べき関数(累乗関数)の性質〜指数を整数に限定して :トピック一覧  

グラフ/増減/値域/有界性/最大最小単射/全射/全単射/逆関数 
正負の分数を指数とする累乗の定義/整数乗の自然数乗根の意味/「正負の分数を指数とする累乗」「整数乗の自然数乗根」の性質 
極限/連続/極大極小  

1変数関数の具体例:y=x / y=x2/ y=x3 / y=1/x  → 自然数指数の冪関数/有理数指数のべき関数/実数指数のべき関数
           定数値関数/比例/一次関数/二次関数/三次関数多項式関数 
           指数関数/対数関数 
           絶対値関数/三角関数 /ガンマ関数
1変数関数に関する諸概念の定義:1変数関数一般の定義/極限/連続性/微分/定積分/広義積分/スチルチェス積分
関数定義関連ページ:2変数関数/n変数関数/実数値関数一般/ベクトル値関数/写像一般
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定義:べき関数(累乗関数) 〜指数を整数に限定して


指数を整数とする「べき関数」「累乗関数」とは、
 整数の定数zに対して、
 「R(−∞,∞から0を除いた範囲」
     R{0}(−∞,0)(0, +∞)
  で定義された1変数関数
     f (x)=xz 
  のことをいう。

・なお、
   ・指数zが自然数のとき、f (x)=xz  は、
    自然数を指数とする「べき関数」と同一、
   ・指数z=0のとき、f (x)=xz =x0 =1
   ・指数z=−1のとき、f (x)=xz=x-1=1/x
   ・指数z=−2のとき、f (x)=xz=x-2=1/x2
   ・指数z=−3のとき、f (x)=xz=x-3=1/x3
   :
   :
   ・指数z=b(bは自然数)のとき、f (x)=xa =x-b =1/(xb )
  である。

R(−∞,∞で定義された対応f (x)=xzzは整数)は、
 一般に、関数の定義を満たさない。
 なぜなら、zが負の整数であるとき、
 x=0Rにおいて、 f(0)=1/0φとなる(∵実数体の定義)から。
 0を避けて、
  指数を整数とする「べき関数」「累乗関数」の定義域
 を設定する理由は、これ。
  
※指数が整数ではない「べき関数」「累乗関数」もつくれるが、
 性質もかわってくる。
 →指数が有理数となる「べき関数」「累乗関数」
 →指数が実数となる「べき関数」「累乗関数」
※指数を、整数のなかでも、特に「正の整数」に限定した
 「べき関数」「累乗関数」の性質は以下参照。
 →指数が自然数となる「べき関数」「累乗関数」


[関連事項]

 整数指数の指数法則
   
 

[文献]

  ・和達三樹『微分積分』(pp.20-21)。くわしくない。
 

[図解]



y=x のグラフ

(−∞,0)(0, +∞)で定義された整数指数のべき関数

べき関数のグラフ(指数を整数に限定)





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整数指数の冪関数(累乗関数)の増減

 性質

・「R(−∞,∞から0を除いた範囲」
    R{0}(−∞,0)(0, +∞)
  
で定義された整数指数の「べき関数」「累乗関数」
     y=f (x)=xa 
 は、
 aが正の奇数ならば(−∞,0)(0, +∞)狭義単調増加関数 
 a正の偶数ならば
     
(−∞,0)(0, +∞)単調関数にならないが、
     開区間(−∞,0)狭義単調減少関数
     
開区間(0, +∞)狭義単調増加関数となる
 aが負の奇数ならば
     定義域全 体(−∞,0)(0, +∞)では単調減少ではないが、
     開区間(−∞,0)狭義単調減少
     開区間(0, +∞)でも、狭義単調減少  
 a偶数ならば
     
定義域全 体(−∞,0)(0, +∞)単調関数にならないが、
     開区間(−∞,0)狭義単調増加関数
     
開区間(0, +∞)狭義単調減少関数となる



[文献]?



[関連事項]

・整数指数の「べき関数」「累乗関数」の増減の具体例:
  →指数を自然数に限定した「べき関数」「累乗関数」の増減 
・整数指数の「べき関数」「累乗関数」の増減の一般化:
  →指数を有理数に拡張した「べき関数」「累乗関数」の増減
  →指数を実数に拡張した「べき関数」「累乗関数」の増減  

図解



y=x のグラフ

(−∞,0)(0, +∞)で定義された整数指数のべ き関数

べき関数のグラフ(指数を整数に限定)





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整数指数の冪関数(累乗関数)の値域

 性質

・「R(−∞,∞から0を除いた範囲」R{0}(−∞,0)(0, +∞)
  
で定義された整数指数の「べき関数」「累乗関数」 
      y=f (x)
=xaaは整数)
  の値域は、
    aが奇数ならばR{0}(−∞,0)(0, +∞)   
    ・a偶数ならば(0, +∞)
    ・a=0ならば{1} 

[文献] ?

 

図解



y=x のグラフ

(−∞,0)(0, +∞)で定義された整数指数のべ き関数

べき関数のグラフ(指数を整数に限定)




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整数指数の冪関数(累乗関数)の最大値・最小値
  ・「R(−∞,∞から0を除いた範囲」R{0}(−∞,0)(0, +∞)
  
で定義された整数指数の「べき関数」「累乗関数」 
      y=f (x)
=xaaは整数)
  は、 最大値最小値ともに持たない。  

[文献]



整数指数の冪関数(累乗関数)は非有界
  ・「R(−∞,∞から0を除いた範囲」R{0}(−∞,0)(0, +∞)
  
で定義された整数指数の「べき関数」「累乗関数」 
      y=f (x)
=xaaは整数)
  は、有界でない
・細かく見ると、
 aが奇数ならば下に有界でなく、上にも有界でない。    
 aが偶数ならば下に有界だが、上に有界ではないので、有界でない




y=x のグラフ

(−∞,0)(0, +∞)で定義された整数指数のべ き関数

べき関数のグラフ(指数を整数に限定)






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整数指数の冪関数(累乗関数)と全単射

[単射の検討]

・「R(−∞,∞から0を除いた範囲」
    R{0}(−∞,0)(0, +∞)
  
で定義された整数指数の「べき関数」 y=f (x)=xaaは整数)は、
   aが奇数ならば 単射
   aが偶数ならば 単射にならない(f (x)=bを満たすxが複数個あるから)。



(0,+∞)で定義された整数指数の「べき関数」y=f (x)=xaaは整数)は、
  a≠0ならばaが奇数でも偶数でも、 単射になる((0,+∞)狭義単調だから)。
  a=0ならば単射にならない(f (x)=bを満たすxが複数個あるから)。

(−∞,0)で定義された整数指数の「べき関数」 y=f (x)=xa  (aは整数)は、
   
a≠0ならばaが奇数でも偶数でも、 単射になる((−∞,0)狭義単調だから)。
  a=0ならば単射にならない(f (x)=bを満たすxが複数個あるから)。

[文献]

 ・笠原皓司『微分積分学』1.4例1(p.23):一次関数について。
 ・『解析演習ハンドブック1変数関数編ex1.1.12-(i)(p.11):一次関数について。

[図解:正負の奇数ベキのベキ関数はR{0}の上への全単射]



y=x のグラフ

(−∞,0)(0, +∞)で定義された整数指数のべ き関数

べき関数のグラフ(指数を整数に限定)



[全射の検討]

・「R(−∞,∞から0を除いた範囲」R{0}(−∞,0)(0, +∞)
  
で定義された「べき関数」y=f (x)=xa  (aは整数)は、
 aが奇数ならばRの上への全射ではないが、
         
(−∞,0)(0, +∞)の上への全射ではある。 
         
値域(−∞,0)(0, +∞)だから)。
 aが偶数ならばRの上への全射ではないが、
          
(0, +∞)の上への全射ではある。
 a=0ならば{1}の上への全射としか言えない。
 


(0,+∞)で定義された「べき関数」y=f (x)=xaaは整数)は、
  a≠0ならばaが奇数であれ偶数であれ
        
Rの上への全射ではないが、
        
(0,+∞)の上への全射ではある。
 


(−∞,0)で定義された整数指数の「べき関数」 y=f (x)=xa  (aは整数)は、
   aが奇数ならばRの上への全射ではないが、(−∞,0)の上への全射  
   aが偶数ならばRの上への全射ではないが、(0,+∞)の上への全射
   a=0ならば{1}の上への全射としか言えない。

[全単射の検討]

・「R(−∞,∞から0を除いた範囲」R{0}(−∞,0)(0, +∞)
  
で定義された「べき関数」y=f (x)=xa  (aは整数)は、
   aが奇数ならば(−∞,0)(0, +∞)の上への全単射
   aが偶数ならば全単射でない(単射にならない)。



(0,+∞)で定義された「べき関数」y=f (x)=xaaは整数)は、
 a≠0ならばaが奇数でも偶数でも、(0, +∞)の上への全単射
                 (Rの上への全単射ではない



(−∞,0)で定義された整数指数の「べき関数」 y=f (x)=xa  (aは整数)は、
   aが奇数ならば(−∞,0)の上への全単射Rの上への全単射ではない
   aが偶数ならば(0,+∞)の上への全単射Rの上への全単射ではない
   a=0ならば全単射にならない。(単射にならないから)。

[図解:正負の偶数ベキのベキ関数 ― R{0}で定義すると全単射にならないが、(0,+∞)で定義すると(0, +∞)の上への全単射]



y=x のグラフ

(−∞,0)(0, +∞)で定義された整数指数のべ き関数

べき関数のグラフ(指数を整数に限定)




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整数指数の冪関数(累乗関数)の逆関数

性質

・「R(−∞,∞から0を除いた範囲」R{0}(−∞,0)(0, +∞)
  
で定義された「べき関数」y=f (x)=xa  (aは整数)は、
  ・aが奇数ならば存在する。
  ・
aが偶数ならば存在しない。
 なぜ?
    
aが奇数ならば単射となって、逆関数の存在が保証される

(0,+∞)で定義された「べき関数」y=f (x)=xaaは整数)の逆関数は、
 a≠0ならばaが奇数でも偶数でも、存在する。
 なぜ?
   (0,+∞)狭義単調だから、単射になって逆関数の存在が保証される

[文献:自然数を指数とするべき関数に関して]

 ・小平『解析入門I』§2.3-a) (p.89);「巾関数」
 ・ 松坂『解析入門1』3.2E-例(p.113):n乗根関数(n乗根の定義)も。
 ・赤攝也『実数論講義』§6.5定義6.5.3(p.197):。
 ・黒田『微分積分学』3.3.4-例3.18(p.107);
 ・『基礎解析』p.40.
 ・『岩波数学入門辞典』べき根(p.546)



1変数関数の「逆関数(の存在)」定義
※1変数関数の具体例の「逆関数(の存在)」について:
   定数値関数/y=x/比例/一次関数/反比例/二次関数/べき関数
   指数関数/対数関数/絶対値関数/三角関数/ガンマ関数

定義





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正負の分数を指数とする累乗の定義、「『冪関数による像』の冪関数による逆像」としての「整数乗の自然数乗根」

定義

・正の実数a,整数z,自然数nに対して、
  「aの(z/n)乗az/n とは、「『azn乗根」のことを指す。
  すなわち、
    az/n=  az
 = (az)1/n 

・上記の定義を具体的に展開すると、以下のようになる。

 正の実数a,自然数m,自然数nに対して、

     am/n=  am
 = (am)1/n [→正の分数を指数とする累乗の定義]

     a0/n=  a0
 = (a0)1/n = 11/n =1 ()  

     a-m/n  a-m
1/am 
  

         =(a-m)1/n = (1/am)1/n  


az/nの性質:約分に対して不変 /az/n=(az)1/n=(a1/n)z  

[文献]

 赤攝也『実数論講義』§7.1定理7.1.1-2;補題(pp.204-5):証明つき。
 吉田栗田戸田『昭和63年3/31文部省検定済 高等学校基礎解析』啓林館、2章1指数の拡張(p.42);.
 ・小平『解析入門I』§2.3-a) (p.89):有理数指数での表現。
 ・ 松坂『解析入門1』3.2E(p.113)。

 
正の分数を指数とする累乗の定義 
有理数指数の指数法則 

解説

・そもそも、「az/n」(a:正の実数,z:整数,n:自然数)が表す
  「『azn乗根 az 
 とは、どういった事態を指しているのだろうか?

・整数z自然数(つまり正の整数)であるケースについては、
 正の分数を指数とする累乗の定義を参照。

・以下では、
 整数zが負の整数であるケースについて、
   つまり、 a-m/n  a-m
 (a:正の実数m,n:自然数) について、 
 これが、いかなる事態を指しているのか、
 n乗根の定義まで遡って、捉えかえしてみる・・・

[step0:設定]

「『a-mn乗根 a-m 
 は、   
 二つの1変数関数
   ・[0,∞)で定義された冪関数y=f(x)=x-m (mは自然数)のグラフ
   ・[0,∞)で定義された冪関数y=g(x)=xn (nは自然数)のグラフ 
 を設置した下記平面のなかで、考えることができる。

    n乗の-m乗根の意味step0

[step1:設定]
   
「『aの-mn乗根 a-m   における「正の実数a」とは、   
 この平面上、下記の「x軸上の点」で表される実数としよう。
 (下図では、aの例を1<aの範囲にとっているが、0<a<1にとっても理屈は同じ。) 


n乗のm乗根の意味step1 

[step2: amが指すこと]

 すると「『a-mn乗根 a-m   における  a-m=1/am は、
  冪関数f によるaの像 f(a)であるから、
 下図のように、y軸上にプロットできる。


m乗のn乗根の意味step2

[step3: amn乗根が指すこと]



・「実数yn乗根 y 
 (nは自然数) とは、   
     正の実数yの『[0,∞)で定義された累乗関数y=g (x)=xn 』による逆像に唯一つ属す『正の実数
 を指す記号だった。

・すると「『aの-mn乗根 a-m   (n,mは自然数) とは、   
     正の実数 a-m=1/am の『[0,∞)で定義された累乗関数y=g (x)=xn 』による逆像に唯一つ属す『正の実数
 を指す記号だ、ということになる。

・ところが、step2で見たように、
   a-m=1/am は、冪関数f によるaの像 f(a)として、平面上にその位置を与えられたのだった。

・このことも加味すると、
 「『a-mn乗根 a-m   (n,mは自然数) とは、   
   『[0,∞)で定義された冪関数y=f(x)=x-m によるaの像』の『[0,∞)で定義された冪関数y=g (x)=xn 』による逆像
      g-1( f(a) ) 
    に唯一属す『正の実数』に他ならない。

・したがって、
 「『a-mn乗根 a-m   (n,mは自然数) は、   
  下図のように、g-1( f(a) ) に唯一属す『正の実数』として、x軸上にプロットできる。

・これが、「a-m/n」が表す「『a-mn乗根 a-m 
 の正確な事態である。 
 

m乗のn乗根の意味step3


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「整数乗の自然数乗根」「正負の分数を指数とする累乗」の性質
  累乗根の以下の性質は、有理数指数の累乗有理数指数の指数法則を基礎付ける。

1.

任意の正の実数a,任意の自然数n,任意の整数z,任意の自然数tに対して、
      az
 = 
nt  azt

分数を指数とする累乗を用いて言い直すと、
  任意の正の実数a,任意の自然数n,任意の整数z,任意の自然数tに対して、
      az/n = a (zt)/(nt)  
・つまり、
  分数を指数とする累乗は、
  指数として使われている分数の約分に関して不変。

なぜ?→証明 

[文献]

 ・赤攝也『実数論講義』§7.1定理7.1.1(pp.204-5):証明つき。

2.

任意の正の実数a,任意の自然数n,n'任意の整数z,z' に 対して、
   z/nz'/n' ならば、  az
 = 
n' az' 

分数を指数とする累乗を用いて言い直すと、
  任意の正の実数a任意の自然数n,n'任意の整数z,z' に 対して、
    z/nz'/n' ならば、  az/n = az'/n'  
・つまり、
  有理数指数の累乗は、
  有理数の分数としての表し方によらず、一意。
なぜ? 
 ・1.より、任意の正の実数a,任意の自然数n,n'任意の整数z,z' に 対して、
        az
 = 
nn' azn'

        n'
az'
 = 
n'n az'n 

 ・任意の自然数n,n'任意の整数z,z'に 対して、z/nz'/n' ならば、zn'=z'n. 
 ・上記2点より、
  任意の正の実数a、任意の自然数n,n'任意の整数z,z' に 対して、   
   z/nz'/n' ならば、  az
 =
nn' azn'
 =
n'n
az'n
 =
n' az' 


[n乗のm乗根の性質冒頭へ戻る] 

[文献]

 ・赤攝也『実数論講義』§7.1定理7.1.2:1より証明。
 吉田栗田戸田『昭和63年3/31文部省検定済 高等学校基礎解析』啓林館、2章1指数の拡張(p.42):一例で説明。6.を使う
 ・小平『解析入門I』§2.3-a) (p.89):有理数指数での表現。指数法則を利用

3.

任意の正の実数a任意の自然数n任意の整数zに対して、
   
az
(
a )
z
分数を指数とする累乗を用いて言い直すと、
 任意の正の実数a任意の自然数n任意の整数zに対して、
   az/n = (az)1/n = (a1/n)z
・つまり、
 任意の正の実数a任意の自然数n任意の整数zに対して、
   分数を指数とする累乗az/n は、  az のみならず (
a )
z も表している。

なぜ?→証明 


[n乗のm乗根の性質冒頭へ戻る] 

[文献]

 ・赤攝也『実数論講義』§7.1補題(iv)(p.205):証明つき。
 吉田栗田戸田『昭和63年3/31文部省検定済 高等学校基礎解析』啓林館、2章1指数の拡張(p.41):証明なし。いきなり「累乗根について次のことが成り立つ」


[n乗のm乗根の性質冒頭へ戻る] 

性質1の証明


証明したい命題の確認
任意の正の実数a,任意の自然数n,任意の整数z,任意の自然数tに対して、
      az
 = 
nt  azt

 分数を指数とする累乗を用いて言い直すと、
  任意の正の実数a,任意の自然数n,任意の整数z,任意の自然数tに対して、
      az/n = a (zt)/(nt)  

・上記の命題を具体的に展開すると、以下のようになる。
 任意の正の実数a,任意の自然数m,n,任意の自然数tに対して、
     (i)   am
 = 
nt  amt
         すなわち、 am/n = a (mt)/(nt)

     (ii)   a0
 = 
nt  a0t  
         すなわち、 a0/n = a (0t)/(nt)  

     (iii)   a-m
 = 
nt  a-mt  
         すなわち、 a-m/n = a (-mt)/(nt)  

 このうち、

  (i)は、正の分数を指数とする累乗の性質1で証明されている。
  (ii)は、両辺ともに1であるから(∵ a0=1、1の累乗根=1)、成立する。

 そこで、以下では、(iii)について、説明する。

step0 : 設定の把握

 左辺  a-m 
 (a:正の実数,m,n:自然数) は、 
 a, a-m に対して、
 下図のように、関係づけられた(→「『aの-m乗』のn乗根」の説明)。

[文献]

 ・赤攝也『実数論講義』§7.1定理7.1.1:証明つき(p.204)。

m乗のn乗根の意味step3




step1:

 ここで、  a-m  (a:正の実数,m,n:自然数) を、bで表すことにする。 

 つまり、b =   a-m
 (a:正の実数,m,n:自然数)…(1)



m乗のn乗根の公式1



step2:
 すると、n乗根の定義より、
 (1)のもとで、a-m=bn (a:正の実数,m,n:自然数) が成立する…(2)


「m乗のn乗根」公式1



step3:
 ・a-m=bn ならば任意の自然数tに対して、 a-mt=bnt 。(∵指数法則2'
 ・したがって、step2より、
  (1)のもとで、a-mt=bnt (a:正の実数,m,n,t:自然数) が成立することになる。…(3)






step4:
 ・累乗根の定義により、
    a-mt=bnt ならば   b = 
nt  a-mt

 ・したがって、step3より、
     (1)のもとで、   b = 
nt  a-mt   が成立することになる。…(4)







step5:
 
 (4)より、b =   a-m
のもとで、bnt 
a-mt が成立するというのだから、
 
 b =   a-m
 のもとで、
 
    b =   a-m
= nt 
a-mt

 である。
 つまり、正の実数a,自然数m,n,tに対して、
      a-m = 
nt  a-mt





[n乗のm乗根の性質冒頭へ戻る] 

性質3の証明

なぜ?
任意の正の実数a任意の自然数n任意の整数zに対して、
   
az (
a )
z
 分数を指数とする累乗を用いて言い直すと、
 任意の正の実数a任意の自然数n任意の整数zに対して、
   az/n = (az)1/n = (a1/n)z

・整数zの範囲で場合分けすると、
 上記の命題は、以下の三命題に展開される。

 (i) zが正の整数である場合

    任意の正の実数a,任意の自然数m,nに対して、

       
am (
a )
m

    すなわち、am/n = (am)1/n = (a1/n)m

 (ii) zが0である場合

    任意の正の実数a,任意の自然数nに対して、
        
      
a0 (
a )
0

    すなわち、 a0/n = (a0)1/n = (a1/n)0
    
 (iii) zが負の整数である場合

    任意の正の実数a,任意の自然数m,nに対して、

       
a-m (
a )
-m
 
    すなわち、a-m/n = (a-m)1/n = (a1/n)-m

 このうち、
  (i)は、正の分数を指数とする累乗の性質3の証明を参照。
  (ii)は、両辺ともに1であるから(∵a0=1,1の累乗根=1)、成立する。

 そこで、以下では、(iii)について、説明する。









[step0:累乗関数と累乗根の性質の確認]

 ・任意の自然数n に対して、
  『[0,∞)で定義された累乗関数y=f(x)=xn 』は、
       単射であって、[0,∞)値域とする。…(0-1)
 ・任意の正の実数y,任意の自然数n に対して、
  yは「『[0,∞)で定義されたy=f(x)=xn』の値域[0,∞)に属しているから
  (0-1)より、
  yの『[0,∞)で定義されたy=f(x)=xn』による逆像 f-1(y){x[0,∞)|yf (x)}は、
    (0,∞)上に存在する1個の実数 
y
だけからなる。

  つまり、
  任意の正の実数y,任意の自然数n に対して、
           y    (0,∞)であって、

           f−1(y)     {
y   }  …(0-2) 

 ・このことは、
   (0,∞)上に存在する1個の実数 
y
のほかに、
             f−1(y) に属す実数が、存在しない
   ことを意味している。              …(0-3) 





[step1:累乗関数と累乗根の性質からamの累乗根について言えること]

 ・任意の正の実数a,任意の自然数mに対して、
     a-m=1/am=1/(aaa) >0 …(1-1)
     ∵ a>0であって、a-m=1/am=1/(aaa) だから、
       実数 の積の正負の性質,逆数の正負より。
 ・(0-2)と(1-1)より、
   任意の正の実数a任意の自然数nに対して、
     「a-mの『[0,∞)で定義されたy=f(x)=xn』による逆像
     f−1( a-m ){x[0,∞)| a-m=f(x)}
    は、
    (0,∞)上に存在する1個の実数 
a-m  だけからなる。

     つまり、  a-m    (0,∞) であって、

         f−1( a-m )     {
a-m   }   …(1-2)  

 ・このことは、
   (0,∞)上に存在する1個の実数 
a-m 
のほかに、
             f−1( a-m ) に属す実数が、存在しない
   ことを意味している。              …(1-3) 


[step2:指数法則から言えること]


 ・任意の正の実数a,任意の自然数m,nに対して、

       ((
)
-m ) n
  

      = (
n a )
-mn
 
指数法則2

      = ((
n a )
n ) -m
 
指数法則2  
       =a-m        ∵累乗根の性質0

 ・要するに、  ((
)
-m ) n
 =a-m …(2-1)

 ・このことは、
  任意の正の実数a,任意の自然数m,nに対して、
   (
)
-m  の『[0,∞)で定義されたy=f(x)=xn』によるa-mであること 

                 f(
(
)
-m )  =a-m     …(2-2) 
  を意味する。

[step3]

 ・一般に、
  任意の正の実数b,任意の自然数mに対して、b-m>0。 …(3-0) 
    ∵ b-m=1/bm=1/(bbb) だから、実数 の積の正負の性質,逆数の正負より。

 ・任意の正の実数a任意の自然数n に対して 

       (0-2)より、   >0
  …(3-1) 

 ・(3-0),(3-1)より、
  任意の正の実数a,任意の自然数m,nに対して、  (
)
-m  >0 …(3-2)

 ・このことは、
  任意の正の実数a,任意の自然数m,nに対して、  (
)
-m  が(0,∞)に存在する…(3-3)
  ということを意味する。





[step4:結論]

 ・任意の正の実数a任意の自然数m,nに対して、 (
)
-m  は、(0,∞)に存在して、[∵(3-2),(3-3)]
                                「a-mの『[0,∞)で定義されたy=f(x)=xn』による逆像f−1(a-m) に属す[∵(2-2)]

 ・つまり、任意の正の実数a任意の自然数m,nに対して、
            (
)
-m    (0,∞)であって、

            (
)
-m    f−1(a-m)     …(3)
 
 ・ところが、(1-2)(1-3)で明らかにされたように、 
    任意の正の実数a任意の自然数m,nに対して、 f−1(a-m)   {
a-m   }

  つまり、任意の正の実数a任意の自然数m,nに対して、
  「a-mの『[0,∞)で定義されたy=f(x)=xn』による逆像f−1(a-m) に属すのは、
   (0,∞)上に存在する1個の実数 
a-m  だけであって、

   (0,∞)上に存在する1個の実数 
a-m  のほかには、
   「a-mの『[0,∞)で定義されたy=f (x)=xn』による逆像f−1(a-m) に属す実数
 は存在しない。

・したがって、 (1-2)(1-3)で明らかになったこの事実と、(3)から、
   任意の正の実数a任意の自然数m,n に対して、  a-m (
a )
-m
 となることがわかる。


[n乗のm乗根の性質冒頭] 




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整数指数の冪関数(累乗関数)の極限
  ・「R(−∞,∞から0を除いた範囲」R{0}(−∞,0)(0, +∞)
  
で定義された「べき関数」y=f (x)=xa  (aは整数)は、





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整数指数の冪関数(累乗関数)の連続性
 



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reference

高木貞治『解析概論改訂第3版』岩波書店、1983年、pp.105-108;
和達三樹『理工系の数学入門コース1・微分積分』岩波書店、1988年、pp.20-21。
青本和彦『岩波講座現代数学への入門:微分と積分1』岩波書店、1995年、p.84:高階導関数、p.93:凸性、p.110:原始関数。
黒田成俊『21世紀の数学1:微分積分学』共立出版株式会社、2002年、pp.171-173。
住友洸『大学一年生の微積分学』現代数学社、1987年、p.122.
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年。pp.115-6.