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参考文献・総目次Peanoの公理系
xにたいして、x+1を対応させる関数をx'と表し、xの後者successorと呼ぶ。
1) 1∈ N
2) x∈ N ならば、x'∈ N
3) x∈ N ならば、x'≠1
4) x' = y' ( x,y∈ N )ならば、x =y.
5)2条件「1∈M」および「x∈Mならばx'∈M」が満たされれば、N⊂M
[数学的帰納法の公理 axiom of mathematical induction]
Peanoの公理系を満たす集合Nは同形の意味で1つしかないので、
これをもって
Nの定義と考えられる。Nの元を「自然数」と名づける。 nについて成り立つ命題
これらの命題は、
Peanoの第五公理、すなわち、数学的帰納法によって、証明される。
a>0で、nが2以上の自然数のとき、(1+ a) n>1 +na (※)
(『基礎解析』p.85、和達『微分積分』p.6)
(証明)
(I) n =2のとき、
(1+ a) 2=1+2 a + a2>1+2 a (∵常にa2>0)
よって、
n =2のとき、 (※)が成立(II) k≧2として、n=kのとき、(※)が成立すると仮定する。
すなわち、
(1+ a) k>1 +ka (1)n = k+1のとき、(※)の左辺は、
(1+ a) k+1=(1+ a) k(1+ a)
>
(1 +ka) (1+ a) ∵式(1)および(1+ a)>0=
1 +ka+ a+ka2=
1 +(k+1) a +ka2>
1 +(k+1) a ∵常にka2>0すなわち、
(1+ a) k+1>1 +(k+1) a
よって、
n = kで(※)が成立するならば、n = k+1で(※)は成立。(I)(II)から、※は2以上の全ての自然数nについて成立する。 a>0ならば、各n∈ Nに対して
(1+a)n≧1+na+n(n-1)a2/2 ※
(吹田・新保『理工系の微分積分学』p.3.)
(証明)
吹田・新保では問題が出ているだけで、証明は示されていない。上記の『基礎解析』掲載の類題の証明を参考に、自力で作成したのが、以下の証明。
(I) n =1のとき、
左辺=
(1+ a) 1=1+ a右辺=1+1
a+1 (1-1)a2/2=1+a+0=1+a∴
n=1で※成立。(II) k≧1としてn=kのとき、(※)が成立すると仮定する。
すなわち、
(1+ a) k≧1+ka+k(k-1)a2/2 (1)n = k+1≧2のとき、(※)の左辺は、
(1+ a) k+1=(1+ a) k(1+ a)
≧
(1+ka+k(k-1)a2/2) (1+ a) ∵式(1)および(1+ a)>0=1+
ka+k(k-1)a2/2 + a+k a2+k(k-1)a3/2=1+
ka+k2 a2/2 −ka2/2 +a+k a2+k(k-1)a3/2=1+
ka+a+(k2 /2−k/2+k) a2+k(k-1)a3/2=1+
ka+a+(k2 /2+k/2) a2+k(k-1)a3/2=1+
ka+a+(k2 +k) a2/2+k(k-1)a3/2=1+(
k +1)a+k (k +1) a2/2+k(k-1)a3/2≧1+(
k +1)a+k (k +1) a2/2 ∵a>0, k≧1で常にk(k-1)a3/2≧0 (k=1で等号成立)よって、
n = kで(※)が成立するならば、n = k+1で(※)は成立。(I)(II)から、※は1以上の全ての自然数nについて成立する。
*念のため。
a=0では、任意のnについて※は成立する。1=1だから。reference)
日本数学会編集『
岩波数学辞典(第三版)』項目183数,B.自然数 (p. 474).神谷和也・浦井憲『
経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、p.61※「
0を要素としてもち」という記述は「1を」の誤植では?吹田・新保『
理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年。p.3.高木貞二『
解析概論改訂第三版』岩波書店、1983年、pp.1-5.吉田耕作・栗田稔・戸田宏『高等学校基礎解析』啓林館、
1985年、pp.83-86.