6−2−D ANAの小型機事業の将来

Ref.2019.02                                                                     2019.02.25

ANAの小型機事業の将来

1.報告の目的

全日本空輸(ANA)は今やわが国の最大の航空会社である。 DC-3からコンベアCV-440、Fokker F27、Vickers Viscountと言うプロペラ機からBoeing 727によりジェット時代に突入、今年にはAirbusA380が導入されると言う発展ぶりで、往年日本ヘリコプター輸送の時代と改名した全日本空輸の初期に同社のプロペラのオーバーホールや修理の検査を担当していた筆者にとっては昔日の感がある。 しかし、国内の地方路線運航から出発したANAは航空機の大型化や国際線の拡大が進んでも、依然として国内地方路線の大きな部分も担っている。 それ故に地方路線に関心を持つ当所としては、ANAの動向、特にフリート構成の変化に注目する。 航空運送業界は世界的にも底上げによる機材の大型化が進行している。 ターポプロップ機では30席級機で生産中の機種はなく、19席級機は2機種、50席級機は1機種、70席級機は2機種残っているだけで、リージョナル・ジェットも生産中のものの最小型は70席級のCRJ700NGである。

このような航空機製造業界の動向は、低需要地方路線の将来を不透明にしている。 ANAの小型機運送事業の分野ではリージョナル・ジェットの三菱MRJ90を発注しているが、投入する路線は発表されていない。 

この報告では国内線仕様で160席未満の航空機を小型機として定義するが、ANAの小型機である737-500

とDHC-8-Q400の2機種が近い将来にどのようにMRJと交代して行くのか、それが低需要地方路線の維持にどう影響するのか探求することにする。 

2.ANAのBoeing 737-500/DHC-8-Q400フリート

ANAの小型機、Boeing 737-500/DHC-8-Q400フリートを第1表に示す。 DHC-8-Q400は24機体制を計画されたが、9号機849Aが製造時のミスにより事故を起こして新造機と交代したので25機が購入されたが、現在稼働しているのは24機体制である。 Boeing 737-500は総計23機を購入したが、既に13機が退役して現在稼働しているのは10機である。

DHC-8-Q400/Boeing 737-500フリート

DHC-8-Q400

 

 

 

Boeing 737-500

 

 

型式

登録記号

登録年月日

抹消年月日

型式

登録記号

登録年月日

抹消年月日

DHC-8-402

841A

2003.07.24

 

737-54K

8404

1995.04.13

2018.08.12

DHC-8-402

842A

2003.10.28

 

737-54K

8419

1995.07.31

2016.06.16

DHC-8-402

843A

2004.01.13

 

737-54K

8500

1995.09.19

2017.01.26

DHC-8-402

844A

2004.05.31

 

737-54K

8504

1996.05.26

2018.06.01

DHC-8-402

845A

2004.11.15

 

737-54K

8595

1997.02.02

 

DHC-8-402

846A

2004.12.03

 

737-54K

8596

1997.02.25

2017.10.24

DHC-8-402

847A

2005.07.01

 

737-54K

300K

1997.05.20

 

DHC-8-402

848A

2005.04.21

 

737-54K

301K

1997.05.21

 

DHC-8-402

849A

2010.03.26

2010.03.26

737-54K

302K

1998.03.10

 

DHC-8-402

850A

2005.09.08

 

737-54K

303K

1998.04.14

 

DHC-8-402

851A

2005.10.28

 

737-54K

304K

1998.04.14

2018.10.19

DHC-8-402

852A

2006.09.16

 

737-54K

305K

1998.10.16

 

DHC-8-402

853A

2006.11.07

 

737-54K

306K

1999.05.18

 

DHC-8-402

854A

2007.03.27

 

737-54K

307K

1999.07.22

 

DHC-8-402NG

855A

2010.02.08

 

737-5YO

351K

2000.06.13

2011.03.29

DHC-8-402NG

856A

2010.11.05

 

737-5YO

352K

2000.08.29

2012.09.12

DHC-8-402NG

857A

2011.05.20

 

737-5YO

353K

2001.03.09

2014.01.27

DHC-8-402NG

858A

2011.10.27

 

737-5YO

354K

2001.02.13

2013.07.18

DHC-8-402NG

859A

2012.03.15

 

737-5L9

355K

2001.06.08

2012.02.15

DHC-8-402NG

460A

2012.08.10

 

737-5L9

356K

2001.10.15

 

DHC-8-402NG

461A

2013.01.24

 

737-5L9

357K

2002.02.15

 

DHC-8-402NG

462A

2013.07.08

 

737-5L9

358K

2002.05.15

2018.10.02

DHC-8-402NG

463A

2017.07.05

 

737-5L9

359K

2002.05.15

2018.12.07

DHC-8-402NG

464A

2017.10.03

 

 

 

 

 

DHC-8-402NG

465A

2017.12.12

 

 

 

 

 

第 1 表

第1表に見るように737-500は退役が始まっており、近年はそのペースが早まっている。 航空運送業界では一般的に旅客機の「経済寿命は20年」と認識されているが、737-500はその時期に差し掛かっている。 

一方、DHC-8-Q400については2017年10月に2機がANAの外部塗装のままオリエンタルエアブリッジ(ORC)にリースされて福岡〜宮崎線と福岡〜五島福江線に就航し、更に2018年10月には新路線である福岡〜小松線を開設した。 これらの運航は全便をANAがコードシェアしているが、実態としてはAKXが運航している便に、ORCが相乗りしているように見えるのである。

3.ANAグループの小型機運航路線

2019年1月ダイヤでは、DHC-8-Q400及び/又はBoeing 737-500の投入路線は39路線104便/日である。

ANA小型機の運航路線・便数(2019年1月)

分類

Q400単独運航

737-500単独運航

Q400/0500併用運航

他機種と併用運航

合計

路線数・便数

13路線36便

2路線2便

1路線6便

23路線60便

39路線104便

第 2 表

なおANAグループのDHC-8-Q400の運航路線・便数は、2機はORCが運航しているが、コードシェアによりANA便でもあるので、ANAウイングスとORCの運航の総和である。 第3表に39路104便の内訳を記載するが、これらの便はDHC-8-Q400、24機とBoeing 737-500、10機で運航しているので、稼働率としてはQ400が3.67便/日/機、737が1.60便/日/機である。  なおこの表の「旅客数」は2015年度実績「MRJ換算L/F」とは各路線の総便数/日を全便MRJと交代した場合を想定した座席利用率である。 

ANAグループの小型機運航路線(2019年1月)

区間

Q400便数

737-500便数

他機種便数

旅客数

MRJ換算L/F

備考

成田〜福岡

 

1

1

118,908

92.5%

成田〜仙台

2

 

 

86,393

67.2%

成田〜新潟

1

 

 

25,787

40.1%

大阪〜福岡

2

1

3

349,827

90.7%

大阪〜青森

3

 


80,912

42.0%

大阪〜秋田

3

 


98,864

51.3%

大阪〜仙台

1

 

7

516,871

100.6%

大阪〜福島

 

1

3

111,993

45.6%

大阪〜新潟

1

1

4

208,644

54.1%

大阪〜松山

6

1

2

435,592

75.3%

大阪〜高知

5

1


265,014

82.5%

大阪〜大分

3

 

2

100,168

31.2%

大阪〜熊本

3

2

2

307,953

68.5%

大阪〜宮崎

2

1

4

354,775

78.9%

大阪〜鹿児島

2


5

372,138

82.8%

中部〜福岡

4


6

334,438

52.1%

中部〜秋田

2

 

 

61,227

47.7%

中部〜仙台

2

 

3

126,046

39.2%

中部〜新潟

2

 

 

55,294

43.0%

中部〜松山

2

 

1

108,730

56.4%

中部〜宮崎

2

 

2

159,328

62.0%

中部〜鹿児島

2

 

3

211,286

65.8%

札幌〜稚内

2

 

 

46,258

36.0%

札幌〜女満別

3

 


84,452

43.8%

札幌〜中標津

3

 

 

99,406

51.6%

札幌〜釧路

2

 

1

92,302

56.4%

札幌〜函館

2

 

 

61,740

48.1%

札幌〜青森

2

 


48,153

37.5%

札幌〜秋田

2

 


49,504

38.6%

札幌〜仙台

2

1

4

126,969

28.2%

札幌〜福島

 

1

 

実績なし


札幌〜新潟

2

 


63,138

49.1%

福岡〜新潟

1

 

1

99,239

77.2%

福岡〜小松

 2

1

1

実績なし


Q4はORC運航

福岡〜対馬

6


 

171,177

44.4%

福岡〜五島福江

3

 

3

56,723

14.7%

Q4、1便はORC運航

福岡〜宮崎

6

 


96,388

25.0%

ORC 5便運航

福岡〜那覇

 

3

5

770,147

149.9%

福岡〜石垣

 

1

 

実績なし


88

16

63

 

 

註:青字はDHC-8-Q400のみで運航している路線。

第 3 表

稼働機の夜間駐機空港は第4表のように配置されており、出発時間と行き先を記載した。 DHC-8-Q400は稼働機が21機で予備機は3機、737-500は9機で運航して1機を予備機としている。

DHC-8-Q400/737-500機材配置

DHC-8-Q400

737-500

1

2

3

4

5

6

1

2

3

新千歳

7:40釧路

8:05中標津

青森

8:05青森

秋田

8:15大阪

仙台

8:05成田

8:20中部

中部

7:35新潟

7:45秋田

7:55仙台

8:05松山

8:15宮崎

9:00福岡

伊丹

7:15熊本

7:30松山)

7:35松山

8:30秋田

8:45青森

9:00仙台

8:05福島

9:20松山

9:25新潟

福岡

7:05大阪

7:45対馬

8:00新潟

7:15小松

7:15那覇

7:20成田

宮崎

7:35大阪

那覇

7:30石垣

石垣

8:10那覇

第 4 表

第4表を見れば、DHC-8-Q400の運航は北日本地域に重点があるが、737-500は一般的に見て北日本地区路線より市場規模が大きい福島、新潟以南の地域にだけ運航していることが分かる。 

4.MRJの導入

MRJは737-500後継機として発注したが、開発計画の遅れにより今の所MRJは2020年中頃からの引き渡しが予想されるが、MRJ導入前に737-500の大部分は退役していることも予測される。  前掲第3表の「MRJ換算L/F」とは全便をMRJと交代した場合の想定座席利用率を示したが、その基礎需要は2015年度データであるので2020年度までの成長を見込む必要がある。 2015〜2017年度のANAの輸送人キロの変化を見ると、年平均2.31%の成長なので、この成長が2020年度まで続くと想定すれば、2020年度の需要は2015年度より14.7%成長していることになる。 そこで損益分岐点座席利用率を60%と想定すれば、その座席利用率以上に2020年度にて達するには、逆算して2015年度の座席利用率が概ね50%以上でなければならない。 それも勘案してQ400/737-500路線の将来を予想すると、次の4項目に分類できると考える。

  • ORCへ移管。 現在進行中のORCへの移管路線については全便がORC運航に転換。
  • MRJへ機種変更。 2015年度でMRJ換算座席利用率が50.0%以上で、2020年度のMRJ換算座席利用率が70%以下の路線はMRJと機種変更する。 MRJ換算座席利用率が70%超過であると2020年度には座席利用率が80%を超す可能性があるので、その場合はより大型の機材を使用すべきであろう。
  • 大型機種に統一。 これは現在Q400/737-500が大型機種と並行運航している路線について、Q400/737-500を外して、並行運航している737-700/800などに機種統一することを想定している。 第3表でMRJ換算座席利用率が70%超過の路線がこれに該当する。
  • MRJ導入時に廃止。 2015年度でMRJ換算座席利用率が50%未満の路線は、今後採算が取れる見込みがないのでこの機会に廃止する。

上記4項目に対して各路線の分類を予想したのが第5表であるが、備考欄に2019年1月の現況を記載した。  

MRJへの機種交代の可能性予想

現行運航機種

路線の将来

区間

便数/日

備考

DHC-8-Q400

ORCへ移管

福岡〜対馬

0

Q400が6便運航

福岡〜小松

0

ORCのQ400が2便、他に-500/CR7が各1便運航

福岡〜五島福江

0

ANAのQ400/0RCのQ82が各3便運航

福岡〜宮崎

0

Q400でORCが5便、ANAが1便運航

MRJへ機種変更

成田〜仙台

2

Q400が2便運航

中部〜松山

3

Q400が2便、CR7が1便運航

中部〜福岡

10

Q400/320が各3便、-700/800が3便、CR7が1便

中部〜宮崎

4

Q400が2便、-700/-800が各1便運航

中部〜鹿児島

5

Q400/-800が2便、-700が1便運航

伊丹〜新潟

6

Q400/-500/-800が各1便、CR7が3便運航

伊丹〜熊本

7

Q400が3便、-500/-800が各2便運航

札幌〜中標津

3

Q400が3便運航

札幌〜釧路

3

Q400が2便、-800が1便運航

30

大型機種に統一

成田〜福岡

0

-500が1便、-800で1便運航

伊丹〜福岡

0

Q400は2便、-500/767/-800/CR7各1便運航

伊丹〜仙台

0

Q400/777/800/321が各1便、767/CR7が2便運航

伊丹〜松山

0

Q400が6便、-500/-800が各3便運航

伊丹〜高知

0

Q400が5便、-500が1便で運航

伊丹〜宮崎

0

Q400が2便、-500で1便、-800で4便運航

伊丹〜鹿児島

0

Q400が2便、321で1便、-800で4便運航

福岡〜新潟

0

Q400/CR7が各1便運航

0

MRJ導入時廃止

成田〜新潟

0

Q400が1便運航

伊丹〜青森

0

Q400が3便運航

伊丹〜秋田

0

Q400が3便運航

伊丹〜大分

0

Q400が3便、-800/CR7が各1便運航

中部〜秋田

0

Q400が2便運航

中部〜仙台

0

Q400/CR7が各2便、1800が1便運航

中部〜新潟

0

Q400が2便運航

新千歳〜稚内

0

Q400が2便運航

新千歳〜女満別

0

Q400が3便運航

新千歳〜函館

0

Q400が2便運航

新千歳〜青森

0

Q400が2便運航

新千歳〜秋田

0

Q400が2便運航

新千歳〜仙台

0

Q400/CR7/-700が各2便、-500が1便運航

新千歳〜新潟

0

Q400が2便運航

中部〜秋田

0

Q400が2便

0

737-500

MRJへ機種変更

伊丹〜新潟

6

Q400/-500/-800が各1便運航、CR7が3便

伊丹〜熊本

7

Q400が3便、-500が2便運航

大型機種に統一

成田〜福岡

0

-500/-800各1便運航

伊丹〜福岡

0

Q400は2便、-500/767/-800/CR7各1便運航

伊丹〜福島

0

-500/-800が各1便、CR7が2便

伊丹〜松山

0

Q400が6便、-500/-800が各3便運航

伊丹〜高知

0

Q400が5便、-500が1便で運航

伊丹〜宮崎

0

Q400が2便、-800で4便、-500が1便運航

福岡〜那覇

0

-500/-800が各3便、767が2便運航

0

MRJ導入時廃止

新千歳〜仙台

0

Q400/CR7/-700が各2便、-500が1便運航

0

註:第5表の赤字はQ400と737-500が並行運航している路線を示している。

第 5 表

なお札幌〜福島及び福岡〜小松及び福岡〜石垣線は2015年度実績がないので除外した。 第5表の現行路線数及び便数を要約したのが第6表である。 以上の検討からMRJと交代するのは9路線/43便であるから、MRJの稼働を現行のQ400と同じ3.67便/日/機と想定すれば、11.7機、実行上は稼働機12機に予備機1機を追加して13機のMRJが必要である。 但しANAはMRJを15機確定注文+10機オプション注文しているので、確定注文分は領収せざるを得ないとすれば、2機分は第5表の「大型機種に統一」欄に記載したような路線に大型機と並行使用することになると予想する。 

MRJ導入に伴う小型機フリートの再編成

条件

DHC-8-Q400

737-500

Q400/-500

合計

ORCへ移管

4路線/22便

4路線/22便

MRJへ機種変更

7路線/30便

2路線/13便

9路線/43便

大型機種に統一

3路線/58便

5路線/22便

15路線/80便

MRJ導入時に廃止

14路線/38便

1路線/3便

15路線/41便

37路線/148便

8路線/38

45路線/186便

第 6 表

ANAグループの小型機事業は、現在DHC-8-Q400、24機と737-500、10機の計34機で運航しているが、MRJ導入後はそれらの路線を整理してMRJ 15機で運用するのではないかと予測するのである。 なおオプションで10機発注しているが、それらが確定注文に転換される可能性は低いと予想する。

5.ANAグループの事業構造

ANAグループにおけるMRJの将来は、ANAの目指している事業構造と大きくて関わっている。 ANAグループの事業構造は、ANA本体の担当分野を最も合理的な運営が可能となる範囲に限定し、資本系列外の航空会社をコードシェアで取り込むことで、ANAの負担を軽減しながらも、グループ事業規模の拡充を図っていると見られる。 ANAの巧妙さは、関係航空会社に資本参加してもその会社を完全支配するほどのシェアは持たずに、コードシェアにより実効的支配をしていることにあると思う。 現在の事業構造を第7表に示すが、ANA本体とANAウイングス(AKX)との分担は、ANAが737-800以上の大型機、AKXは737-700以下の小型機となっている。 しかし737-700は国際線仕様機なので、国内線での運用は国際線空港まで回航が主たる目的と見ている。 ANAは737-700を16機購入したが9機は既にADOにリースされて運用されており、近い将来には全機ADO運用になることも予想される。 第7表にはAKXの運用航空機として737-800が記載されているが、これはANA/AKXの共通事業機として登録されているだけで殆ど実体がないと見ている。 MRJを第7表に付け加えるとすると、AKXの「160席未満の小型機運用」欄に記載することになるが、そうなるともしAKXが737-700の運用をADOに移管し、737-500とDHC-8-Q400が退役すれば、AKXはMRJだけを運用することになる。 しかしMRJのためだけにAKXを存続させるのも経済的とは考えられないのでAKXが清算される可能性もあり、もし清算されることになれば、MRJを早期に整理するとか、またはIBXに委託運航する可能性もあると思料するのである。 ANAのMRJの購入はANAの事業戦略に基づくと言うよりも国内の特殊事情よるもののようにも思われ、そこからMRJの居場所の設定は不透明と思えるのである。 但し、この報告での検討は路線別に数値的に行っているだけで、実行上必要になる機材回し、ネットワークの構成、地元との関係及び営業戦略等の問題を全く無視している。

ANA系列の航空会社と使用航空機

ANAグループ

コードシェア航空会社

ANA

AKX

ADO

SFJ

SNA

IBX

ORC

160席以上

の大型機

運用

777-200

777-300

787-8

787-9

767-300

A321

A320

737-800

737-800

767-300

A320

737-800

160席未満

の小型機

運用

737-700

737-500

DHC-8-Q400

MRJ90

737-700

CRJ700

DHC-8-Q400

DHC-8-Q200

第 7 表

結論を要約すれば、将来ANAはANA本体が160席以上の大型航空機を運用し、160席未満の航空機は基本的にコードシェア運航に依存するのではないかと予想するのである。 その過程では採算性に疑問符がつく路線まで他社に継承できないので廃止される路線が出てくると予想され、当所は15路線41便がその対象になると予測している。 しかし、もしANAがMRJの導入に伴って小型機事業の整理を図る場合は、機材回し、ダイヤ編成、営業政策、支援能力、地元との関係維持などの問題と併せて考慮しなければならず、必ずしもこの報告での検討結果通りにはならないであろう。 当所はANAの小型機事業に関する将来に対する見通しでは、基本的にはANAと共有できるとは思うが、実行上の配慮については当所の力の及ぶ範囲ではないので、これからはANAの行き方を注視して、この検討について自己評価することにしたい。

6.総括

ANAがDHC-8-Q400/737-500、34機にて運航している国内線小型機事業の将来については、以前は一部路線を除きMRJと交代して維持すると見ていたが、MRJの開発遅れのために機材計画は見直す必要が出てきたように思える。 ANAが保有するDHC-8-Q400/737-500より直上の大型機材は、737-700(国内線仕様144席)であるが、保有する国内線仕様の9機は全てAIRDOにリースされている。 近い将来に737-500を退役させ、DHC-8-Q400を一部ORCに移管するものを除いて退役させ、737-700は全機ADOに移管すれば、ANA自身が運航する最小型機は737-800(166席)とA320-200ceo(166席)になる。 そう見るとANA自身が運航する航空機は将来は166席以上の大型機であり、MRJの居場所はそこにはなさそうに見えるのである。 ANAの国内線事業の特色は、資本支配していない外部の航空会社とコードシェアしてANA本体の補助をさせていることである。 AIRDO、SNA及びSFJへの出資比率は20%未満であり、IBEXとORCには資本関係はないが、これら5社は現在コードシェアによりANA路線網の一部を担当している。 以上の検討からの結論として、ANAは近い将来には内部事業であるAKXの小型機フリートを整理して、フリート全体の底上げによる大型化を図るものと予測するのである。 したがって小型機事業は将来的には縮小方向と予測されるが、ある程度の規模の小型機の国内線ネットワークも営業上必要なので、その部分はコードシェアにより系列外航空会社を活用して運営して行くと推測される。 外形的にはIBXがCRJ700やMRJのようなリージョナル・ジェットの運用を集中するのが合理的とは考えられるが、IBXはCRJ700、10機を運航しているが、自社のリスクでこれ以上事業を拡張する意思はなさそうである。 そうであればIBXにMRJの運航委託することも難しそうなので、当面MRJはAKXが運用せざるを得ないのであろう。 以上のように検討してゆくと、MRJはANAグループにとってどの程度必要な機材であったのか疑問が生じてくる。 それ故にMRJはANAの小型機事業の中で限定的な役割を果たすものと見るのである。 MRJがどのように取り扱われたとしても、基本的にANAグループの小型機事業は縮小方向にあることは間違いないと思われるので、ANAの小型機による地方路線に依存している地域は、ポストDHC-8-Q400/737-500への対処を検討する必要があると思料するのである。

以上