累乗(べき)と指数法則〜指数を有理数に限定して :トピック一覧  

冪・累乗の定義(有理数指数)    cf. 冪・累乗の定義(自然数指数)/冪・累乗の定義(整数指数)/冪・累乗の定義(実数指数)
冪・累乗の基本性質(有理数指数) cf整数指数の冪・累乗の基本性質   
指数法則(有理数指数)       cf. 指数法則(自然数指数)/指数法則(整数指数)/指数法則(実数指数)
指数と大小関係(有理数指数)    cf. 指数と大小関係(自然数指数)  

総目次


定義:冪(べき)・累乗 power、指数exponent 〜指数を有理数に限定して

有理数指数の累乗の定義
・「『正の実数aの有理数qaqとは、
 z,nを「qz/n」を満たす整数,自然数の組としたときの、 az/n のこと。
  * qz/n を満たす整数z,自然数nの組の取り方は複数あっても、
   この整数z,自然数nの取り方に依存せず、aqは同一の実数となる[→定理]。

上記の定義をaz/nの定義にしたがって詳しく書き下すと、以下のようになる。
有理数指数の累乗の定義
・「『正の実数aの有理数qaqとは、
    z,nを「qz/n」を満たす整数,自然数の組としたときの、
     「az乗』のn乗根」  az/n=  az
 = (az)1/n 
    のこと。
  * qz/n を満たす整数z,自然数nの組の取り方は複数あっても、
   この整数z,自然数nの取り方に依存せず、aqは同一の実数となる[→定理]。
  * 任意の正の実数a任意の自然数n任意の整数zに対して、
    az/n = (az)1/n = (a1/n)z  という性質があるので[→定理]、
   結局のところ、
   「『正の実数aの有理数qaqは、
    z,nを「qz/n」を満たす整数,自然数の組としたときの、

     「『an乗根』のz」  (  a
) z  = (a1/n)z 

   も表すことになる[吉田栗田戸田『高等学校基礎解析』p.42]。
   (ここではaがマイナスとなることを排除している点に注意。
     aがマイナスだと、こうはいかない→絶対値の性質


・上記の定義をさらに具体的に展開すると、以下のようになる。
有理数指数の累乗の定義

[ケース1]

  有理数qがプラスならば
    「『正の実数aの有理数qaq とは、以下の手順で得られる実数
      [手順1] qm/n を成り立たせる自然数m,nをとる
      [手順2] 手順1で得られた自然数m,nをつかって、
            「am乗』のn乗根」をとる。
  つまり、
  有理数qがプラスならば
     qm/n を成り立たせる自然数m,nに対して、
        aqam/n=  am 
 = (am)1/n  
     である[吉田栗田戸田『高等学校基礎解析』p.42]。
  * qm/n を成り立たせる自然数m,nの取り方が複数あっても、
   この自然数m,nの取り方に依存せず、aqは同一の実数となる[→定理]。
  * 任意の正の実数a,任意の自然数m,nに対して、
   am/n = (am)1/n = (a1/n)m  という性質があるので[→定理]、
   結局のところ、
   「『正の実数aの有理数qaqは、
    m,nを「qm/n」を満たす自然数の組としたときの、






     「『an乗根』のm」  (  a
) m  = (a1/n)m 
   も表すことになる。
    

[ケース2]

  有理数qが0ならば、「『正の実数aqaqa0 とは、1を指すものとする。
   つまり、
     q=0 ならば、 aqa0=1   (1を、0乗として定義) 

[ケース3]

  有理数qがマイナスならば
    「『正の実数aの有理数qaq とは、以下の手順で得られる実数
      [手順1] q=−m/n を成り立たせる自然数m,nをとる
      [手順2] 手順1で得られた自然数m,nをつかって、
           「『am』の逆数n乗根」をとる。
  つまり、
  有理数qがマイナスならば
   q=−m/n を成り立たせる自然数m,nに対して、
       aq a-m/n   a-m
  
  
               
1/am 
[吉田栗田戸田『高等学校基礎解析』p.42]
    
              = 

1


 ∵累乗根の性質2

 [『岩波入門数学辞典
   「指数法則」
    (pp.244-5)]

 
am 
 

  * q=−m/n を成り立たせる自然数m,nの取り方は複数あるが、
   この自然数m,nの取り方に依存せず、aqは同一の実数となる[→定理]。 

  * 任意の正の実数a任意の自然数n任意の整数zに対して、
    az/n = (az)1/n = (a1/n)z  という性質があるので[→定理]、
   結局のところ、
   「『正の実数aの有理数qaqは、
    m,nを「q-m/n」を満たす自然数の組としたときの、

    「『an乗根』の-m」  (a1/n)-m(  a
) -m   



1



(
a 
)
m
   も表すことになる[吉田栗田戸田『高等学校基礎解析』p.42]。


aqの「」とは、aのこと。

aqの「指数exponent」とは、qのこと。

[文献]

 ・能代『極限論と集合論』21.有理指数のベキ(pp.42-4)
 赤攝也『実数論講義』§7.1有理数指数の累乗(p.203)。 
 小林昭七『微分積分読本:1変数』2章4指数関数(pp.58-65):整数べき→有理数べき→実数べき
 上野健爾『代数入門1』§2.3(d)指数と対数(p.68)
 岩波入門数学辞典』「指数法則exponential law」(pp.244-5):有理数・実数の指数を定義。
            「べきpower」(p.545):自然数指数から整数指数まで定義。;「指数(べきの)exponent」(p.241):説明なし
 吉田栗田戸田『昭和63年3/31文部省検定済 高等学校基礎解析』啓林館、2章1指数の拡張(pp.40-45):有理数実数べき;.
 ・竹之内『経済・経営系数学概説』1.5累乗の一般化(pp.34-6)
 ・加藤十吉『微分積分学原論』4.4整数の実数乗と指数関数-(3)(p.40)
 ・岡田章『経済学・経営学のための数学』1.4(p.26)

[関連事項]

 ・有理数指数の累乗の具体例:
  →指数を自然数に限定した「べき」「累乗」の定義 
  →指数を正負の整数に限定した「べき」「累乗」の定義
 ・有理数指数の累乗の一般化
  →指数を実数へ拡張した「べき」「累乗」

 ・自然数指数の「冪関数」「累乗関数」



[自然数指数の累乗の定義との整合性]
・有理数q自然数であるとき、
 上記の「『正の実数aの有理数qaq の定義は、「『正の実数aの自然数乗の定義と完全に一致する。 
   なぜ?
    ・任意の自然数mについて、「有理数q」=「自然数mならばqm/1 が成り立つから、aqam/1  1
am 
  ∵「『正の実数aの有理数qaq の定義
                                                  =am      ∵累乗根の定義 
    ・つまり、有理数q自然数mであるとき、「『正の実数aの有理数qaq の定義は、「『正の実数aの自然数mam に一致する。
 
[整数指数の累乗の定義との整合性]
・有理数qが整数であるとき、
 上記の「『正の実数aの有理数qaq の定義は、「『正の実数aの整数乗の定義と完全に一致する。 
   なぜ?
    ・任意の「正の整数」zについて、「有理数q」=「正の整数zならばz自然数qz/1 が成り立つから、aqaz/1  1
az 
  ∵「『正の実数aの有理数qaq の定義
                                                          =az      ∵1乗根の性質 
    ・「有理数q」=「正の整数zならばaqa0=1 ∵「『正の実数aの有理数qaq の定義
    ・任意の「負の整数」zについて、「有理数q」=「負の整数zならば-z自然数q=(-z)/1 が成り立つから、aqa(-z)/1  

1

   ∵「『正の実数aの有理数qaq の定義

 
1 a-z 
 

    ・任意の「負の整数」zについて、「有理数q」=「負の整数zならばqz/1 が成り立つから、aqaz/1  1
az 
  ∵「『正の実数aの有理数qaq の定義

                                                    =  1
1/a-z 
  ∵負の整数乗の定義 

                                                     =1/a-z     ∵1乗根の性質 
                                                         
    ・以上三点から、つまり、有理数q任意の整数zであるとき、「『正の実数aの有理数qaq の定義は、「『正の実数aの整数zの定義az に一致する。 



→[トピック一覧:累乗(べき)と指数法則]
総目次

有理数指数の累乗の基本性質

I.

[有理数指数の累乗の基本性質I-1]
 任意の正の実数a,任意の自然数n に対して、a=(a1/n)n  
  なぜ?→証明 
[有理数指数の累乗の基本性質I-2]
 任意の正の実数a,任意の自然数n に対して、a=(an)1/n 
  なぜ?→証明 
[有理数指数の累乗の基本性質I-3]
 任意の正の実数a,b,任意の自然数n に対して、(ab)1/na1/n b1/n  
  なぜ?→証明 
[有理数指数の累乗の基本性質I-4]
 任意の正の実数a,b,任意の自然数n に対して、(a/b)1/n = (a1/n)/(b1/n) 
  なぜ?→証明 
[有理数指数の累乗の基本性質I-5]
  任意の正の実数a,b,任意の自然数n に対して、(a1/n1/m  = a1/mn  
  なぜ?→証明 


[文献]

 ・赤攝也『実数論講義』§6.5定義6.5.3(pp.198);§7.1定理7.1.1-2;補題(pp.204-5):証明つき。
 吉田栗田戸田『昭和63年3/31文部省検定済 高等学校基礎解析』啓林館、2章1指数の拡張(p.42);.
 ・小平『解析入門I』§2.3-a) (p.89):有理数指数での表現。
 

U.

[有理数指数の累乗の基本性質U-1]
 ・任意の正の実数a,任意の自然数n,任意の整数z,任意の自然数tに対して、
      az/n = a (zt)/(nt)  
 ・つまり、
  指数につかわれる有理数が同一であれば、
  その指数につかわれた有理数を、約分しない分数で表そうが、約分した分数で表そうが、
  有理数指数の累乗は同一の実数を表す。
  分数を指数とする累乗は、指数として使われている分数の約分に関して不変。
なぜ?→証明 


[有理数指数の累乗の基本性質U-2]
 ・任意の正の実数a任意の自然数n,n'任意の整数z,z' に 対して、
    z/nz'/n' ならば、  az/n = az'/n'  
 ・つまり、
  有理数指数の累乗は、
  有理数の分数としての表し方によらず、同一の実数を表す。
 ※なぜ?→証明 


[有理数指数の累乗の基本性質U-3]
 ・任意の正の実数a任意の自然数n任意の整数zに対して、
   az/n = (az)1/n = (a1/n)z
 ※なぜ?→証明 






→[トピック一覧:累乗(べき)と指数法則]
総目次

指数法則 exponential law,指数公式 law of exponents 〜指数を有理数に限定して

性質

[有理数指数の指数法則-1]
  いかなる正の実数a,いかなる有理数p,qに対してでも、
    apaq= ap+q 
  が成り立つ。
  論理記号で表すと、 (a>0) (p,qQ) ( apaq= ap+q )

 ※なぜ?→証明 

[有理数指数の指数法則-2]
  いかなる正の実数a,いかなる有理数p,qに対してでも、
    (ap)q= apq 
  が成り立つ。
  論理記号で表すと、 (a>0) (p,qQ) ( (ap)q= apq )

 ※なぜ?→証明 

[有理数指数の指数法則-3]
  いかなる正の実数a,b、いかなる有理数pに対してでも、
    (ab)p= apbp
  が成り立つ。
  論理記号で表すと、 (a>0) (p,qQ) (  (ab)p= apbp  )

 ※なぜ?→証明 

[有理数指数の指数法則-4]
  いかなる正の実数a,いかなる有理数p,qに対してでも、
       (ap)/(aq)=ap-q     
  が成り立つ。
  論理記号で表すと、 
    (a>0) (p,qQ) ( (ap)/(aq)=ap-q  )



[文献]

 吉田栗田戸田『昭和63年3/31文部省検定済 高等学校基礎解析』啓林館、2章1指数の拡張(pp.40-45):有理数実数べき;.
 赤攝也『実数論講義』定理7.1.3(pp.205-6):証明つき。
 ・小林昭七『微分積分読本:1変数』2章4指数関数(4.10)(4.13)(pp.60-61):有理数べきの指数公式law of exponents(p.60)

 ・竹之内『経済・経営系数学概説』1.5累乗の一般化(pp.34-6)
 ・『岩波入門数学辞典』「指数法則exponential law」(pp.244-5)。


[関連事項]

 ・有理数指数法則の具体例:
  →指数を自然数へ限定した場合の指数法則
  →指数を正負の整数へ限定した場合の指数法則 
 ・有理数指数法則の拡張:
  →指数を実数へ拡張した場合の指数法則

 ・有理数指数の「冪関数」「累乗関数」 

[有理数指数の指数法則-5]
  いかなる正の実数a,b、いかなる有理数pに対してでも、
    (a/b)p= ap/bp
  が成り立つ。
  論理記号で表すと、 (a>0) (p,qQ) (  (ab)p= apbp  )

[有理数指数の指数法則-6]
  いかなる有理数pに対してでも、
    (1)p = 1
  が成り立つ。
  論理記号で表すと、 (pQ) ( (1)p = 1 )

 ※なぜ?→証明 



→[有理数指数の指数法則]
→[トピック一覧:累乗(べき)と指数法則]



[証明:有理数指数の指数法則-1]
(a>0) (p,qQ) ( apaq= ap+q )を示す。

任意の正の実数a任意の自然数n,n'任意の整数z,z' に 対して、 
  az/naz'/n' azn'/nn'anz'/nn'      ∵有理数指数の累乗の性質U-1          
       =(azn')1/nn'(anz')1/nn' ∵azn'/nn',anz'/nn'の定義 
        =(azn' anz')1/nn'   ∵nn'自然数だから、有理数指数の累乗の性質I-3   
         =(azn'+nz')1/nn'   ∵zn',nz'も整数だから、整数指数の指数法則    
          =a(zn'+nz')/nn'    ∵a(zn'+nz')/nn'の定義   
           =azn'/nn'+nz'/nn'   
            =az/n+z'/n' 

有理数指数の累乗は、有理数の分数としての表し方によらず、同一の実数を表すから、
 上記の点より、
   任意の正の実数a,任意の有理数p,qに対して、 apaqap+q          

[文献]

 吉田栗田戸田『昭和63年3/31文部省検定済 高等学校基礎解析』啓林館、2章1指数の拡張(pp.40-45):有理数実数べき;.
 赤攝也『実数論講義』定理7.1.3(i)(pp.206):証明つき。
 ・小林昭七『微分積分読本:1変数』2章4指数関数(4.9)(4.10)(pp.59-60):証明つき。





→[有理数指数の指数法則]
→[トピック一覧:累乗(べき)と指数法則]




[証明:有理数指数の指数法則-2]
任意の正の実数a任意の有理数p,qに対して、(ap)q= apq を示す。

任意の正の実数a任意の自然数n,n'任意の整数z,z' に 対して、
  (az/n)z'/n'=((a1/n)z )z'/n'   ∵有理数指数の累乗の性質U-3
       =(((a1/n)z)z')1/n'  ∵az'/n'の定義
        =((a1/n)zz')1/n'  ∵整数指数の指数法則2 
        =((a1/n)1/n')zz'  ∵有理数指数の累乗の性質U-3 
        =(a1/nn')zz'    ∵有理数指数の累乗の基本性質T-5 
        =azz'/nn'     ∵有理数指数の累乗の性質U-3 
        =a(z/n)(z'/n' ) 




[文献]

 赤攝也『実数論講義』定理7.1.3(iii) (p.206):証明つき。



→[有理数指数の指数法則]
→[トピック一覧:累乗(べき)と指数法則]



[証明:有理数指数の指数法則-3]

任意の正の実数a,b任意の有理数pに対して、 (ab)p= apbp を示す。
  
任意の正の実数a,b任意の自然数n任意の整数z に 対して、
  (ab)z/n = ((ab)1/n)z    ∵有理数指数の累乗の性質U-3
      = (a1/nb1/n)z   ∵有理数指数の累乗の基本性質T-3 
      = (a1/n)z (b1/n)z  ∵整数指数の指数法則3 
      = az/n bz/n     ∵有理数指数の累乗の基本性質T-3  



[文献]

 赤攝也『実数論講義』定理7.1.3(iv) (p.206):証明つき。





→[有理数指数の指数法則]
→[トピック一覧:累乗(べき)と指数法則]





[証明:有理数指数の指数法則-6]





[文献]

 赤攝也『実数論講義』定理7.1.3(vi) (p.206):証明つき。





→[有理数指数の指数法則]
→[トピック一覧:累乗(べき)と指数法則]
総目次


指数と大小関係〜指数を有理数に限定して

性質1

いかなる「正の実数a,いかなる有理数qに対してでも、
   ( 0<q かつ  0<a<1 ) aq<1 )
が成り立つ。
論理記号で表すと、 (aR) (qQ) ( ( 0<q かつ 0<a<1 )  aq<1 )

[文献]

 ・赤攝也『実数論講義』定理7.1.5;問4(p.207):有理数指数に限定。証明付;
 ・上野健爾『岩波講座現代数学への入門7-8:代数入門1』§2.3(d)-補題2.37(pp.69-70)証明付
 小平『解析入門I』§2.3-b) (pp.89-90):上野と同様。
※関連事項:
 ・指数と大小関係(自然数指数)

性質2

いかなる「正の実数a,いかなる有理数qに対してでも、
   ( 0<q かつ  1<a 1<aq 
が成り立つ。
論理記号で表すと、 (aR) (qQ) ( (0<qかつ1<a 1<aq )
     ※なぜ?→小平(合成関数に一度分解して…)→上野

性質1'

・いかなる「正の実数a,いかなる有理数p,qに対してでも、
   ( pq かつ  0<a<1 ) aqap
 が成り立つ。
     論理記号で表すと、
     (aR) (p,qQ) ( ( pqかつ0<a<1 ) aqap  )
     ※なぜ?→証明 

・上記の点は、関数の狭義単調減少の概念をつかって、次のように表現できる。
 「有理数をすべて集めた集合」Q で定義された1変数関数 yf(x)ax (0<a<1)は、
  Qにおける狭義単調減少関数。[小平『解析入門I』§2.3-b(pp.89-91)]  
  (定義域がQということは、定義域から無理数が脱落しているということ) 
 


性質2'

いかなる「正の実数a,いかなる有理数p,qに対してでも、
   ( pq かつ  1<a apaq 
が成り立つ。
    論理記号で表すと、
    (aR) (p,qQ) ( (pqかつ1<a apaq )
    ※なぜ?→証明 
・上記の点は、関数の狭義単調増加の概念をつかって、次のように表現できる。
 「有理数をすべて集めた集合」Q で定義された1変数関数 yf(x)ax (a>1)は、
  Qにおける狭義単調増加関数。[小平『解析入門I』§2.3-b(pp.89-90)]
  (定義域がQということは、定義域から無理数が脱落しているということ) 

性質3

いかなる「正の実数a,いかなる単調増加有理数列p1,p2,p3,…に対してでも、
  0<a<1  ならば 数列 a p1
, a p2 , a p3 ,… は、単調減少列となる。 



  1<a    ならば 数列 a p1
, a p2 , a p3 ,… は、単調増加列となる。 



なぜ? 〜 0<a<1のケース
  ・単調増加列の定義より、、任意の自然数nに対して、pnpn+1 

  ・pnpn+1 となる自然数nについては、性質1'より、a pn a pn+1  



 
  ・pnpn+1 となる自然数nについては、a pn a pn+1  



  ・したがって、
     任意の自然数nに対して、a pn a pn+1  




なぜ? 〜 1<aのケース
  ・単調増加列の定義より、、任意の自然数nに対して、pnpn+1 

  ・pnpn+1 となる自然数nについては、性質2'より、a pn a pn+1  



 
  ・pnpn+1 となる自然数nについては、a pn a pn+1  



  ・したがって、
     任意の自然数nに対して、a pn a pn+1  



  

[文献]

 ・上野健爾『岩波講座現代数学への入門7-8:代数入門1』§2.3(d)-補題2.37のあと(p.70)

性質4

いかなる「正の実数a,いかなる上に有界な有理数列p1,p2,p3,…に対してでも、
  0<a<1  ならば 数列 a p1
, a p2 , a p3 ,… は、下に有界数列となる。




  1<a   ならば 数列 a p1
, a p2 , a p3 ,… は、上に有界な数列となる。



なぜ? 
 「上に有界」の定義より、数列p1,p2,p3,…には、上界pが存在して、
   p1p, p2p, p3p, …        
 を満たす。
 0<a<1  ならば
     pnp となる自然数nについては、性質1'より、a p a pn  




     pnp となる自然数nについては、a p a pn  




  となるから、任意の自然数nに対して、a p a pn  となって、下に有界数列に。




 1<a   ならば 
     pnp となる自然数nについては、性質2'より、a pn a p  




     pnp となる自然数nについては、a pn a p  




  となるから、任意の自然数nに対して、a pn a p  となって、上に有界な数列に。




[文献]

 ・上野健爾『岩波講座現代数学への入門7-8:代数入門1』§2.3(d)-補題2.37のあと(p.70)

性質5

・いかなる「正の実数a,いかなる上に有界な単調増加有理数列p1,p2,p3,…に対してでも、
   数列 a p1
, a p2 , a p3 ,… は、収束する。 




・0<a<1  ならば 数列 a p1
, a p2 , a p3 ,…は、下に有界単調減少列となるので、 




        数列 a p1
, a p2 , a p3 ,… の下限が、極限となる。 




・1<a  ならば 数列 a p1
, a p2 , a p3 ,…は、上に有界単調増加列となるので、 



           
        数列 a p1
, a p2 , a p3 ,… の上限が、極限となる。 



  (∵有界な単調数列は収束するの説明)
  (小平を参考に。記号も書き直し。
    それから、数列の有界、上限、下限の定義も、小平を参照して作成せよ。)


なぜ? 
 ・0<a<1  ならば性質3,性質4より、 
 数列 a p1
, a p2 , a p3 ,… は、下に有界単調減少列となる。 



  (単調減少列の各項は、初項を超えないので、そもそも単調減少列の各項は上に有界
    したがって、下に有界単調減少列とは、有界単調減少列である。)

 ・1<a  ならば性質3,性質4より、 
 数列 a p1
, a p2 , a p3 ,… は、上に有界単調増加列となる。 



  (単調増加列の各項は、初項を下回らないので、そもそも単調増加列の各項は下に有界
    したがって、上に有界単調増加列とは、有界単調増加列である。)

 ・有界な単調数列は収束するので、
  上記二点より、
  0<a<1  または 1<a  ならば、 数列 a p1
, a p2 , a p3 ,… は、収束する。 




 ・a=1  ならば、 指数法則6より、a p1
a p2 a p3 =1  




 ・以上三点から、
  いかなる正の実数aにたいしてでも、 数列 a p1
, a p2 , a p3 ,… は、収束する。 




[文献]

 ・上野健爾『岩波講座現代数学への入門7-8:代数入門1』§2.3(d)-補題2.37のあと(p.70)

活用例:実数を指数とする累乗の定義 

性質6

[1]
・いかなる「正の実数a
 いかなる上に有界な「有理数の集合」A{qQ| qr }に対してでも、
  0<a<1  ならば
    Aに属す有理数を指数とするaの累乗を全て集めた集合
         B={ aq | qA }{ aq | qQ かつ qr }
    は、下に有界
  1<a   ならば
    Aに属す有理数を指数とするaの累乗を全て集めた集合
         B={ aq | qA }{ aq | qQ かつ qr }
    は、上に有界
・上記の点は、
 「有理数をすべて集めた集合」Q で定義された1変数関数 yf(x)ax をつかって、
  次のように表現できる。
  0<a<1  ならば
   いかなる上に有界な「有理数の集合」A{qQ| qr }に対してでも、
   そのfによる像f(A)は、下に有界
  1<a  ならば
   いかなる上に有界な「有理数の集合」A{qQ| qr }に対してでも、
   そのfによる像f(A)は、上に有界

[2]
・いかなる「正の実数a
 いかなる下に有界な「有理数の集合」A{qQ| rq }に対してでも、
  0<a<1  ならば
    Aに属す有理数を指数とするaの累乗を全て集めた集合
        B={ aq | qA }{ aq | qQ かつ rq }
    は、上に有界
 
 1<a   ならば
    Aに属す有理数を指数とするaの累乗を全て集めた集合
        B={ aq | qA }{ aq | qQ かつ rq }
    は、下に有界
・上記の点は、
 「有理数をすべて集めた集合」Q で定義された1変数関数 yf(x)ax をつかって、
  次のように表現できる。
  0<a<1  ならば
   いかなる下に有界な「有理数の集合」A{qQ| rq }に対してでも、
   そのfによる像f(A)は、上に有界
  1<a  ならば
   下に有界な「有理数の集合」A{qQ| rq }
   そのfによる像f(A)は、下に有界

なぜ?〜[1]について
 「上に有界」の定義より、qAに対して、qr
 つまり、qAに対して、q=r またはqr
   q=r を満たすqAに対して、 aqar  
   
   qr を満たすqAに対して、
        0<a<1  ならば性質1'より、araq  
        1<a   ならば性質2'より、aqar  
 以上をまとめると、B={ aq | qA } は、
   0<a<1  ならばbBに対して、arbとなるから、下に有界
   1<a   ならばbBに対して、barとなるから、上に有界

なぜ?〜[2]について
 「下に有界」の定義より、qAに対して、rq
 つまり、qAに対して、q=r またはrq
   q=r を満たすqAに対して、 aqar  
   
   rq を満たすqAに対して、
        0<a<1  ならば性質1'より、aqar  
        1<a   ならば性質2'より、araq  
 以上をまとめると、B={ aq | qA } は、
   0<a<1  ならばbBに対して、barとなるから、上に有界
   1<a   ならばbBに対して、arbとなるから、下に有界
 
 

[文献]

 小平『解析入門I』§2.3-b) (p.90);

 →実数指数の累乗の定義 

[証明:有理数指数の累乗の大小関係-1’]

・(p,qQ) ( pq  0<qp  ) だから、
 性質1より、
  (aR) (p,qQ) ( ( pqかつ0<a<1 )    aq-p<1 ) …(1) 
指数法則4より、ここの aq-paq/ap となっているので、
 (1)は、
  (aR) (p,qQ) ( ( pqかつ0<a<1 )    aq/ap<1 ) …(2) 
 と書き直せる。
有理数指数の累乗の定義によって、apの符号はいつでもプラスであるから、
 実数における順序と乗法の基本性質より、
  「aq/ap<1」 「(aq/ap)ap <1・ap」すなわち「aqap」  
 これと(2)をあわせて考えると、
  (aR) (p,qQ) ( ( pqかつ0<a<1 )    aqap )



[文献]

 ・上野健爾『岩波講座現代数学への入門7-8:代数入門1』§2.3(d)-補題2.37(pp.69-70)証明付




[証明:有理数指数の累乗の大小関係-2’]
・(p,qQ) ( pq  0<qp  ) だから、
 性質2より、
  (aR) (p,qQ) ( (pqかつ1<a  1<aq-p ) …(1) 
指数法則4より、ここの aq-paq/ap となっているので、
 (1)は、
  (aR) (p,qQ) ( ( pqかつ1<a  1<aq/ap ) …(2) 
 と書き直せる。
有理数指数の累乗の定義によって、apの符号はいつでもプラスであるから、
 実数における順序と乗法の基本性質より、
  「 1<aq/ap 「 1・ap<(aq/ap)ap」すなわち「apaq」  
 これと(2)をあわせて考えると、
  (aR) (p,qQ) ( ( pqかつ1<a   apaq )




[文献]

 ・上野健爾『岩波講座現代数学への入門7-8:代数入門1』§2.3(d)-補題2.37(pp.69-70)証明付






→[トピック一覧:累乗(べき)と指数法則]
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