売上げ目標の考え方−開業マニュアル−

土地家屋調査士は、土地の境界に最も詳しいスペシャリストです。
土地・建物の調査、測量、登記に関する仕事で社会に貢献しています。

開業マニュアル

5.売上げ目標の考え方

まず、土地家屋調査士となって営業努力をすれば、業務を受託することになるわけですが、いったいどれぐらいの売り上げを目標にすればいいのかというところまで意識して開業される方は、あまり多くないと思います。

というよりも、私がそうであったように誰か詳しい先輩など、この辺の情報を教えてくれる人がいればいいのですが、そのようなラッキーな環境にある人はほとんどいないのが実情です。「とにかく営業を頑張って仕事を取ってこなすだけ」と考えるのが普通だと思います。

それじゃ全く参考になる数字や事例が無いのかというと、実はあります。
報酬規定です。既に廃止になっていますが、その中に土地家屋調査士の報酬日額34,030円(税別で補助者はこの半額)があります。この数字は土地家屋調査士の業務内容をいろいろな角度から分析して日額として算出した根拠のあるものです。この数字が現時点で適切か否かを論じるつもりはありませんが、実際に運用されてきた基本中の基本の数字であることは間違いありません。
ですから、この数字を元に売り上げ目標を考えることは決して的はずれではないと私は思います。

つまり、この金額に1ヶ月の稼働日数(各人で異なる)をかければ月商になりますので、例えば実働20日であれば約70万円の売り上げとなるわけです。
逆に言えば月70万円の売り上げがなければ、調査士事務所として営業して行くことが苦しいことになり、経費を削減したり仕事を増やす努力をしなければならないわけです。
これは調査士1人の売り上げですので、もし補助者を2人雇っていれば140万円の売り上げでトントンの事務所経営になる計算です。

月70万円の売り上げで、経費を半分とすると可処分所得は35万円です。
経費を半分にする理由は、事務所家賃、車、測量機器、専用ソフトウエア、製図器、諸会費といった必要経費が必ずかかるからです。開業時は資金不足もありますからリースやローンを組むことも予想されます。もし、全額自己資金で準備できたとしても減価償却して行くわけですから、必要経費は必ず付いて回ります。
その他にも所得税や事業税など、サラリーマン時代には思いもつかない経費の山が襲ってくるのは間違いありません。
調査士事務所を開業するために全部新品で用意すると、ざっと見積もって1,000万円ぐらいはかかると思います。
これを平均5年から7年かけてコツコツと返済して行くわけです。

どうですか?
結構大変かもしれませんが、これが現実です。

受験産業では土地家屋調査士の資格を「一生安泰の有望資格」として紹介していますが、この辺の経済情報も含めてCMしてもらいたいものです。

ではどのような考え方が一番いいのかという事ですが、私の経験から言える結論としては、「どれだけ沢山の仕事量をこなすか」よりも、「最終的にどれだけお金が残るか」が最も重要だと思います。

最近の住宅ローンの指南書には、どれだけ借りれるかよりもどれだけ返せるかを考えてローンを組みましょうと言うのを見かけますが、これと似ているような気がします。

調査士の仕事は基本的に個人事業です。そしていくら効率を上げたとしても大量生産できる職種ではありません。後々問題が起きないように法律的な判断を下しながら1つ1つ丁寧に処理して、お客さんに喜んでもらう仕事なのです。

要するに、年商1千万円でも、年商2千万円でも同じ割合で経費がかかるので、最終的に調査士が手にできる所得は大差ないように思います。ただ、補助者が何人もいて事務所も一等地にあればカッコイイし自己満足するにはいいかもしれませんが、事務所の所在地にしても調査士業は出向く仕事が多いので、極力無駄な経費はかけない方が無難だと私は思います。

ですから、開業当初から「自分の事務所スタイルをどのようにするか」を受託予想と必要経費の両面から研究して失敗しない事務所経営を目指すべきだと思います。ホームページにも書いてますが、私はそういった知識が無かったことや、準備不足によってサラリーマン生活に逆戻りすることになってしまったわけです。
普通こんなこと偉そうに書かないですよねぇ(^_^;)


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