※総目次 |
定義:冪(べき)・累乗 power、指数exponent 〜指数を整数に限定して |
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定義 |
「0でない実数」a∈R−{0},整数zに対して、「aのz乗」azを、以下のように定義する。 (ケース1) 整数zが正の整数(つまり自然数)ならば、 「aのz乗」azは、「『z個の実数a』のあいだの積」のことを指すものとする。 つまり、 z>0 ⇒ az=az (自然数n乗を、「正の整数n」乗として定義) (ケース2) 整数zが0ならば、「aのz乗」az=a0 とは、1のことを指すものとする。 つまり、 z=0 ⇒ az=a0=1 (1を、0乗として定義) (ケース3) 整数zが負の整数(つまり自然数×(-1))ならば、 「aのz乗」azは、「『-z個の実数a』のあいだの積」の逆数を指すものとする。 つまり、 z<0 ⇒ az= 1/a-z (「自然数n乗の逆数」を、 「自然数nに−1をかけて作った『負の整数』−n」乗として定義) たとえば、 a-1= 1/a, a-2=1/a2,, a-3=1/a3,… ・このように定義する意図。指数法則を成り立たせるような負の指数を探すと、これしかない。 ・「実数aに対して」ではなく、「実数から0を除いたaに対して」azを定義するのはなぜ? 整数z<0のとき、上記理由から、az= 1/a-z と定義するので、 az=1/0を回避するために、aが0となるケースを排除しなければならない。 これに対して、 「aの自然数n乗」は、aをn回掛け合わせたものとして定義されるので、 aが0となることを排除する必要はない。 ・「『0でない実数』aの冪(べき)」「『0でない実数』aの累乗」とは、 : ・「『0でない実数』aのn乗」a−n, : ・「『0でない実数』aの1乗」a−3 ・「『0でない実数』aの1乗」a−2 ・「『0でない実数』aの1乗」a−1 ・「『0でない実数』aの0乗」a0 ・「『0でない実数』aの1乗」a1 ・「『0でない実数』aの2乗」a2 ・「『0でない実数』aの3乗」a3 : ・「『0でない実数』aのn乗」an, : の総称。 ・azの「底」とは、aのこと。 ・azの「指数exponent」とは、整数zのこと。 |
[文献]・能代『極限論と集合論』20.整指数のベキ(p.41)・吉田栗田戸田『昭和62年3/31文部省検定済 高等学校数学I』啓林館、1章8指数法則(pp.36-7); ・赤攝也『実数論講義』§3.12整数指数の累乗(p.99); ・小林昭七『微分積分読本:1変数』2章4指数関数(pp.58-65):整数べき(簡潔) ・加藤十吉『微分積分学原論』4.4整数の実数乗と指数関数-(1)(p.39) ・竹之内『経済・経営系数学概説』1.5累乗の一般化(pp.34-6) ・『岩波入門数学辞典』「べきpower」(p.545); 「指数(べきの)exponent」(p.241); 「指数法則exponential law」(pp.244-5)。 ・永倉安次郎・宮岡悦良『解析演習ハンドブック[1変数関数編]』付録A.1.1 ・岡田章『経済学・経営学のための数学』1.4(p.26) [関連事項]・累乗の拡張:→指数を有理数へ拡張した「べき」「累乗」 →指数を実数へ拡張した「べき」「累乗」 ・自然数指数の「冪関数」「累乗関数」 |
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整数指数の累乗の基本性質 |
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性質 |
1. いかなる「0でない実数」a,いかなる自然数nに対してでも、 a-n = (a-1)n が成り立つ。 論理記号で表すと、 (∀a∈R−{0}) (∀n∈N) ( a-n = (a-1)n ) 2. いかなる「0でない実数」a,いかなる整数zに対してでも、 a-z = (az)-1 =(a-1)z が成り立つ。 論理記号で表すと、 (∀a∈R−{0}) (∀m,n∈Z)( a-z = (az)-1 =(a-1)z ) |
[文献]・赤攝也『実数論講義』定理3.12.2-3(p.101)証明つき; |
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指数法則 exponential law,指数公式 law of exponents 〜指数を整数に限定して |
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性質 |
1. いかなる「0でない実数」a,いかなる整数m,nに対してでも、 aman = am+n が成り立つ。 論理記号で表すと、 (∀a∈R−{0}) (∀m,n∈Z) ( aman = am+n ) 2. いかなる「0でない実数」a,いかなる整数m,nに対してでも、 (am)n = amn が成り立つ。 論理記号で表すと、 (∀a∈R−{0}) (∀m,n∈Z)( (am)n = amn ) 2'. いかなる「0でない実数」a,いかなる整数m,n,tに対してでも、 am=bn ならば、 amt=bnt が成り立つ。 ※なぜ? ・いかなる実数a,いかなる整数m,n,tに対してでも、 am=bn=c ならば、 amt=(am)t ∵指数法則2 =ct ∵ここでの仮定「am=bn=c 」 bnt=(bn)t ∵指数法則2 =ct ∵ここでの仮定「am=bn=c 」 ・つまり、いかなる実数a,いかなる整数m,n,tに対してでも、 am=bn=c ならば、 amt=bnt=ct 3. いかなる「0でない実数」a,b、いかなる整数nに対してでも、 (ab)n = anbn が成り立つ。 論理記号で表すと、 (∀a,b∈R−{0}) (∀n∈Z) ( (ab)n = anbn ) 4. いかなる「0でない実数」a,いかなる整数m,nに対してでも、 (am)/(an)=am-n が成り立つ。 論理記号で表すと、 (∀a∈R−{0}) (∀m,n∈Z) ( (am)/(an)=am-n ) 5. いかなる「0でない実数」a,b、いかなる整数nに対してでも、 (a/b)n = an/bn が成り立つ。 論理記号で表すと、 (∀a,b∈R−{0}) (∀n∈Z) ( (a/b)n = an/bn ) |
[文献]・吉田栗田戸田『昭和62年3/31文部省検定済 高等学校数学I』啓林館、1章8指数法則(p.37);・赤攝也『実数論講義』定理3.12.4;問2(pp.101-103):整数指数に限定。証明つき; ・竹之内『経済・経営系数学概説』1.5累乗の一般化(pp.34-6) ・『岩波入門数学辞典』「指数法則exponential law」(pp.244-5)。 ・小林昭七『微分積分読本:1変数』2章4指数関数(pp.58-65):有理数べきの指数公式law of exponents(p.60) ※関連事項: ・整数指数の指数法則の具体例: →指数を自然数へ限定した場合の指数法則 ・累乗の拡張: →指数を有理数へ拡張した場合の指数法則 →指数を実数へ拡張した場合の指数法則 ・整数指数の「冪関数」「累乗関数」 |
6. いかなる整数nに対してでも、 (1)n = 1 が成り立つ。 論理記号で表すと、 (∀n∈Z) ( (1)n = 1 ) |
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※なぜ? ・1.〜3.についての、数学的帰納法を用いた厳格な証明は、赤『実数論講義』定理3.5.1(pp.79-81)にある。 ・そこまでしなくても、定義にさかのぼって、書き下せば、1.〜3.は当然だとわかる。 |
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