写像 : トピック一覧

 ・写像の定義:写像・関数  
 ・写像を組み立てている概念:定義域/終集合//逆像・原像
 ・写像の属性:同等/定義域/値域・像集合/写像のグラフ
 ・写像から組み立てられる関係:写像の像・原像に関する諸定理/逆写像・逆関数/制限/延長
 ・写像の下位類型:全射・上射・上への写像/単射・入射・1対1写像/全単射・双射/標準的単射・包含写像/定値写像/恒等写像
写像関連ページ:対応/合成写像/集合族・集合列の和・積と写像/配置集合 
         距離空間のあいだの写像の極限/距離空間のあいだの連続写像/位相空間のあいだの連続写像    
集合論目次
総目次

定義:写像 mapping, map ・関数function 

 1.写像の定義
 2.解説対応との関連/一意対応との関連/単射・全射との関連 
 3.写像の具体例の列挙・写像でない対応の具体例の列挙 

[定義]

・「集合Aから集合Bへの写像mapping」とは、
  集合Aの各ごとに、それに対応する「集合B」を一つずつ定める規則
 のことをいう。「 f:AB 」と表す。
          写像
・「集合A定義域とする写像mapping」「集合Aで定義された写像mapping」とは、
   集合Aの各ごとに、その対応者を一つずつ定める規則
  のことをいう。「f」などの記号で表す。[松坂『集合・位相入門』第1章§4.E(p.38)]
※上記2表現の違い→詳細
※「規則」という表現をとらない集合一元論的定義もある[→斉藤『数学の基礎』1.2.1(p.10)]
・特に、実数の集合R(の部分集合)から実数の集合Rへの写像は、
 関数と呼ばれることが多い。(そうでなくても、写像を関数と呼ぶこともある。)
 この件については、写像の具体例の列挙参照。

[文献―全般]

 岩波数学辞典(第三版)』項目57B対応;項目58B関数;項目162C写像;

[文献―集合論]

 松坂『集合・位相入門』第1章§3.E(pp.27-9);
 ・佐久間『集合・位相―基礎から応用まで―』1.4(pp.16-22);
 ・中内『数学の基礎体力をつけるためのろんりの練習帳』定義3.2.1(p.150)
 ・志賀『集合への30講』12講(p.70)
 ・一楽『集合と位相―そのまま使える答えの書き方』定義1.2.1(p.27) 
 ・ブルバキ『数学原論・集合論・要約』§2-1(p.9)
  ******
 斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』1.2.1(pp.10-11):集合一元論的定義 
 ・竹内外史『集合とはなにか―はじめて学ぶ人のために』(pp.105-9):集合一元論的定義

[文献―解析]

 ・ラング『ラング現代微積分学』0章§2(p.5)
 松坂『解析入門1』2.1-A(pp.55-58)
 ・笠原皓司『微分積分学』1.4(p.22)
 ・黒田『微分積分学』3.1.2(p.85)
 ・高橋『経済学とファイナンスのための数学』2.1(pp.27-8)対応との対比
 ・神谷浦井『経済学のための数学入門』1.3.2(p.34)
 ・岡田『経済学・経営学のための数学』4.1(p.154)
 ・Fischer, Intermediate Real Analysis, U.2.Def2.2 (pp.44-45):domain,range,image,

[文献―確率]

 ・佐藤『はじめての確率論pp.166-167。

[関連事項]

・対応の諸類型:分類基準/対応/一意対応/一対一対応/単射/全射/全単射
        →一覧表:対応の分類基準と6分類の定義 
        →ベン図:対応の6分類の包含関係

[定義]

・写像「f:AB」と表現された写像において、写像f定義域domainとは、集合Aのこと。
・「集合Aで定義された写像f」と表現された写像において、写像f定義域domainとは、
 集合Aのこと。
※厳密には、集合Aは、fの始集合かつfの定義域となっている。
 詳しくは「対応の定義域」を参照。

[→写像定義冒頭]

[定義]

・写像「f:AB」と表現された写像において 終集合final setとは、
  集合B〜すなわち《集合Aの各に対して、写像fが割り当てた対応者》が属す集合〜
 のこと[松坂『解析入門1』]。
・「集合Aで定義された写像f」と表現される写像においては、
  写像f 終集合(《集合Aの各に対して、写像fが割り当てた対応者》が属す集合)
 は不特定[→詳細]。
・前者で表現された写像では、終集合が特定されているが、
 後者で表現された写像では、終集合が不特定。
 ここには、写像の終集合の取り扱いをめぐる立場の違いがある。[→詳細]
斉藤『数学の基礎:集 合・数・位相』は、B値域と呼んでいるようだが、どうだろう?

[→写像定義冒頭]

[定義]

写像f:AB」において「fによるaf (a)とは、
  写像f:AB」によって「集合Aa」に対応付られた「集合B」のこと。 
・「集合Aで定義された写像f」において「fによるaf (a)とは、
  写像fによって「集合Aa」に対応付られたもののこと。
  (写像のこの表現では、fの像がどの集合に属すかは不特定)
・「『写像fによるa{b}である」は、
  本来「f(a){b}と書くべきであるが、普通は「f(a)b」とだけ書く。   
・以下は、「『写像fによるabである f(a)b 」と同義。
  ・「aにおけるfbである。」 
  ・「fabを対応させる」 
  ・「fabに写す」
  [『岩波数学辞典(第三版)』項目162C]
  [ 松坂『集合・位相入門』第1章§3.E(pp.27-8);] 

[→写像定義冒頭]

[定義]

・写像「f:AB」において、
 「『終集合Bbの、写像fによる原像・逆像 inverse image」とは、
   「写像fによって『終集合Bbを割り当てられた『定義域A』」
   「写像fによる像が『終集合Bbとなる『定義域A』」
    をあつめた集合
 のこと。
   { aA | f(a)=b } 
  のこと。
・「集合Aで定義された写像f」において
 「bの、写像fによる原像・逆像 inverse image」とは、
  とは、
   「写像fによってbを割り当てられた『定義域A』」
   「写像fによる像がbとなる『定義域A』」
    をあつめた集合
 のこと。
・写像「f:AB」における「『終集合Bbの、写像fによる原像・逆像
 「集合Aで定義された写像f」における「bの、写像fによる原像・逆像
 を、記号 f−1(b) で表す。
・もちろん、
 写像「f:AB」における「『終集合Bbの、写像fによる原像・逆像
 「集合Aで定義された写像f」における「bの、写像fによる原像・逆像
 は、集合A部分集合になっている。
  f−1(b){ aA | f(a)=b }   A 

[→写像定義冒頭]

[写像の2表現―終集合の扱いによる違い]

・「集合Aから集合Bへの写像f:ABという表現では、
 《集合Aの各に対して、写像fが割り当てた対応者》が属す集合が特定されている(ここではB)が、
 「集合A定義域とする写像」「集合Aで定義された写像fという表現では、
 《集合Aの各に対して、写像fが割り当てた対応者》が属す集合が特定されていない。
 このような終集合の取り扱いをめぐる2表現間の違いは、写像の同一性の扱いの違いを生じさせる。
・「集合Aから集合Bへの写像f:ABの対応規則
   〜すなわち、集合Aの各ごとに、それに対応する「集合B」を一つずつ定める規則〜
 は、そのまま、集合Aの各ごとに、それに対応する「集合Bを含む集合B'」を一つずつ定める規則ともみなせる。
 しかし、「集合Aから集合Bへの写像f:ABと表現された写像fでは、
 《集合Aの各に対して、写像fが割り当てた対応者》が属す集合は、集合Bでなければならないから、
 写像fを「集合Aの各ごとに、それに対応する『集合Bを含む集合B'』を一つずつ定める規則」とみなした途端、
 fとは別の写像として扱って、「集合Aから集合B'への写像g:AB'などと表さなければならない。
・ところが、
 「集合Aで定義された写像fと表現された写像fでは、
 《集合Aの各に対して、写像fが割り当てた対応者》が属す集合は、
 「《集合Aの各に対して、写像fが割り当てた対応者》を全て集めた集合」(すなわち「値域」)を含む集合
 であるかぎり、どれでもよい。
 だから、《集合Aの各に対して、写像fが割り当てた対応者》が属す集合を集合Bにみようが、
 《集合Aの各に対して、写像fが割り当てた対応者》が属す集合を、集合Bを含む集合B'にみようが、写像fは写像fである。
   [→松坂『集合・位相入門』第1章§4.E(p.37);]

[→写像定義冒頭]

「写像の終集合(の異同)を重視する立場」「写像の終集合(の異同)を重視しない立場」

 ・写像f:AB」にたいして、以下の3条件を満たす写像gをつくることができる。 
     [条件1] f:AB」と同一の対応規則を有す。
     [条件2] 「f:AB」と同一の定義域を有す。 
     [条件3] 「f:AB」の値域f(A)を含む集合S(≠B)を終集合とする。
  つまり、写像f:AB」にたいして、
   「(xA) (g(x)=f(x)) かつ S f(A) かつ SB 」を満たす写像g:AS」       
  をつくることができる。
  写像f:AB」と写像g:AS」は、対応規則も定義域値域も同一だが、終集合だけ異なる写像である。
 ・この、終集合だけ異なる写像f:ABg:AS」をどう取り扱うかについては、
  「写像の終集合(の異同)を重視する立場」と「写像の終集合(の異同)を重視しない立場」に分かれる。
 ・「写像の終集合を重視する立場」は、
   対応規則も定義域値域も同一とはいえ、終集合が異なる以上、写像f:ABg:AS」を異なった写像として扱う
   とする立場である。
   実際、ある側面においては、写像f:ABと「g:AS」とは、異なった性質を帯びることがある。
   たとえば、全射ではない写像「f:AB」にたいして、
         対応規則も定義域値域も同一だが、終集合だけ集合Bから値域f(A)に変えた写像g:A f(A)」をつくると
        写像「f:AB」は全射でないのに、写像g:A f(A)」は全射となる、
   といったように。
 ・「写像の終集合を重視しない立場」は、写像f:ABg:AS」を同一の写像として扱う立場である。
   この立場は、個々の写像・関数の本性を、定義域の各を対応させる規則に見ている。
   だから、対応規則も定義域も同一の(したがって値域も同一の)「f:ABg:AS」は、同一の本性を有す写像であって、
   《どの「値域を含む集合」を終集合としているか》という、本性から外れた《うわべ》だけの違いは、無視してかまわないのであって、
   同一の本性を有す「f:ABg:AS」は、同一の写像として扱ってよい、
   ということになる。
 ・「写像の終集合を重視しない立場」は、そもそも終集合に興味がないのだから、
   終集合を明示したf:ABg:AS」といったスタイルで写像を表現する必要もない、
   定義域と規則を表す記号だけを明記すればよい。
   だから、「A定義域とする写像f」「Aで定義された写像f」という表現が、この立場には適当である。
   そして、この立場では、
   上記の《対応規則も定義域値域も同一だが、終集合だけ異なる写像》「f:ABg:AS」は、どちらも、一緒ごたにされて、
   「A定義域とする写像f」「Aで定義された写像f」と呼ばれることになるだろう。
       [→松坂『集合・位相入門』第1章§4.E(p.37);]

[→写像定義冒頭]

[解説]

[対応との関連]

対応との関連で述べると、
 集合Aから集合Bへの写像とは、
 「集合Aから集合Bへの対応」の特別なもの。

対応f:AB」は、
 同一の「始集合Aに属す」に対して割り当てる終集合Bに属す」の個数が、
一覧表:対応の分類基準と6分類の定義 
ベン図:対応の6分類の包含関係

  [ケース0]0個 
 でも、
  [ケース1]1個 
 でも
  [ケース2]複数個
 でも、かまわなかった。
 つまり、
 対応f:AB」では、
  [ケース0]同一の「始集合Aに属す」に対する
         「終集合Bに属す」0個の割り当て
          つまり、f(a)φ 
                       (1対0の割り当て)
 も、
  [ケース1]同一の「始集合Aに属す」に対する
        「終集合Bに属す」一個の割り当て
                   (1対1の割り当て)
          つまり、f(a)一元集合。たとえば、f(a){b} 
 も、
  [ケース2]同一の「始集合Aに属す」に対する
         複数個の「終集合Bに属す」の割り当て
         (1対多の割り当て)
          たとえば、f(a){b1,b3}, f(a){b1,b2,b3} 
 も、すべてありえた。

・これらの「始集合Aに属す」に対する割り当てかたのうち、
  [ケース1]同一の「始集合Aに属す」に対する
        「終集合Bに属す」一個の割り当て
 のみからなる対応f:AB」が、写像または関数である。


・すなわち、集合Aから集合Bへの写像・関数とは、
   対応fAB 
 のなかで、
    任意のaAに対して、f(a)一元集合 
    すなわち、(aA) (bB) ( f(a){b} )
 を満たすもの
 に他ならない。

・「写像ではない対応」「関数ではない対応」とは、
    ・[ケース0]同一の「始集合Aに属す」に対する
          「終集合Bに属す」0個の割り当て
           つまり、f(a)φ 
                       (1対0の割り当て)
   または
    ・[ケース2]同一の「始集合Aに属す」に対する
         複数個の「終集合Bに属す」の割り当て
         (1対多の割り当て)
          たとえば、f(a){b1,b3}, f(a){b1,b2,b3} 
  が、一回でも為されている対応のこと。

・すなわち、
 「対応fAB』が写像ではない」
 「対応fAB』が関数ではない」
 とは、
  対応fAB』が
     (aA)(f(a)一元集合)
    (aA)(f(a)φまたはf(a)「複数個の属す集合」)
  を満たすことをいう。
 
対応の用語である「対応の定義域」「一意対応」を使って、
 以上を述べなおすと、
 写像関数とは、
 下記2条件を同時に満たす対応のことだ、ということになる。
 (条件1) 始集合全体が定義域
 (条件2) 一意対応である

→[写像冒頭]

[ケース0の例]            [ケース1の例]
対応 1対0の割り当て対応の割り当てタイプ1
[ケース2の例]
対応 1対多の割り当て対応 1対多の割り当て


[一意対応との関連]


一意対応との関連で述べると、
 集合Aから集合Bへの写像とは、
 「集合Aから集合Bへの一意対応」の特別なもの。

一意対応f:AB」は、
 「始集合Aに属す」に対して割り当てる終集合Bに属す」の個数が、
  [ケース0] 0個
 でも、
  [ケース1] 1個
 でも、かまわなかった。
 つまり、
 一意対応f:AB」では、
  [ケース0]始集合Aに属す」に対する
         「終集合Bに属す」0個の割り当て
          つまり、f(a)φ 
                       (1対0の割り当て)
 も、
  [ケース1]始集合Aに属す」に対する
        「終集合Bに属す」一個の割り当て
                   (1対1の割り当て)
          たとえば、f(a){b} 
 も、ありえた。

・この二通りの「始集合Aに属す」に対する割り当てかたのうち、
  [ケース1]始集合Aに属す」に対する
        「終集合Bに属す」一個の割り当て
 のみからなる一意対応f:AB」が、写像または関数である。  

・つまり、
 「一意対応f:AB』が、写像または関数である」とは、
  一意対応f:AB』が、
    任意のaAに対して、f(a)一元集合 
    すなわち、(aA) (bB) ( f(a){b} )
  を満たすことを言う。

・「写像ではない一意対応」「関数ではない一意対応」とは、
  [ケース0]同一の「始集合Aに属す」に対する
          「終集合Bに属す」0個の割り当て
       つまり、f(a)φ  (1対0の割り当て)
  が、一回でも為されている一意対応のこと。

・すなわち、
 「一意対応fAB』が写像ではない」
 「一意対応fAB』が関数ではない」
 とは、
  一意対応fAB』が
    (aA) (f(a)φ)
  を満たすことをいう。

対応の定義域の概念を使って、以上を述べなおすと、
 写像関数とは、
 始集合全体が定義域 となっている一意対応である
 となる。

→[写像冒頭]
一覧表:対応の分類基準と6分類の定義 
ベン図:対応の6分類の包含関係

[ケース0の例]            
対応 1対0の割り当て
[ケース1の例]
対応の割り当てタイプ1


[単射/全射との関連]


写像・関数の下位類型に、単射全射全単射がある。

写像・関数の定義は、
 「同一の《定義域》に対して割り当てる《終集合》の個数」について、
 「1個」と限定しているものの、
 「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」については、
 一切問題にしていない。
 したがって、
 「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」が
 何個であろうが、
 「同一の《定義域》に対して割り当てる《終集合》の個数」が
 いつでも「1個」
 でありさえすれば、写像・関数と呼んで差し支えない。 

・これに対して、単射全射全単射の各概念の定義は、
 「同一の《定義域》に対して割り当てる《終集合》の個数は1個だけ」
 という写像・関数の定義を満たすばかりか、
 「同一の《終集合》を割り当てられ《定義域》の個数」
 についての限定条件を満たすことまで要求する。

単射の定義は、
 「同一の《定義域》に対して割り当てる《終集合》の個数」を
 1個に限定することに加え、
 「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」を、
 0個または1個(右図ケース0,1)に限定する。
 つまり、
  ・どの《定義域》についてであれ、
   「同一の《定義域》に対して割り当てる《終集合》の個数」が
   いつも1個
 かつ
  ・どの《終集合》についてであれ、
   「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」が、
    0個ないし1個(右図ケース0,1)のいずれか)
 である対応は、単射と呼んでよいが、
  ・どの《定義域》についてであれ、
   「同一の《定義域》に対して割り当てる《終集合》の個数」が
   いつも1個
 であっても、  
  ・《終集合》によっては、
   「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」が、
    2個以上になる割り当て(右図ケース2)が存在する
 ような対応は、
 単射と呼んではならない。 

全射の定義は、
 「同一の《定義域》に対して割り当てる《終集合》の個数」を
 1個に限定することに加え、
 「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」を、
 1個以上(右図ケース1,2)に限定する。
  (だから、全射では、
   割り当てられずに売れ残る《終集合》が出るような割り当てかた
   は、排除される→右図ケース0)
 つまり、
  ・どの《定義域》についてであれ、
   「同一の《定義域》に対して割り当てる《終集合》の個数」が
    いつも1個
 かつ
  ・どの《終集合》についてであれ、
   「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」が、
   いつも、1個以上
 である対応は、全射と呼んでよいが、
  ・どの《定義域》についてであれ、
   「同一の《定義域》に対して割り当てる《終集合》の個数」が
   いつも1個
 であっても、  
  ・割り当てられずに売れ残る《終集合》が出る(右図ケース0)
 ような対応は、
 全射と呼んではならない。 


全単射の定義は、
 「同一の《定義域》に対して割り当てる《終集合》の個数」を
 1個に限定することに加え、
 「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」を、
 1個に限定する(右図ケース1)。
 つまり、
  ・どの《定義域》についてであれ、
   「同一の《定義域》に対して割り当てる《終集合》の個数」が
   いつも1個
 かつ
  ・どの《終集合》についてであれ、
   「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」が、
    いつも1個
 である対応は、全単射と呼んでよいが、
  ・どの《定義域》についてであれ、
   「同一の《定義域》に対して割り当てる《終集合》の個数」が
   いつも1個
 であっても、  
  ・《終集合》によっては、
   「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」が、
    2個以上になる割り当て(右図ケース2)が存在したり、
  ・割り当てられずに売れ残る《終集合》(右図ケース0)が出る   
 ような対応は、
 全単射と呼んではならない。 

→[写像冒頭]

一覧表:対応の分類基準と6分類の定義 
ベン図:対応の6分類の包含関係

[図解]「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」に関する

          対応の割り当てかたの三ケース


 ・ケース0:「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」=0個
   対応0対1
 ・ケース1「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」=1個
   対応の割り当てタイプ1
 ・ケース2「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」=複数
   対応 多対1の割り当て
   対応多対1の割り当て
 


・写像の例  :1/2/3/4
・写像でない例:1/2/3 


[写像の例1]

・右図の対応f:AB」は、
   「fによるa1」 f(a1){b1}、「fによるa2f(a2){b2}
   「fによるa3」 f(a3){b3} 、「fによるa4f(a4){b4}
 となっていて、
 どの『f始集合Aに属す』に対しても、
 『終集合Bに属す』一個を割り当ててている。
・したがって、右図の対応は、写像・関数である。
・なお、この写像・関数では、
   「fによるb1逆像f−1(b1){a1}、「fによるb2逆像f−1(b2){a2}
   「fによるb3逆像f−1(b3){a3} 、「fによるb4逆像f−1(b4){a4}
 だから、全単射にもなっている。


全単射bijection


→[写像冒頭]

[写像の例2]

・右図の対応f:AB」は、
  「fによるa1f(a1){b1}、「fによるa2f(a2){b2}
  「fによるa3f(a3){b3} 、「fによるa4f(a4){b2}
 となっていて、
 どの『f始集合Aに属す』に対しても、
 『終集合Bに属す』一個を割り当ててている。
・したがって、右図の対応は、写像・関数である。

・なお、この写像・関数では、
  「fによるb1逆像f−1(b1){a1}、「fによるb2逆像f−1(b2){a2,a4}
  「fによるb3逆像f−1(b3){a3} 
 となっていて、


全射

 「同一の《終集合b2を割り当てられた《定義域》」」f−1(b2)が、複数存在するが、
 写像・関数の定義は、「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」を問題にしていない。
 だから、「どの『f始集合Aに属す』に対しても、『終集合Bに属す』一個を割り当ててている」この対応を、
 写像・関数と呼んでも差し支えない。
・この写像・関数は、
 「同一の《終集合Bb2を割り当てられた《定義域》」が複数存在するので、単射ではないが、
 「割り当てられずに売れ残る《終集合B》」は皆無だから、全射にはなっている。

→[写像冒頭]

[写像の例3]

・右下図の対応f:AB」は、
  「fによるa1f(a1){b1}、「fによるa2f(a2){b2} 、「fによるa3f(a3){b3}
 となっていて、どの『f始集合Aに属す』に対しても、『終集合Bに属す』一個を割り当ててている。
・したがって、右下図の対応は、写像・関数である。
・なお、この写像・関数では、
  「fによるb1逆像f−1(b1){a1}、「fによるb2逆像f−1(b2){a2} 、「fによるb3逆像f−1(b3){a3} 、「fによるb4逆像f−1(b4) φ
 となっていて、《終集合Bb4が「割り当てられずに売れ残る」。
写像・関数の定義は、「割り当てられずに売れ残る《終集合B》」が出るかどうかを問題にしていない。
 だから、「どの『f始集合Aに属す』に対しても、『終集合Bに属す』一個を割り当ててている」この対応を、

 写像・関数と呼んでも差し支えない。
・この写像・関数は、
 「割り当てられずに売れ残る《終集合B》」b4が出ているから、
 全射ではないが、
 どの《終集合》についてであれ、
   「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」が、
    0個ないし1個のいずれか
 であって、
   「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」が、
    2個以上になる割り当て
 はなされていないから、
 この写像・関数は、単射にはなっている。


単射(一対一写像)


→[写像冒頭]

[写像の例4]


・右図の対応f:AB」は、
  「fによるa1f(a1){b1}、「fによるa2f(a2){b2}
  「fによるa3f(a3){b1} 、「fによるa4f(a4){b2}
 となっていて、
 どの『f始集合Aに属す』に対しても、
 『終集合Bに属す』一個を割り当ててている。
・したがって、右図の対応は、写像・関数である。

・なお、この写像・関数では、
一意対応の例

  「fによるb1逆像f−1(b1){a1,a3}、  「fによるb2逆像f−1(b2){a2,a4}、「fによるb3逆像f−1(b3) φ、「fによるb4逆像f−1(b4) φ
 となっていて、
・この対応は、全射でも単射でもないが、写像の定義は満たしている。


→[写像冒頭]

[写像ではない対応の例1]

・右下図の対応f:AB」は、一対一対応ではあるものの、写像ではない。
・右下図の対応は、
   「fによるa1f(a1){b1}、「fによるa2f(a2){b2} 、「fによるa3f(a3){b3}
 となっており、
  始集合Aa1,a2,a3に対しては、それぞれ、『終集合Bに属す』を一個ずつ割り当てていっている。
・しかし、「fによるa4f(a4)φ
  つまり、始集合Aには、『終集合Bに属す』を一個も割り当てないa4が存在する。
・だから、「f:AB」は、写像の定義から逸脱している。


・しかし、対応の定義域の定義にしたがえば、
 始集合A定義域ではなくて、
 「始集合Aからa4を除いた集合」A{a4}{a1,a2,a3}対応fの定義域
 すると、「f:AB」は、
 始集合Aの各aにたいして、
    『終集合Bに属す』を一個ずつあてがってないものの、
 定義域 A{a4}{a1,a2,a3}の各にたいしては、
         一個ずつ「終集合の元」をあてがっていることになる。
・そこで、A'A{a4}{a1,a2,a3}として、
  f ':A'B
 としたら、f 'は、写像となる。
 f 'を、fA'への制限という[斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』1.2.5(p.11)]
一意対応の例


→[写像冒頭]

[写像ではない対応の例2]

・右図の対応f:AB」は、写像でも、一対一対応でもないが、一意対応ではある。
・右図の対応は、
    f(a1){b1}f(a2)φf(a3){b1}f(a4){b1}
 となっていて、
 a2に対して、《終集合B》を割り当てていないことが、
 写像の定義から逸脱している。
・しかし、
 どの『f始集合に属す』に対しても、終集合Bを二個以上割り当てていない
 ので、一意対応の定義は満たしている。
→[写像冒頭]

一意対応の例

[写像ではない対応の例3]

・右図の対応f:AB」は、写像でも、一対一対応でも、一意対応でもない。
・ 右図の対応f:AB」は、
  f(a1)={b1,b3}f(a2)=φf(a3)={b1,b3}f(a4)={b2}
 となっていて、
 (1) a1に対して、二{b1,b3}を割り当てていること
 (2) a3に対して、二{b1,b3}を割り当てていること
 (3) a2に対して、《終集合B》を割り当てていないこと
 が、 写像の定義から逸脱している。
 また、(1)(2)は、 一意対応の定義からも逸脱している。

→[写像冒頭]

対応の例



[]


・写像「f : AB」について、
 ・集合BをRとしたもの ―「実数値関数

[文献]

 ・松坂『解析入門1』2.1-A(p.58)



※このように、普通、
 写像・関数といえば、集合Aの各に対して定義するが、
 集合Aの(各ではなくて)各部分集合に対して定義した関数もつくることができる。
 集合Aの各部分集合に対して定義した関数を集合関数と呼ぶ。
 (定義域が集合系、定義域の各元が集合となる写像・関数を、集合関数と呼ぶ。)
 これに対して、集合Aの各に対して定義した普通の写像・関数を点関数と呼ぶ。

(集合関数も入れる。定義域が集合系である写像を、特に、集合関数と呼ぶ。)




具体例:2項演算、実数値関数、ベクトル値関数、
    集合関数、1変数関数(円は、1変数関数ではない)グラフを使った説明

    

※写像の具体例:列(数列、点列、集合列)2項演算  (1変数・2変数・n変数)実数値関数、ベクトル値関数、複素数値関数、一次写像、一次変換 
  実数値関数
    −数列
    −1変数実数値関数[黒田『微分積分学』問題3.1.3(p.92)]・2変数実数値関数・n変数実数値関数

→[トピック一覧:写像]
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定理:写像のグラフ

設定

写像f: AB」が与えられているとする。
直積A×B部分集合 {(a,b)| aA かつ bf(a) } をGで表す。

[文献]

・松坂『集合・位相入門』第1章§3.E定理2(p.29);

定理

次の二つの命題P,Q同値である。
 命題P:  G写像fグラフである。
 命題Q: 集合A任意のaに対して、(a,b) Gとなるような
        「Bb」が一個だけ存在する。 




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定義:写像による像 image

定義

1.元の像

写像f:AB」において「fによるaf (a)とは、
 写像f:AB」によって「集合Aa」に対応付られた「集合B」のこと。
・「集合Aで定義された写像f」において「fによるaf (a)とは、
  写像fによって「集合Aa」に対応付られたもののこと。
  (写像のこの表現では、fの像がどの集合に属すかは不特定)
・「『写像fによるa{b}である」は、
 本来「f(a){b}と書くべきであるが、
 普通は「f(a)b」とだけ書く。   
・以下は、「『写像fによるabである f(a)b 」と同義。
  ・「aにおけるfbである。」 
  ・「fabを対応させる」 
  ・「fabに写す」
 

[関連事項]

 ・2集合の像についての定理/集合族・集合列の和積の像についての定理
 ・対応による像/1変数実数値関数の像・値/

[文献]

 ・『岩波数学辞典(第三版)』項目162C
 ・松坂『集合・位相入門』第1章§3.E定理2(pp.27-8);
 ・志賀『集合への30講』12講(p.70)
 ・中内『数学の基礎体力をつけるためのろんりの練習帳』定義3.2.1(p.150)
 ・黒田『微分積分学』3.1.2(p.86)

定義

2.定義域部分集合の像  

写像f:AB」において、「定義域A部分集合Mfによる像とは、
   Mに属すfによる像を、全部集めて出来る集合
  すなわち、
  f(a)=bを満たすAaが数なくとも一つ存在するようなBbを全てあつめた集合
     f (M)  { f(a)B | aM }
 のこと。
    写像による像
※   f (M) =φ ⇔ M=φ  
・「集合Aで定義された写像f」において、「定義域A部分集合Mfによる像とは、
    「集合A部分集合M」に属すfによる像を、全部集めて出来る集合
         f (M)  { f(a) | aM }
 のこと。

[文献]

 ・『岩波数学辞典(第三版)』項目162C
 ・斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』1.2.4(p.11)
 ・ラング『ラング現代微積分学』0章§2(p.5)
 ・松坂『集合・位相入門』第1章§4.A(p.30);
 ・黒田『微分積分学』3.1.2(p.87)
 ・Fischer, Intermediate Real Analysis, U.2 (p.47)"image of a set under Mapping"


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定義:原像・逆像 inverse image

定義

[元の逆像]

写像f:AB」において、
 「『終集合Bbの、写像fによる原像・逆像 inverse image」とは、
  「終集合Bbが「写像fによる」となる「定義域A」をすべて集めた集合
    すなわち、
  「bf(a)」を満たす「定義域Aaをすべて集めた集合 { aA | f(a)b }
   のこと。
  ※対応fによる逆像は、{ aA | bf(a) } で、
   写像fによる逆像は、{ aA | bf(a) } 。
   この、bf(a)bf(a)の違いは、
     後者では、f(a)は例外なく一元集合となるが、
     前者では、f(a)は、φや「複数が属す集合」もある多様な集合
     となるから。     
・「集合Aで定義された写像f」において
 「bの、写像fによる原像・逆像 inverse image」とは、
  bが「写像fによる」となる「定義域A」をすべて集めた集合
    すなわち、
  「bf(a)」を満たす「定義域Aaをすべて集めた集合 { aA | f(a)b }
   のこと。
写像f:AB」における「『終集合Bbの、写像fによる原像・逆像
 「集合Aで定義された写像f」における「bの、写像fによる原像・逆像
 を、記号 f−1(b) で表す。
・もちろん、
 写像f:AB」における「『終集合Bbの、写像fによる原像・逆像
 「集合Aで定義された写像f」における「bの、写像fによる原像・逆像
 は、定義域A部分集合になっている。
  f−1(b){ aA | bf(a) }   A
  ※写像の定義によって、写像fにおいてf(a)は常に一元集合となるが、
   f−1(b)については、写像の定義に、一元集合とする縛りがないので、
   f−1(b)φf−1(b)「複数が属す集合」となることもある点に注意。  

[関連事項]

 ・2集合の逆像についての定理/集合族・集合列の和積の逆像についての定理
 ・対応による逆像/1変数実数値関数の逆像/


[文献]

 ・ブルバキ『数学原論・集合論・要約』§2-6(p.12)
 ・『岩波数学辞典(第三版)』項目162C;
 ・斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』1.2.4(p.11)
 ・松坂『集合・位相入門』第1章§4.a定理2(p.30);
 ・中内『数学の基礎体力をつけるためのろんりの練習帳』定義3.2.8(p.152)
 ・神谷・浦井『経済学のための数学入門pp.37-38;
 ・佐藤『初めての確率論p.166
 黒田『微分積分学』3.1.2(p.86;87)
 ・岡田『経済学・経営学のための数学』4.1(p.154)

定義

[終集合の部分集合の逆像]

写像f:ABによる終集合B部分集合Nの原像ないし逆像f−1(N)とは、
 定義域Aのうち、そのNに入るもの全体の集合
   f-1(N) { aA | f(a) N } 
 のこと。 

       写像の逆像 

・「集合Aで定義された写像fによる集合Nの原像ないし逆像f−1(N)とは、
 定義域Aのうち、そのNに入るもの全体の集合
   f-1(N) { aA | f(a) N } 
 のこと。 


写像fに対して、その逆関数・逆写像f-1が存在しない場合でも、写像f: MN 」が定義されている限り、
逆像f-1(・)は定義されている。[神谷・浦井『経済学のための数学入門pp.37-38.]

f-1(B)=A。[松坂『集合・位相入門』第1章§4.a定理2(p.30);.]

f-1(φ)=φだが、Nφであったとしても、f-1(N)=φ となることもある。        [松坂『集合・位相入門』第1章§4.a定理2(p.30);]

→[トピック一覧:写像]
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定義:写像の値域range , 写像の像集合 Im 

定義

[「元の像」のみを使った定義]

・「写像『f:AB値域range,像集合Imf」とは、
  「 fによって『定義域Aに属す』へ実際に割り当てられている」
 という条件を満たす「終集合Bに属す」をあつめた集合。
   { bB | (aA)(f (a)b) }  [右記黒田参照]
・「『集合Aで定義された写像f』の値域range,像集合Imf」とは、
   fによって『定義域Aに属す』に対応づけられたものを
  全てあつめた集合
   { b | (aA)(f (a)b) } 
  のこと。

[「元の逆像」のみを使った定義]

写像『f:AB値域range,像集合Imfとは、
  「 fによる逆像空集合にならない」という条件を満たす
  「終集合Bに属す」をあつめた集合。
   { bB | (f−1(b)φ) } 

[定義域と「集合の像」を使った定義]

・「写像『f:AB値域range,像集合Imf
 「f定義域A」のfによる 
    f (A)  { f(a)B | aA } 
 のこと。
・「『集合Aで定義された写像f』の値域range,像集合Imf」とは、
 「f定義域A」のfによる 
    f (A)  { f(a) | aA } 
 のこと。
 

[文献]

 ・岩波数学辞典(第三版)』項目162C写像;
 ・松坂『集合・位相入門』第1章§3-C(p.25)対応の値域;§3-B(p.32)写像の値域;
 ・志賀『集合への30講』12講(p.71):像集合
 ・中内『数学の基礎体力をつけるためのろんりの練習帳』定義3.2.1(p.150)
 黒田『微分積分学』3.1.2(p.86)
 ・岡田『経済学・経営学のための数学』4.1(p.154)

解説

写像の定義は、
 「同一の《定義域》に対して割り当てる《終集合》の個数」について、
 「1個」と限定しているものの、
 「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」については、
 一切問題にしていない。
※写像の値域の一般化:対応の値域 
※写像の値域の具体例:
  ・1変数実数値関数の値域/2変数関数の値域/n変数関数の値域/
   ・一次変換の像集合/ベクトル値関数の値域  

 したがって、
 「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」が
 何個であろうが、
 「同一の《定義域》に対して割り当てる《終集合》の個数」が
 いつでも「1個」
 でありさえすれば、写像と呼ばれる。

・ということは、
 「写像『f:AB終集合B」には、
  [タイプ0]定義域Aに属す』からの割り当てがない 
          f−1(b)φ を満たすbB  
  [タイプ1]「一個だけの『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
          f−1(b)一元集合 を満たすbB 
  [タイプ2]「複数個の『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
 という3タイプのが含まれ得るわけである。

・これら3タイプの「終集合B」のうち、
  [タイプ1]「一個だけの『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
  [タイプ2]「複数個の『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
 という2タイプのをあつめた集合、
   { bB | f−1(b)φ } 
 を「写像『f:AB値域」と呼ぶ。

・だから、
 「写像『f:AB終集合B」のなかで「写像『f:AB値域」ではない部分
 とは、
  [タイプ0]定義域Aに属す』からの割り当てがない
 をあつめた集合
   { bB | f−1(b)φ } 
 に他ならない。

写像のなかには、
 「写像『f:AB終集合B」のあらゆるが、
  [タイプ1]「一個だけの『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
  [タイプ2]「複数個の『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
 のいずれかになって、
  [タイプ0]定義域Aに属す』からの割り当てがない
 が、「写像『f:AB終集合B」に含まれない
 つまり、
 「写像『f:AB終集合B」が「写像『f:AB値域」と一致する
 ものもある。
 このような性格の写像を、全射と呼ぶ。

[タイプ0]               [タイプ1]
対応0対1対応の割り当てタイプ1
[タイプ2]
対応 多対1の割り当て対応多対1の割り当て


図例

写像『f:ABの右図の例では、
   f−1(b1) {a1,a3}φ 
   f−1(b2) {a2,a4}φ 
   f−1(b3) φ 
   f−1(b4) φ 
 だから、
 右図の例において、写像『f:AB値域は、{b1,b2} である。

一意対応の例

図例

写像『f:ABの右図の例では、
   f−1(b1) {a1}φ 
   f−1(b2) {a2,a4}φ 
   f−1(b3) {a3}φ 
 だから、
 右図の例において、写像『f:AB値域は、{b1,b2,b3} である。
 「写像『f:AB終集合B」が「写像『f:AB値域」と一致するので、
 この写像『f:AB全射

全射
→[トピック一覧:写像]
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 定義:全射・上射surjection、上への写像onto-mapping

→[定義/解説/図例] 

定義

・「写像『f:AB全射上射surjectionである」
 「写像『f:ABAからBの上への写像onto-mappingである」
 とは、
   ・「f値域f (A)が「f終集合Bに一致すること f (A)B 
  すなわち、
  ・どの「f終集合Bb」に対しても、
      少なくとも一つの「f定義域Aa」が存在して、
        f (a)bを満たすこと
    (bB)(aA)(f (a)b)ないし(bB)(f−1(b)φ) 
 をいう。

  ※だから、
   写像『f:AB全射でないとしても、
   写像『f:AB終集合Bから『fの値域f(A)』へ狭めた
   「Aから『fの値域f(A)』への写像」f ':Af(A)
   は、全射となる。
  ※「集合Aで定義された写像」等、終集合不特定の写像表現がなされたとき、
   その写像全射かどうかについては無関心・不明確。

・「写像『f:ABB中への写像into-mappingである」とは、
  f (A)  B でしかないこと、
  つまり、
  fが、
  必ずしも「全射上射」「AからBの上への写像」とは限らない写像一般
  にすぎないことを強調した表現。 
  [松坂『集合・位相入門』第1章§4.B(p.32);志賀『集合への30講』12講(p.71);
   黒田『微分積分学』3.1.2(p.86)]   


[文献-集合論]

 ・ブルバキ『数学原論・集合論・要約』§2-4(p.11)
 ・『岩波数学辞典(第三版)』項目162C写像;
 ・斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』1.2.8(p.12);
 ・志賀『集合への30講』12講(p.71):像集合
 ・松坂『集合・位相入門』第1章§4.B (p.32)
 ・中内『数学の基礎体力をつけるためのろんりの練習帳』定義3.2.4(p.151)
 ・佐藤『はじめての確率論p.166;p.150.

[文献-解析]

 松坂『解析入門1』2.1-A(p.56)
 ・ラング『ラング現代微積分学』0章§2(p.5)
 ・笠原皓司『微分積分学』1.4(pp.22-3)
 ・神谷・浦井『経済学のための数学入門pp.37-38;
 ・黒田『微分積分学』3.1.2(p.86)
 ・岡田『経済学・経営学のための数学』4.1(p.154)

[関連事項]

・対応の諸類型:分類基準/対応/一意対応/一対一対応/写像/単射/一対一写像/全単射
        →一覧表:対応の分類基準と6分類の定義 
        →ベン図:対応の6分類の包含関係

[具体例]

全射の1変数関数 
一次写像が全射であるための必要十分条件   

解説

写像の定義は、
 「同一の《定義域》に対して割り当てる《終集合》の個数」について、「1個」と限定しているものの、
 「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」については、一切問題にしていない。
 したがって、
 「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」が何個であろうが、
 「同一の《定義域》に対して割り当てる《終集合》の個数」がいつでも「1個」でありさえすれば、
 写像と呼ばれる。


・ということは、
 一般に、「写像『f:AB終集合B」には、
  [タイプ0]定義域Aに属す』からの割り当てがない
  [タイプ1]「一個だけの『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
  [タイプ2]「複数個の『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
 という3タイプのが含まれ得るわけである。

・これら3タイプの「終集合B」のうち、
  [タイプ1]「一個だけの『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
  [タイプ2]「複数個の『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
 という2タイプのをあつめた集合を、
 「写像『f:AB値域」と呼ぶ。

・「値域」の概念を使って言い直すと、
 一般に、「写像『f:AB終集合B」は、
   ・[タイプ1][タイプ2]を集めた値域
   と、
   ・[タイプ0]を集めた「値域でない部分集合
 の二つを含むことがわかる。

・ところが、
 写像『f:ABのなかには、
 「終集合B」が、 
   [タイプ0]定義域Aに属す』からの割り当てがない
 を全く含まず、
 「終集合B」のあらゆるが、
   [タイプ1]「一個だけの『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
   [タイプ2]「複数個の『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
 のいずれかとなる特殊な写像
 つまり、
 「終集合B」が「値域f (A)と一致するという特殊な写像
 もある。

・このような特殊な性格を有す写像を、写像全般と区別して、
  「全射上射surjection
  「AからBの上への写像onto-mappingである」
 と呼ぶ。

→[全射冒頭]



[タイプ0]               [タイプ1]
対応0対1対応の割り当てタイプ1
[タイプ2]
対応 多対1の割り当て対応多対1の割り当て




図例

全射の図例:1/2
全射でない図例:1/2/3



例1

・右図の「f:AB」は、
    f(a1){b1}f(a2){b2}f(a3){b3}f(a4){b2}
 となっていて、
 どの『f始集合Aに属す』に対しても、
 『終集合Bに属す』一個を割り当ててている。
 したがって、右図の「f:AB」は、写像の定義を満たしている。

・その上で、右図の写像「f:ABは、
   f−1(b1) {a1}φ 
   f−1(b2) {a2,a4}φ 
   f−1(b3) {a3}φ 
 となっていて、全射の定義を満たしている。

→[全射冒頭]
全射

例2

・右図の「f:AB」は、
    f(a1){b1}f(a2){b2}f(a3){b3}f(a4){b4}
 となっていて、
 どの『f始集合Aに属す』に対しても、
 『終集合Bに属す』一個を割り当ててている。
 したがって、右図の「f:AB」は、写像の定義を満たしている。

・その上で、右図の写像「f:ABは、
   f−1(b1) {a1}φ 
   f−1(b2) {a2}φ 
   f−1(b3) {a3}φ 
   f−1(b4) {a4}φ 
 となっていて、、全射の定義を満たしている。
・なお、この写像は、単射の定義も満たしているから、全単射にもなっている。

→[全射冒頭]
 
全単射bijection

例1

・右図の「f:AB」は、
    f(a1){b1}f(a2){b2}f(a3){b3}
 となっていて、
 どの『f始集合Aに属す』に対しても、
 『終集合Bに属す』一個を割り当ててている。
 したがって、右図の「f:AB」は、写像の定義は満たしている。

・しかし、右図の写像「f:ABは、
   f−1(b1) {a1}φ 
   f−1(b2) {a2}φ 
   f−1(b3) {a3}φ 
   f−1(b4) φ 
 となっていて、f−1(b4) φで、全射の定義を満たしてない。

・けれども、右図の写像「f:ABは、単射の定義は満たしている。

→[全射冒頭]
単射(一対一写像)

例2

・右図の「f:AB」は、
    f(a1){b1}f(a2){b2}f(a3){b1}f(a4){b2}
 となっていて、
 どの『f始集合Aに属す』に対しても、
 『終集合Bに属す』一個を割り当ててている。
 したがって、右図の「f:AB」は、写像の定義は満たしている。

・しかし、右図の写像「f:ABは、
   f−1(b1) {a1,a3}φ 
   f−1(b2) {a2,a4}φ 
   f−1(b3) φ 
   f−1(b4) φ 
 となっていて、f−1(b3) φ, f−1(b4) φで、全射の定義を満たしてない。

→[全射冒頭]
一意対応の例

例3

・右図の「f:AB」は、
   f−1(b1) {a1,a3}φ 
   f−1(b2) {a4}φ 
   f−1(b3) {a1,a3}φ 
   f−1(b4) φ 
 となっていて、 f−1(b4) φで、全射の定義を満たしてない。

・ところが、それ以前に、右図の「f:AB」は、写像ですらない。
  ・『f始集合Aに属すa1およびa3に対して、
        『終集合Bに属す』2個を割り当ててている点
  ・『f始集合Aに属すa2に対して、
        『終集合Bに属す』を割り当てていない点
 が、写像の定義から逸脱している。

→[全射冒頭]
対応の例




→[トピック一覧:写像]
集合論目次総目次

定義:単射・入射injection、中への1対1写像one-to-one mapping

 →[定義/解説/図例]

定義

[予備知識不要の定義]

・「写像『f:AB単射入射injectionである」「写像『f:AB1対1写像one-to-one-mappingである」とは、
 写像『f:AB
 [条件] どの『終集合Bに属す』についてであれ、写像fによって同一の『f終集合Bに属す』を割り当てられた『f定義域Aに属す』の個数は、0個または1個
 を満たすことをいう。
・「『集合Aで定義された写像f』が単射入射injectionである」「『集合Aで定義された写像f』が1対1写像one-to-one-mappingである」とは、
 写像f
 [条件] どの『値域f(A)に属す』についてであれ、写像fによって同一の『f値域f(A)に属す』を割り当てられた『f定義域Aに属す』の個数は1個
 を満たすことをいう。 


[逆像の概念を使った表現]

・「写像『f:AB単射入射injectionである」
 「写像『f:AB1対1写像one-to-one-mappingである」とは、
  どの「終集合Bに属す」の f による逆像も、空集合一元集合
      ( bB )( f−1(b)φ または f−1(b)一元集合 )
 であることをいう。

[値域逆像の概念を使った表現]

・「写像『f:AB単射入射injectionである」
 「写像『f:AB1対1写像one-to-one-mappingである」
 とは、
 どの「値域f(A)に属す」の f による逆像も、一元集合
      ( bf(A) B )( f−1(b)一元集合 )
 であることをいう。  

[文献-集合]

 ・『岩波数学辞典(第三版)』項目162C写像;
 ・ブルバキ『数学原論・集合論・要約』§2-9(p.13)〜の中への1対1写像
 ・斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』1.2.8(p.12):「入射」を提案;
 ・松坂『集合・位相入門』1章§4.B (p.33);
 ・志賀『集合への30講』12講(p.71)
 ・中内『数学の基礎体力をつけるためのろんりの練習帳』定義3.2.4(p.151)
 ・佐藤『はじめての確率論p.166;

[文献-解析]

 松坂『解析入門1』2.1-A(p.56);
 ・笠原皓司『微分積分学』1.4(p.23)
 ・黒田『微分積分学』3.1.2(p.86)
 ・神谷・浦井『経済学のための数学入門pp.37-38.
 ・岡田『経済学・経営学のための数学』4.1(p.154)
 ・ラング『ラング現代微積分学』0章§2(p.5)


[関連事項]

・対応の諸類型:分類基準/対応/一意対応/一対一対応/写像/全射/全単射
        →一覧表:対応の分類基準と6分類の定義 
        →ベン図:対応の6分類の包含関係


[具体例]

単射の1変数関数/
一次写像の単射(1)/一次写像の単射(2)   


写像『f:AB全射でなくても、
  写像『f:AB単射であるならば、
 写像『f:AB終集合Bから『fの値域f(A)』へ狭めた
 「Aから『fの値域f(A)』への写像」f ':Af(A)  
 は全単射となる[→だから逆写像が存在する]
 [黒田『微分積分学』3.1.3(p.89)]


[の概念を使った定義]

・「写像『f:AB単射入射injectionである」
 「写像『f:AB1対1写像one-to-one-mappingである」
 とは、
  どの「定義域Aに属す」についてであれ、例外なく、
   「別の『定義域Aに属す』の f による像は、別の『終集合に属す』」
       ( a,a'A )( aa'  f(a)f(a') )   
  となること
 あるいは、
 その対偶
  どの「定義域Aに属す」についてであれ、例外なく、
   「 f による像が一致する『定義域Aに属す』は、同一」 
       ( a,a'A )( f(a)f(a')  aa' )   
  となること
 をいう。
   単射(一対一写像)  

 →[単射冒頭]

解説

写像の定義は、
 「同一の《定義域》に対して割り当てる《終集合》の個数」について、「1個」と限定しているものの、
 「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」については、一切問題にしていない。
 したがって、
 「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」が何個であろうが、
 「同一の《定義域》に対して割り当てる《終集合》の個数」がいつでも「1個」でありさえすれば、
 写像と呼ばれる。


・ということは、
 一般に、「写像『f:AB終集合B」には、
  [タイプ0]定義域Aに属す』からの割り当てがない
  [タイプ1]「1個だけの『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
  [タイプ2]「複数個の『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
 という3タイプのが含まれ得るわけである。

・ところが、
 写像『f:ABのなかには、
 「終集合B」が、 
   [タイプ2]「複数個の『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
 を全く含まず、
 「終集合B」のあらゆるが、
   [タイプ0]定義域Aに属す』からの割り当てがない
   [タイプ1]「一個だけの『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
 のいずれかとなる特殊な写像もある。

・このような特殊な性格を有す写像を、写像全般と区別して、
  単射入射injection,1対1写像one-to-one-mapping 
 等と呼ぶ。

先述の「単射入射injection」「1対1写像one-to-one-mapping」の諸定義は、
  「『終集合B』が、 
    [タイプ2]「複数個の『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
   を全く含まず、
   『終集合B』のあらゆるが、
    [タイプ0]定義域Aに属す』からの割り当てがない
    [タイプ1]「一個だけの『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
   のいずれかとなる」
 という事態を、様々な用語で表そうとしたもの。

・「f による逆像f−1( )」という用語を使うと、
 「写像『f:AB終集合B」のの3タイプは、
  [タイプ0] f−1(b)φ を満たす「終集合B」のb 
  [タイプ1] f−1(b)一元集合 を満たす「終集合B」のb 
  [タイプ2]f−1(b)に、複数個の属す」を満たす「終集合B」のb
 となるから、
   「『終集合B』が、 
    [タイプ2]「複数個の『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
   を全く含まず、
   『終集合B』のあらゆるが、
    [タイプ0]定義域Aに属す』からの割り当てがない
    [タイプ1]「一個だけの『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
   のいずれかとなる」
 という事態は、  
      ( bB )( f−1(b)φ または f−1(b)一元集合 )
 と表現できる。

・「f値域f (A) という用語を使うと、
 「f値域」とは、
  「写像『f:AB終集合B」のの3タイプのうち、
   [タイプ1]「1個だけの『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
   [タイプ2]「複数個の『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
  の二タイプを集めた集合を指す
    f (A){ bB | f−1(b)φ } 
  から、
   「『終集合B』が、 
    [タイプ2]「複数個の『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
   を全く含まず、
   『終集合B』のあらゆるが、
    [タイプ0]定義域Aに属す』からの割り当てがない
    [タイプ1]「一個だけの『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
   のいずれかとなる」
 という事態は、
   一般に「タイプ1」「タイプ2」からなる「f値域f (A) が、
   ここで取りあげたfに関しては、
   「タイプ2」を含まず、全て「タイプ1」からなるという事態  
       ( bf(A)  )( f−1(b)一元集合 )
 として表現できる。
 ※では、タイプ0はどうなるのか?
     「終集合B」のなかで「値域ではない部分」はどうなるのか?
  「終集合B」のタイプ0のは全て「値域ではない部分」であり、
  「終集合B」のなかで「値域ではない部分」は全てタイプ0のであるから、
  問題ない。

 →[単射冒頭]
  


[タイプ0]               [タイプ1]
対応0対1対応の割り当てタイプ1
[タイプ2]
対応 多対1の割り当て対応多対1の割り当て




図例

[単射の例1]

・右図の「f:AB」は、
    f(a1){b1}f(a2){b2}f(a3){b3}f(a4){b4}
 となっていて、
 どの『f始集合Aに属す』に対しても、
 『終集合Bに属す』一個を割り当ててている。
 したがって、右図の「f:AB」は、写像の定義を満たしている。

・その上で、右図の写像「f:ABは、   
   f−1(b1) {a1}一元集合
   f−1(b2) {a2}一元集合 
   f−1(b3) {a3}一元集合
   f−1(b4) {a4}一元集合
 となっていて、単射の定義を満たしている。

・さらに、右図の写像「f:ABは、
   f−1(b1) {a1}φ 
   f−1(b2) {a2}φ 
   f−1(b3) {a3}φ 
   f−1(b4) {a4}φ 
 となっていて、全射の定義も満たしているから、
 全単射だといえる。

→[単射冒頭]

全単射bijection

図例

[単射の例2]

・右図の「f:AB」は、
    f(a1){b1}f(a2){b2}f(a3){b3}
 となっていて、
 どの『f始集合Aに属す』に対しても、
 『終集合Bに属す』一個を割り当ててている。
 したがって、右図の「f:AB」は、写像の定義は満たしている。

・その上で、右図の写像「f:ABは、   
   f−1(b1) {a1}一元集合
   f−1(b2) {a2}一元集合
   f−1(b3) {a3}一元集合
   f−1(b4) φ 
 となっていて、単射の定義を満たしている。
 
・しかし、右図の写像「f:ABは、
   f−1(b4) φ 
 があるので、全射の定義は満たしてない。

→[単射冒頭]

単射(一対一写像)

図例

[単射ではない例]

・右図の「f:AB」は、
    f(a1){b1}f(a2){b3}f(a3){b1}f(a4){b2}
 となっていて、
 どの『f始集合Aに属す』に対しても、
 『終集合Bに属す』一個を割り当ててている。
 したがって、右図の「f:AB」は、写像の定義は満たしている。

・しかし、右図の写像「f:ABは、
   f−1(b1) {a1,a3} 
   f−1(b2) {a2,a4} 
   f−1(b3) φ 
   f−1(b4) φ 
 となっている。

終集合Bには
     「複数個の『定義域Aに属す』」から割り当てられてくるb1,b2 
 があるので、単射の定義を満たしてない

・また、終集合Bには、
     『定義域Aに属す』からの割り当てがないb3,b4  
 があるので、全射の定義も満たしてない

→[単射冒頭]


一意対応の例

図例

[単射ではない例]

・右図の「f:AB」は、
   f−1(b1) {a1}一元集合
   f−1(b2) {a2}一元集合 
   f−1(b3) {a3}一元集合
   f−1(b4) {a4}φ 
 となって、
   「『終集合B』が、 
    [タイプ2]「複数個の『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
   を全く含まず、
   『終集合B』のあらゆるが、
    [タイプ0]定義域Aに属す』からの割り当てがない
    [タイプ1]「一個だけの『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
   のいずれかとなる」
 ので、この側面だけ見ると、「f:AB」は単射の定義を満たすかのように思える。

・ところが、右図の「f:AB」は、
    f(a1){b1}f(a2){b2}f(a3){b3}f(a4)φ
 となっていて、
  始集合Aa1,a2,a3に対しては、それぞれ、『終集合Bに属す』を一個ずつ
 割り当てていっているものの、
 『終集合Bに属す』を一個も割り当てない「始集合Aに属すa4が存在し、
 写像の定義を満たしていない。。

・そもそも写像でない対応を、単射と呼ぶことはないので、
 「f:AB」は単射ではないということになる。 

・このように、
   ・どの『始集合に属す』に対しても、
     0個ないし1個の『終集合Bに属す』を割り当て
   かつ
   ・どの『終集合Bに属す』に対しても、
     0個ないし1個の『始集合Aに属す』を割り当てる
 対応は、一対一対応と呼ばれる。

・しかし、対応の定義域の定義にしたがえば、
 始集合A定義域ではなくて、
 「始集合Aからa4を除いた集合」A{a4}{a1,a2,a3}対応fの定義域
 すると、「f:AB」は、
 始集合Aの各aにたいして、
    『終集合Bに属す』を一個ずつあてがってないものの、 
 定義域 A{a4}{a1,a2,a3}の各にたいしては、
         一個ずつ「終集合の元」をあてがっていることになる。
・そこで、A'A{a4}{a1,a2,a3}として、
   f ':A'B
 としたら、f 'は、写像となって、単射の定義を満たす。
 f 'を、fA'への制限という[斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』1.2.5(p.11)]。

→[単射冒頭]


一意対応の例

図例

[単射ではない例]

・右図の「f:AB」は、
  f−1(b1) {a1,a3,a4}「複数個の属す集合」 
  f−1(b2) φ
  f−1(b3) φ
  f−1(b4) φ 
 となっており、
     「複数個の『定義域Aに属す』」から割り当てられてくるb1 
 が終集合Bにあるので、単射の定義を満たしてない

・それどころか、
   f(a1){b1}f(a2)φf(a3){b1}f(a4){b1}
 となっていて、
 a2に対して、《終集合B》を割り当てておらず、
 写像の定義すら満たしてない

・また、右図の「f:AB」は、
 終集合Bに属すb1を、
 「複数個の『定義域Aに属す』」に割り当てているので、
 一対一対応でもない。

・しかし、右図の「f:AB」は、一意対応ではある。

→[単射冒頭]


一意対応の例




→[トピック一覧:写像]
集合論目次総目次

定義:全単射・双射bijection・〜の上への1対1写像

定義

全単射双射〜の上への1対1写像とは、
 全射かつ単射である写像のこと。

  全単射bijection

写像『f:AB全射でなくても、写像『f:AB単射であるならば、
   写像『f:AB終集合Bから『fの値域f(A)』へ狭めた
   「Aから『fの値域f(A)』への写像f':Af(A)  
 は全単射となる。

[文献]

 ・ブルバキ『数学原論・集合論・要約』§2-9(p.13)
 ・ラング『ラング現代微積分学』0章§2(p.5)
 ・斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』1章§2:1.2.8(p.12)双射を提案;
 ・松坂『集合・位相入門』1章§4.B (p.33);
 ・松坂『解析入門1』2.1-A(p.56)
 ・中内『数学の基礎体力をつけるためのろんりの練習帳』定義3.2.4(p.151)
 ・『岩波数学辞典』項目162C;
 ・佐藤『はじめての確率論p.166;
 ・神谷・浦井『経済学のための数学入門pp.37-38;
 ・岡田『経済学・経営学のための数学』4.1(p.154)
 ・藤原『線形代数』4.1(p.93);
 ・黒田『微分積分学』3.1.2(p.86)
志賀『集合への30講』12講(p.71),
 『解析演習ハンドブック1変数関数編』1.1.18(p.5)は、
  全単射のことを「一対一対応」と呼んでいる。 

[関連事項]

・対応の諸類型:分類基準/対応/一意対応/一対一対応/写像/単射/全射
        →一覧表:対応の分類基準と6分類の定義 
        →ベン図:対応の6分類の包含関係

解説

写像の定義は、
 「同一の《定義域》に対して割り当てる《終集合》の個数」について、「1個」と限定しているものの、
 「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」については、一切問題にしていない。
 したがって、
 「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」が何個であろうが、
 「同一の《定義域》に対して割り当てる《終集合》の個数」がいつでも「1個」でありさえすれば、
 写像と呼ばれる。


・ということは、
 一般に、「写像『f:AB終集合B」には、
  [タイプ0]定義域Aに属す』からの割り当てがない
  [タイプ1]「1個だけの『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
  [タイプ2]「複数個の『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
 という3タイプのが含まれ得るわけである。

・ところが、
 写像『f:ABのなかには、
 「終集合B」が、 
   [タイプ2]「複数個の『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
   [タイプ0]定義域Aに属す』からの割り当てがない
 を全く含まず、
 「終集合B」のあらゆるが、
   [タイプ1]「一個だけの『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
 となる特殊な写像もある。
・このような写像では、
  「同一の《定義域》に対して割り当てる《終集合》の個数」も、
  「同一の《終集合》を割り当てられた《定義域》の個数」も、
  常に「1個」となる。
・ このような特殊な性格を有す写像を、写像全般と区別して、
  全単射と呼ぶ。

先述の全単射の定義にある「全射かつ単射」は、
  ┌終集合Bが、 
  │ [タイプ2]「複数個の『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
  | [タイプ0]定義域Aに属す』からの割り当てがない
  |を全く含まず、
  |終集合Bのあらゆるが、
  | [タイプ1]「一個だけの『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
  └となる
 という事態を指す。
・なぜなら、
 単射とは、
  ┌終集合Bのあらゆるが、
  | [タイプ0]定義域Aに属す』からの割り当てがない
  │または
  └ [タイプ1]「一個だけの『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
 となる事態
   ( bB )( f−1(b)φ または f−1(b)一元集合 ) 
 を指し、
 全射とは、
  ┌終集合Bのあらゆるが、
  | [タイプ1]「一個だけの『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
  │または
  └ [タイプ2]「複数個の『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
 となる事態
   ( bB )( f−1(b)φ )    
 を指すのだから、
 「全射かつ単射」は、
  ┌終集合Bのあらゆるが、
  |  [タイプ0]定義域Aに属す』からの割り当てがない
  │  または
  │  [タイプ1]「一個だけの『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
  │かつ
  │終集合Bのあらゆるが、
  │  [タイプ1]「一個だけの『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
  │  または  
  └  [タイプ2]「複数個の『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
 という事態
 (bB)(f−1(b)φまたはf−1(b)一元集合かつ(bB)(f−1(b)φ
 であり、
 これは、「かつ分配則」から、
  ┌終集合Bのあらゆるが、
  | ┌[タイプ0]定義域Aに属す』からの割り当てがない
  │ │または
  │ └[タイプ1]「一個だけの『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
  │ かつ
  │ [タイプ1]「一個だけの『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
  │ │または  
  └ └[タイプ2]「複数個の『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
 (bB)(f−1(b)φまたはf−1(b)一元集合かつf−1(b)φ
 とも表現でき、
 さらに、「またはかつ分配則」から
  ┌終集合Bのあらゆるが、
  │ [タイプ1]「一個だけの『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる 
  │ または
  | ┌[タイプ0]定義域Aに属す』からの割り当てがない
  │ │かつ
  └ └[タイプ2]「複数個の『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
 とも表現できるが、
  ┌[タイプ0]定義域Aに属す』からの割り当てがない
  │かつ
  └[タイプ2]「複数個の『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる
 を満たすは存在しないので、 
 要するに、これは、
  ┌終集合Bのあらゆるが、
  │ [タイプ1]「一個だけの『定義域Aに属す』」から割り当てられてくる 
  └となる
     (bB)(f−1(b)一元集合
 を意味することになる。

[タイプ0]               [タイプ1]
対応0対1対応の割り当てタイプ1
[タイプ2]
対応 多対1の割り当て対応多対1の割り当て

活用例:ベクトル空間における同型写像の定義

→[トピック一覧:写像]
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定義:写像の制限restriction 縮小contradition 部分写像partial mapping/ 写像の延長・拡張 extension


[おおよその意味]

・大雑把に言うと、
 写像f制限とは、写像f定義域を絞ったもののこと、
 写像f延長とは、写像f定義域を広げたもののこと。


[厳密な定義]

・「写像f:AB』の「A部分集合S上への制限restriction
 「写像f:AB』の「A部分集合S上への縮小contradition
 「写像f:AB』の「A部分集合S上への部分写像partial mapping
      f | S
 とは、
  「A部分集合Sに属す任意に対して、そのfによる像を対応づけた
  「『A部分集合SからBへの写像
 のこと。
 
・つまり、
 写像gが「写像f:AB』の「A部分集合S上への制限restriction」である
   g=f|S 
 とは、
   g:SB
 であって、
  SA
  かつ
  (aS)  (g(a)f(a))
 が満たされること。

・「写像f:AB』の「A部分集合S上への制限restrictionf|S
 は、
 写像f:AB』と「SからAへの標準的単射」との合成写像
 である。[ブルバキ『数学原論・集合論・要約』]

[文献]

 ・『岩波数学辞典(第三版)』項目162C写像(p.429).
 ・ブルバキ『数学原論・集合論・要約』§2-13(p.9)
 ・黒崎『集合論演習』第2章I-(12)(pp.33-34)
 ・ラング『ラング現代微積分学』0章§2(p.5)
 ・斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』1章§2:1.2.5(pp.11-12).
 ・神谷・浦井『経済学のための数学入門』1.3.2(pp.36-37).
 ・『解析演習ハンドブック1変数関数編』1.1.16(pp.4-5)
 ・Fischer, Intermediate Real Analysis, U.2 (p.47)

具体化:1変数関数の制限/延長   




写像fが「写像g:SB』のAへの延長・拡張extension」であるとは、
 写像fが、
  ・「写像g定義域S部分集合として内に含む集合」A定義域とする
  ・「写像gの終集合B」を終集合とする
  ・Sに属す任意に対しては、そのgによる像を対応付ける
 を満たすことを言う。
 つまり、
 写像fが「写像g:SB』のAへの延長・拡張extension」であるとは、
  f:AB 
 であって、
  AS 
  かつ
  (aS)  (g(a)f(a))
 が満たされること。

命題「写像f:AB』が、写像g:SB』のAへの延長extensionである」
と、
命題「写像g:SB』が、写像f:AB』のS上への制限restrictionである」
とは、
同値



→[トピック一覧:写像]
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定義:標準的単射canonical injection・包含写像inclusion mapping

設定

B任意の集合、AB部分集合とする。つまり、BAとする。

[文献]

 ・『岩波数学辞典(第三版)』項目162C;
 ・松坂『集合・位相入門』第1章§4.B (p.33)
 ・ブルバキ『数学原論・集合論・要約』§2-3(p.10)「標準写像」
 ・斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』1.2.9.(p.13)「標準入射」を提案

定義

Aの各にその自身を対応づける
    AからBへの1対1写像iを、
    AからBへの標準的単射という。
        
       標準的単射

活用例:相対位相の定義  

例: DR で定義され、f(x)=xで表される1変数実数値関数f:RDR
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定義:定値写像 constant function

設定

写像f:AB」が与えられているとする。
・また、b0が、「集合B」であるとする。

[文献]

 ・松坂『集合・位相入門』1章§3-E写像(pp.27-29);
 ・ブルバキ『数学原論・集合論・要約』§2-3(p.10)
 ・斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』1.2.3(p.11) 
 ・Fischer, Intermediate Real Analysis, U.2.Example2.4 (pp.46-47)"constant function with value b"

[具体例]

 ・1変数定数値関数 

定義

・「写像f:AB』が、b0の定値写像 constant function with value b0 である」とは、
    集合A任意のaに対して、f (a) = b0 
     論理記号で表すと、 (aA)( f (a) = b0 )  
 が満たされることをいう。 

活用例:相対位相の定義  

婚姻制度という対応の一例のなかで、
定値写像をとらえると、
成人男性のなかの特定の一人と、すべての女性は結婚しなければならない
すべての女性の配偶者は、ただ一人の男性であるという完全なハーレム
にあたる。

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定義:恒等写像identity   



[文献]

 ・松坂『集合・位相入門』1章§3-E写像(pp.27-29);
 ・松坂『解析入門1』2.1-A(p.56);
 ・永田『理系のための線形代数の基礎』4.3問2(p.19);
 ・ブルバキ『数学原論・集合論・要約』§2-3(p.10)
 ・斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』1.2.3(p.11)
 ・Fischer, Intermediate Real Analysis, U.2.Example2.5 (p.47)"identity function on X"

[具体例]

 ・f(x)=x  

定義

「集合Aの上の恒等写像identity function on A
「集合Aにおける恒等写像
 Iとは、
   写像I : AA
であって、
   集合A任意のaに対して、I (a) = a  
     論理記号で表すと、 (aA)( I (a) = a )  
 が満たされもののことをいう。


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定義:同等、対等

定義

・「MN同等」とは、
 集合Mから集合Nへの全単射が存在することをいう。

[文献]

 ・佐藤『はじめての確率論 測度から確率へp.166
 ・志賀『集合への30講』12講(p.72):この本では同等は対等、全単射は一対一対応。


記法


M

 N



定理


M

N  であれば,
N M  




  

  
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定理・定義:逆写像  inverse mapping , 逆関数  inverse function

定義

・「写像『f:AB逆写像inverse mapping・逆関数inverse functionが存在する
 とは、
 写像「f:AB逆対応f-1:BA」も、写像の定義を満たすことを言う。
・「写像『f:AB逆写像inverse mapping・逆関数inverse functionが存在しない
 とは、
 写像「f:AB逆対応f-1:BA」が、写像の定義を満たさないことを言う。

[文献―集合論]

 ・『岩波数学辞典(第三版)』項目162C;
 ・ブルバキ『数学原論・集合論・要約』§2-9(p.13)
 ・松坂『集合・位相入門』第1章§4.B 定理4(p.34)証明付;
 ・斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』1.2.10(p.13):集合一元論的定義がつく
 ・中内『数学の基礎体力をつけるためのろんりの練習帳』定義3.2.6(p.152)
 ・佐久間『集合・位相―基礎から応用まで―』1.4(p.16-20);
 ・志賀『集合への30講』12講(p.72) :
     一対一対応であることを必要十分条件としているが、
     この本では、一対一対応とは全単射のことである(p.71で定義)。
 ・一楽『集合と位相―そのまま使える答えの書き方』定義1.2.8(p.32):証明つき
 ・佐藤『はじめての確率論p.166;

[文献―解析]

 ・啓林館『昭和62年3/31文部省検定済 高等学校 数学I 新訂版』5章6(p.142)
 ・笠原皓司『微分積分学』1.4(p.24)
 ・黒田『微分積分学』3.1.3(p.89);問題3.1.7(p.92)
 ・神谷・浦井『経済学のための数学入門』(p.38.)
 ・岡田『経済学・経営学のための数学』4.1(p.154)

定義

写像「f:AB逆対応f-1:BA」も、写像の定義を満たす場合、
 写像「f:AB逆対応f-1:BA」を
  「写像f逆写像inverse mapping・逆関数inverse function
 と呼ぶ。
写像「f:AB逆対応f-1:BA」が、写像の定義を満たさない場合、
 写像「f:AB逆対応f-1:BA」は、
  「写像f逆写像inverse mapping・逆関数inverse function
 とは呼ばない

定理

・「写像『f:AB逆写像inverse mapping・逆関数inverse functionが存在する」ための必要十分条件は、
 すなわち、「写像『f:AB逆対応f-1:BA」も、写像の定義を満たす」ための必要十分条件は、
  「写像『f:AB全単射であること。 

具体例:1変数関数の逆関数[一次関数の逆関数/二次関数の逆関数/・・・]




例:1変数一次関数の逆対応は、写像・関数になるので、逆関数は存在する。
例:1変数二次関数の逆対応は、写像・関数にならないので、逆関数は存在しない。→分枝をとると、逆関数は存在する
例:三角関数の逆対応は、写像・関数にならないので、逆関数は存在しない。→分枝


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写像の像・原像に関する諸定理


設定

写像f : 集合A→集合B」が与えられているとする。
・また、集合P,P',P''集合A、集合Q,Q',Q''集合Bとする。

[A:に関する定理]



[A-1:像と部分集合]

   P'P'' ならばf(P') f(P'')   

[文献―集合論]

 ・松坂『集合・位相入門』第1章§4.A定理3(p.31)証明付;
 ・中内『数学の基礎体力をつけるためのろんりの練習帳』定理3.2.11(p.153)
 ・佐藤『はじめての確率論』補題14.5(p.166)証明付;

 ・神谷・浦井『経済学のための数学入門』1.3.4(pp.51-52).
 

[A-2:像と和集合]

   f(P'P'') f(P') f(P'')      関連:集合族・集合列への拡張


[A-3:像と積集合]

   f(P'P'') f(P') f(P'')      関連:集合族・集合列への拡張  


[A-4:像と差集合]

   f(AP) f(A)  f(P) 

[B:逆像に関する定理]



[B-1:逆像と部分集合]

  Q'Q'' ならば、 f−1(Q')  f−1(Q'') 


[B-2:逆像と和集合]

  f−1(Q'Q'') f−1(Q') f−1(Q'')


関連:集合族・集合列への拡張 

[B-3:逆像と積集合]

  f−1(Q'Q'') f−1(Q') f−1(Q'')  活用例:誘導位相の存在証明


関連:集合族・集合列への拡張 


[B-4:逆像と差集合]

  f−1(BQ) A f−1(Q') 


[B-5:逆像と補集合]

  f−1(QC)  f−1(Q)C


[C.逆像逆像に関する定理]


[C-1:像の逆像]

P f−1( f(P) )
  ※「送って戻せば広くなる」
   [神谷・浦井『経済学のための数学入門』1.3.4(pp.51-52).]
写像f : 集合A→集合B」が単射ならば f−1( f(P) ) 
   [松坂『集合・位相入門』第1章§4.A-問題3(p.40);]
  ※具体例:n乗のn乗根  

[文献―集合論]

 ・松坂『集合・位相入門』第1章§4.A定理3(4.5)(p.31);問題3(p.40):答なし;
 ・神谷・浦井『経済学のための数学入門』1.3.4(pp.51-52).

[C-2:逆像の像]

 ・f ( f−1(Q) ) Q  f(A)  [佐藤『はじめての確率論』補題14.5(p.167)]
 ・f ( f−1(Q) ) Q 
   ※「戻して送れば狭くなる」 
     [神谷・浦井『経済学のための数学入門』1.3.4(pp.51-52).]
写像f : 集合A→集合B」が全射ならばQ f ( f−1(Q) )  
     [松坂『集合・位相入門』第1章§4.A-問題3(p.40);] 
  ※具体例:n乗根のn    

[文献―集合論]

 ・松坂『集合・位相入門』第1章§4.A定理3(4.5')(p.31)証明付;問題3(p.40):答なし;
 ・神谷・浦井『経済学のための数学入門』1.3.4(pp.51-52).
 ・佐藤『はじめての確率論』補題14.5(p.167)
 






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reference

日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、項目162C(pp.429-430)。
松坂和夫『集合・位相入門』岩波書店、1968年、第1章§3.E(pp.27-9)。
佐藤坦『はじめての確率論 測度から確率へ』共立出版、1994、pp.166-167。対応の説明と一緒になっている感じ。
神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、pp.34-39、pp.51-52。
斎藤正彦『数学の基礎:集合・数・位相』東大出版会、2002年。第1章§2写像または関数1.2.8(p.12)。
  
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