参入障壁と撤退障壁−開業マニュアル−

土地家屋調査士は、土地の境界に最も詳しいスペシャリストです。
土地・建物の調査、測量、登記に関する仕事で社会に貢献しています。

開業マニュアル

16.参入障壁と撤退障壁

この「参入障壁と撤退障壁」という概念はご存じでしたか?
事業の参入と撤退には壁があるんだなぁと想像してもらえればそれで結構です。

参入障壁

ところで、土地家屋調査士業界への参入障壁は高いでしょうか?それとも低いでしょうか?

もちろん国家試験に合格して登録しなければ開業できませんから、一般的な職種と比較してみれば高いと言わざるを得ないでしょう。
土地家屋調査士のように国家試験をパスしなければ出来ない職種は同じように参入障壁が高いわけですね。それは試験の難易度とも比例しています。

それでは、一般的に参入障壁が高くても頑張ってそれを乗り越えたとします。その後にまたまた参入障壁が立ちはだかっているのをご存じでしたか?

えーっ???

まだあるの?・・・。と思った方はしっかり読んでくださいね。

そうです。またまた参入障壁が連なっているのです。

あなたは資格試験を乗り越えてその業界に参入したとします。
しかし、あなたよりも以前に同じようにその業界に参入した先輩達が沢山いるわけです。
あなたが思っている以上に多くの先輩達も、工夫を凝らしながら生きるためにしのぎを削っているんです。

土地家屋調査士業は、他業種からみれば数は少ないかもしれませんが、全国津々浦々に事務所があって、それぞれに業務を受託しているわけです。

先輩の調査士先生達も頑張っているので、この部分の参入障壁もかなりあるということですね。

つまり老舗と言われる事務所が沢山あると思いますが、世襲のような形式で何代も事務所を続けており、該当エリア一帯をがっちり抑えているようなパターンです。

このような事務所を向こうに回し営業エリアを拡大していくのは、かなりのエネルギーと戦略が必要です。

要は同じ土俵で同じやり方では歯が立ちません。
しかし老舗事務所は昔作り上げた事務所のシステムはそのままだったりします。
そこで、新規参入組としては同じ境遇の仲間とチームを組みながら大きな仕事でもこなせるように助け合うシステムを持つといいと思います。

実際私もそのようにしてます。

そうすれば、補助者を常時雇用しておく必要もないわけです。仲間に手伝って貰う場合の単価は補助者よりも高いですが、一時的な出費です。恒常的に給料を支払わなければならない補助者よりも、結果的に負担は軽くなりますし資格者同士でレベルアップを図れます。

それから、老舗事務所にありそうでない戦略がインターネットを活用した仕組み作りです。
参考:土地家屋調査士結城輝夫事務所

私のホームページでも随所に取り上げてますが、資本力のない事務所ほど、無駄な経費と時間をかけずに「顧客を流失させない仕組み」を、インターネットの利点とアナログを絡ませて構築することが必要です。

この仕組みという部分は、外からは見えない部分ですが、非常に重要はことです。

実はこういった仕組みを持つことが、後から参入してくるであろう老舗事務所や調査士法人にとって克服しずらい参入障壁になるわけです。

撤退障壁

次に「撤退障壁について」です。

どのように素晴らしい仕事であり成功しそうなプランを持っていたとしても、その寿命は長くみて30年と考えた方がいいでしょう。

いまは世の中のスピードが速くなり、1つのビジネスがどれほど長期間存続し続けられるかを予想するのはかなり難しいと思います。この視点は独立開業を考える時に外してはならない重要な意味を持ちます。

ですから、今いくら繁盛していたとしても事業の引き際を常に意識しながら、その時が来たらすんなりと撤退できるような準備と心構えが必要です。

実は、事業を始めることと、その事業から撤退することを比較すれば、はるかに撤退する方が困難なのです。

では撤退障壁とは具体的にどんなことでしょうか?

それは、撤退したくても撤退できない理由が沢山ある場合がそうです。
つまり、事業を始めるために高額な設備投資をしたり多額の借金があり事業を続けないと返済できない状態、あるいは大勢の従業員を雇っていて社会的責任が大きい場合などは、撤退障壁は高いということです。

調査士試験の合格者が発表されると、その関係業界各社の営業マンがわんさか尋ねて来たり、いろいろなアプローチ合戦が始まります。
その時に注意しなけらばならないことは、どんなことですか?

もうおわかりですね。

そうです。営業マンの口車に乗らないことです。
営業マンは成績主義ですから、売れればいいわけです。300万円もするようなノンプリズムの光波測距儀やCADプログラムを売ってはくれますが、仕事を紹介してくれることはまずありません。

ですから、極力新品で揃えることは止めた方が無難です。それよりもどうやったら無駄な経費を抑えて長期的な事務所経営につなげて行けるか。さらにどうしたら「撤退障壁を低くすることができるか」を常に考えるべきだと思います。

これは、私がいろいろと失敗したことの中から出て来たアドバイスですので是非参考にしてみて下さい。


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