証明
n変数二次形式のケースの証明を参照。



→[トピック一覧:二次形式]
→[線形代数目次/総目次] 

定理:負値定符号行列になるための必要十分条件〜固有値に関連して


定理


次の二つの命題は同値

命題S:対称行列A= は、負値定符号行列
    つまり、Q(x,y) = ax2+2 bxy + c y2 は、負値定符号二次形式
  
命題T:対称行列A=固有値が全て負

[文献−線型代数]
・佐武『線型代数学』W§4 (p.161)
・永田『理系のための線形代数の基礎』系5.3.10(p.149);
・川久保『線形代数学』11.3定理11.3.2(p.290)
・木村『線形代数:数理科学の基礎』4.6(pp.93-95)。
Chiang, Fundamental Methods of Mathematical Economics,pp.326-330.

[文献−解析]
・松坂『解析入門4』18.2-E 定理2(p.107);
杉浦『解析入門1』U§8定理8.3系(pp.157-8)。   
 
[文献−数理経済]
・岡田『経済学・経営学のための数学』2.7定理2.34(p.114)
・戸田・山田『計量経済学の基礎:統計的手法の理論とプログラミング』2.9.2(pp.117-8)
・岩田『経済分析のための統計的方法』定理12.26(p.314)

証明 n変数二次形式のケースの証明を参照。



→[トピック一覧:二次形式]
→[線形代数目次/総目次] 



 
定理:正値定符号行列になるための必要条件〜行列式に関連して




対称行列A= は、正値定符号行列 。
    つまり、Q(x,y) = ax2+2 bxy + c y2 は、正値定符号二次形式

 対称行列A= 行列式は正
     
つまり、 det A=acb20


[文献]
・岩田『経済分析のための統計的方法』定理12.27(p.317)


   
   

[トピック一覧:二次形式]
[線形代数目次/総目次] 

 


 
定理:負値定符号行列になるための必要条件〜行列式に関連して



対称行列A= は負値定符号行列
    つまり、Q(x,y) = ax2+2 bxy + c y2 は、負値定符号二次形式

 
  対称行列A= 行列式は正
     
つまり、 det A=acb20  


[文献]
・岩田『経済分析のための統計的方法』定理12.27(p.317)

   
   

→[トピック一覧:二次形式]
→[線形代数目次/総目次] 

 
定理:正値定符号行列になるための必要十分条件〜主小行列式に関連して
 

次の二つの命題は、同値
命題P対称行列A= は、正値定符号行列 。
    つまり、Q(x,y) = ax2+2 bxy + c y2 は、正値定符号二次形式
命題Q対称行列A= のすべての主小行列式が正。
    つまり、 
    ・対称行列A= の第二次主小行列 (=Aそのもの)
              
     の行列式 acb2が正。
    かつ 
    ・対称行列A= の第一次主小行列a行列式aが正。  
    かつ 
    ・対称行列A= の第一次主小行列c行列式cが正。  
         
→[トピック一覧:二次形式]

cf. n変数の二次形式への拡張

[文献−線型代数]
・佐武『線型代数学』W§4 定理6(p.163) 主小行列式:対角線上にある小行列式
・木村『線形代数:数理科学の基礎』定理2.1(p.43)。
・斎藤『線形代数入門』156.
Chiang322-326.
[文献−解析]
・杉浦『解析入門1』U§8定理8.3(p.156):主小行列式。左上からk行k列をとった行列(1≦k≦n)=右下から(n-k)行(n-k)列除去した行列

 

(「命題Q命題P」の証明)

    「2変数二次形式の符号判定〜行列を使わずに」ケースIより。

(「命題P命題Q」の証明)

「命題P命題Q」を示すために、「命題P命題Qの対偶『命題Qが成り立たない『命題Pが成り立たないを示す
step1:「命題P命題Qの対偶「『命題Qが成り立たない『命題Pが成り立たない』」の分析
 「命題P命題Qの対偶「『命題Qが成り立たない『命題Pが成り立たない』」とは、
     命題R1acb2≦0『命題Pが成り立たない』」
       かつ
     命題R2「『acb2>0かつa≦0』『命題Pが成り立たない』」
       かつ
     命題R3「『acb2>0かつc≦0』」『命題Pが成り立たない』」
 であるから(そのわけは、step1-1,step1-2)、
 この命題R1、命題R2、命題R3を、全て示せば、
 「命題P命題Q」を証明したことになる。
  
step1-1:『命題Qが成り立たない』ということの分析
 「命題Qが成り立たない」とは、
 「acb2≦0またはacb2>0かつa≦0』またはacb2>0かつc≦0』」を意味する。
 なぜなら、
  ・「命題Qが成り立たない」とは、
   「『acb2>0かつa>0かつc>0』が成り立たない」ということ。
  ・「『acb2>0かつa>0かつc>0』が成り立たない」とは、
   「acb2≦0またはa≦0またはc≦0」ということ。(
  ・「acb2≦0またはa≦0またはc≦0」とは、
    「acb2≦0またはacb2>0かつa≦0』またはacb2≦0かつa≦0』またはacb2>0かつc≦0』またはacb2≦0かつc≦0』」
   である。
     なぜなら、
      「a≦0」は、「『acb2>0かつa≦0』またはacb2≦0かつa≦0』」であり、
      「c≦0」は、「『acb2>0かつc≦0』またはacb2≦0かつc≦0』」であるから。
  ・「acb2≦0またはacb2>0かつa≦0』またはacb2≦0かつa≦0』またはacb2>0かつc≦0』またはacb2≦0かつc≦0』」
   とは、
   「acb2≦0またはacb2≦0かつa≦0』またはacb2≦0かつc≦0』またはacb2>0かつa≦0』またはacb2>0かつc≦0』」
   である(∵結合律
  ・「acb2≦0またはacb2≦0かつa≦0』またはacb2≦0かつc≦0』またはacb2>0かつa≦0』またはacb2>0かつc≦0』」
   とは、
   「acb2≦0またはacb2≦0かつc≦0』またはacb2>0かつa≦0』またはacb2>0かつc≦0』」
   である。(∵吸収律
  ・「acb2≦0またはacb2≦0かつc≦0』またはacb2>0かつa≦0』またはacb2>0かつc≦0』」
   とは、
   「acb2≦0またはacb2>0かつa≦0』またはacb2>0かつc≦0』」
   である。(∵吸収律

step1-2:「命題P命題Qの対偶「『命題Qが成り立たない『命題Pが成り立たない』」の分析
 「命題P命題Qの対偶「『命題Qが成り立たない『命題Pが成り立たない』」とは、
     命題R1acb2≦0『命題Pが成り立たない』」
       かつ
     命題R2「『acb2>0かつa≦0』『命題Pが成り立たない』」
       かつ
     命題R3「『acb2>0かつc≦0』」『命題Pが成り立たない』」
 である。
 なぜなら、 
  ・「『命題Qが成り立たない『命題Pが成り立たない』」とは、
    step1-1より、
    「acb2≦0またはacb2>0かつa≦0』またはacb2>0かつc≦0』」『命題Pが成り立たない
    である。
  ・「acb2≦0またはacb2>0かつa≦0』またはacb2>0かつc≦0』」『命題Pが成り立たない
    とは、
      「acb2≦0『命題Pが成り立たない』」
       かつ
      「『acb2>0かつa≦0』『命題Pが成り立たない』」
       かつ
      「『acb2>0かつc≦0』」『命題Pが成り立たない』」
    である。(
step1-3:結論
 以上より、
 「命題P命題Qの対偶「『命題Qが成り立たない『命題Pが成り立たない』」とは、
     命題R1acb2≦0『命題Pが成り立たない』」
       かつ
     命題R2「『acb2>0かつa≦0』『命題Pが成り立たない』」
       かつ
     命題R3「『acb2>0かつc≦0』」『命題Pが成り立たない』」
 であるから、
 この命題R1が真であること、命題R2が真であること、命題R3が真であることを、全て示せば、
 「命題P命題Q」を証明したことになる。

step2:命題R1
 命題R1「acb2≦0『命題Pが成り立たない』」が成立することは、
 「2変数二次形式の符号判定〜行列を使わずに」のケースV,ケースWで、示されている。

step3:命題R2「『acb2>0かつa≦0』『命題Pが成り立たない』」が真であることの証明
 step3-1:「acb2>0かつa≦0」の分析
  「acb2>0かつa≦0」とは、 
  「『acb2>0かつa=0』またはacb2>0かつa<0』」であることに他ならない。
   なぜなら、
    ・「acb2>0かつa≦0」とは、「acb2>0かつa=0またはa<0』」ということである。(a≦0a=0またはa<0』)
    ・「acb2>0かつa=0またはa<0』」とは、
      「『acb2>0かつa=0』またはacb2>0かつa<0』」ということである。(∵分配律
 step3-2:命題R2「『acb2>0かつa≦0』『命題Pが成り立たない』」の分析
  命題R2「『acb2>0かつa≦0』『命題Pが成り立たない』」とは、
      命題R2-1「『acb2>0かつa=0』 『命題Pが成り立たない』」
      かつ 
      命題R2-2「acb2>0かつa<0』 『命題Pが成り立たない』」    
  である。
  なぜなら、
  ・step3-1より、「acb2>0かつa≦0」「『acb2>0かつa=0』またはacb2>0かつa<0』」
  ・「『(acb2>0かつa=0)またはacb2>0かつa<0)』 『命題Pが成り立たない』」
   とは、
      命題R2-1「『acb2>0かつa=0』 『命題Pが成り立たない』」
      かつ 
      命題R2-2「acb2>0かつa<0』 『命題Pが成り立たない』」    
   ということである。(
    
 step3-3:命題R2「『acb2>0かつa≦0』『命題Pが成り立たない』」の証明
 ・step3-2より、命題R2「『acb2>0かつa≦0』『命題Pが成り立たない』」が真であることを証明するためには、
     ・命題R2-1「acb2>0かつa=0』『命題Pが成り立たないが真であること
     ・命題R2-2「acb2>0かつa<0』『命題Pが成り立たないが真であること
  を示せばよい。
 ・命題R2-1「『acb2>0かつa=0』『命題Pが成り立たない』」は真である。  
  なぜなら、
   ・「ならば⇒」の真理値表をみるとわかるように、
    命題Pが偽にしかならないとき、「命題P命題Q」は真になるように、「命題P命題Q」は定義されている。
   ・『acb2>0かつa=0』は偽である。
      実際、
            a
=0のとき、acb2=0−b2=−b2≦0(∵bR に対してb2≧0)
       つまり、a=0とacb2>0の同時達成は不可能。 
   ・上記2点より、命題R2-1「『acb2>0かつa=0』『命題Pが成り立たない』」は真であると示された。
 ・命題R2-2「acb2>0かつa<0』『命題Pが成り立たないは真である。
  なぜなら、
  『acb2>0かつa<0』acb2>0かつa<0かつc<0』『命題Pが成り立たない』であるから。
    ・「『acb2>0かつa<0』acb2>0かつa<0かつc<0』」は、
       『acb2>0かつa<0』c<0』だからだが、                                                 これは、次の手順で示せる。
         ・「acb2>0かつa<0」acb2かつa<0」
              なぜなら、「acb2>0」acb2b2>0+b2」 ()であるから。        
         ・「acb2かつa<0」acb2かつ 1/a<0」
              なぜなら、a<0 1/a<0()だから。 
         ・「acb2かつ 1/a<0」cb2/a≦0」
              なぜなら、次の二点から。
              ・「acb2かつ 1/a<0」 「(1/a)ac<(1/a)b2」すなわち「cb2/a」(
              ・「 1/a<0」 b2/a≦0  ∵ bR に対してb2≧0
         ・「cb2/a≦0」c<0」(∵狭義順序の推移律
    ・「『acb2>0かつa<0かつc<0』『命題Pが成り立たない』」は、
        「2変数二次形式の符号判定〜行列を使わずに」のケースUで、示されている。
   
step4:命題R3「『acb2>0かつc≦0』」『命題Pが成り立たない』」が真であることの証明
 step4-1:「acb2>0かつc≦0」の分析
  「acb2>0かつc≦0」とは、 
  「『acb2>0かつc=0』またはacb2>0かつc<0』」であることに他ならない。
   なぜなら、
    ・「acb2>0かつc≦0」とは、「acb2>0かつc=0またはc<0』」ということである。(c≦0c=0またはc<0』)
    ・「acb2>0かつc=0またはc<0』」とは、
      「『acb2>0かつc=0』またはacb2>0かつc<0』」ということである。(∵分配律
 step4-2:命題R3「『acb2>0かつc≦0』『命題Pが成り立たない』」の分析
  命題R3「『acb2>0かつc≦0』『命題Pが成り立たない』」とは、
      命題R3-1「『acb2>0かつc=0』 『命題Pが成り立たない』」
      かつ 
      命題R3-2acb2>0かつc<0』 『命題Pが成り立たない』」    
  である。
  なぜなら、
  ・step4-1より、「acb2>0かつc≦0」「『acb2>0かつc=0』またはacb2>0かつc<0』」
  ・「『(acb2>0かつc=0)またはacb2>0かつc<0)』 『命題Pが成り立たない』」
   とは、
      命題R3-1「『acb2>0かつc=0』 『命題Pが成り立たない』」
      かつ 
      命題R3-2「acb2>0かつc<0』 『命題Pが成り立たない』」    
   ということである。(
    
 step4-3:命題R3「『acb2>0かつc≦0』『命題Pが成り立たない』」の証明
 ・step3-2より、命題R3「『acb2>0かつc≦0』『命題Pが成り立たない』」が真であることを証明するためには、
     ・命題R3-1「acb2>0かつc=0』『命題Pが成り立たないが真であること
     ・命題R3-2「acb2>0かつc<0』『命題Pが成り立たないが真であること
  を示せばよい。
 ・命題R3-1「『acb2>0かつc=0』『命題Pが成り立たない』」は真である。  
  なぜなら、
   ・「ならば⇒」の真理値表をみるとわかるように、
    命題Pが偽にしかならないとき、「命題P命題Q」は真になるように、「命題P命題Q」は定義されている。
   ・『acb2>0かつc=0』は偽である。
      実際、
            c
=0のとき、acb2=0−b2=−b2≦0(∵bR に対してb2≧0)
       つまり、c=0とacb2>0の同時達成は不可能。 
   ・上記2点より、命題R3-1「『acb2>0かつc=0』『命題Pが成り立たない』」は真であると示された。
 ・命題R3-2「acb2>0かつc<0』『命題Pが成り立たないは真である。
  なぜなら、
  『acb2>0かつc<0』acb2>0かつa<0かつc<0』『命題Pが成り立たない』であるから。
    ・「『acb2>0かつc<0』acb2>0かつa<0かつc<0』」は、
       『acb2>0かつc<0』a<0』だからだが、                                                 これは、次の手順で示せる。
         ・「acb2>0かつc<0」acb2かつc<0」
              なぜなら、「acb2>0」acb2b2>0+b2」 ()であるから。        
         ・「acb2かつc<0」acb2かつ 1/c<0」
              なぜなら、c<0 1/c<0()だから。 
         ・「acb2かつ 1/c<0」ab2/c≦0」
              なぜなら、次の二点から。
              ・「acb2かつ 1/c<0」 「(1/c)ac<(1/c)b2」すなわち「ab2/c」(
              ・「 1/c<0」 b2/c≦0  ∵ bR に対してb2≧0
         ・「ab2/c≦0」a<0」(∵狭義順序の推移律
    ・「『acb2>0かつa<0かつc<0』『命題Pが成り立たない』」は、
        「2変数二次形式の符号判定〜行列を使わずに」のケースUで、示されている。
   

→[トピック一覧:二次形式]
→[線形代数目次/総目次] 

 

定理:負値定符号行列になるための必要十分条件〜主小行列式に関連して


  
次の二つの命題は、同値
命題P対称行列A= は負値定符号行列
    つまり、Q(x,y) = ax2+2 bxy + c y2 は、負値定符号二次形式
命題Q対称行列A第二次主小行列行列式が正
    かつ 
    対称行列A第一次主小行列行列式が負。
   つまり、
   対称行列A= の第二次主小行列 (=Aそのもの)
              
     の行列式 acb2が正。
    かつ 
   対称行列A= の第一次主小行列a行列式aが負。  
    かつ 
   対称行列A= の第一次主小行列c行列式cが負。

→[トピック一覧:二次形式]
 

cf. n変数の二次形式への拡張

[文献−線型代数]
・佐武『線型代数学』W§4 定理6-注意(p.164) 主小行列式:対角線上にある小行列式
・斎藤『線形代数入門』156. Chiang322-326.

(「命題Q命題P」の証明)

2変数二次形式の符号判定 〜行列を使わずに」ケースUより。

(「命題P命題Q」の証明)

「命題P命題Q」を示すために、「命題P命題Qの対偶「『命題Qが成り立たない『命題Pが成り立たない』」を示す
step1:「命題P命題Qの対偶「『命題Qが成り立たない『命題Pが成り立たない』」の分析
 「命題P命題Qの対偶「『命題Qが成り立たない『命題Pが成り立たない』」とは、
     命題R1acb2≦0『命題Pが成り立たない』」
       かつ
     命題R2「『acb2>0かつa≧0』『命題Pが成り立たない』」
       かつ
     命題R3「『acb2>0かつc≧0』」『命題Pが成り立たない』」
 であるから(そのわけは、step1-1,step1-2)、
 この命題R1、命題R2、命題R3を、全て示せば、
 「命題P命題Q」を証明したことになる。
  
step1-1:『命題Qが成り立たない』ということの分析
 「命題Qが成り立たない」とは、
 「acb2≦0またはacb2>0かつa≧0』またはacb2>0かつc≧0』」を意味する。
 なぜなら、
  ・「命題Qが成り立たない」とは、
   「『acb2>0かつa<0かつc<0』が成り立たない」ということ。
  ・「『acb2>0かつa<0かつc<0』が成り立たない」とは、
   「acb2≦0またはa≧0またはc≧0」ということ。(
  ・「acb2≦0またはa≧0またはc≧0」とは、
    「acb2≦0またはacb2>0かつa≧0』またはacb2≦0かつa≧0』またはacb2>0かつc≧0』またはacb2≦0かつc≧0』」
   である。
     なぜなら、
      「a≧0」は、「『acb2>0かつa≧0』またはacb2≦0かつa≧0』」であり、
      「c≧0」は、「『acb2>0かつc≧0』またはacb2≦0かつc≧0』」であるから。
  ・「acb2≦0またはacb2>0かつa≧0』またはacb2≦0かつa≧0』またはacb2>0かつc≧0』またはacb2≦0かつc≧0』」
   とは、
   「acb2≦0またはacb2≦0かつa≧0』またはacb2≦0かつc≧0』またはacb2>0かつa≧0』またはacb2>0かつc≧0』」
   である(∵結合律
  ・「acb2≦0またはacb2≦0かつa≧0』またはacb2≦0かつc≧0』またはacb2>0かつa≧0』またはacb2>0かつc≧0』」
   とは、
   「acb2≦0または               『acb2≦0かつc≧0』またはacb2>0かつa≧0』またはacb2>0かつc≧0』」
   である。(∵吸収律
  ・「acb2≦0または               『acb2≦0かつc≧0』またはacb2>0かつa≧0』またはacb2>0かつc≧0』」
   とは、
   「acb2≦0または                              『acb2>0かつa≧0』またはacb2>0かつc≧0』」
   である。(∵吸収律

step1-2:「命題P命題Qの対偶「『命題Qが成り立たない『命題Pが成り立たない』」の分析
 「命題P命題Qの対偶「『命題Qが成り立たない『命題Pが成り立たない』」とは、
     命題R1acb2≦0『命題Pが成り立たない』」
       かつ
     命題R2「『acb2>0かつa≧0』『命題Pが成り立たない』」
       かつ
     命題R3「『acb2>0かつc≧0』」『命題Pが成り立たない』」
 である。
 なぜなら、 
  ・「『命題Qが成り立たない『命題Pが成り立たない』」とは、
    step1-1より、
    「acb2≦0またはacb2>0かつa≧0』またはacb2>0かつc≧0』」『命題Pが成り立たない
    である。
  ・「acb2≦0またはacb2>0かつa≧0』またはacb2>0かつc≧0』」『命題Pが成り立たない
    とは、
      「acb2≦0『命題Pが成り立たない』」
       かつ
      「『acb2>0かつa≧0』『命題Pが成り立たない』」
       かつ
      「『acb2>0かつc≧0』」『命題Pが成り立たない』」
    である。(
step1-3:結論
 以上より、
 「命題P命題Qの対偶「『命題Qが成り立たない『命題Pが成り立たない』」とは、
     命題R1acb2≦0『命題Pが成り立たない』」
       かつ
     命題R2「『acb2>0かつa≧0』『命題Pが成り立たない』」
       かつ
     命題R3「『acb2>0かつc≧0』」『命題Pが成り立たない』」
 であるから、
 この命題R1が真であること、命題R2が真であること、命題R3が真であることを、全て示せば、
 「命題P命題Q」を証明したことになる。

step2:命題R1
 命題R1「acb2≦0『命題Pが成り立たない』」が成立することは、
 「2変数二次形式の符号判定〜行列を使わずに」のケースV,ケースWで、示されている。

step3:命題R2「『acb2>0かつa≧0』『命題Pが成り立たない』」が真であることの証明
 step3-1:「acb2>0かつa0」の分析
  「acb2>0かつa≧0」とは、 
  「『acb2>0かつa=0』またはacb2>0かつa>0』」であることに他ならない。
   なぜなら、
    ・「acb2>0かつa≧0」とは、「acb2>0かつa=0またはa>0』」ということである。(a≧0a=0またはa>0』)
    ・「acb2>0かつa=0またはa>0』」とは、
      「『acb2>0かつa=0』またはacb2>0かつa>0』」ということである。(∵分配律
 step3-2:命題R2「『acb2>0かつa0』『命題Pが成り立たない』」の分析
  命題R2「『acb2>0かつa≧0』『命題Pが成り立たない』」とは、
      命題R2-1「『acb2>0かつa=0』 『命題Pが成り立たない』」
      かつ 
      命題R2-2「acb2>0かつa>0』 『命題Pが成り立たない』」    
  である。
  なぜなら、
  ・step3-1より、「acb2>0かつa≧0」「『acb2>0かつa=0』またはacb2>0かつa>0』」
  ・「『(acb2>0かつa=0)またはacb2>0かつa>0)』 『命題Pが成り立たない』」
   とは、
      命題R2-1「『acb2>0かつa=0』 『命題Pが成り立たない』」
      かつ 
      命題R2-2「acb2>0かつa>0』 『命題Pが成り立たない』」    
   ということである。(
    
 step3-3:命題R2「『acb2>0かつa0』『命題Pが成り立たない』」の証明
 ・step3-2より、命題R2「『acb2>0かつa≧0』『命題Pが成り立たない』」が真であることを証明するためには、
     ・命題R2-1「acb2>0かつa=0』『命題Pが成り立たないが真であること
     ・命題R2-2「acb2>0かつa>0』『命題Pが成り立たないが真であること
  を示せばよい。
 ・命題R2-1「『acb2>0かつa=0』『命題Pが成り立たない』」は真である。  
  なぜなら、
   ・「ならば⇒」の真理値表をみるとわかるように、
    命題Pが偽にしかならないとき、「命題P命題Q」は真になるように、「命題P命題Q」は定義されている。
   ・『acb2>0かつa=0』は偽である。
      実際、
            a
=0のとき、acb2=0−b2=−b2≦0(∵bR に対してb2≧0)
       つまり、a=0とacb2>0の同時達成は不可能。 
   ・上記2点より、命題R2-1「『acb2>0かつa=0』『命題Pが成り立たない』」は真であると示された。
 ・命題R2-2「acb2>0かつa>0』『命題Pが成り立たないは真である。
  なぜなら、
  『acb2>0かつa>0』acb2>0かつa>0かつc>0』『命題Pが成り立たない』であるから。
    ・「『acb2>0かつa>0』acb2>0かつa>0かつc>0』」は、
       『acb2>0かつa>0』c>0』だからだが、                                                 これは、次の手順で示せる。
         ・「acb2>0かつa>0」acb2かつa>0」
              なぜなら、「acb2>0」acb2b2>0+b2」 ()であるから。        
         ・「acb2かつa>0」acb2かつ 1/a>0」
              なぜなら、a>0 1/a>0()だから。 
         ・「acb2かつ 1/a>0」cb2/a≧0」
              なぜなら、次の二点から。
              ・「acb2かつ 1/a>0」 「(1/a)ac>(1/a)b2」すなわち「cb2/a」(
              ・「 1/a>0」 b2/a≧0  ∵ bR に対してb2≧0
         ・「cb2/a≧0」c>0」(∵狭義順序の推移律
    ・「『acb2>0かつa>0かつc>0』『命題Pが成り立たない』」は、
        「2変数二次形式の符号判定〜行列を使わずに」のケースTで、示されている。
   
step4:命題R3「『acb2>0かつc≧0』」『命題Pが成り立たない』」が真であることの証明
 step4-1:「acb2>0かつc0」の分析
  「acb2>0かつc≧0」とは、 
  「『acb2>0かつc=0』またはacb2>0かつc>0』」であることに他ならない。
   なぜなら、
    ・「acb2>0かつc≧0」とは、「acb2>0かつc=0またはc>0』」ということである。(c≧0c=0またはc>0』)
    ・「acb2>0かつc=0またはc>0』」とは、
      「『acb2>0かつc=0』またはacb2>0かつc>0』」ということである。(∵分配律
 step4-2:命題R3「『acb2>0かつc0』『命題Pが成り立たない』」の分析
  命題R3「『acb2>0かつc≧0』『命題Pが成り立たない』」とは、
      命題R3-1「『acb2>0かつc=0』 『命題Pが成り立たない』」
      かつ 
      命題R3-2acb2>0かつc>0』 『命題Pが成り立たない』」    
  である。
  なぜなら、
  ・step4-1より、「acb2>0かつc≧0」「『acb2>0かつc=0』またはacb2>0かつc>0』」
  ・「『(acb2>0かつc=0)またはacb2>0かつc>0)』 『命題Pが成り立たない』」
   とは、
      命題R3-1「『acb2>0かつc=0』 『命題Pが成り立たない』」
      かつ 
      命題R3-2「acb2>0かつc>0』 『命題Pが成り立たない』」    
   ということである。(
    
 step4-3:命題R3「『acb2>0かつc≦0』『命題Pが成り立たない』」の証明
 ・step3-2より、命題R3「『acb2>0かつc≧0』『命題Pが成り立たない』」が真であることを証明するためには、
     ・命題R3-1「acb2>0かつc=0』『命題Pが成り立たないが真であること
     ・命題R3-2「acb2>0かつc>0』『命題Pが成り立たないが真であること
  を示せばよい。
 ・命題R3-1「『acb2>0かつc=0』『命題Pが成り立たない』」は真である。  
  なぜなら、
   ・「ならば⇒」の真理値表をみるとわかるように、
    命題Pが偽にしかならないとき、「命題P命題Q」は真になるように、「命題P命題Q」は定義されている。
   ・『acb2>0かつc=0』は偽である。
      実際、
            c
=0のとき、acb2=0−b2=−b2≦0(∵bR に対してb2≧0)
       つまり、c=0とacb2>0の同時達成は不可能。 
   ・上記2点より、命題R2-1「『acb2>0かつc=0』『命題Pが成り立たない』」は真であると示された。
 ・命題R3-2「acb2>0かつc>0』『命題Pが成り立たないは真である。
  なぜなら、
  『acb2>0かつc>0』acb2>0かつa>0かつc>0』『命題Pが成り立たない』であるから。
    ・「『acb2>0かつc>0』acb2>0かつa>0かつc>0』」は、
       『acb2>0かつc>0』a>0』だからだが、                                                 これは、次の手順で示せる。
         ・「acb2>0かつc>0」acb2かつc>0」
              なぜなら、「acb2>0」acb2b2>0+b2」 ()であるから。        
         ・「acb2かつc>0」acb2かつ 1/c>0」
              なぜなら、c>0 1/c>0()だから。 
         ・「acb2かつ 1/c>0」ab2/c≧0」
              なぜなら、次の二点から。
              ・「acb2かつ 1/c>0」 「(1/c)ac>(1/c)b2」すなわち「ab2/c」(
              ・「 1/c>0」 b2/c≧0  ∵ bR に対してb2≧0
         ・「ab2/c≧0」a>0」(∵狭義順序の推移律
    ・「『acb2>0かつa>0かつc>0』『命題Pが成り立たない』」は、
        「2変数二次形式の符号判定〜 行列を使わずに」のケースTで、示されている。
   


→[トピック一覧:二次形式]
→[線形代数目次/総目次]