ガンマ関数

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・定義:ガンマ関数
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cf. 1変数関数の定積分、2変数関数の広義積分、n変数関数の広義積分
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定義:ガンマ関数

[矢野田代『社会科学社のための基礎数学』pp.120-121;小平『解析入門I』188-189;吹田新保『理工系の微分積分学』118-9; 片山『微分積分学』122-123.]
  
 sがプラスなら、右辺の広義積分(オイラーの第2種積分)は収束する(→数行下で説明)。 
 右辺の広義積分をsの関数とみなし、
 sがプラスである場合にのみ、これをガンマ関数として定義する。
(ガンマ関数が収束することの証明)
[小平『解析入門I』pp.188-189;吹田新保『理工系の微分積分学』118-9; Fischer.Intermediate Real Analysis, 717-718.]
方針: 
  
 のそれぞれがs>0という条件下で収束することを示す。
 この二つがともに収束すれば、広義積分
   
 も定義され、収束することになる。
(step1) の収束の証明: 
(i) 0< s <1のとき 
まず、被積分関数f (x)= e x x s−1の閉区間[0,1]における性格を把握。 
 被積分関数を分かりやすく書くと、
   
 ここでは、0≦x≦1かつ0< s <1(ゆえに0< 1−s <1)の条件下のみの検討であることに注意。 
   
 は、ここでの、0≦x≦1の条件下では、全ての点で連続であり、また、特異点も存在しない。
      図1: e x をプロットしたグラフ
         
 しかし、
   
 は、0<x≦1かつ0< s <1(ゆえに0< 1−s <1)の条件下では、
 全ての点で連続であり、特異点も存在しないものの、
 x=0という一点が特異点となる。
 よって、この二つの関数の積であるf(x)は、連続関数の性質より、左半開区間(0,1]で連続関数となる。
 しかし、x=0という一点は特異点となる。
     図2: sを0.1, 0.3, 0.6, 0.9とした際の、
         
         をプロットしたグラフ。 
      
以上から、x=0が特異点となるので、
 
は、定積分ではなく、広義積分として考えなければならないことが分かった。
 つまり、厳密には以下のような右極限として書かなければならない。
    
次に、この広義積分が0< s <1という条件下で収束するか否かを検討する。
定理により、
 左半開区間(0,1]において、被積分関数f(x)についての不等式
      
 を満たす0<λ<1なるλ、定数Mがそれぞれ一つでも存在するならば、
   すなわち、
    |exxs−1|≦M/xλ   …※
 を満たす0<λ<1なるλ、定数Mの存在をそれぞれ一つでも確認できさえすれば、
 左半開区間(0,1]において、
 この広義積分
     
 が絶対収束するといってよい。
果たして、※を成立させるλ(0<λ<1)、Mは存在するのか?
  |exxs1|
  
   ∵図2より0x1かつ0< s <1(ゆえに0< 1s <1)の条件下では、常にプラス。
     ∵図1より、0<x1では、0<1/ex<1 となるから。  
つまり、
|exxs1|<1/x1s
よって、
※を満たすλ=1-s (0< 1−s <1に注意)、定数M=1の存在が確認されたことになる。 
ゆえに、
 
 は収束する。
(ii) s ≧1のとき 
まず、被積分関数f (x)= e x x s−1 (s≧1)の閉区間[0,1]における性格を把握。 
被積分関数を分かりやすく書くと、
   
ここでは、0≦x≦1 かつ 1 ≦ sという条件下のみの検討であることに注意。 

 は、ここでの、0≦x≦1の条件下では、全ての点で連続であり、特異点も存在しない。→図1 
x s−1も、0≦x≦1 かつ 1 ≦ sという条件下では、全ての点で連続であり、特異点も存在しない。
よって、f(x)は二つの連続関数の積となるから、連続関数の性質より、閉区間[0,1]で連続関数となる。
閉区間上の連続関数はリーマン可積分だから、
  
は、定積分として存在する。 
これをあえて広義積分風にいえば、「収束する」ということになる。 
以上、(i)(ii)の検討を合せて考えると、すべてのs>0について、

は、収束するといえる。 
(step2) の収束の証明: 

定理より、
 被積分関数exxs−1 ( s > 0 )が、無限区間[1,∞)で連続で、
 「無限区間[1,∞)において、 xλ| exxs−1|≦M         …(※)
 を満たす定数M、1<λなるλがそれぞれ一つは存在する」
ことが確認されさえすれば、
広義積分
    
絶対収束するといってよい。
果たして、(※)を満たすM、1<λなるλは存在するのか?
→確かに存在する。(※)を満たすM,λとして、たとえば、
 
がある。 

λ=2を(※)の左辺に代入し、無限区間[1,∞)における(※)左辺全体の動きを調べてみよう。
λ=2を代入した(※)左辺= x2| exxs−1|
           = x2| exxs−1|  ∵ここでの x≧1, s >0という条件下では、exxs−1>0 
           = exxs+1   
まず、λ=2を代入した(※)左辺=exxs+11階の導関数を求める。
 (exxs+1)'=(ex)' xs+1+ex(xs+1)'  ∵積の微分 
     =(ex)' xs+1+ex(s+1)xs  
     =−ex xs+1+ex(s+1)xs 
      ∵exg(y)=ey, y=f(x) =−x合成関数g(f(x))だから、合成関数の微分則より、
       ex導関数は、
          g'( f(x) ) f'(x)= g'(−x )・(1 )
                = ex・(−1 ) ∵指数関数の微分    
     = ex xs+ (s+1−x ) 
ここでの x≧1, s >0という条件下では、常にex xs>0 なので、
λ=2を代入した(※)左辺の1階の導関数の符号は、(s+1−x )の正負によって決まる。
つまり、
  
1x<s+1(exxs1)'>0
   
x=s+1 (exxs1)'=0
 
s+1<x   (exxs1)'<0
1階の導関数と関数の増減の関係から、
λ=2を代入した(※)左辺=exxs1(x1, s >0)は、
右半開区間[1, s+1]で狭義単調増加x=s+1で最大値をとり、[s+1,)では狭義単調減少となることがわかる。
ちなみに、
exxs12階の導関数を求めると、
 (exxs1)''= {ex xs (s+1x ) }'= {(s+1)ex xsex xs+1 }' 
  
=((s+1)ex xs)'(ex xs+1)' 
  
=(ex)' (s+1)xs + ex ((s+1)xs)'(ex)' xs+1 ex (xs+1)' 
  
=ex(s+1)xs + ex (s+1)sxs1ex xs+1 ex (s+1) xs 
  
=exxs(s+1) + ex xs1(s+1)sex xs+1 ex xs(s+1) 
  
=ex xs1{−x(s+1)+(s+1)s+ x2x (s+1) } 
  
=ex xs1{−2x(s+1)+(s+1)s+ x2 }
  =ex xs1{ x22 (s+1) x +s2+s } 
 
x 1, s >0という条件下では、exx s1>0 なので、
 
(exxs1)''の符号は、{ x22 (s+1) x +s2+s }の正負によって決まる。
 この
2次関数は、変形すると、(x(s+1))2(s+1)となることから、
 
x=s+1>1で最小値−(s+1)<1をとる放物線。
 
2次方程式x22 (s+1) x +s2+s=0 の解は、
    
 よって、
 
       { x22 (s+1) x +s2+s }>0、ゆえに(exxs1)''>0(狭義に(下に)凸)
 
       { x22 (s+1) x +s2+s }0、ゆえに(exxs1)''=0
 
       { x22 (s+1) x +s2+s }<0、ゆえに(exxs1)''<0(狭義に凹=上に凸)
 
       { x22 (s+1) x +s2+s }0、ゆえに(exxs1)''=0
 
       { x22 (s+1) x +s2+s }>0、ゆえに(exxs1)''>0(狭義に(下に))
  ただし、sが十分に大きくなければ、(i)(ii)は、x 1の定義域に入らなくなることに注意。
というわけで、λ
=2を代入した()左辺=exxs1(x1, s >0)は、x=s+1で最大値をとるが、
その最大値を計算すると、 

よって、
x1, s >0という条件下では、、
λ=2を代入した(※)左辺: 
              
     図3: sを1, 2, 5,とした際の、
         λ
=2を代入した()左辺=exxs1 
         をプロットしたグラフ。 
     


以上から、(※)を満たすM、1<λなるλとして、少なくとも
 
が存在することがわかった。 
よって、定理より、x≧1, s >0という条件下では、
広義積分
    
絶対収束するといえる。
(step 3)
 step1,step2での検討結果から、
  
 s>0という条件下でともに収束することが明らかになったので、
 広義積分
   
 も定義され、収束すると結論できる。



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定理:ガンマ関数の基本的な性質

[矢野田代『社会科学者のための基礎数学』pp.120-121;小平『解析入門I』pp.188-189;. ;吹田新保『理工系の微分積分学』118-9.]
1. Γ( s+1 )= sΓ( s )  ( s > 0 ) 
  次のように書いても同じ:Γ( s )=( s−1 ) Γ( s−1 ) ( s > 1 )
2. Γ(n)=(n−1)! (nN) 
3. Γ(1)=Γ(2)=1  
    
4. Γ(s)は、s>0で連続C。[杉浦『解析入門』p.327.]
  n階導関数は、
   
5. log Γ(x)は、x>0で凸関数。[杉浦『解析入門』p.327.] 

 

定理:

[杉浦『解析入門』p.328.]
f:R=(0,+∞)→Rが、
任意のx>0に対し、
 (1) f(x+1)=xf(x)
 (2) f(x)>0でlogf(x)凸関数
 (3) f(1)=1
を満たすならば
任意のx>0に対し、f(x)=Γ(x) 

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(reference)

日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、66項ガンマ関数(pp.66-67)。
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、pp.101-3.
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年。pp.118-9.例題として。
矢野健太郎・田代嘉宏『社会科学者のための基礎数学 改訂版』裳華房、pp.120-121.
小平邦彦『解析入門I』 (軽装版)岩波書店、2003年 pp.188-189。
杉浦光夫『解析入門』岩波書店、1980年、pp.295-301:基本; pp.326-341:性質を詳しく。
高木貞治『解析概論 改訂第三版』岩波書店、1983年、p. 108:例題として。
青本和彦『岩波講座現代数学への入門:微分と積分1』岩波書店、1995年、pp.142-145。
片山孝次『微分積分学』(現代数学レクチャーズB-8)、培風館、1980年、pp. 122-123。
Fischer,Emanuel.Intermediate Real Analysis(Undergraduate Texts in Mathematics),Springer-Verlag New York Heidelberg Berlin,1983,pp.417-426.積分を用いないガンマ関数定義; 717-718:Γ関数の収束.726-735.積分によるガンマ関数・ベータ関数定義;