仕事をふくらませて一人前−開業マニュアル−

土地家屋調査士は、土地の境界に最も詳しいスペシャリストです。
土地・建物の調査、測量、登記に関する仕事で社会に貢献しています。

開業マニュアル

12.仕事をふくらませれば一人前

今回は、「仕事を膨らませれば一人前」についてお話します。

ん・・???

仕事を膨らますってどういうこと?

もしピンと来ていない方、これを知るか知らないかは大違いなので、是非、考え方をマスターして下さい。

私達、土地家屋調査士は他人の依頼を受けて表示に関する登記業務を扱っていますが、ただ単にお客さんから指示されたことだけをこなしさえすれば、それでいいわけではなく、経営面も同時に考える必要があります。

わかりやすい例を挙げてみます。

ある古い団地でしたが、宅地を売買するために「土地境界確定測量」を依頼されました。
公図と地積測量図を調査して現地を調べて見ると、現況の宅地面積が登記簿に記載されている面積よりも、明らかに少ないのです。

地積測量図の位置関係を現地に再現してみると、宅地の一部が市道敷地に1.5メートルほど食い込んでいることがわかりました。

土地所有者は、この土地を購入する当時、公道の一部を含んで買ってしまったようです。

固定資産税についても、登記簿面積で課税されており、道路に飛び出ている土地の部分も含めて多く税金を支払っている状態だったのです。

この問題の解決には、分筆登記と合わせて道路部分の土地の地目を宅地から公衆用道路に変更する地目変更登記が必要になります。一部地目変更分筆登記で一発完了でもOKです。

私に依頼された土地については、売買後に問題が発生しないように万全の手続をとるのは当然なのですが、ここに「仕事を膨らます」ポイントがあります。

道路も宅地も一連でつながっているわけで、本件土地がそうであれば、隣接宅地も同じ問題を抱えているのは調査済みです。

そこで、土地の境界確定協議をする場合、必ず隣接する土地の所有者に境界立会を依頼するのですが、その際に問題を明らかにして「お隣さんの測量と一緒に処理されたらいかがですか?」「ついでの作業ですから料金的にもお得ですし、固定資産税も軽減されますが、いかがでしょうか?」と提案するわけです。

固定資産税は、不動産を持ち続ける限り納税義務があるわけで、一時的に数十万円の測量登記の手数料がかかったとしても、長期的に見ればお得なわけです。

要は、関係者にとってメリットのある提案をすることが出来れば、仕事を膨らませて受託件数を増やすことが可能になります。

この事例では、1件の業務だけを処理する場合と比較して、1.8倍の報酬につながりました。

ただし、くれぐれも押しつけにならないように「もし良ければどうですか?」というあっさりした提案の方がいいでしょう。

このような営業なら、みんなに喜ばれて自分もハッピーになれる方法ですから、今回の事例をヒントに試してみて下さい。

このように「仕事を膨らます発想が身に付けば一人前」ということを、ある先輩調査士さんから開業したての頃に教わりました。


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