6−3−J フィルエア構想の考察
j.

 23.01.02

「フィールエア」構想の考察

月22日と23日の朝日新聞朝刊に[鳥取から「舞い上がれ!」]と題して、鳥取空港を西日本の地域航空網の拠点とする誠に壮大な構想があることが掲載された。 新たに地域航空会社の仲間が増えることは歓迎すべきではあるが、先に名乗り上げた新潟県の「トキエア」構想にも共通することは、どちらも地域航空事業を商業的営利事業として魅力のある事業と考えているらしい。 地域航空に長年関係してきた筆者としては、地域航空のこの評価の高さは喜ぶべきことかも知れないが、実態としてはどこも苦しい運営を迫られて、その中で頑張っている。 現在運航している地域航空会社6社-北海道エアシステム(HAC)、新中央航空(NCA)、オリエンタルエアブリッジ(ORC)、天草エアライン(AMX)、日本日エアコミューター(JAC)及び琉球エアコミューターは、どれも第三セクター会社、またはそれに準じた経営で成り立っている。 今回名乗り上げた「フィールエア」は、既存会社とは別に、独立した純民間地域航空会社として運営するとしている。 既存の航空路線網の隙間を狙ったニッチ企業を目指すらしいが、実際にどのような構想なのか、その目論見が達成できるのか、考察することにした。

2.フィールエアホールデイングスの設立構想

朝日新聞の記事とフィールエアホールディングスのホームページによる事業構想を要約する。

(1)フランチャイズ方式の採用

フィールエアホールディングスと言うのは、一見してANAのやり方に習おうとしているように見える。 ANAはANAホールディング株式会社を持株会社として、その管理下の航空会社として全日本空輸(ANA)、ANAウイングス(AKX)、エアージャパン(AJX)及びバニラエア(VNL)がある。 このうち国内線を運営しているのはANAとAKXである。 しかし、ANA方式とフィールエア構想の大きな違いは、ANA方式ではホールディングス会社と航空会社の関係は親子関係である。 しかし、発表されたフィールエア構想はフランチャイズ方式であり、フィールエアホールディングをフランチャイザー本部(フランチャイザー)として、各地に加盟航空会社(フランチャイジー)を募集して、フランチャイズ・チェーンを結成すると言うものである。 従ってフランチャイザーは商標権や経営ノエハウを提供し、フランチャイジー、加盟航空会社は、自己資金で営業することになる。 「セブン・イレブン」や「ローソン」などのコンビニエンス・ストア・チェーンは、この方式で運営されている。 この方式の採用で、フランチャイザーは少ない資本で、実態的に大きな広域事業を運営できることになる。 この方式は公正取引委員会から「フランチャイズガイドライン」が公表されているが、航空運送業界ではまだ採用例はない。 

(2)事業構想

公表されている構想は、2022年6月23日に鳥取ガスの児島太一社長が資本金の大半を出資して設立した「フィールエアホールディングス」がフランチャイザーになり、そして丘珠、成田、中部、神戸、北九州、小松、鳥取。花巻及び米子空港を拠点とするフランチャイジー、(加盟航空会社)を募集して、そこに経営ノウハウを提供するビジネスの設立である。  このフランチャイズ・チェーン航空会社の使用機種はATR42-600を想定し、すでに今年7月にはATR社に最大36機購入のLetter of intendを発行していると報道されている。 公表された構想では、当初フランチャイジーとしての地域航空会社を5社設立する構想であり、それらの会社の拠点と運航予定路線を第1表に取りまとめる。

フイールエアのフランチャイジー構想

会社名(仮称)

拠点空港

設立時期

運航予定路線

フィールエア・ノース

丘珠空港

2028年春

公表計画なし

フィールエア・イースト

成田国際空港

2024年春

秋田、花巻、庄内、小松、富山、松本、中部、南紀白浜、徳島、神
戸、米子、鳥取

フィールエア・セントラル

中部国際空港

2027年春

公表計画なし

フィールエア・ウェスト

神戸空港

2026年春

成田、富山、小松、鳥取、米子、松山、大分、熊本、宮崎、但馬

フィールエア・サウス

北九州空港

2028年春

鳥取

記載なし

小松空港

記載なし

成田、神戸、仙台、広島

記載なし

鳥取空港

記載なし

成田、神戸、北九州、広島

記載なし

花巻空港

記載なし

庄内、丘珠、成田

記載なし

米子空港

記載なし

神戸、北九州、成田

第 1  表

計画ではフィールエア・イーストの24年春の設立予定を始めとして、フィールエア・ウェスト、フィールエア・セントラル、フィールエア・ノース及びフィールエア・サウスについては、会社名まで決めているが、第一弾のフィールエア・イーストの設立は2024年春を予定しているので、2023年中にフランチャイジーの応募がなければならない。

3.フィールエア構想の問題点

報道されたフィールエア構想をみると、幾つかの問題点があると考える。 なおこの疑問点の摘出は、公表された内容から見たもので、公表されていない部分をみれば問題は解消されているかも知れないが、当所はそこまで読めないので、この報告はあくまでも公表された構想に基づく検討と理解願いたい。

(1)フランチャイザーの能力

フランチャイズ方式では、フランチャイザーが商標(ブランド)の使用や経営ノウハウを提供し、フランチャイジーはブランドの使用権やフランチャイザーから提供される経営ノウハウを得て事業を経営すると言うものである。 しかし、この構想はまだ発足していないので、フィールエアホールディングスは売り物になるような社会的に信用のある商標は持っていない。 さらに、フィールエアホールディングスに、フランチャイザーとなるノウハウを持っているのかにも疑問がある。 フィールエアホールディングスの代表取締役会長の児島太一氏と代表取締役社長の井手秀樹氏は、前者が鳥取ガスと言う都市ガス会社の社長であり、後者は慶應大学名誉教授であって、経歴からして航空会社の経営経験はないと見られる。 フィールエアホールディングスのフランチャイザーとしての能力が両氏に依存しているとすれば、フランチャイジーである加盟航空会社に提供する経営ノウハウを保有しているとは思えない。 少なくとも両氏は実務経験に基づくノウハウは持っていないと見る。 もしフィールエアホールディングスのスタッフにその道の専門家が在籍するならそれを周知せしめる必要があるが、そうしていないところからすると、そのような専門家は在籍していないのかも知れない。 航空会社の設立や経営管理についての経験を持つ専門家は、ANA/JALのような大手航空会社にあっても少数であり、彼らは社内のエリートであるから、そのような人材が会社を辞めてフィールエアに入社してくるとは考えられない。 またもし航空会社OBに求めるとしても、地域航空会社で最も新しい会社はAMXの1998年10月創立で既に20年以上も経過しているので、当時の経験者を採用することもできないであろう。 筆者は1957年から航空運送業界に勤務し、地域航空にも直接関与もしてきたが、寡聞にして児島太一氏と井手秀樹氏の名前は聞いたことがない。 それで公表されているメンバーの現在の肩書きと公表されている経歴を見る限りでは、両氏に地域航空フランチャイズ・チェーンのフランチャイザーの能力があるとは思えない。 それ故に、フィールエアホールディングスは、地域航空会社の設立や経営を指導できるノウハウを保有していることを証明する必要がある。

(2)フランチャイザーの役割

フィールエアホールデイングスは、フランチャイザーとしての役割をどう考えているのだろうか。 一般的には、フランチャイザーの役割は、「商品開発や仕入れルートの確保、マニュアル作成、人材育成、宣伝などを行い、ブランド価値の維持やサービスの向上に努める」とある。 これを今回のケースに当てはめると、フィールエアホールディングスは次のようなことをやらなければならないであろう。

1.  フランチャイズ・チェーンの設立、運営とフランチャイジー(加盟航空会社)の募集

2.  加盟航空会社の事業構想の立案、事業免許取得、市場調査、使用航空機の入手及び要員募集等の支援

3.  加盟航空会社に適用する共通した運航規程及び整備規程、各種マニアル及び業務遂行手順原案の制定と提供

4.  加盟航空会社の共通の要員訓練シラバスの制定及び要員訓練の実施

5.  加盟航空会社の共同運航支援体制の設立及び活動支援

6.  フランチャイズ・チェーン及び加盟航空会社の広報・宣伝活動の広報・宣伝活動支援

などが挙げられるが、フィールエアホールディングスの構想は、ここまで細部を説明してはいない。 

但し使用航空機については、ATR42-0600を最大36機購入する取引意向書(業界で言うLetter of intendのことを言うのだろう)を締結したと報道されているが、それをどのような条件でフランチャイジーに引き渡すのか、今回の発表は触れていない。 フィールエアホールディングスが一括購入して加盟航空会社にリースしてくれるのか、それとも加盟航空会社、あるいはどこかのリース会社に引き渡し順位を譲渡してあとはリース会社任せとするのか、それに対する説明はない。 一口にリースと言っても、実質的に分割払いのようなフィナンシャル・リースと市場価格でリースするオペレーショナル・リースとがある。 現在ATRシリーズは人気機種であるから、二つのリース料金の間には相当の格差が生じていることも予測される。 従って、どのようなリース・スキムを採用するのか、どのような条件で機材を提供するのか明確にしないと、機材調達費がいくらになるか分からず、事業計画を立案することもできない。

(3)フランチャイジー出現の可能性

フィールエアホールディングスがフランチャイザーとして名乗りをあげるとしたら、そのフランチャイズ・チェーンに地域航空会社を設立して加盟を申し込んでくるところが、実際に出現するのだろうか。 

第1表にまとめたように、当面5社についてはイメージがありそうで仮称まで用意しているが、小松、鳥取、花巻及び米子を拠点とする運航は前述の5社が担当するのか、またはそれぞれの拠点空港に別会社を設立するのかはっきりしない。 フィールエアは、大手航空会社との競合を回避するように拠点空港を選定したとしているが、本当にそうなるのか検証し、取りまとめたのが第2表である。 

フイールエアのフランチャイジー構想

会社名(仮称)

拠点空港

運航予定路線

競合の有無

競合路線

運航会社

運航便数/日

フィールエア・ノース

丘珠空港

公表計画なし

フィールエア・イースト

成田空港

秋田線

花巻線

庄内線

小松線

富山線

松本線

中部線

南紀白浜線

徳島線

神戸線

米子線

鳥取線

羽田〜秋田線

羽田〜庄内線

羽田〜小松線

羽田〜富山線

成田〜中部線

羽田〜南紀白浜

羽田〜徳島線

羽田〜神戸線

羽田〜米子線

羽田〜鳥取線

ANA/JAL

ANA

ANA/JAL

ANA

ANA/JAL

JAL

ANA/JAL

ANA/SKY

ANA

ANA

9便/日

4便/日

10便/日

4便/日

5便/日

3便/日

10便/日

8便/日

6便/日

5便/日

フィールエア・セントラル

中部空港

公表計画なし

フィールエア・ウェスト

神戸空港

富山線

小松線

鳥取線

米子線

松山線

大分線

熊本線

宮崎線

但馬線

伊丹〜松山線

伊丹〜大分線

伊丹〜熊本線

伊丹〜宮崎線

伊丹〜但馬線

ANA/JAL

ANA/JAL/IBX

ANA/JAL/AMX

ANA/JAL

JAL

11便/日

7便/日

11便/日

11便/日

2便/日

フィールエア・サウス

北九州空港

鳥取線

福岡〜出雲線

JAL

2便/日

記載なし

小松空港

成田線

神戸線

仙台線

広島線

羽田〜小松線

ANA/JAL

11便/日

記載なし

鳥取空港

成田線

神戸線

北九州線

広島線

羽田〜米子線

福岡〜出雲線

ANA

JAL

6便/日

2便/日

記載なし

花巻空港

庄内線

丘珠線

成田線

新千歳〜花巻線

JAL

3便/日

記載なし

米子空港

神戸線

北九州線

成田線

羽田〜米子線

ANA

6便/日

第 2  表

フィールエアは大手航空会社との競合をさけるために、東日本では成田空港を拠点とし、西日本では神戸、鳥取及び米子空港を拠点とするとなっている。 成田を例にとると、直接競合するのは成田〜中部線しかないが、それだけが競争相手と見るのはあまりにも視野が狭いと考える。 現実的には、成田発路線の競争相手は羽田発路線であると思う。 それは成田空港を利用して幹線を運航しているLCCが証明している。 LCCは羽田発の定期航空会社より安い運賃を設定しているが、もし成田発の他社路線だけが競合相手ならば、例えば成田〜関西はLCC一社しか運航しておらず、競合相手がいないので何も運賃を安くする必要はない。 しかし、実際にはLCCが安い運賃設定しているのは、それは羽田発便との競合を意識しているためであるのは間違いない。 フィールエア構想では、競合の条件を狭く捉えて、同一空港使用の他社便だけが競争相手と見ているようである。 一般的には羽田発の運航便数の方が多いので、もし成田空港発路線の競合路線を羽田発路線と見れば、フィールエア構想で運航しても良さそうなのは、航空が新幹線に負けて現在は路線のない花巻線と松本線だけである。 この2路線には競合航空会社はないが、鉄道に勝てる可能性は少ない。 さらに、アクセスの面で成田の方が不利である。 それで代表例として東京駅から両空港に行くケースを比較してみる。

羽田及び成田空港利用のアクセスの差

利用交通機関

所要時間

運賃

羽田空港利用

バス

45〜55分

950円

成田空港利用

バス

70分

1300円

成田/羽田の差

+15〜25分

+350円

第 3  表

第3表に示すように明らかに成田利用の方が不利であるが、フィールエア構想ではそれをどう埋め合わせるのか触れていない。 成田の不利な分を運賃で相殺するのか、それは無視できると見ているのか、検討されていないようである。 LCCが成田起点としても、運賃の設定でその不利を相殺しているが、フィールエア構想からはそのような配慮があるとは窺えない。 神戸空港発路線も伊丹空港発路線との競合は避けられず、競合路線のない富山、鳥取及び米子線は過去において伊丹発で運航されていたが、採算不良で廃止された路線である。 それから年月が経過しているので、いまなら関西地域発の路線として再開できるのか、検証が必要である。 さらに言えば、例えば花巻〜庄内線や鳥取〜広島線に路線が成立するほどの航空需要が存在するのだろうか。 日本の航空路線網の特徴として本州横断路線が少ないこともその一つである。

羽田から小松、富山及び能登空港を除くと、中部、小牧からの新潟路線、関西、伊丹からの新潟線、伊丹からの出雲線と隠岐線及び神戸〜松本線だけで、現在は鳥取〜広島線のような本州横断の地方都市間路線は開設されていない。 そうして見るとフィールエア構想は、鳥取県に地域航空会社を設立すると言うよりも、誰かがどこかでやってくれて、それを仕切ることで利益を上げようと言うことではないかと推量するのである。 新聞記事によると、鳥取県知事は、「地方をネットワークで結ぼうと言う夢のある構想、ウィンウィンの関係をつくりたい」と前向きとあるが、けして鳥取県が旗振りして「鳥取航空」を設立しようとは言っていない。 地域の経済界も好意的と言うが、それは地域航空会社設立に関心があるのではなく、どこかの地域航空会社が鳥取空港に飛んでくることを期待しての声と理解する方が現実的と思う。 それも鳥取空港路線は現在ANAの羽田線5便/日しかなく、かつてはANA系のエアーセントラル(CRF)が中部空港から飛んでいたが、今は廃止されているので、この構想には鳥取空港再生の悲願が込められているようにも思えるのである。 

(4)顧客の不在

フィールエア構想は、第2表に掲げるように具体的な構想としてフィールエア・ノースをはじめと5社をあげているが、どのくらいの需要があるかについては全く触れていない。 フィールエア・ノースとセントラルには、計画路線すら記載されていない。 そして新潟県のトキエアもそうであったが、旅客の予約と、航空券の販売をどうやるのか、全く触れていない。 本来、航空運送事業の事業目的は、飛行機を飛ばすことではなく、飛行機を利用して旅客を輸送し、そこから収益を上げることである。 飛行機を運航するのは目的ではなく手段である。 フィールエア構想は、それを取り違えているように見える。 フィールエアホールディングスは、市場調査と需要開拓にどのようなノウハウを提供してくれるのだろうか。

現代の航空運送事業には、予約システム( Computer Reservation System-CRS)は不可欠で、これなしでは営業ができないと言っても過言ではない。 それ故に既存の地域航空会社は、NCA以外は全て大手航空会社のCRSに加入している。 NCAは独自に予約・航空券販売業務を行っているが、それはその路線網が大手航空会社の路線網と接続していないこと、及び市場が極く限定された地域であることからと推察する。 それでもNCAのホームページを見ると、予約の方法としてインターネット、電話及び旅行代理店での予約方法が案内されており、航空券の購入も空港カウンター出の支払い、クレジットカード決済及びコンビニエンスストア手の支払いの三通りが案内されている。 フィールエア加盟航空会社が大手航空会社のCRSに加盟せず、独自路線で進むと言うのも方策であるが、その方策は全く触れていない。 しかし、どのような予約・航空券販売方法を採用するかは、集客力とそのコストに大きく影響してくる。 ところが、この構想には予約・航空券販売方法に触れていないので、この構想には顧客は不在と断定せざるを得ない。 

経営学者のピーター・F・ドラッカー氏の言によれば、「企業の目的と使命を定義するとき、出発点は顧客である」とされるが、その観点からすればこの構想は目的と使命をしっかりと定義しているとは思えない。 提案する加盟地域航空会社について、少なくとも会社名まで用意した航空会社5社については、その市場圏で予測される航空需要を公表すれば、フランチャイジーの希望者が出現するかもしれない。

(5)航空運送業界の知識の欠如

ここまで検討して来て感ずるのは、この構想はよく考えられたものというよりも、単に思いついたことを羅列したにすぎないと言うことである。 公表された範囲で見る限り、航空運送業界の実情に不勉強であるように見える。 前述したように、成田起点地方路線の競合相手を単に成田発路線の有無で判定するのは、あまりにも近視眼的である。 一例をあげると、庄内〜花巻線が採算の取れる路線であると本気で信じているのだろうか。 このような構想を打ち上げるとしたら、もっと内容を検証して、実現性が感じられるようなものにすることである。 一般的に航空と鉄道の選択の分かれ目は3時間と言われている。 その視点からすると、東京〜盛岡は新幹線で2時間10分、東京〜松本は在来線の特急で2時間40分くらいであり、過去において鉄道の競争力が強いので航空の羽田〜花巻線は廃止に追い込まれ、羽田〜松本線は適当な機材のないことも手伝って、いままで開設されたことはない。 このような事実をどう見ているのだろうか。 この構想では、市場調査を何もやっていないようにすら思われるのである。

(6)地域航空会社としての経営の確立

この構想に従ってフランチャイジーとして地域航空会社を設立すれば、この会社の経営が確立するものでなければならない。 そうするにはまずその路線に十分な航空需要が存在するのか、他社との競合状態はどうなのか等の条件を精査しなければならない。 そして路線開設の是非、提供する運航便数と提供座席数の算出、競合に対抗できる運賃設定やサービスのあり方などを検討し、設定する必要があり、それを提供するのがフランチャイザーであるフィールエアホールデイングスのビシネスであろう。 しかし、報道で見る限りでは、フィールエアホールディングスがそれを提供できるとは全く思えない。 少なくとも現在まではそれを明らかになっていない。 それらのことは、フランチャイジー、加盟地域航空会社に全てを丸投げするつもりなのではないかとすら思える。 フィールエア構想では、このフランチャイズ・チェーンの航空会社を純粋な商業ベースで運営するように読めるが、既存の地域航空会社は6社のうち5社が第三セクター会社あるいはそれに準ずる会社であることは、地域航空会社が純商業的には成立しにくいことを物語っている。 それを第4表に掲載する。

日本の地域航空の資本構成と運航路線の内訳

社名

主要株主

CRS

内陸路線

離島路線

HAC

JAL 57.2%、北海道19.2%、札
幌市 13.5%

JAL

丘珠〜女満別、丘珠〜
釧路、丘珠〜函館、丘珠&#
12316;三沢

丘珠〜利尻、丘珠〜奥尻、

函館〜奥尻

NCA

川田工業 100%

自社

なし

調布〜新島、調布〜大島、

調布〜神津島、調布〜三宅島

ORC

長崎空港ビル 28.8%

長崎県 11.0%

ANA

福岡〜小松、福岡〜宮

福岡〜対馬、福岡〜福江、

長崎〜対馬、長崎〜対馬、

長崎〜壱岐、長崎〜福江、

AMX

熊本県 53.3%、

天草地方自治体 26.85%

JAL

天草〜熊本、天草〜福
岡、

伊丹〜熊本

なし

JAC

JAL 60%、

奄美地方自治体 40%

JAL

伊丹〜但馬、鹿児島〜
松山、

伊丹〜屋久島、鹿児島〜種子
島、

鹿児島〜奄美大島、

鹿児島〜奄美大島、

鹿児島〜喜界島、鹿児島〜徳之
島、

鹿児島〜沖永良部、鹿児島〜与
論、

奄美大島〜喜界島、

奄美大島〜徳之島、

奄美大島〜与論、

徳之島〜沖永良部、

RAC

JTA 74.5%、

沖縄県 5.1%

JAL

なし

那覇〜与論、那覇〜北大東、

那覇〜南大東、那覇〜奄美大
島、

那覇〜宮古、那覇〜新石垣、

那覇〜久米島、那覇〜与那国、

那覇〜沖永良部、宮古〜多良
間、

宮古〜新石垣、新石垣〜与那
国、

南大東〜北大東

第 4 表

フィールエア構想の提案路線は全て内陸路線であるが、既存の地域航空会社の路線の多くは船舶以外との競合のない離島路線で、内陸路線は少ない。 それでこの構想のような内陸路線を主体とした事業での存立の難しさが予想される。 第4表に掲げた6社のうちNCAだけが国及び地方自治体が資本参加しておらず、橋梁製造事業を経営している川田工業が株式の100%を所有しているが、使用機材の購入費は国と東京都の補助金で全額を賄っているので、実質的に都営航空の民間委託と見做せると思う。 このように現存の地域航空会社は何らかの形で地元の地方自治体が参加してバックアップしている。 こうしてみると、フィールエアホールディングスの言うように、民間資本100%で地域航空会社を設立・運営できるのか、または地元地方自治体と無縁で地域航空会社を設立する資本家が出現するのか疑問である。

4.総評

フィールエア構想を講評すれば、単なる思いつきの羅列でしかないように思える。 そこから窺えるフィールエアホールディングスの保有していそうな知識だけで、実務経験なしでもフランチャイザーが務まるのか疑問である。 提案している5社についても、実際に誰がフランチャイジーに応募してくるのか、それが前述したような競争環境にあって生き残れる方策はあるのか不透明である。 もしフィールエアホールディングスのフランチャンジーとして地域航空会社を設立して経営不審に陥った時、フランチャイザーとしてどのように責任を取るのか明らかにしない限り、この構想に乗るべきではないと当所は考えるのである。 

今のところ、フィールエアホールディングスの力量は外部からは判断できないので、フィールエアホールディングスのやるべきことは、自社の責任でモデル・ケースとなる地域航空会社を設立して、この構想の正しいことを立証することと考える。 フィールエア構想が期待できるビジネスになると言うならば、まずモデル・ケースとして鳥取地域航空会社を設立して、その成果をみせるのが最も早道であると思うのである。 

以上