独立開業後のコスト2−開業マニュアル−

土地家屋調査士は、土地の境界に最も詳しいスペシャリストです。
土地・建物の調査、測量、登記に関する仕事で社会に貢献しています。

開業マニュアル

3.独立開業後のコスト2(機材)

まともに用意すれば1000万円は超えてしまう調査士事務所の各種機材を取り上げてみたいと思います。

調査士試験に合格すると、どこから調べて来るのかわかりませんが、測量機器の営業マン、CADの営業マンがアプローチしてくることがあります。

中古品を探してみる(トータルステーション)

測量機器は開業すれば必需品ではありますが、最初のうちはすぐに仕事が来ることは少ないのが普通です。来たとしても毎月とは限りません。

そこで、1つの対処法ですが最初から高価な新品を買ったり、リースを組むことは避けて中古市場を探してみることをお勧めします。

最近は、景気低迷の影響で測量機器の分野も中古市場が形成されています。

インターネットでも検索できますが、近くの測量機器販売会社でも扱っている場合があります。

また、調査士会でも廃業した調査士さんの機材を斡旋する場合がありますので事務局にお願いしておくと、早く情報をつかむことができます。

中古品であっても、メーカー検定をパスしているものであれば充分使えますので、新品を買うよりその分グレードの高い機種を手に入れた方が得策です。

また、デターコレクタ(電子野帳)は非常に便利な道具ですので、本体を中古にすれば、その差額で手に入れられるかもしれません。

現在は汎用機種の他に、大きく分けて自動視準とノンプリズムの二種類があります。自動視準の機種は1人で測量できる利点はありますが、若干大きくて重量があるため扱いづらいような気がします。現場要員を手配できるのであれば、迷うことなくノンプリズムの機種にした方が便利でしょう。

この機種は現況測量の際に威力を発揮します。測量は通常該当地だけでなく周辺の工作物の状況も測量したい場合が普通です。そのとき障害物があったり猛犬がいたりすればプリズムを対象物に当てることはできませんが、ノンプリズムの機種であれば容易に測量することができます。

これらの高級機種は中古ではなかなか見つからないかもしれませんが、もし掘り出し物が出たら迷わず買いでしょうね。

中古になぜこだわるかと言うと、仕事がいつ依頼されるか見通しがたたないうちから、新品の高級な測量機器を用意する必要は全くないということです。(新品で200万円、リースでも月4〜5万円は必要です。)

新品でも1回使えば立派な中古品になってしまいます。ですから信用できる業者の商品であれば新品も中古もほとんど差がありません。

中古の機械で現場をこなしながら技術を磨き、仕事量が充分増えて来たら新品に買い換えることの方が、よっぽど生きたお金を使うことになると思います。

いつも思うことですが、高価な機械を共同購入することができれば、負担はずっと減るんですが・・。

例えれば、調査士の機械貧乏と農家の機械貧乏は良く似ています。

小さな田畑を耕作するために、農家1軒1軒が年間稼働率は数日しかないにもかかわらずそれぞれ農機具を購入し無理を重ねています。結局、機械メーカーのために働く構図になっています。

このようなことは調査士も同じですが、情報が不足したまま営業マンの言いなりになると大きな負担を抱えてしまうことになりかねません。

設備投資は、くれぐれも慎重にしたいものです。

ミラーは3セット

トータルステーションと共に使う三脚付きの1素子ミラーセットは、3セットあると便利です。理由は、前視と後視に各1セットと手持ち用に1セットです。最悪1人でもストレスを少なく測量するためには3セットは必要です。

ちなみに新品で1セット5万円ぐらいです。これは新品がいいでしょう。

調査士事務所で必要な機材写真とコメントをご紹介します。
土地家屋調査士の道具

GPS

GPSについて簡単に触れたいと思います。

カーナビではすっかりお馴染みのGPSですが、最近は携帯電話に組み込み老人や子供に持たせて所在を常に把握できるようにするシステムなど活用の裾野はどんどん広がっています。

GPSは、正式には「Global Positioning System」の頭文字です。

これは米国の軍事衛星の電波を受信する事によって、目標の位置や高さを測量するシステムで、通常、観測する衛星は最低4個〜最大10個ぐらいの衛星電波を受信しながら基準となる点を精密に測量します。

人工衛星は地球の周りを常に回っているため、時刻や場所によって捕捉できる衛星の数が変化するので、事前の観測計画を綿密に立てる必要があります。

最も単純なパターンは、基準となる3点(三角形)を測量して、三角形の2点(1辺)をダブらせて新しい点を1点づつ作る方法です。ですから、当然同じ機器を3台用意する必要があるわけです。例えば1台100万円だとすれば、300万円必要になる計算です。

1事務所でそのような設備投資は難しいので、複数の事務所が協力して1台づつ購入すれば負担を軽くすることができます。私が所属しているグループは6年前に、5人でそれぞれ1台づつGPSを購入して測量班を作りました。

私達の観測はスタティック法と呼ばれるもので、1セッション最低1時間観測します。
5台というのがミソで、1回の観測で新点を2点作ることができるため、ほとんど1発で現場終了します。これはお互いの時間を調整しやすくすることにも役だっています。

つまりGPSは購入後も業務処理を共同で行うことから、グループで購入するのがベストでしょうね。

ちなみに、GPS測量の作業割合は観測計画が全体の6割、実際の観測作業が2割、解析作業が2割といった感じです。

最近は、RTKタイプのGPSも一般的になりつつありますが、近い将来各事務所がトータルステーションを持つような感覚で、GPSを所有する時代になることでしょう。

理想としては、調査士協会のような組織がメンバーの共有財産として購入してくれて、使いたいときは日割りでレンタルするような仕組みがあれば負担が軽くなると思いますがどんなもんでしょうね。

あるいは、個人で所有しているGPSがあれば、上記のような組織が一括借り上げしながらレンタル料の一部を還元するような仕組みにすれば、個々の調査士が幅広く活用できる環境になると思います。

要するに、高価な機械を遊ばせることなく、最小の負担で最大の効果が発揮できるような環境を構築できればいいのですが・・。

ちょっと話がずれてしまいましたね。

CAD

次にCAD(測量・作図ソフト)について話を進めてみます。

CADは、調査士事務所の補助者や測量会社の社員だった方であれば、何の苦労もなく扱うことが出来るでしょうが畑違いの職種から転向した方だと、慣れるまで努力が必要です。

年齢に関係なくCADが不得意な方、あるいは使ったことのない方は、是非とも開業前にマスターしておいて下さい。そうしないと急ぎの仕事が入った時、対応できなくなる恐れがあります。

CADは自転車と同じで、乗り方のコツをつかむまで大変です。自転車の乗り方を覚えるまでは何度も転ぶように、CADも実際に使う回数を重ねないと上達しません。

最低でも開業時には、地積測量図と建物図面は作れるようにしておく必要があります。

CADソフトメーカーの有名なところでは、福井コンピュータやアイサンテクノロジーがありますが、当然ユーザー登録しなければ使うことはできません。

基本ソフトは新規契約で80万円ぐらいしますが、この他にも毎月1万円程度はバージョンアップやメンテナンス料の経費がかかります。厳密網平均計算など追加ソフトを組み込むとなればかなり高価なソフトになります。

CADソフトを選ぶ際は、後で他メーカーのソフトに変更することのないように慎重に選んで下さい。

1つのソフトに慣れ親しんでしまうと他のソフトはなかなか覚えられなくなります。さらにソフト会社が潰れてしまうとアフターフォローもなくなる恐れがあるので、そういった意味でも慎重に選んで下さい。

そこで、1つの考え方ですが、ソフトを選ぶ前に身近にコーチしてくれる先輩を先に探し出してから先輩が使っているソフトを検討する方法がいいかなと思います。

もしこのような素晴らしい先輩がいて、今後とも付き合って行きたいと思うのなら、先輩と同じCADにすると心強さが全然違います。

同じソフトの利点は、データの互換性があるため、先輩が装備している周辺機器を活用させてもらえることができます。

図化機やデータコレクタ、CADが共通であれば、お互い何かの不具合が発生した時でも楽々バックアップすることが可能になります。共通の機器を装備するということは、単に経済的負担を軽くすること以上に大きな意味があると思います。

また、タイミングにもよりますが、近く廃業するような先輩調査士さんがいればCADの権利を継承させてもらい、自分はバージョンアップをするだけのウルトラC的な裏技もあるようです。(断言しませんが)

いずれにしても先輩調査士さんとのつながりの中でこのようなラッキーなことも起こるかもしれません。

また、無料ソフトもインターネット上で検索するといろいろあるようです。
残念ながら、私は詳しくないので興味があれば研究してみて下さい。

参考までに、私はアイサンテクノロジー社の「Wingneo INFINITY」を使っています。
http://www.aisantec.co.jp/

入力装置と出力装置

まず申請書は、ワードや一太郎、Excelを使って作成している方がほとんどです。

プリンターを用意するなら迷わずレーザープリンターA3タイプにしましょう。これがあると、申請書も綺麗に仕上がりますし、図面の下書きチェックもスムーズに行えます。

もしどうしても予算を抑えたいならインクジェットタイプでも大丈夫です。

出力装置(プロッター)と入力装置(デジタイザー、スキャナー)ですが、各メーカーから各種販売されています。入力装置では電子野帳(データコレクタ)もありますがここでは省略します。

プロッターにはペンタイプとインクジェットタイプの2種類がありますが、安価なインクジェットプロッタがお勧めです。
参考までに、私はA1タイプのインクジェットプロッタ(ヒューレットパッカード社の「Designjet」)を使っています。
http://jp.ext.hp.com/printers/large-format-printers/designjet/

また、新しいCADソフトを導入するのであれば、入力装置はスキャナーを活用することができます。スキャニングすることで、デジタルデータに変換できますので高価なデジタイザーは不要です。A4のスキャナーであれば1万円ぐらいで買えますし。

でも、A3のスキャナーだと20万円ぐらいの値段になるようですから、良く検討して下さい。

さらに透写台も準備しましょう。これがあると既存データと観測データを簡単にチェックできます。ハンディータイプのA2サイズがおすすめです。
http://www.smzkurasawa.com/1tores.htm

この他にも、専門書籍、職印、ゴム印一式、現場用車両、資材(コンクリート杭、プラスチック杭、金属標、鋲、木杭、ボンド、標識テープ、砂、砂利、セメント)などなど、私も書いていてもうヘトヘトです。(@_@)

私がインクジェットプロッタと一緒に揃えたオプション

最後に、私が「Designjet 110plus」と一緒に揃えたオプションをご紹介します。

HP Designjet 100シリーズ用ロールフィードユニットC7797A
ロール紙を利用する場合には必要になります。

HP Designjet 100シリーズ用スタンド/用紙スタッカQ1246A
専用スタンドは作業効率と機器の保全には必須です。
用紙スタッカとは印刷した紙の受け皿のようなものです。

HP Designjet 110シリーズ用スピンドルQ1264A
ロール紙用の芯棒で複数のロール紙を扱うときに予備があると便利です。
(上記ロールフィードユニットに標準で1本添付しているが)

ロール紙は「きもと」がお勧めです。
http://www.kimoto.co.jp/products/

こちらも勧めです(HPから注文できます)。
こだわりの製図用紙屋 ヤシマ産業株式会社

●紙はコート紙がいいでしょう。
白色度が良好でカラー線画がきれいに出力できます。
 81gで594mm×50mのタイプと610mm×50mの2種類あります。

●和紙も1本持っていると重宝します。50APは伸縮が少なく強度のあるPETとの張り合わせ和紙です。 50AP 594mm×50m

●フイルムは♯200、♯300のいずれか、サイズは594mm×40mです。
 数字が大きくなるほど厚くなります。

という内容で購入しましたが、親友の助言と既ユーザーの情報がなければこの機種に巡り会っていたかどうかわかりません。私は本当にラッキーでした。

使ってみて心から「素晴らしい」と思いました。
印刷音は静かだし、斜めの線が綺麗です。昔の機器は階段のようにギザギザになってましたが、これは全く問題ありません。

古い機種のインクは水に弱く簡単に流れてしまいましたが、この機種は定着性も良好です。

これがあれば万全だと思います。

もしこれからインクジェットプロッタを購入する予定の方は是非参考にしてみて下さい。

ちなみに、私はHp社との間には何の関係もありません。


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