Ref.2016.02 2016.03.03
地域航空に地方の連帯を
1. 日本国内に於ける航空サービス
近年の航空業界トピックスの一つは、Low Cost Carrierの(LCC)4社-ピーチ、ジェットスター、バニラエア及び春秋航空の進出であろう。 それではその結果として、全ての国民が航空サービス向上の恩恵を受ける機会を得たと言えるのであろうか。 それはこれらLCCの路線を見れば一目瞭然である。
日本のLCC路線(2015年4月現在)
航空会社 |
首都圏発路線 |
中部発路線 |
伊丹・関空発路線 |
地方間路線 |
ピーチ(APJ) |
成田〜新千歳、関 福岡 |
なし |
関西〜仙台、松山、 |
なし |
ジェットスター(JJP) |
成田〜新千歳、関 |
中部〜新千歳、福 |
関西〜大分、熊本 |
なし |
バニラエア(VNL) |
成田〜新千歳、沖 |
なし |
なし |
なし |
春秋航空(SJO) |
成田〜広島、高松、 |
なし |
なし |
なし |
註:赤字は首都圏空港、青字は幹線空港を示す。
第 1 表
第1表に見る通り、LCC路線は首都圏、中京圏及び関西圏などいわゆる大都市圏に関係する需要-幹線需要だけを対象としている。 これは当然のことで、LCCは大量輸送によるコストダウンをねらったビジネス・モデルであるから、ある程度以上の需要の存在が必須条件である。 端的に言えば需要の少ない地方間路線にはLCCの進出は望めない。 それではいわゆるlegacyCarrierと言われる伝統的航空会社が運営する羽田、成田、伊丹、関西及び中部空港発以外の地方路線についてはどうかと言うと、それは第2表に示すようになっている。 なお、子会社が運航している便で親会社の便名を使用している場合は、親会社の便として選別している。 またコードシェア便は運航会社のみ記載している。
そのような路線は実に52路線も有るので、殆ど地方間区間は路線開設されているようにも見えるが、そうでもない。 その大部分が新千歳、福岡及び那覇のような幹線空港からの路線であり、それは相当の規模の市場を背景とした路線であることは容易に想像出来る。 やはり経済的合理性を求めれば、大型機材を使用して大量輸送することになる。 神戸空港はその位置づけが複雑であるが、関西圏の第三空港と位置づければ、52路線のうちで正真正銘の地方路線は宮古〜新石垣の一路線しかないのである。
伝統的航空会社の運航する地方路線(2015年4月現在)
航空会社 |
運航する地方間路線 |
全日本空輸グループ(ANA) 30路線 |
福岡〜仙台、新潟、宮崎、対馬、福江 新千歳〜稚内、女満別、中標津、釧路、函館、青森、花巻、秋田、仙台、福島、新潟、富 沖縄〜仙台、新潟、静岡、広島、高松、松山、熊本、長崎、宮古、新石垣 宮古〜新石垣 |
日本航空グループ 7路線 |
福岡〜花巻、仙台 新千歳〜女満別、花巻、秋田、仙台、新潟 |
日本トランスオーシャン航空(JTA) 5路線 |
沖縄〜小松、岡山、宮古、新石垣、久米島 |
スカイマーク(SKY) 8路線 |
神戸〜仙台、茨城、米子、長崎、鹿児島、 福岡〜茨城、沖縄〜茨城、沖縄〜米子 |
ソラシドエア(SNA) 1路線 |
沖縄〜宮崎、鹿児島、新石垣 |
AIR DO(ADO) 1路線 |
新千歳〜仙台 |
スターフライヤー(SFJ) |
なし |
註:青字は幹線空港を示す。
第 2 表
それで第2表に示す7社の運航する機材で最小型航空機を調べてみると、第3表のようである。
大手航空会社の使用機材(2015年4月現在)
航空会社 |
運航する最小機材 |
1便/日、座席利用率60%を維持するに必要な年間旅 |
全日本空輸グループ(ANA) |
DHC-8-Q400(74席) |
32,412人 |
日本航空グループ(JAL) |
CRJ200(50席) |
21,900人 |
日本トランスオーシャン航空(JTA) |
Boeing 737-400(145席) |
63,510人 |
スカイマーク(SKY) |
Boeing 737-800(177席) |
77,526人 |
ソラシドエア(SNA) |
Boeing 737-800(174席) |
76,212人 |
AIR DO(ADO) |
Boeing 737-700(144席) |
63,072人 |
スターフライヤー(SFJ) |
Airbus A320(150席) |
65,700人 |
2015年9月現在
第 3 表
ANAグループの最小機材は74席のDHC-8-Q400なので、1便/日便運航であれば年間概ね3万2千人の需要が有れば採算の取れる見込みが有り、JALグループでは50席のCRJ200路線では、概ね2万2千人の需要が有れば良い。 しかし、集客効率から見れば一般的には1日2〜3便は欲しいから、そうするとANAグループでは年間6万5千人くらい、JALグループでは年間概ね4万5千人の需要が見込めれば路線開設できる可能性が生じてくる。 しかし、この数字は多くの地方都市間では実現が難しい量であると見られ、今後ANA便或はJAL便として新たな地方路線が開設される可能性は低いと予測する。 それ以外の後発航空会社の使用機材はもっと大きいので、これらの航空会社が低需要の地方路線に進出してくる可能性は、機材グリの為の回航路線を除けば、極めて低いと見られる。
それで地方路線に於ける航空サービスの向上には、第3表の航空会社の機材よりも小型の機材を運航する航空会社の存在が必要になってくる。 大手会社が大型機とともに小型機も運航すれば良いではないかと言う考えも出てくると思うが、その場合、大型機に向けた運航支援体制で運航支援をすることになるので、それは小型機の運航コストが割高になることを意味する。 現実にANAグループはDHC-8-Q400は子会社のANA Wingsが、JALグループのCRJ200とEmbraer 170は、これも子会社のJ-AIRが運航していて、ANAやJALの本体が運航しているのではない。 それで現状以上にこれら大手航空会社が小型機事業をより小型の分野に拡大するとは、考えにくいのである。
ここで取り上げている問題は、需要の少ない地方都市間では十分な航空サービスを受けられないことにある。 それで、そのような中小市場圏の地方間路線についての方策として地域航空の存在がある。 なお「地域航空」と言う呼び名は我が国に於いてはあくまでも通称であり、国土交通省では「特定本邦航空運送事業者以外の事業者」と呼んでおり、現在九社が存在する。 それら9社を第4表に掲げる。 ちなみに「特定本邦航空運送事業者は第1表に掲げるLCC4社の11社と第2表に掲げる大手航空会社7社である。 なお、ANA WingsとJ-AIRは小型機を運航しているが、統計上はそれぞれANAとJALに含まれている。
特定本邦航空運送事業者以外の事業者
会社名 |
保有機 |
備考 |
北海道エアシステム(HAC) |
Saab340BWT(3機) |
|
フジドリームエアラインズ(FDA) |
E170(3機)、E175(6機) |
|
新中央航空(N.C.A) |
Dornier228-200(5機) |
|
東邦航空(TAL) |
シコルスキーS76C(2機) |
ヘリコプター運航会社 |
アイベックスエアラインズ(IBX) |
CRJ700NG(7機)、CRJ100/200(3機) |
|
オリエンタルエアブリッジ(ORC) |
DHC-8-200(2木) |
|
天草エアライン(AMX) |
DHC-8-100(1機) |
2016年1月にATR42と交代 |
日本エアコミューター(JAC) |
DHC-8-Q400(11機)、Saab340B(10機) |
|
琉球エアコミューター(RAC) |
DHC-8-100(4機)、DHC-8-Q300(1機) |
DHC^8-Q400Combi導入中 |
第 4 表
しかし、この報告の主題は、「地域航空」に関することであるから、リージョナル・ジェット機で比較的長距離路線を運航しているFDAとIBXはイメージに合わないので検討対象から除外し、さらに当研究所の対象範囲は固定翼機に限っているので、TALも除外した六社を対象として検討を進めることにしたい。
2. 我が国の地域航空の現況
前述したように、この報告で取り扱う地域航空会社はHAC、N.C.A、ORC、AMX、JAC及びRACの6社とする。 これら6社の事業概要は次の通りである。
地域航空会社の運航路線
会社名 (従業員数) |
経営参加 地方自治体 |
運航路線 |
備考 |
||
管轄区域内 |
管轄区域〜外部 |
管轄区域外間 |
|||
HAC (100人) |
北海道 |
丘珠〜釧路、函館、 |
丘珠〜三沢 |
||
N.C.A (91人) |
(実態的に東京都) |
調布〜新島、大島、 |
東京都が機材購 |
||
ORC (84人) |
長崎県 |
長崎〜壱岐、対馬、 |
福江〜福岡 |
||
AMX (57人) |
熊本県 天草関係市町村 |
天草〜熊本 |
天草〜福岡 熊本〜伊丹 |
||
JAC (508人) |
奄美諸島市町村 |
奄美大島〜喜界島、 沖永良部〜与論 |
鹿児島〜奄美大 |
鹿児島〜種子島、 隠岐〜出雲 福岡〜屋久島、鹿児 伊丹〜但馬、出雲、 |
創立時は奄美大 |
RAC (114人) |
沖縄県 県内関係市町村 |
那覇〜北大東 那覇〜南大東 那覇〜宮古 那覇〜新石垣 那覇〜久米島 那覇〜与那国 宮古〜新石垣、多良 新石垣〜与那国 南大東〜北大東 |
那覇〜与論 那覇〜奄美大島 |
註:2015年4月ダイヤ。 赤字は参加地方自治体の官庁所在地空港を示す。 従業員数は2015年3月31日現在
第 5 表
これらの路線の性格を分類してみると、実態がより明白に現れてくる。
1. N.C.Aを除く5社はいわゆる第三セクター会社である。 またN.C.Aにしても機材購入の大部分と着陸料について東京都の助成を受けており、準第三セクター会社と言っても良いと思う。
2. JACを除けば、これらの会社の運航する路線は、経営参加地方自治体の管轄区域内、或は管轄区域からの路線である。 そして全ての会社が離島路線を運航しており、管轄区域内に内陸路線を運航しているのはHACのみである。 このことから地域航空の主目的が離島路線の運営にあると見ることが出来る。 しかし離島路線においては、商業的採算をとるのが難しいので、会社形態として第三セクター会社となっていると見られる。
3. 第5表に現れない現在定期路線が開設されていない空港は、礼文、佐渡、小値賀、上五島、慶良間、伊江島、粟国、下地島及び波照間空港の9空港である。 このうち伊江島と下地島空港を除けば滑走路長が800m級である。 伊江島は沖縄本島の本部港からフェリーで30分の位置に有り、下地島は宮古空港の利用が可能であることで路線が開設されていないと見る。 800m級滑走路で運航できるのは19席級以下の航空機に限られるが、事業規模は小さく運航コストとして割高になるので、現在19席機以下の航空機を運航している国内定期航空運送事業者はN.C.Aのみである。
4. JACは、出資地方自治体の管轄区域-奄美諸島外への路線を開設していることが会社の事業規模の拡大に繋がっているが、これは出資地方自治体が財政補助をしないことを条件に管轄区域外への路線進出を認めているからである。 それ故JACは創立以来、出資地方自治体からは創立時の出資以外の財政支援を受けていない。
5. JACを除く第三セクター会社は、地域の関係地方自治体より財政援助を受けているが、それが管轄区域外への展開を事実上制限することになり、会社の事業規模拡大の制約、ひいては会社の財政的自立の機会をつぶしている可能性があると見るのである。 そして結果として助成を継続しなければならない状態を創り出しているようにも見える。
6. 航空運送事業は装置産業的性格が有り、相当額の設備投資が要求される。 またまさにネットワーク産業であり、規模の拡大が運営の効率化に直結する。 従って地域航空の更なる発展には、各社の事業規模の拡大が必要なのであるが、結論として言えば、現在の第三セクター会社の仕組みが地域航空の発展を妨げていると考えるのである。
3. 地域航空の可能性の拡大
それでは、地方間航空サービスの拡大・充実を図る為には、地域航空業界の拡大が最も適切な方策と考えるが、それを図るとすればどうすれば良いのか。 その答えはJACの例により明らかであり、即ち出資地方自治体の管轄区域外への路線展開を進め、事業規模拡大を図ることである。 現状のような基本的に都道府県内航空に留まっていれば、大きな発展は期待出来ない。 即ち地域航空の定義を従来の「参加地方自治体管轄地域内及び管轄地域から外部への交通手段の改善」に、「地域経済発展に資する事業としての位置づけ」を加えるべきだと思う。 管轄地域外での営業は「単なる営業区域の拡大」と捕らえ、俗な言い方をすれば出稼ぎ事業だと思えば良いのではないか。 地域航空の基本的な成立理由としての「地元住民への航空サーピスの提供」だけではなく、「地域にお金をもたらす営利事業」の側面があっても良いのではないか。
地域航空を更に発展させるために次のような対策が考えられる。
1. 現状の会社のままで出資地方自治体が管轄区域外の路線展開を認める。 しかし、その為には新たな助成の意義付けをする必要がありそうで、今迄それが出来なかったのが現在の結果を生んでいると見ている。 それではこの案は成立しないのかというとそうは思わない。 答えは既にJACにある。 JACが2014年地域航空世界ランキング47位にあるが、それは主要株主である奄美諸島地方自治体が管轄地域外の運航を、財政的補助をしないと言う条件で認めている。 財政補助によって会社が伸びたのではなく、JACに財政補助なしでの経営の自由裁量を認めたことにより、財政的自立ができたのである。 他の地域航空会社についても、会社の自己責任において事業展開する自由を認めることが、事業発展の近道ではないかと思料する。
2. さらに管轄区域外区間の運航に関しては、可能であれば既存の他社との提携により、実質的に事業拡大のスケールメリットを得られるようにする。 例えば空港営業所の供用、路線の相互乗り入れ、共同運航支援体制の構築などが考えられる。 このような事例として、資本系列は別々の会社であるがORCとAMXは、使用機材が同じで路線網が連結出来るので実際に福岡空港では業務提携をしていると聞く。 この方向性を路線展開にまで拡大して、相互乗り入れとコードシェアも組み合わせれば更なる発展が期待出来る。 このような方策を進めるに当たっては、第三セクター会社にあっては関係地方自治体の意向が大きく影響すると思われるので、関係地方自治体への啓蒙活動がかかせないであろう。
3. 地域航空事業が都道府県内航空から脱皮する為には、現在のような一都道府県に一地域航空会社と言う組み合わせではなく、会社に複数の地方自治体が参加することが有効と考える。 その方策として会社形態を現在の株式会社ではなく、LLC(Limited Liability Company-合同会社)に改組することを提案する。 LLCとは2006年に導入された新しい会社形態で、従来の株式会社と違うのは株式会社にあっては権限配分と利益分配は完全に出資比率に連動するが、LLCにあっては議決権配分及び利益分配は出資比率とは別に設定出来る。 従来の株式会社方式では、第一位の株主となった地方自治体は会社経営を左右出来るが、第2位以下の株主となった地方自治体では、会社運営について、即ち自身の地域に地域航空路線を開設することが保証されていないと理解してしまう恐れが生ずる。 比較的小規模である地域航空会社では、手広く路線展開出来ないので、その恐れは十分理解出来る。 その点、LLCでは出資比率とは別に議決権配分が出来るので、実行的に第2位以下の株主である地方自治体も、会社経営について、即ち運航路線の配分について第一位の株主と同等の影響力を行使出来る。 この仕組みによって、複数の地方自治体で一つの地域航空会社を円滑に経営出来る条件が整うと考えている。 また利益配分も出資比率と直結させなくても良いので、民間出資分に対して利益配分を大きくすることで、民間資本の参加を促進出来ると思う。
4. もう一つのやり方は、地方自治体が出資することと別の方法で既存の地域航空の運営に参加することである。 事例としては、兵庫県が機材を1機購入してJACに伊丹〜但馬線の運航を実質的に委託しているケースがある。 なお使用機材は現在Saab340Bであるが、近い将来にATR42と交代するよう手続きを進めている。 この方式では地域航空路線の開設を望む地方自治体は、購入或はリースによって所要の航空機を調達し、既存の航空会社に運航を委託することによって路線開設が出来る。 そして、もし路線経営が目論み通りの成果を挙げられれば、実質的に財政負担なしで地域に係る航空サービスの向上を目指すことができる可能性がある。
5. 但し、現実の問題として意に反して損失を生じて何らかの財政措置が必要な事態ともなれば、参加地方自治体としては傍観してばかりも居られなくなる恐れは十分にある。 それでそのリスクへの対策は予め用意して置く必要はあろう。
6. 地域航空事業も複数の会社の交流が進めば、共通機材の導入、共同の運航支援体制の構築等が可能になり、そうなればより低コストでの会社運営が可能になると思うが、それには関係地方自治体間の交流も前提条件になってくる。 ただ、当所の経験では地域航空の運営について複数の都道府県が協調したと言う事例は知らない。 複数の都道府県が協調して地域航空事業に取り組むならば、管轄区域外路線の開設がやりやすい環境になり、結果として航空サービスの拡充に繋がると思う。
以上に述べるように、将来の地域航空の発展には関係地方自治体の意識向上が欠かせないと考えるのである。
4.小需要区間への取り組み
日本の実態的な意味での地域航空は、1974年に発足した日本近距離航空とエアー北海道として良いと思う。両社は19席のDHC-6 TwinOtterにより、エアー北海道は稚内〜礼文線、利尻線及び日本近距離航空は新潟〜佐渡線を運航した。 その後発展的に機材は大型化されたが、1983年に新基準によりJACが19席のDornier 228-200で運航開始した。 そのような本格的地域航空と並んで、N.C.Aを始めとして9席のBN-2 Islanderによる路線も運航されていた。 そして地域航空業界に於いても機材の大型化が進み、19席級機で始まったJACも今の最小機材は36席のSaab340Bであり、N.C.Aも9席級機から19席のDornier 228-200に交替している。 N.C.Aの場合は、機材を大型化しても従前どおりの空港が使用出来たので問題は生じていないが、その他の地域では機材の大型化により廃止された路線が出て来ている。
それらの路線とは、稚内〜礼文、新潟〜佐渡、長崎〜上五島、長崎〜小値賀、那覇〜粟国、那覇〜慶良間、及び宮古、石垣〜波照間線である。 これらは全て800m級滑走路空港を利用していたが、機材の大型化により800m級空港では運用出来なくなり、そして路線廃止となったものである。
それも時流であると言ってしまえばそれ迄であるが、これらの離島に於ける航空サービスは全て切り捨てて良いのであろうか。 これらの路線は商業的採算をとるのが難しいが、民生的視点から維持することは必要ないのであろうか。 現在の地域航空会社が基本的に第三セクター会社であるのは、民生的見地の下に会社を設立、運営する必要があったからではないか。 そこから考えると、これらの800m級空港区間の必要性を再見直しする必要が有りそうである。 勿論海上交通も向上しているので、航空サービスを再開する必要がなくなっている区間も有ろう。 それを含めてきちんと検証すべきと考える。 そしてもしそのような区間が存在するならば、その救済方法も検討する必要があると思う。 それは地域航空が純商業的採算で運営されるならば、何も民生福祉を前面に押し出して乗り出す理由はないが、公共団体の民生福祉政策の一部として運営されている-即ち地域の地方自治体からの財政助成がある-ので、その役割を果たすことも考慮する必要があろう。 方法として関係する地方自治体が19席級航空機を購入して既存の地域航空会社に委託運航するのも一案であろう。 それは一地方自治体が多寡毒で行う事は難しいので、それ故に地方自治体間の連携が必要と考えるのである。
4.結論
以上に述べて来たように、日本の地域航空はそれなりの役割を果たしているが、現在は行き詰まりの状態にあると見られる。 そうなった理由は日本の地域航空が、基本的に都県内航空であることに原因があると考える。 比較的小需要の地方都市間の航空サービスの拡充には、地域航空を発展させるのが最も適当で近道であると思うが、更なる発展を期するには都道府県航空から脱却する必要がある。 それには航空事業者の取り組みの以前に、関係地方自治体の連携が不可欠である。 問題は当所の経験から見るに、地方自治体にその認識が薄いことである。 地域航空促進のために国内の多数の地方自治体によって全国地域航空システム促進協議会(全地航)が結成されているが、過去の活動を見る限り全く有効な活動はしていない。
年次総会や勉強会でも取り上げるテーマは海外の航空事情の紹介等が多く、本来取り組むべき日本に於ける地域航空の発展の為に地域航空は有効なツールとなるのか、どのような取り組みが地域の活性化に役立つのか、もし地域航空が有用とみられるならば、どのようにして地域航空事業を立ち上げるのかというようなテーマではないかと思うのであるが、過去に於いてそのようなテーマが取り上げられたことはない。
全地航が今後取り組むべきは、地域の発展の為に地域航空をどのように使うのが有効なのか、もし有効ならばどのようにして地域に地域航空を展開させるのかと言うことではないのか。 このテーマの取り組みには、この報告で述べたように、地域航空を現在の都道府県内航空から脱却させなければならず、それには都道府県の連帯が不可欠である。 その議論の中から地域の発展に最も効果的で且つ合理的な地域航空のあり方として、コンビニエント・ストアの便利さ、手軽さ、及び軽自動車の小回りの良さと低い運営コストのような要素を包含する発展性のあるビジネス・モデルが生まれてくることが望まれるのである。 以上