ペコペコ営業は相手主導−開業マニュアル−

土地家屋調査士は、土地の境界に最も詳しいスペシャリストです。
土地・建物の調査、測量、登記に関する仕事で社会に貢献しています。

開業マニュアル

9.ペコペコ営業は相手の言いなり

主導権をにぎる

営業マンをイメージした時に、どのようなことを想像しますか?
テレビなどで営業マンが出てくると、決まってお客さんにペコペコする姿が出て来ます。

子供の頃からこのような営業マンの姿を見せられると「お客様は神様です」「どんな無理難題でも引き受けます」という姿が正しい営業マンだと勘違いするようになってしまいます。

このお話をする前に、土地家屋調査士業は営業がいらない職種だと勘違いしていませんか?
もしそうだとしたら、その考えは捨てる必要があります。

高度成長時代ならそれでも仕事が来るかもしれませんが、今のような低成長社会では、競争が激しくなりますので、根本的なところから営業の仕方を見直す必要があります。

そこで、もしあなたがお客さんの立場だったら、どのような調査士さんに仕事を依頼したいと思いますか?

いつも会うたびに「仕事下さい!お願いします!どんな仕事でもやらせて下さい!」と言って、呼ぶと、いつでも都合の悪い日がなく飛んでくる調査士さん。

一方、お客さんの言いなりではなく、指定された日については「その日はスケジュールが一杯なので、無理です」とハッキリ断られ、「この日とこの日のこの時間なら都合がつきますが、どちらだったらいいですか?」と逆に提案してきて、実際に会うと、お客さんにとって有益な情報を提供してくれる調査士さん。

客観的にどちらの調査士さんが頼もしく感じるでしょうか。
私だったら、後者の調査士さんと付き合いたいと思いますが、皆さんはいかがですか?

私は基本的に、合い見積もりの依頼があった場合は断ることにしています。
なぜなら、合い見積もりで仕事が来たことがないからです。仕事になる可能性がほとんどないのに、時間を掛ける必要はないと思います。

このようなパターンの場合は、熾烈な価格競争になります。
無理にダンピングして仕事を取ったとしても、発注先から喜ばれることはまずありません。

このようなお客さんは、ダンピングすることが当たり前だと思っているからです。

そして、見積りした金額から極端に値引き要求された時は、「この値段では出来ません」「なぜなら仕事の質が下がるからです」「調査士は私だけではありませんのでお断りします」と言って、相手に断られる前にこちらから断ります。

このように言うと、自分のストレスが減ります。
全然胃が痛くなりません。

しかも、相手側から見れば、正当な理由で先に断られてしまうと逆に不安になり、仕事を依頼したくなるのです。

この方法は是非やってみて下さい。
経験上、想像以上の効果があります。

この内容は、「営業マンは断ることを覚えなさい」石原明著、明日香出版社の本を、一部参考にしています。とっても重要なことが書かれていますので是非購入してみて下さい。

専門家(先生)らしく振舞う

いままでの土地家屋調査士が、営業の部分をそれほど重視しなくても仕事になっていた理由があります。
どんな理由だと思いますか?

それは、最初から営業マンという位置づけではないからです。
実際は無意識にでも営業しているんですけどね。

つまり、土地家屋調査士は依頼者から見れば、自分が困っている問題を解決してくれる専門家の先生という立場になります。

子供の頃から「先生の言うことは正しい」という感情が潜在意識の中に蓄積されていますので、依頼者は営業されていることに気づきません。

ですから、先生が先生らしく振る舞えば振る舞うほど、仕事を取る仕組みが出来上がり、事業が拡大する原動力となっているのです。

では、いつから先生らしく振る舞えばいいのでしょうか?

それは土地家屋調査士として独立した瞬間からそうしなければなりません。
美徳とされる慎ましさは、無理にでも一掃する必要があります。

なぜかと言うと、相手は新米調査士なのかベテラン調査士なのかすぐにはわからないのに、こちらから新米と言ってしまったり、態度が落ち着かなければ、そのことから「大丈夫なんだろうか?」と不安に思ってしまいます。

この状態で仕事が取れるかと言うと、「最初から自分でハンディキャップを背負う」ことになりうまく行きません。

ですので、最初から「仕事が忙しいベテラン先生」という態度と言動で、依頼者や見込み客と接する必要があります。

開業間もない調査士さんは積極的に他の先輩調査士さんと交流を持って、知識やノウハウを吸収しましょう。頼もしい先輩達と協力体制を築くことも必要です。

そこで、本当に忙しい先生はどのような態度になるか想像してみて下さい。

突然入って来た見積もりの依頼や相談などは、相手が勝手に指定した日時には対応しにくいですね。
なので、絶対無理ならお客さんに会わせられませんので、都合の良い日を逆に提案するはずです。

そうすると、お客さんの方は「さすが自分の選んだ調査士先生は忙しそうで頼もしい。これなら安心して仕事を任せられる。」となります。

つまり、スケジュールがガラ空きであっても、「その日は時間が取れません」と一旦断って、「この日かこの日の〜時ならどうでしょうか」とわざと忙しそうに答えることです。

「私は正直なので、忙しくもないのにそんなこと言えません。忙しくなったらそのように言えると思います。」という方がいれば、多分ずーっと繁盛する事務所にはならないと思います。

ダイエットを何年も成功できないおばさんが「痩せたら着ようと思ってる洋服」のように塩漬けのノウハウになりかねません。

要するに、儲かっている事務所は、最初から儲かっていたわけではなく、儲かっている態度を最初から取っていたため、その対応、つまり「断る仕組み」が仕事を呼び込み、本当に儲かるようになったと言うのが正解だと思います。

是非このことを実際の交渉の中で試してみて下さい。
想像以上の結果となって帰ってきます。


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