2009年2月 UNEP 第25回管理理事会
決議 25/5:化学物質管理 III 水銀
情報源:February 2009 UNEP GC25 Decision 25/5: Chemicals management III Mercury

http://www.chem.unep.ch/mercury/GC25/GC25Report_English_25_5.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年9月23日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/UNEP/GC_Decision_25_5_Mercury.html


国連環境計画(Unep)管理理事会は:

18. 水銀は、その大気での長距離移動、環境中に放出された場合の残留性、生態系での蓄積性、そしてヒト健康と環境への著しい有害影響のために、世界的に懸念される化学物質であるとする国連環境計画(UNEP)及び化学物質の適正な管理に関する国際機関間プログラム(IOMC)によって発表された2002年世界水銀評価の結果を想起し、

19. 国連環境計画水銀プログラムの中で、水銀に関する情報とデータの提供及び世界的に調整された行動についての考察についてなされた進展を認め、

20. 水銀に関する速やかな行動のための手段としてのパートナーシップの策定と実施における進展について、国連環境計画世界水銀パートナーシップの理事長及び委員を称賛し、決議 24/3 セクション IV で特定された優先分野における迅速な行動のための包括的な枠組みの生成においてパートナーシップによってなされた進捗を歓迎し、国連環境計画のパートナーシップへの継続する関与を支持し、

21. 述べられた全ての見解を反映し、選択肢を発表し、さらなる行動についての議論の基礎としてその報告書の付属書(appendix)の中に含まれる包括的な水銀の枠組みの要素を規定する水銀に関するアドホック公開作業グループ会合の最終報告書22を評価しつつ留意し、

脚注 22: Final report of the Ad Hoc Open-ended Working Group on Mercury to the Governing Council of the United Nations Environment Programme (UNEP/GC.25/5/Add.1, annex).
22. 他の関連するリオ宣言諸原則23に加えて、環境と開発に関するリオ宣言原則 7 に規定されるように、国際環境ガバナンス及び共通の原則であるが区別された責任に関する管理理事会決議を考慮しつつ、効率的で、効果的で首尾一貫した方法で水銀を管理する必要性を認め、

脚注 23: Report of the United Nations Conference on Environment and Development, Rio de Janeiro, 3-14 June 1992 (United Nations publication, Sales No. E.93.I.8 and corrigenda), vol. I: Resolutions adopted by the Conference, resolution 1, annex I.

23. 新たな世界の法的拘束力のある文書から生じる法的責任は、開発途上国及び移行経済国が効果的に実施できるようにするために、能力構築と技術的及び財政的支援が必要であることを認め、

24. 国連環境計画の水銀プログラム及び世界水銀パートナーシップと政府、国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)及びクイック・スタート・プログラム、有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約、国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関するロッテルダム条約等を含む条約事務局、政府間組織、非政府組織、及び民間分野との密接な協力と調整に役立てるために具体的な行動に着手することを理事長に求め、

25. ヒト健康と環境へのリスクを削減するために、暫定的な行動とともに、法的拘束力及び自主的アプローチの双方を含むことができる水銀に関する法的拘束力のある文書を推敲する更なる国際的な行動に同意し、

26. 2010年に着手し、2013年の第27回管理理事会/グローバル閣僚級環境フォーラムより前に完成させる目標をもって、法的拘束力のある文書を準備する任務を持った政府間交渉委員会を招集することを理事長に求め、

27. 他にもあるが、特に環境と開発に関するリオ宣言の原則を考慮しつつ、政府間交渉委員会は下記条項を含む包括的で適切な水銀へのアプローチを開発するすることに同意し、

(a) 条約の目的を明示すること。
(b) 水銀の供給を減らし、環境的に適切な保管のための能力を強化すること。
(c) 製品とプロセス中の水銀の需要を減らすこと。
(d) 水銀の国際貿易を減らすこと。
(e) 水銀の大気放出を減らすこと。
(f) 水銀含有廃棄物と汚染場所の修復に目を向けること。
(g) 意識向上と科学的情報の交換を通じて知識を増やすこと
(h) 途上国及び移行経済国が法的拘束力のある文書の下でいくつかの法的義務を効果的に実施するための能力は能力構築と技術的及び財政的支援の利用可能性に依存しているということを認めつつ、能力構築と技術的及び財政的支援計画を明らかにすること。
(i) 遵守に目を向けること。

28. 政府間交渉委員会はまた、開発する文書に関する審議において、次の点を考慮すべきことに同意し、

(a) その約束を実施する時に諸国に裁量を許すことができるいくつかの条項中の柔軟性。
Flexibility in that some provisions could allow countries discretion in the implementation of their commitments; (b) 適切な場合には、提案される行動のために移行期間及び段階的実施を可能とするための特定分野の特性に対応したアプローチ。
(c) 適切な代替が存在しない重要な製品に関して貿易が必要であることを認めつつ、環境に適切な水銀の管理に役立てるために水銀を使用しない代替製品及びプロセスの技術的及び経済的な入手可能性。
(d) 提案される行動に関し、他の国際的な合意及びプロセスに含まれる関連する条項との協力と調整を実施すること及び不必要な重複を回避することの必要性。
(e) 開発途上国及び移行経済国が持続可能な開発を実現するために必要なことを考慮しつつ、行動のために水銀放出の様々な発生源を優先付けること。
(f) 従来の汚染管理措置の可能性ある相乗便益とその他の環境的便益。
(g) 効率的な組織と合理化された事務局の配置。
(h) ヒトの活動に由来する水銀放出の結果としてヒト健康と環境に及ぼすリスクに対応する措置。
(i) 政府間交渉委員会が水銀管理に関連すると考えるかもしれない他の見地。

29. このような状況において、政府間交渉委員会にその作業について知らせることを目的に、代替管理技術と措置のコストと効果を分析し評価するという考えをもって、関連する諸国と協議して、現在及び将来の水銀放出の傾向とともに、様々なタイプの水銀放出に関して研究を実施することを理事長に求め、

30. 政府間交渉委員会の任務は管理理事会のさらなる決議によて補完されるかもしれないことを認め、

31. 政府間交渉委員会への参加は、適用される国際連合の規則に従い、国際連合及びその特別機関、地域経済統合組織、及び関連する政府間及び非政府組織に対しても開かれるということを決定し、

32. 特に交渉の優先案件、タイムテーブル、及び政府間交渉委員会の組織を議論するための政府間交渉委員会の作業を準備するために、2009年の後半にアドホック公開作業グループ会合を開催することを理事長に求め、

33. 開発途上国及び移行経済国がアドホック公開作業グループ及び政府間交渉委員会に効果的にに参加することができるよう支援することを理事長に求め、

34. 資源の許す範囲で政府間交渉委員会の作業と同時に、政府、政府間組織、利害関係者及び世界水銀パートナーシップと適切に調整しつつ、水銀に関する国際的行動の一部として、既存の作業を下記のように継続し強化することを理事長に求め、
(a) 水銀補完能力を強化すること。
(b) 例えば一次水銀採鉱からの水銀の供給を減らすこと。
(c) 人力小規模金採鉱での水銀使用を減らすために、重要な国で意識向上及びパイロット・プロジェクトを実施すること。
(d) 製品中及びプロセス中での水銀使用を減らし、水銀を使用しない代替についての意識向上をはかること。
(e) 利用可能な最良の技術及び環境のために最良の慣行に関する情報、及び水銀を使用するプロセスを水銀を使用しないプロセスに転換することに関する情報を提供すること。
(f) 水銀に関する国の在庫目録の開発を強化すること。
(g) 公衆の意識とリスク・コミュニケーションの向上を図ること。
(h) 水銀の適切な管理に関する情報を提供すること。

35. 政府、政府間組織、産業、非政府組織、及び大学・研究機関が本決議のパラグラフ 34 に示された活動の支援、及び、技術的・財政的資源の供給を通じて水銀のリスク削減とリスク管理に取り組む各国のプロジェクトの実施等を支援することによる世界水銀パートナーシップの支援を、継続し強化することを強く求め、

36. 第27回管理理事会/グローバル閣僚級環境フォーラムによる検討のために、”世界大気水銀評価:発生源、放出、及び移動”と題する2008年の報告書を各国政府政府と協議して更新することを理事長に求め、

37. また、優先的な行動として、政府間交渉委員会、国連環境計画水銀プログラム、及び水銀に目を向けた短期的活動としての世界水銀パートナーシップに必要な支援を提供することを求め、

38. 国連環境計画技術産業経済部門化学物質部局に対し、アドホック公開作業グループ及び政府間交渉委員会の事務局として務め、その作業に必要な分析及び概要報告書を準備するよう求める。



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