お便り紹介 Q&A−開業マニュアル−

土地家屋調査士は、土地の境界に最も詳しいスペシャリストです。
土地・建物の調査、測量、登記に関する仕事で社会に貢献しています。

開業マニュアル

28.お便り紹介 Q&A

質問

私は30代前半の独身男性です。以前から土地家屋調査士には興味があり、いろいろと調べていました。独立するには最適な資格らしいということも知りました。しかし、現実は資格を取得しても厳しそうですね。ある本のジャーナリストは測量士の資格と合わせて、平均年収が1200万円と言っていました。本当でしょうか?

私のコメント

はい、私が開業した時も苦労しました。
今は公共工事の予算も削減されており受注が減っております。民間はなおさらです。
自宅で開業したとしても、月に70万円の受託があって経費を差し引くとトントンの事務所運営になります。しかも仕事の中身がわかって、こなせるようにならないとこの金額は無理です。順調に行っても3年はかかります。
サラリーマンからみるとうらやましい金額かもしれませんが、これが維持される保証はありません。完全に自分の努力次第です。本で書いてある年収は平均値です。平均値というのは最高は億単位の成功者、最低はゼロを合算平均していますので、上位者の年収が下位者の年収を引き上げているため、実際に1200万円の年収になっている人は上位3割に入っている人だと思います。

お便り

結城先生こんにちは。
毎週メルマガ楽しみにしています。
この前もバックナンバー全部印刷して置いてたら、妻が勝手に読んだみたいで、「えー事書いとうなぁ。おもしろいなぁ。」と言ってました。特に「ぺこぺこ営業は相手の言いなり」は感動してたみたいです。私もなるほどと感心しました。
でも、開業間もない私には、「先生らしく振舞う」ことはなかなかむずかしいです。どうすればいいでしょう?

私のコメント

いつもメルマガを読んでいただきありがとうございます。

先生らしく振る舞うことについてですが、やはり経験が必要ではあります。
しかし、経験は一朝一夕で身に付く物ではありません。ですから先輩調査士さんと仲良くなっておくと、もし経験のない案件でも「先輩に聞けばわかる」と思うことが出来れば、自信を持ってお客さんに対応できるようになります。最初のうちは一緒に同行してもらうのもいいでしょう。

ですから、私が所属する宮城会では「青調会」というのがあって若い調査士同士で勉強会を開いています。そのような会があれば積極的に参加して知識を吸収してください。

最初に覚えることは、基本業務の概算報酬額の出し方、必要な期間、その他予想される問題点等を各ケースごとにモデルを作って先輩達から情報を聞き出し、自分なりの目安を持つようにして下さい。何人かに聞いてみて相場を知ることも必要です。

もしお客さんに聞かれたことでわからないことがあれば、できるだけ即答を避けて「調べてからご返事します」というようにします。

提示した金額には自信を持った態度でお客さんに接して下さい。高いと言うお客さんはいくら勉強した金額であっても高いと言います。私はこのような時、「調査士は私だけではありませんので無理に頼まなくてもいいですよ」と言うようにしています。

ここが先生らしくする必要がある最大のポイントになります。安易にお客さんの言いなりになると、先生ではなく営業マンのように映ってしまうからです。

いずれにしても相談しやすい仲間を沢山持つことです。仲間の知識を活用することができれば、経験が浅くても「俺は何でも出来る」という自信になるのです。

質問

いつもメルマガを楽しみに読ませていただいてます。
私は現在、土地家屋調査士の受験勉強をしながら、補助者として採用してもらえる調査士事務所を探しております。
以前の仕事は、全くの畑違いなので実務経験もありません。今後、どのように勉強していけばいいのかアドバイスお願いします。

私のコメント

いつもメルマガを読んでいただきありがとうございます。
お問い合わせの件ですが、補助者をしながら調査士試験をパスするのはかなり大変だと思います。

なぜかと言うと、昼も夜も同じような分野の仕事と勉強をフルにやり続けることは、精神的に結構大変です。

また、昨今の経済情勢から新たに補助者を採用する事務所は、ほとんどないと思います。

短期で土地家屋調査士の試験に合格したいのであれば、補助者をやりながらでは遠回りになりかねませんので、勉強時間を確保できる他の仕事があれば、そちらの方をお勧めします。

勉強方法の件ですが、メルマガのバックナンバーを読んでもらえば役立つ情報を得ることが出来ると思います。

短期合格されますように!

質問

私は30代後半の男性です。
去年やっとの思いで土地家屋調査士試験に合格しました。
しかし、測量など調査士関連の実務経験はまったくありません。

このような素人同然の私が独立開業した場合、土地家屋調査士として果たしてやっていけるものなのでしょうか?

また、開業資金や設備投資、調査士の年商についてもご教示いただければ幸いに存じます。

私のコメント

結論から言いますと、やって行けるとは思いますが、一人前になるためにはそれなりの時間がかかります。

まったく経験がなければ、ある程度仕事を覚えるまで最低でも1〜2年はかかると思います。

そこでまず一番の近道は自分に合った先輩調査士と仲良くなることです。

孤独にならず積極的に各種研修会に参加したり若手調査士の会やサークル活動などを通して人脈を広げて行けば、必ず救いの手を差し伸べてくれる先輩があらわれるはずです。

そのような先輩たちとの人脈を大切にしていると、困った時は相談に乗ってもらうことができます。

一方、自分のこれまでの人脈を洗い出し調査士に仕事を発注するキーマンを発掘して行きます。なかなか思うようにはいきませんが、営業は仕事をしながらコツコツ積み上げるほかありません。

そのような行動を続けて行けば、必ず仕事を頼まれることになるはずですので、その仕事を先輩調査士さんに手伝ってもらいながら実務能力を高めて行くのです。先輩から仕事を頼まれることもあるでしょう。

うまく行く秘訣は、「誰に手伝ってもらうか」を先に準備しておくことです。こうすれば実務経験がなくても、確実に業務を処理できるわけですから、自信を持って営業に出かけることができます。

また、権利の登記にも即対応できるように、早めに仕事を依頼できる司法書士の先生を見つけておくことも重要なことです。

調査士事務所の設備投資額は、GPSや光波測距儀、測量ソフト、プロッタ、その他機材などを新品で揃えた場合、ざっと見積もって1000万円ぐらいかかります。

できるだけ出費を抑えるため、中古も検討する必要があるでしょう。ただし、測量ソフトだけは大手メーカの最新ソフトを導入することをおすすめします。

せっかく苦労して覚えたソフトが、会社の倒産によって使えなくなることもあります。このようなトラブルは現実にありますので肝に銘じておいて下さい。

ちなみに私が使っているのは、アイサンテクノロジーの「WingNeo」です。
とっても使いやすくGPS時代に即応した頼もしいソフトです。

その他、機材情報については、独立開業後のコスト1(事務所他)独立開業後のコスト2(機材)をご覧ください。

調査士の年商についてですが、地域性もあるので正確な数字ではありませんが、配偶者を補助者とした場合、年商500万円から2000万円の間だと思います。

たぶん、年商800万円〜1200万円ぐらいが最も多いのではないでしょうか。この金額は私の主観的なもので統計上の数字ではありません。

この金額から経費を除いた金額が可処分所得になるわけで、おおよそ2分の1が手取りになるでしょう。

なので、手取40万円/月のサラリーマンと同レベルの生活水準を得ようとすれば月商80万円ぐらいの売上が必要になります。これが開業後すぐできるわけではありませんが、本気で頑張ればこのぐらいの収入にはなると思います。

また、補助者を採用する場合、補助者の税込み年収の3倍程度の受託業務があれば大丈夫だろうと思います。

現在サラリーマンで独立を考えているのであれば、後悔しないようにじっくり時間をかけて考えてみて下さい。その結果、調査士事務所をやりたいと思うのであれば、本気で挑戦してみてください。

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