試験合格!次に何するの?−開業マニュアル−

土地家屋調査士は、土地の境界に最も詳しいスペシャリストです。
土地・建物の調査、測量、登記に関する仕事で社会に貢献しています。

開業マニュアル

1.合格した私、次に何すればいいの?

覚悟をする

合格された方おめでとうございます。
ところで、合格したあなたはこれからどうしますか?

サラリーマンであれば、辞表を叩きつけてカッコ良く転職したいと思っている方もいるかもしれませんね。
各種マイナス要因をバネに調査士試験を突破されたことは本当に素晴らしいことなのですが、ここでちょっと頭を冷やしましょう。

まず、土地家屋調査士として開業した場合、サラリーマンの時と比べてどう違うかを考えてみると・・。

最も違うのは、安定した収入がなくなるということですね。
今まで当たり前のように戴いていた給料がゼロになるのです。ゼロって簡単に言いますけど、ゼロってすごく大変なことですよ。

自分は土地家屋調査士の先生だ!などと自惚れていても、仕事がなければただの「プー」ですからね。

なので、まず第一に心の洗濯をしなければなりません。自己責任の時代とはよく聞く言葉ですが、個人事業者ほどこの表現がピッタリな職業はありません。

今までとまったく違う世界に挑戦するわけですから、それなりの覚悟と準備が不可欠になります。

「こんなはずでなかった」と悔やんでも後の祭りです。

資金と売上げを考える

そこで、「開業する!」と決心したらまず当面の生活費500万円、開業に必要な機材一式(中古含む)約500万円、合計1,000万円は必要になると思います。

融資を受けるのであれば、国民生活金融公庫なら新規開業者向けに500万円ぐらいまでは融資してくれます。しかし、借金ですから月に5万円ぐらいづつ返済しなければなりませんね。

これらをクリアして、1年以内に仕事がほぼ継続して来るようになり、月商70万円ぐらいを確保できれば、事務所は回って行くと思います。

補助者を雇うのであれば、1人につき50万円の売り上げは必要です。

いかがですか?できそうですか?

中には尻込みする方もいるかもしれませんね。
でもそれが現実なんです。

サラリーマンを辞めないで準備する

そこで、私の提案なのですが、サラリーマンを極力辞めないでおいて、着々と開業準備を始めたらいいんじゃないでしょうか。

合格したからと言ってすぐ開業では、かなりのリスクを伴います。実務経験があればまだいいのですが、測量機械の据え付けすら出来ない状態であればなおさらです。

そこで、人脈を広げることと並行して、仕事に必要な機材を少しづつ買いためます。値段の張る測量機械は最後の最後に回して、借金しなくても用意できる道具をまず用意します。

例えば、パソコン、プリンター、デジカメ、ミラーセット、コンベックス、巻き尺、三脚、ダブルスコップ、金棒、左官用舟、測量鋲、その他小物多数。

このように少額投資で購入できるものから順に揃えて、タイミングを見計らってCADソフトを準備します。CADを自分で動かせるように練習しておくと、いざというとき楽々対応できます。建物は直ぐ覚えましょう。

CADソフトはメーカーによってピンからキリまでありますが、1つのソフトに慣れてしまうと他のソフトは覚えようとしなくなります。慎重に選ぶようにしてください。

できれば、身近に教えてくれる先輩調査士がいれば、同じソフトがいいと思います。データの互換性があれば大変便利です。一般的に使われている大手会社のソフトは100万円ぐらいします。また、月1万円ほどのメンテナンス料もかかります。

無料ソフトも出回っていますので、予算のない方はこちらでもいいかもしれません。

ここまで来ると、いよいよ開業準備も大詰めとなりますが、まだまだサラリーマンを辞めてはいけません。

次に、サラリーマンのままで調査士会に入会します。入会金などもろもろの必要経費が一時的に30万円ほどかかり、月会費が1万円程度です。この状態だと、すでに立派な土地家屋調査士なのですが、1つ違うのはまだサラリーマンだということです。

この気楽な状態で、仕事仲間を作りながらスキルアップのために各種研修会に参加します。
時間はかかっても、ここまで借金をしないで積み上げることができれば申し分ありません。また、サラリーマンの仕事でどうしても時間がとれない場合は、サラリーマンの仕事を優先します。こうしながら徐々に調査士業界に自分の脳みそがなじむように持っていくわけです。

ここまでで、実は半分なのです。(ーー;)

営業活動をする

最も大切な、仕事をとるための「人脈作り」と「仕組み作り」が残っています。

この部分は営業に直結しますが、ここをクリアしなければ事務所経営は成り立ちません。

ですから調査士1本になって、生活に困窮しながら営業に行くと悲壮感が漂いますが、サラリーマンをやりながら休日を利用して営業活動をすると、自分も楽ですし、相手も気楽に「じゃ開業したらね。」と協力してくれる場合もあります。

欲を言えば5社ぐらいから建物登記が来るようになれば、土地の仕事と合わせてうまく回ると思います。ポイントは相手が喜ぶことをしてあげることです。

これに近い業務受託の見通しがつくようになるまでじっくり我慢しても、決して遅くないと思います。

なぜここまで慎重な事を言っているのかなんですが、実はいま土地家屋調査士制度が始まって以来の大変革が始まっているからです。

サラリーマンも本業、調査士も本業

ご存じのように法務省認可料金だった報酬制度が廃止され、自由価格になりました。また、調査士法人制度がスタートしたことや、ADR(裁判外紛争解決)、電子申請制度、GPS、GIS、等々さまざまな状況が出現して来ます。これらのことが個々の調査士にとって食える方向に進むのかどうかは未知数です。だれもわかりません。

ですから、生活費はなんとかなるサラリーマンを極力辞めないでおきながら、その立場を最大限活用して本格開業の時期を見極めることが今の時点で最良の選択ではないかと思います。つまり「サラリーマンも本業、調査士も本業」とするのです。
そうすれば、窮屈かもしれませんが大きなリスクは減らせます。


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