2011年1月24日(月)〜28日(金)千葉 水銀条約第2回政府間交渉会議(INC2) 化学物質問題市民研究会 参加報告 報告:安間武 (化学物質問題市民研究会) 掲載:2011年1月25日 更新:2011年7月23日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/INC2_CACP/INC2_Report.html
1.はじめに 1月24日(月)から28日(金)まで、千葉市・幕張メッセ国際会議場で、UNEPによる「水銀条約条約の制定に向けた政府間交渉委員会第2回会合(INC2)」が、また、INC2開始前日の23日(日)にはホテル・ニューオータニ幕張で同じくUNEPによる「テクニカル・ブリーフィング」が開催されました。環境省発表によれば、これらの会議及び関連地域会合に、各国政府代表、国際機関、NGOs、オブザーバーが約130の国・地域から約600名、参加しました。また、NGOsは、これらのUNEP会議及び、1月21日(金)、22日(土)に開催されたNGO準備会合、さらには1月23日(日)に当研究会とEEB(欧州環境事務局)が主催したサイド・イベントなどに、29か国から77人(うち日本人22人)が参加しました。 ■INC2 会議議題 1.開会 2.組織事項 (a)議題採択 (b)作業組織 3.水銀に関する法的拘束力のある文書の準備 4.その他の事項 5.報告書の採択 6.閉会 会議議題のうち、「3.水銀に関する法的拘束力のある文書の準備」が中心議題であり、UNEPが準備したドラフト・エレメント・ペーパーの条項にほぼそって討議されました。 広範な討議項目のうち、UNEP決議 25/5:化学物質管理 III 水銀にも示される管理措置(control measures)の議題項目を示します。 Part I: はじめに 1. 目的 2. 定義 Part II: 水銀の供給削減のための措置 3. 水銀供給源 4. 環境的に適切な保管 5. 水銀または水銀化合物の締約国との国際的な貿易 6. 水銀または水銀化合物の非締約国との国際貿 Part III: 水銀の意図的な使用を削減するための措置 7. 水銀添加製品 8. 水銀が使用される製造プロセス 9. 小規模金採鉱 Part IV: 水銀と水銀化合物の大気、水、土壌への放出削減措置 10. 大気放出 11. 水及び土壌への放出 12. 水銀廃棄物 13. 汚染サイト Part V: 過渡的措置 14. 使用許可免除 Part VI:財源と技術及び実施支援 15. 財源とメカニズム 16. 技術支援 17. 実施委員会 Part VII: 意識向上、研究、監視、情報伝達 18. 情報交換 19. 公共情報、周知、教育 20. 研究、開発、監視 21. 実施計画 22.報告 23. 効果の評価 (以下省略) 尚、ドラフト・エレメント・ペーパーについては、ZMWG及びIPENは、INC2に先立つ1月上旬に、それぞれ組織としての見解と勧告を発表しました。ZMWG及びIPENは、それぞれの見解と勧告を策定し発表するために昨年11〜12月の約2ヶ月間、非常に労力をかけて集中的に検討を行い、当研究会もコメントによるフィードバックでその策定に関与していましたが、1月の発表後、直ちに日本語版を下記ウェブページに掲載しました。水銀条約の議論を理解する上で必読です。是非、お読みください。
2.討議内容 (11/02/17) IPENが発表した報告書によれば、重要項目についての各国政府代表及び NGOs の発言は概略、次の通りです。 ■水俣プレゼンテーション(日本政府版) 1月23日(日)に当研究会を中心とした NGOs は、水俣に関するサイドイベントを開催し、胎児性水俣病の坂本しのぶさんの発言などで、世界各国政府代表者/メディアに大きな衝撃を与えました。 一方、1月24日(月)のINC2 初日のオープニング・セッションで水俣に関する日本政府の公式なプレゼンテーションが行なわれ、近藤昭一環境副大臣と宮本勝彬(かつあき)水俣市長の挨拶、及び金子スミ子さん(語り部)の語りがありました。近藤副大臣は、日本政府は水俣被害者と地域社会の支援を続けてきたと述べました。そして、日本政府は条約交渉委員会事務局に対し500,000USドル(約4千万円)の貢献をするとし、条約に”水俣条約”と命名するとの政府の約束を繰り返しました。 オープニングでは水俣の悲劇の歴史を紹介するビデオの上映が行なわれました。そのビデオは、サイトは浄化され、水俣は現在”グリーン都市(環境宣言都市)”であると主張しました。開会式におけるこの主張は、サイトはまだ汚染されている(注)、汚染地域全体の健康調査は行なわれていない、補償は不完全である、チッソは責任を回避するために分社化することが許された、被害者が地域社会で安心して暮らしていける医療や福祉の仕組みはまだ確立されていない−と水俣被害者/支援者の代表が発表した内容と際立って対照的でした。 (注):2010年9月 熊本・水俣訪問記 (1) 百間排水口と (2) 水俣湾埋立地 ”広さ58.2haの埋立地の下には、水俣湾海底から集められた水銀濃度25ppm以上の未処理汚泥約151万m3がありますが、"エコパーク水俣"がこの巨大な汚染を隠蔽するように百間排水口近くから親水護岸まで広がっています。水銀で汚染された汚泥は浄化処理されることなく、単に汚染場所が移動しただけです。汚染汚泥はスティール・パイルによる護岸で封じ込められていますが、スティール・パイルの寿命は50年と言われています。この埋立工事が1977年から1990年の間に行なわれたこと、及び地震が発生する可能性を考えれば、このまま放置することは許されません。甚大な水銀汚染が放置されたままの水俣の地で、水銀条約の署名が行なわれるとしたら、それは滑稽であり、強烈なブラックジョークです。(安間 武)。 ■事務局ドラフト・エレメント文書 INC1で、代表者らはUNEP事務局に包括的なドラフト・エレメント・ペーパーを作成するよう要請した。このペーパーは、政府によって提出された資料とともに、INC1で述べられた見解に基づいている。UNEP事務局としてのドラフト・エレメント・ペーパーの大志を制限するこの取り決めは、設計において制約をうけた。対照的に、ストックホルム条約では交渉の間に、議長が政府とともに同等のペーパーを開発したが、それはもっと説得力のあるドラフトに向けて門戸を開いていた。 ■国家実施計画(NIPs) 日本及びEU加盟国を含むいくつかの資金提供国は、国家実施計画(NIPs)は任意(optional)であるべきとするドラフト・エレメント・ペーパーに同意した。中国は、”柔軟性”があるべきと述べて同意したように見え、全ての計画義務はひとつに統合されるべきであると所見を述べた。アメリカとカナダはこの議題は後日議論することを提案した。対照的に、カンボジアやチリーのような国は 義務的な国家実施計画(NIPs)を支持した。 ■”許さない(not allow)” この言葉の使用に関してコメントした政府はないが、プライベートにはいくつかの国と地域のリーダーは、禁止(prohibit)のようなもっと明確な言葉が望ましいと述べた。 ■水銀添加製品 多くの国は、廃絶すべきとする明確で強いメッセージを送るために、条約が水銀含有製品に対してネガティブ・リスト・アプローチを使用すべきということに合意した。このような国には、アフリカ地域グループ(53カ国)、EU(27カ国)、ノルウェー、フィリピン、スイスが含まれる。これらの諸国のいくつかは拡大生産者責任を含める必要性について述べた。中国と日本は、何が”水銀添加”か、及び何が微量汚染かについてのガイダンス又は定義が必要であると述べた。 他の諸国はポジティブ・リスト・アプローチを望んだ。これらの諸国にはオーストラリア、カナダ(国内ではネガティブ・リストを使用しているにもかかわらず)、中国、ニュージランド、アメリカである。これらの諸国が支持する理由は、コスト効果と水銀を含む製品を特定する多くの取り組みに投資しなくてもよいからである。このグループの1カ国は、ネガティブ・リスト・アプローチは”過度に規制的”であると述べた。 ラテンアメリカ・カリブ海諸国グループ(GRULAC)は、彼らがハイブリッド・アプローチと呼ぶものを提案した。この提案は、実際にはポジティブ・リスト・アプローチを使用するが、製品の3つのカテゴリーを作り出す。すなわちエッセンシャル・ユース(代替がないか、あっても高価);過渡期(廃止までの時間);及び禁止である。この提案に関心があるとカナダとインドネシアが述べた。 アマルガムとワクチンについてもまた、製品に関する議論が行なわれた。国際歯科研究協会(International Association for Dental Research)は、水銀含有アマルガムの安全性を強調し、彼らの使用のための許可免除を求めた。タバコ産業の主張が想起されつつ、世界歯科連盟(World Dental Federation)は、水銀条約は”個人の決定”を制限すべきではないと述べた。対照的に、水銀を使用しない歯科医(World Alliance for Mercury-Free Dentistry)と国際口腔医学毒性学会(International Academy of Oral Medicine and Toxicology)は技術的に実行可能代替の利用可能性とともに、アマルガム汚染を強調した。 CoMeD とSafemindsの両団体は、体内に直接水銀を注射することへの予防的懸念に言及し、また代替について強調しつつ、この問題に関するインターベンションを行なった。 ■製造プロセス ノルウェーは廃止の期限、水銀を触媒として使用する他のプロセス、及び新規施設の建設又は既存施設の拡張の禁止を提案した。EUやアメリカなど他の諸国はエレメント・ペーパーにリストされている二つのプロセス、塩素アルカリプラントと塩化ビニルモノマー製造(VCM)の廃止に集中した。VCM の本場、中国は代替が入手可能となるまで水銀を使用するVCM 製造は使用を許されるべきであると述べた。 議論における最大の”抜け穴”は、VCM 製造による水銀汚染の程度であった。UNEP によれば、VCM はASGMとほとんど同じくらいの水銀を使用する(ASGM:806トンに対してVCM:770トン)。しかし、入手可能な公開データはないので、VCM 製造からの放出は、目録ではゼロであるとカウントされている。VCM 製造は世界の主要な水銀汚染源である。 プロセスと製造に関する事務局フォーカル・ポイントは Gillian Guthrie (Jamaica) と Nina Cromnier (Sweden)である。このトピックに関するコンタクト・グループがINC3で確立されるであろう。 ■小規模金採鉱(ASGM) 多くの諸国はASGM への対応を強制的義務とすることを支持した。これらの諸国は、アフリア地域グループ(53カ国)、EU(27カ国)、ノルウェー、フィリピンである。対照的に、チリーはASGM対応には自主的アプローチを要求した。ラテンアメリカ・カリブ海諸国グループ(GRULAC)とインドネシアはASGMにおける水銀使用の漸減を唱えた。スイスとパプアニューギニアは自主的及び義務的アプローチを要求した。責任ある採鉱連合(Alliance for Responsible Mining (ARM))は、禁止すると採鉱労働者の脆弱性が増大するので、ASGMでの水銀の継続使用を唱えた。 本会議での議論に続いて、共同議長をDonald Hannah (New Zealand) と Felipe Ferreira (Brazil)とするコンタクト・グループが設立された。このコンタクト・グループはASGMの定義、貿易の制限、条約の範囲、行動についての自主的/義務的について議論した。このグループ会合は1回開かれただけであり、多くの問題は未解決のまま INC3 での討議に持ち越された。 約20カ国とNGOs 10団体がコンタクト・グループの討議に参加した。ASGMの定義についての議論で、全ての参加者は、エレメント・ペーパー中での定義から、”インフォーマル”と”原始的(rudimentary)”という言葉を取り除くことに合意した。カナダ、コロンビア、責任ある採鉱連合(ARM)及び Artisanal Gold Council は、ASGMの定義にフェアー採鉱、フェアートレード、グリーンゴールドのような言葉を加えることを提案した。他の諸国は、女性や子ども労働者を含むASGMの実態を反映したもっと単純な定義を望んだ。この定義は、共同議長及びUNEPによって、参加者からのいくつかのインプットを考慮しつつ、さらに検討が行なわれるであろう。 コンタクト・グループはまた、次のような文言をエレメント・ペーパーに入れることを議論した。”第12条及び第13条に従い、小規模金採鉱のための、水銀汚染サイトからの廃棄物を含む水銀廃棄物の回収、リサイクル、又は埋立を防ぐこと”。これに対して、責任ある採鉱連合(ARM)、Artisanal Gold Council、及びゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループ(ZMWG)は、採鉱者が移行期間及び供給制限に対処するのを支援するために水銀リサイクルは許されるべきであると提案した。 もうひとつの論点はASGMにおけるいくつかの実施法の禁止に関連していた。国連工業開発機関(UNIDO)の支援を受けて共同議長は、ASGM分野における4つの最悪の実施方法の禁止を含めることを提案した。それらは、" 全鉱石アマルガム化、アマルガムの開放燃焼、水銀尾鉱へのシアン化物の使用、アマルガムの屋内燃焼である。ほとんどの参加者は同意したようにみえたが、賛成しないも者もいた。 コンタクト・グループ参加者はまた、ASGMに関する国家行動計画はが開発され、何とか国家実施計画に統合すべきであるということに同意した。インドネシアは、行動計画は各国の特定の問題と能力に適応させるべきであると提案し、EUとアメリカは、特定の時間の枠組の中で水銀使用を廃止するための移行プロセスを提案した。ブラジル、インドネシア、マリ、タンザニアは、情報へのアクセスとともに、能力構築、技術移転、財務スキーム、及び管理措置を計画に含めることを支持した。IPENは、締約国が採鉱者と地域社会の健康及び環境を守る措置、及び活動の外部化されたコストをカバーするメカニズムを提案した。 最後に、このグループは水銀貿易とASGMとの関係について議論した。 マリとタンザニアは不法な移動に関してコメントし、水銀貿易に関与する諸国で輸出入禁止を実施する必要性を支持した。対照的に、インドネシアは、”水銀貿易の禁止”ではなく、”水銀貿易の管理”を提案した。アメリカは締約国間の協力をどのように実施することが出来るかを詳しく調べるための議論を提案した。 ■大気放出 ドラフト・エレメント・ペーパーの中で、大気放出は土壌及び水への放出から分離した条項で規定されている。多くの諸国は、大気放出は、ひとつの場所からもうひとつの場所へ汚染がシフトすることを回避するために土壌と水から分離すべきではないということに同意した。それらの国には、アジア太平洋地域(5カ国)、ブラジル、及びモロッコがある。中国は、後にコンタクト・グループでこの懸念を強くくりかえした。ブラジルは、大気、水、及び土壌への放出に関する分離した条項を統合するというIPENの提案を支持した。対照的に、EUは、大気汚染は優先事項であり、その概念は”希釈”であるべきではないと主張してこのアイデアを拒否した。カナダとアメリカは水と土壌への放出に関する条項を削除することに同意し唱道するように見えた。 水銀の大気放出源は石炭燃焼を含み、それがいくつかの国の反発を招いた。インドは自主的な削減を唱えた。中国は同意し、”冗談”として、中国が使用すれば価格が上昇するであろうよりクリーンな燃料を輸入する代わりに石炭を使用しているのだから中国に感謝しなくてはならないと述べた。多くの諸国は石油と天然がスは条項の一部であるべきと述べたが、それらの諸国には、ラテンアメリカ・カリブ海諸国グループ(GRULAC)(20カ国以上)、アフリカ(53カ国)が含まれる。イラン、カタール、アルジェリアは同意しなかった。インドネシアは、石油とガス産業からの水銀放出の問題は大気ではなく水と土壌であると主張した。他の排出源には、非鉄金属精錬及びセメント製造がある。中国は、鉄鋼は非鉄金属製造源リストから除外されるべきであると唱えた。EUは、住居暖房からの水銀をリストに含めることを主張した。中国は、住居暖房のためのBAT/BEP に何が規定されるのかに関してEUに説明を求めることにより反応した。アメリカは、リストは点源だけにするのがよいとして ASGM を含めることを拒否した。 BAT/BEP の議論は、既存の施設のためのBATを求める主張(EU、ノルウェー、アメリカ)及び排出制限値を求める主張(ノルウェー、アメリカ)があった。インドはBATを既存施設に適用することを拒否したが、BATは新設施設を含むことが出来るかもしれないと述べた。ラテンアメリカ・カリブ海諸国グループ(GRULAC)は、 BAT/BEP はもし経済的に実行可能なら推進されるべきこと、及び異なる排出源は異なる期限が対象となることを述べた。オマーンは BAT/BEPを定義することを支持した。カナダは BAT/BEP の採用における柔軟性を問い、南アフリカはフリーサイズのアプローチを拒絶した。インドは個々の国が自身のBAT期限を決定する柔軟性を強調した。アメリカは、相乗便益に言及した BAT/BEP 定義を開発することを主張した。 二層の排出者を持つべきとするエレメント・ペーパーの提案は反感を招いた。EUは、”著しい排出者”の規制は世界の水銀大気放出の60%を捉えることを提案した。ノルウェーは、このアイデアを支持したが、中国はこの措置に明確に反対し、セクション全体を削除することを提案した。南アフリかは、自主的な目標を望んだ。インドは多くの開発途上国では全ての人の電気利用の確保がまだ出来ていないと主張して、強制的な目標を拒否した。アフリカと日本は、”大排出者”という言葉のより明確な定義を望んだ。インドネシアは、事務局はさらなる議論をする前に全ての国の水銀放出を見直すべきであると述べた。 本会議に続き、コンタクト・グループが共同議長 John Roberts (UK) と Wijarn Simayacha (Thailand)の下に設立された。このコンタクト・グループで、インドは大気放出に関する説明責任に強く反対し、ブラジルと中国がインドを支持した。既存と新設の施設を分離する努力もあった。インドは、他の開発途上国からの支持を得て、既存施設に関連する問題及び、どのような管理を実施するにも高いコストとなることを強く主張した。 ■北極 北極の水銀汚染に対する特別な脆弱性が主に(北極協議会の代理としての)デンマークとイヌイット北極会議(ICC)によるインターベンションを通じて明らかにされた。デンマークは、この地域への水銀の長距離移動と、食物連鎖中の生物蓄積と生物濃縮のために水銀摂取が高いことに言及した。グリーンランドのICCからのパーヌナ・エジデ氏はイヌイットへの水銀の長距離移動の重要性について発言した。ICCは、北極の水銀の90%以上が人間由来であることに言及した。イヌイット(及び他の北極先住民)の食物は、魚や海洋哺乳類からの水銀で汚染されている。 ICC は Alaska Community Action on Toxics (ACAT)の支援を受けて、持続可能で再生可能なエネルギー資源を強調しつつ、水銀の大気放出に関する強い法的拘束力のある条項をもった大志のある条約を開発するよう各国代表者らに強く促した。 ■廃棄物 この議題のいくつかの局面は議論を複雑にした。それらはバーゼル条約の役割についての混乱;廃棄物、保管、及び汚染サイトの間の関連;及び金属水銀は商品か廃棄物かに関する意見の不一致;である。多くの諸国は水銀廃棄物の責任はバーゼル条約に完全に委任することに賛成のように見える。ラテンアメリカ・カリブ海諸国グループ(GRULAC)(20カ国以上)とカナダは特に突出しており、GRULACは水銀条約における廃棄物に関する条項を削除することを提案した。アフリカとフィリピンは廃棄物投棄についての懸念を表明した。いくつかの諸国は水銀条約とバーゼル条約の間の関連に関して事務局ペーパーを改善するよう訴え、これはINC3で生成されるであろう。 商品か廃棄物かに関する疑問に関し、スイスは条約は4つの状況に対応すべきであると述べた。廃棄物としての金属水銀;廃棄物になる製品;商品としての金属水銀;許可されている製品。中国は石炭灰が廃棄物とみなされるのかどうかの懸念を表明した。 本会議での討議に続き、コンタクト・グループが共同議長 Abiola Olanipekun (Nigeria) と Katerina Sebkova (Czech Republic) の下に廃棄物と汚染サイトを議論するために設立された。このグループは様々な問題を討議し、金属水銀は廃棄物と保管の両方に関する条項の一部であるべきと結論付けた。代表者らは水銀条約はバーゼル条約と重複すべきではないことに同意したが、水銀条約に対するバーゼルの関連性について多くの誤解があった。同グループは、水銀条約の下での廃棄物に関するガイドラインの開発はバーゼル条約との協議の下に行なわれるべきことに同意した。将来の議論に含まれるべき問題には汚染サイトをどのように扱うか、及び金属水銀の廃棄物から商品への移行が含まれる。 ■汚染サイト 諸国は汚染サイトについて何かがなされる必要があるということには同意したが、それらが自主的であるべきなのか義務的であるべきなのかについては反応が様々であった。EU(27カ国)とアメリカは、エレメント・ペーパーによってとられている自主的アプローチを支持しているように見える。ナイジェリアは義務的行動を支持した。この問題は上述したように廃棄物を含むコンタクト・グループでさらに討議されることになった。 3.国際NGOsの参加 NGOの参加リストによれば、NGOsは、29か国から77人(うち日本人22人)が参加しました。 当研究会は、開催国ローカルNGO/フォーカル・ポイントとして、環境省と国際NGOsとの連絡窓口/調整、国際NGOsの宿泊、輸送、NGO会合/イベント会場、NGOsブース設営、食事等のロジスティックスを受け持ちました。 また、INC2本会議及びそれに先立つ21日(金)及び22日(土)に開催されたNGOs会合、23日(日)に開催された当研究会及びEEB(欧州環境事務局)主催/IPEN(国際POPs廃絶ネットワーク)協力のサイド・イベント「水俣を敬う」、当研究会・EEB主催でINC2開催中に展示したアイリーン・アーカイブ写真展、25日(火)に実施されたIPEN主催/当研究会協力のフィッシュ・アクションなどを積極的に実施し、協力しました。 さらに、当研究会は、昨年6月のINC1参加時から国際NGOsとともに、INC2 初日の本会議における水俣病被害者、坂本しのぶさんの発言を企画し、国連環境計画(UNEP)と交渉していましたが、UNEPによれば初日のスケジュールが非常にタイトということで、その実現は危ぶまれていました。しかし粘り強く交渉を重ね、最後の土壇場で、UNEPのご好意及び、INC2に参加した全ての国際NGOsの絶大な支援を得て、坂本しのぶさんの本会議での発言が実現しました。 参加NGOsは概ね下記のNGO連合体に分類されますが、当研究会は、IPEN 及び ZMWG 双方のメンバーとして、積極的に活動しています。
INC2開催期間中に国際NGOsは多くの発表を行いました。当研究会は全ての発表を翌朝までに日本語化し、当研究会のウェブに掲載しました。
(クロス・ウェーブ幕張)
「サイド・イベント「Honoring Minamata(水俣を敬う)」 (ホテル・ニューオータニ幕張)
★1月24日(月)INC2初日 当研究会・ZMWG・IPEN・他全NGOs協力で 「本会議で坂本しのぶさんが発言」
当研究会・EEB(ZMWG)主催 「アイリーン・アーカイブ写真展示」 1970年代の初めに写真家 W. ユージン・スミスとアイリーン M. スミスの両氏が3年間水俣で生活しながら撮影した「水俣」の作品21点をアイリーン・アーカイブの協力を得て、当研究会及びEEBが展示しました。 これらの写真は、アイリーン・アーカイブの下記ウェブサイトからスライドショー(音声説明入り)で見ることが出来ます。 http://aileenarchive.or.jp/aileenarchive_jp/slides/index.html ■1月23日(日)発表 「水俣被害者/支援者団体声明」 水俣病被害者及び支援者の13団体は、「水銀条約を“水俣条約”と命名するとの日本政府の提案に対する水俣被害者団体及び支援者団体の声明」を1月23日(日)に世界に向けて発表しました(日本語訳|英語版)。その声明の概要は次の通りです。 水俣病は現在も継続している悲劇である。国際社会が水銀条約について協議するときに、日本政府はまず、国内の水俣病問題に向き合うべきである。55 年にわたりこの大惨事と闘ってきた我々は、水銀条約を“水俣条約”と命名することについて、この悲劇にきちんと向き合い、本質的解決の道筋が示されない限り、反対する。日本政府は、2013 年の外交会議以前にその姿勢を糺し、水俣から何を学んだのかを明らかにし、そこで学んだことを実施し、解決に向けて具体的に歩み出していなければならない。日本政府は、次のことを誠実に実施しなくてはならない。
これらの課題は決して、水俣だけの問題ではない。日本においては第2 の水俣病の犠牲地となった新潟をはじめ、世界には多数の水銀汚染箇所が存在する。また、様々な水銀汚染が現在進行している。この水俣の教訓が生かされてこそ、水銀条約は大きな意味を持つものであると私たちは信じている。水俣の悲劇は水銀で汚染された魚を食べたことで起きた。 私たちは、魚を再び安全に食べられるよう、世界の水銀汚染が十分に低減される水銀条約を強く望む。 以上
署名団体(順不同)水俣病互助会、水俣病不知火患者会、水俣病被害者互助会、NPO 法人水俣病協働センター、アジアと水俣を結ぶ会、グリーン・アクション、チッソと国の水俣病責任を問うシンポジウム実行委員会、東京・水俣病を告発する会、「季刊・水俣支援」編集部、水俣病東海の会、東海地方在住水俣病患者家族互助会、名古屋・水俣病を告発する会、アジア太平洋資料センター(PARC) 連絡先: 水俣病不知火患者会 水俣病被害者互助会事務局
「水俣を敬う:水俣被害者団体を支援する国際連帯声明」を発表 共同議長による署名の儀式 国際POPs 廃絶ネットワーク(IPEN)は、水俣被害者/支援者を支持して「水俣被害者団体を支援する国際連帯声明」(英語版|日本語版|ロシア語版|アラビア語版|スペイン語版)及び、「世界水銀条約に水俣に因んだ名前をつける前に水俣問題を解決せよ/世界のNGO は、55 年にわたる悲劇の中で水俣病被害者が提起した要求を支援する」とするプレスリリース(英語版|日本語訳)を1月24日に発表しました。この声明には1月24日現在、42 カ国のNGO 72 団体が賛同署名しました。 またIPENの二人の共同議長による署名の儀式が24日に行なわれ、IPENのメンバー4人(ナイジェリア、メキシコ、フィリピン、ロシア)による感動的な連帯の挨拶がありました。(フィリピン代表の挨拶(英語版|日本語訳) ■1月25日(火) 本会議で当研究会の安間武「水俣からの教訓」について発言 UNEP ドラフト・エレメント・ペーパー第13条「汚染サイト」に関連して
(オリジナル英語版) 下記はその日本語訳です。 議長、ありがとうございます。 私は、日本の化学物質問題市民研究会(CACP)の安間武です。ゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループ(ZMWG)とIPENを代表して発言します。 私の発言は、”第13条 汚染サイト“に関するものです。 日本の水俣の悲劇は、汚染サイトにおける水銀汚染から人の健康と環境を守るための重要な教訓を教えています。 私は、水銀汚染サイトに目を向けた主要な6点を提起したいと思います。 (1) 兆候があれば直ぐに対応すること 水俣では、明らかな危害の予兆が無視されました。将来の悲劇を防ぐために、住民の健康や地域の環境に異常な兆候又は症状があれば、何が起きたのか、何が原因なのか、誰が汚染したのかということを明らかにするために、直ちに徹底的な調査が行なわれるべきです。 (2) 汚染源を明らかにすること 水俣では、チッソが汚染源でしたが、長年それを否定しました。水銀の排出が続くことを防ぐために、水銀汚染の汚染者責任が早急に確立されるべきです。 (3) 健康影響を調べること 脆弱な集団への影響を考慮しつつ、汚染サイトの近くに住んでいる人々の健康影響が徹底的に調査されるべきです。水俣では55年経過した現在も、いまだに徹底的な調査は行なわれていません。 (4) 責任と補償をはたすこと リオ原則13に述べられているように、汚染被害者らは適切に補償されなくてはなりません。リオ原則16は、汚染者が汚染コストを負担すべきこと及びコストの内部化をはかることを述べています。これらの原則のどちらも水俣では完全には実施されていません。 (5) 地域住民に十分な情報を提供すること 水俣の人々は、魚に水銀が含まれていることについての情報も警告も受けていませんでした。このことは、汚染サイトの周辺に住む人々に水銀の存在と水銀曝露のリスク関する自由でアクセス可能な情報を提供することの必要性を教えるものです。 (6) 汚染サイトを浄化すること 55年経過しても、水俣のサイトはまだ汚染されています。この嘆かわしい状況から学ぶことは、条約は環境的に適切な方法で時宜を得た汚染サイトの修復を求める条項を含まなければならないということです。 議長、結論を申し上げます。 水俣ではこれらの措置の欠如が、50年以上にわたり被害者の生活に過酷な影響を与える悲劇を引き起こしました。そしてそれはまだ解決されていません。 私は、汚染サイトに関連する問題が将来、世界のどこでも再び起きないようにするために、INCが水俣からのこれらの重要な教訓を水銀条約に織り込むよう要請いたします。 ありがとうございました。 フェルナンド・ルグリス議長のコメント: 今のご発言、ありがとうございました。ここに参加している全ての代表団は水俣の状況を重々認識しており、その重要性を理解しています。
■1月25日(火)ランチタイム IPEN主催・当研究会協力 「フィッシュ・アクション」 IPENは、安心して魚を食べられるようにするためのキャンペーンの一環として、1月25日(火)ランチタイムに「フィッシュ・アクション」を行ないました。 当研究会が用意したマグロのコスチューム、マグロの冠、羽織を着たIPENの女性メンバーが300個用意したツナのカナッペを各国政府代表に振舞いました。また、IPENメンバーらは英語と日本語のポスターを掲げ、ポストカードを手渡して、「魚が再び安全に食べられる水銀汚染のない世界にする」ことを呼びかけました。 ポスターとポストカード 警告:水銀汚染
水銀汚染魚警告:缶詰のツナが国際水銀条約交渉の政府代表に提供される 日本語訳|英語版 ■国際NGOsの声明 INC2の初日及び最終日にIPENとZMWGはそれぞれグループとしての声明を発表し、当研究会はそれらを全て翌朝までに日本語化し、当研究会のウェブに掲載しました。
4.国際NGOsによる本会議での発言 (インターベンション) INC2本会議開催中、ZMWG 及び IPEN を中心とした当研究会を含むNGOsが、議題の管理措置(control measures)の各項目に関して、20回以上、フロアーから発言しました。ここではZMWG と IPEN の発言を紹介します。 ZMWG 発言の日本語訳 http://www.zeromercury.org/UNEP_developments/index.html#StatementsINC2
http://www.ipen.org/hgfree/inc2.html#Interventions
5.写真 (More Photos) ![]() 掲載ページを移動しました。 6.報道資料
|