2011年1月 INC2本会議 ZMWGの発言
「第10条 大気放出」

エリック・ウラム(Eric Uram from Sierra Club)

オリジナル:Zero Mercury Working Group Article 10 Intervention
Eric Uram (Sierra Club)
http://www.zeromercury.org/UNEP_developments/Intervention%20Article%2010%20by%20ZMWG%20-%20FINAL.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2011年5月28日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/
INC2_NGO_Intervention_jp/ZMWG/Art_10_Eric_Uram.html


  1. 私は、シエラクラブ(Sierra Club) のエリック・ウラムです。
    ゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループとして発言します。
    議長、発言の機会をいただき、ありがとうございます。

  2. エレメント・ペーパーの第10条は新たな施設に対して最良の入手可能な技術(BAT)だけを求め、既存の排出源に抑制措置を求めず、これらの古い施設が今後数十年間現在のレベルで汚染し続けることを許すのであれば、第10条は不十分であるとZMWGは考えます。第10条が既存の施設からのある程度の放出削減を”促進”するという限定的な表現を含んでいることは事実ですが、この表現には力、確実性、そして責任がありません。INCは、既存の施設を優先的な発生源カテゴリーの義務的管理体制に含めなくてはなりません。
     このことは、BATを定義する時に、新規と既存の施設のために同じBATが必要であるということを意味すものではありません。そうではなくて、私たちは、BATを定義する時に新規と既存の施設の間に適切な区別がなされることを勧告します。
     パラグラフ2〜4の修正案で、ZMWGは、もし既存の施設が当該設備を定義された期限を過ぎても継続して運転されるなら、既存の施設は適用可能なBAT要求を満たす義務があることを勧告しています。

  3. 私たちはまた、技術的アプローチと放出制限値の両方を備えたBATガイドラインを求めます。この方法で、遵守の達成には最大の柔軟性が与えられますが、期待される能力のレベルに関して責任が伴います。

  4. ZMWG はさらに、放出がどのように監視され追跡されるのかについてINCはもっと注意を払うことを勧告します。私たちは、特に連続放出監視装置は現在、放出レベルと制御機器能力に関し、立証され、手ごろであり、精度が良く、リアルタイムで分刻みのデータを得る方法であるということを認識しつつ、監視技術が明確にBATの開発に含まれることを特に勧告します。
     このリアルタイム監視は、性能をチェックするための効果的な方法を提供するので、私たちは定期的な監視における本質的な弱点を回避することが期待できます。水銀連続放出監視装置は、市民社会に対して実施を監視するために必要な情報を提供するとともに、連続運転性能と放出制限への連続的な遵守を実証するために極めて重要です。

  5. BAT/BEP問題に加えて、私たちは Annex E が二つの潜在的に顕著な水銀放出源を含めないかもしれないという懸念を持っています。現在、世界のある場所で、石油と天然ガスが非常に高い水銀を含んでいるということが明らかになって来ています。

  6. 例えば、日曜日のテクニカル・セッションで、私たちはインドネシアで産する天然ガスが著しい水銀副産物源となっているということを聞きました。もし、天然ガス分野からの水銀の著しい量が、水銀副産物として生成されるなら、水銀放出措置がとられる前に、原料ガスの燃焼を含んで天然ガス製造プロセス中に多量の水銀が放出されていると推論できます。

  7. さらに、私たちのレビューで、潜在的に多量の水銀が原油や化石燃料凝縮液に含まれていることが分かりました。したがって同じように、凝縮液、原油、最終石油製品のプロセス過程も大きな水銀放出源であるということができます。

  8. したがって、少なくとも世界のある場所では、石油とガス製造は、地域で相当な水銀大気汚染を引き起こしているかもしれず、全体として注意を払うべき世界の排出源に分類されます。

  9. 私たちの追加的なレビューに基づく理解から、決議 25/5(訳注1:2009年2月 UNEP 第25回管理理事会)には石炭だけがパラグラフ29の研究に含まれていると私たちは認識しており、ZMWGやその他のグループは、全ての各国政府代表者らが石油と天然ガスについて、もっと多くの情報を必要とするかもしれないと感じています。
     私たちは、この問題を提起し追加の情報を収集するよう勧告します。この追加情報は、世界の主要な水銀大気放出源に対応するための適切な措置を最終的にこの条約がもたらすことを確実にするために、石油とガス産業を第10条に含めることが妥当であるかどうか各国政府代表が評価するのに役立つでしょう。

     議長、この重要な問題について発言する機会を与えていただき、ありがとうございました。


訳注1:2009年2月 UNEP 第25回管理理事会 決議 25/5:化学物質管理 III 水銀
パラグラフ29:このような状況において、政府間交渉委員会にその作業について知らせることを目的に、代替管理技術と措置のコストと効果を分析し評価するという考えをもって、関連する諸国と協議して、現在及び将来の水銀放出の傾向とともに、様々なタイプの水銀放出に関して研究を実施することを理事長に求め、

訳注:参考情報
ZMWG 2011年1月 INC2 ドラフト・エレメント・ペーパーに対するゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループ(ZMWG)の意見と勧告


化学物質問題市民研究会
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