2012年6月27日(水)〜7月2日(月)プンタデルエステ、ウルグアイ
水銀条約第4回政府間交渉会議(INC4)
化学物質問題市民研究会 参加報告

[内容 (項目)]

報告:安間武 (化学物質問題市民研究会)
掲載:2012年7月8日
追加:2012年10月9日 IISD による INC4 の簡潔な分析及び
本会議での第14条に関する発言(UNEP報告書の一部)
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/INC4_CACP/INC4_Report.html


photo by CACP
水銀条約条約の制定に向けた政府間交渉委員会第4回会合(INC4)
2012年6月27日(水)〜7月2日(月)プンタデルエステ、ウルグアイ
各国政府代表、国際機関、民間機関、企業、NGOsなどが約130ヵ国・地域から約600名参加

 内容(項目)

  1.はじめに
    ■水銀条約制定の経緯
    ■INC4 概要
    ■INC4 会議議題
    ■UNEP条約ドラフト・テキスト修正版と新たに提出された会議室ペーパー(CRPs)
    ■IPEN及びZMWGの見解
    ■毎日の典型的なスケジュール
    ■INCの進行プロセス
    ■開催期間中のNGO活動概要
    ■IPENと化学物質問題市民研究会の水俣キャンペーン

  2.討議内容/結果 (12/07/09)
    ■セクションA 序文 (12/07/09)
    ■セクションB はじめに (12/07/09)
    ■セクションC 供給 (12/07/09)
    ■セクションD 水銀と水銀化合物の国際貿易 (12/07/09)
    ■セクションE 製品とプロセス (12/07/10)
    ■セクションF 人力小規模金採鉱(ASGM) (12/07/10)
    ■セクションG 排出と放出 (12/07/13)
    ■セクションH 保管、廃棄物、汚染サイト (12/07/15) (12/10/09)追加
    ■セクションI 財源と技術的及び実施支援 (12/08/04)
    ■セクションJ 意識向上、研究と監視、情報伝達 (12/08/04)
    ■IISD による INC4 の簡潔な分析(12/10/09)追加

  3.国際NGOの参加
    ■参加NGO
    ■NGO 発表プレスリリース
    ■本会議におけるNGOの発言 日本語訳追加(12/07/16)

  4.報道/報告
    ■水銀条約第4回政府間交渉会議(INC4)IISD 報告書 抄訳(12/08/04)更新
    ■IISD Reporting Services (IISD RS) 写真

  5.写真集
    ■本会議/NGO発言
    ■NGO準備会合
    ■IPENブース
    ■ZMWGブース
    ■IPEN/化学物質問題市民研究会 水俣を敬うキャンペーン
    ■IPENフィッシュ・アクション
    ■ZMWGの水銀貿易を止めろ!汚染者が支払え!キャンペーン
    ■NGO仲間




1.はじめに

■水銀条約制定の経緯

 国連環境計画(UNEP)は2001 年以来、水銀問題に対応するための活動を展開しています。2002 年、世界水銀アセスメント報告書を発表したUNEP は、水銀の放出はヒト健康に有害影響を及ぼし、環境生態系と経済を損なうかもしれないと言及しました。この重要な報告は、水銀汚染への世界の継続的な取り組みをもたらしました。
 管理理事会(GC)における様々な決議を経て、2009年の第25回管理理事会(GC25)において、水銀に関する世界的な法的拘束力のある文書を準備するためにの政府間交渉委員会(INC)を召集すること及び2013年の第27回管理理事会/グローバル閣僚級環境フォーラムまでに完成させることという目標の下に、下記スケジュールで2010 年に作業を開始しました。

http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/Shiryou/Minamata_and_Global_Hg_Treaty_jp.pdf

2009年2月UNEP 第25回管理理事会:法的拘束力のある条約制定とINC召集を決定
2010年6月7日〜11日第1回政府間交渉会合(INC1):ストックホルム、スウェーデン
2011年1月24日〜28日第2回政府間交渉会合(INC2):千葉、日本
2011年10月24日〜11月4日第3回政府間交渉会合(INC3):ナイロビ、ケニヤ
2012年6月27日-7月2日第4回政府間交渉会合(INC4):ウルグアイ(プンタデルエステ)
2013年1月第5回政府間交渉会合(INC5):ジュネーブ、スイス
2013年2月UNEP 第27回管理理事会へ報告
2013年10月外交会議(条約採択/署名):日本

■INC4 概要
  • 2012年6月27日(水)から7月2日(月)まで、ウルグアイのプンタエルでステで、UNEPによる「水銀条約条約の制定に向けた政府間交渉委員会第4回会合(INC4)」が開催され、各国政府代表、国際機関、NGOs、オブザーバーが約130の国・地域から約600名が参加しました。
  • INC4開始前日の26日(火)から地域会合(注1)が開催され、以降、原則として毎日本会議前の9時〜10時まで開催され、ビューローからの報告、各地域内の意見調整などが行なわれました。日本が共同議長を務めるアジア太平洋地域会合は、初日の26日(火)はクローズドでNGOは傍聴できませんでしたが、27日(水)以降はオープンでした。
  • INC3に引き続いてINC4においても、重要条項を専門的に討議するコンタクト・グループ(注2)が設立され、本会議と並行してひとつのコンタクトグループ会議が、あるいはランチタイム及び本会議終了後から深夜までふたつのコンタクト・グループ会議が並行して開催され精力的に討議が行なわれました。
  • これらの会議には、NGOの参加が許されました。
  • NGOsは、これらの会議に先立つ6月25日(月)に、NGO準備会合を開催しました。

注1:地域・グループ会合
アフリカ地域、アラブ地域、アジア・太平洋地域、中央・東ヨーロッパ地域、ラテンアメリカ・カリブ海諸国地域(GRULAC)、西ヨーロッパ・その他の地域、JUSCANZ グループ(日、米、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)

注2:コンタクト・グループ
[1]人力小規模金採鉱(ASGM)、[2]水銀添加製品及び製造プロセス、[3]大気への排出・水及び土壌への放出、[4]保管、廃棄物及び汚染サイト、[5]資金及び技術・実施支援、[6]普及啓発、研究及びモニタリング、情報の伝達の6分野、及び、法律専門家グループ(リーガル・グループ)

■INC4 会議議題
Provisional agenda
  1.開会
  2.組織事項
   (a)議題採択
   (b)作業組織
  3.水銀に関する法的拘束力のある文書の準備
  4.その他の事項
  5.報告書の採択
  6.閉会

■UNEP条約ドラフト・テキスト修正版と新たに提出された会議室ペーパー(CRPs)

 会議議題のうち、「3.水銀に関する法的拘束力のある文書の準備」が中心議題であり、UNEP事務局が準備した「水銀に関する法的拘束力のある国際的協定書に対する包括的で適切なアプローチのためのドラフトテキスト修正版 (UNEP(DTIE)/Hg/INC.4/3)」(*)の条項にそって討議されました。
 (*)UNEP(DTIE)/Hg/INC.4/3 水銀に関する法的拘束力のある国際的協定書に対する包括的で適切なアプローチのためのドラフトテキスト修正版  (英語版日本語訳版

 このドラフト・テキストの一部(第9, 12 - 14, 18, 19, 24 - 26 及び 28 - 36の各条と 付属書 E, J)は、INC3のコンタクト・グループで提案された内容が反映されていますが、残りの部分はINC3コンタクト・グループの意見集約が行なわれておらず、INC3のテキストがそのまま残っています。
 また、参考情報として下記資料がINC4前の4月に事務局より示されていました。
 上記の事務局が用意した文書に加えて、会議直前又は会議中に、いくつかの国及び地域が単独で又は共同で特定の条項についての提案を会議室ペーパー(CRP)として事務局に提出し、それらは主に該当するコンタクト・グループの会合で検討されました。

 しかし、INC4でのコンタクト・グループの検討後も、まだ多くのオプション・代案が[ ]付きで複雑に入り組んだままとなっています。事務局はINC4での討議の結果(INC4 CRPs)に基づき、次回INC5での最終討議のための条約案をINC5開催前に配付するはずです。

条約ドラフト・テキスト修正版の構成(本文と付属書)
A 前文 
B はじめに 
C 供給付属書 A 水銀供給源
D 水銀の国際貿易付属書 B 国際貿易措置対象
E 製品とプロセス付属書 C 水銀添加製品|付属書 D 製造プロセス
F 人力小規模金採鉱付属書 E 人力小規模金採鉱
G 大気排出と水と陸地への放出付属書 F 非意図的大気排出|付属書 G 水及び陸地への水銀放出源
H 保管、廃棄物、汚染サイト付属書 H 環境的に適切な保管に関する[ガイダンス][要求の策定]
I 財源と技術的及び実施支援 
J 意識向上、研究と監視、情報伝達 
(以下省略)

■IPEN及びZMWGの見解

 ドラフト・テキストについて、IPEN と ZMWG は、それぞれINC3に先立つ3月及び5月に、組織としての見解と勧告を発表しので、当研究会は日本語版を下記ウェブページに掲載しました。尚、当研究会は「汚染サイト」及び「条約の命名」に対する IPEN の見解作成に参加しました。
■毎日の典型的なスケジュール

 毎日の典型的なスケジュールは下記の通りであり、早朝から夜遅くまでの非常にハードなスケジュールでした。
  • 8時〜9時:NGO会議
  • 9時〜10時;各地域会合(当研究会はアジア太平洋地域会合を傍聴)
  • 10時〜13時:本会議
  • 15時〜18時:本会議
  • 本会議の合間、及び本会議終了後深夜までコンタクト・グループ会合。 (当研究会は主に、保管・廃棄物・汚染サイト及び水銀排出/放出の会合に参加)
■INCの進行プロセス

 INC会合前後を含めた進行プロセスは、概ね下記のように示すことができます。
  1. 事務局は前回のINCでの討議に基づき条約のテキストを準備(3か月以上前)
  2. 各国政府及びNGO:このテキストをINCまでに精査 (当研究会は日本語仮訳)
  3. NGO:見解書作成(1〜3ヶ月前)(ZMWG/IPEN) (当研究会は日本語仮訳)
  4. 会議直前にいくつかの国及び地域が単独又は共同で特定の条項について提案(会議室ペーパーCRPs)
  5. NGO:本会議での発言者をNGO戦略会議で決定
  6. 各地域、各国政府、国際機関及びNGOsが本会議で条項毎に発言
  7. 重要条項についてコンタクト・グループ”を立ち上げ、集中的に討議し、結果を事務局に提出(会議室ペーパーCRPs)
  8. 事務局はコンタクト・グループからのCRPsを取りまとめて、次回のINCでの討議のために、新たな条約テキスト案を取りまとめ
■開催期間中のNGOsの活動概要

■IPENと化学物質問題市民研究会の水俣キャンペーン

 INC4の初日の6月27日、本会議場に隣接するロビーで、国際POPs廃絶ネットワーク(IPEN)と当研究会は共同で、”水俣を敬うキャンペーン”の一環として、水俣ポストカードと水俣連帯リボンを会議参加者に配布しました。
 ポストカードの表は、INC2(2011年1月千葉)で水俣被害者の坂本しのぶさんが、フェルナンド・ルグリスINC議長と握手している写真と、INC4に向けての坂本しのぶさんのメーセージを英文で記載しました。また坂本さんの代理として、当研究会の安間がポストカードとリボンをルグリスINC議長に手渡しました。
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2.討議内容/結果 (12/07/09)

▼本稿の第14条 汚染サイト以外は、IISD 報告に基づいている。より詳細な討議内容/結果についてはIISD報告書を参照ください。
▼UNEPのINC4公式報告書が2012年8月15日付けで発表されました。
UNEP(DTIE)/Hg/INC.4/8, 15 August 2012 Report of the intergovernmental negotiating committee to prepare a global legally binding instrument on mercury on the work of its fourth session

■セクションA 序文 (12/07/09)
 ルグリス議長は、序文をINC5での討議まで残しておくことを提案し、INCは同意した。

■セクションB はじめに (12/07/09)
 ルグリス議長は、このセクション(第1条 目的、第1条 bis. 他の国際的な合意との関係、第2条 定義)をINC5での討議まで残しておくことを提案し、INCは同意した。彼はコンタクト・グループが彼らの作業に関連する定義に対応するであろうが、第2条(定義)はINC5で討議されるであろうと述べた。

■セクションC 供給 (12/07/09)
 このセクションは、セクションD(国際貿易)に関連しており、以下のように討議された。

■セクションD 水銀と水銀化合物の国際貿易 (12/07/09)
  • 事務局はINC4のドラフト・テキスト(UNEP(DTIE)/Hg/INC.4/3)で第3条(水銀供給源)、第4条(締約国との国際貿易)、第5条(非締約国との国際貿易)及び付属書A(水銀供給源)と付属書B(国際貿易措置の対象となる水銀と水銀化合物)を用意していた。
  • 欧州連合は、供給と貿易に関する提案を2012年6月27日付の会議室ペーパー(CRP7)で発表したが、それは第3条、4条、5条をひとつの条項に統合し、付属書AとBを削除し、特に、各締約国は一次水銀採鉱を”許してはならない(shall not allow)”ことを求めた。またEUの提案には国家の水銀ストックの目録に関する新たな第4条が含まれる。
  • EUの提案はカール・ブラハ(チェコ共和国)とアブドラー・アルラシード(サウジアラビア)を共同議長とするコンタクト・グループにより引き取られて討議が行なわれた。
  • アフリカグループ、スイス、フィリピン、ノルウェー、日本、オーストラリアは一次採鉱を廃止することを支持した。
  • 中国は、許容された製品や塩化ビニル・モノマー(VCM)製造のようなプロセスのための水銀供給を確実にするための必要性を強調し、水銀採鉱に関して、特に既存の鉱山に柔軟性を求めた。
  • 他の主要な水銀供給源に関して、ノルウェーは供給は廃止されるべきであると述べたが、日本は特定の用途については管理された供給を維持すること、及び水銀と水銀化合物の明確な定義を求めた。
  • 特定の活動での副産物として放出される水銀及び水銀化合物の処分に対する要求に関して、いくつかの国は、このセクションの全体を削除することに賛成した。その他の諸国は、このことはいくつかのリサイクル活動に影響を及ぼすと強調して、非鉄採鉱と精錬操業をリストすることに反対した。
  • コンタクト・グループ共同議長は、同グループの議論をまとめた会議室ペーパー(UNEP(DTIE)/Hg/INC.4/CRP.28)を提示した。この報告書は、EUの会議室ペーパー(CRP7)にもとづいており、第3、4、5条は統合され、付属書AとBは削除された。カッコはほとんど全てのパラグラフに残っている。
  • INCはこの修正された文言はドラフト・テキストにおけるセクションCとDを置き換え、INC5におけるさらなる討議のためのINC4最終報告書に添付されるべきことを決定した。
  • 新たに提案された第4条(水銀ストックの国家目録)は、コンタクト・グループにより討議されておらず、また全体がカッコつきとなっており、その領土内の1ヶ所又はそれ以上の場所で50トンを超える水銀、水銀化合物、又は安定化水銀のストックをそれぞれ持っている締約国はこれらのストックを記録し監視する目的のための国家目録を確立しなくてはならないと規定している。
■セクションE 製品とプロセス (12/07/10)
  • 第6条(水銀添加製品)、第7条(水銀が使用される製造プロセス)、第8条(許容用途免除及び容認用途)、及び第8条bis(開発途上国の特別な状況)に対応するためにバリー・レビル(オーストラリア)とデービッド・カピンドゥラ(ザンビア)を共同議長とするコンタクト・グループが立ち上げられた。
  • 事前に日本、ジャマイカ、ロシアにより第6、7条及び付属書C、Dに関する提案文書の提出があり(UNEP(DTIE)/Hg/INC.4/CRP.1)、コンタクト・グループではこの文書について集中的に討議した。
  • コンタクト・グループの議論の中心は、”ポジティブ・リスト”アプローチとするか”ネガティブ・リスト”アプローチにするかであった。
  • スイスは、2012年4月に東京で開催されたINC間会合の結果(当研究会注:東京ペーパー)に基づくノルウェーとの共同提案を提示し、アフリカグループ、IPEN 及び セーフマインド(SafeMinds) が”ネガティブ・リスト”アプローチを支持した。
  • アメリカとカナダは、主要な水銀用途だけを規制目標とする”ポジティブ・リスト”アプローチを支持した。
  • アジア太平洋グループは、猶予期間をもつポジティブ・リスト・アプローチを望み、”新規”製品の定義の明確化を求め、塩素アルカリ製造における水銀の廃止を支持した。
  • 韓国は、ポジティブ・リストに基づく”ハイブリッド・アプローチ”を支持し、過渡的措置が不遵守を防ぐのに役立つと述べた。
  • 日本は産業プロセスにおける水銀の一般的禁止を強く支持した。
  • ジャマイカは全ての締約国に適用できる包括的な仕組みを求めたが、対応すべき製品の範囲を明確に定義し、製品とプロセスの変化に遅れずについていく見直しメカニズムを含める必要性を強調した。
  • ラテンアメリカ・カリブ海グループ(GRULAC)とニュージランドは、代替品が開発され、利用可能となるのに合わせて水銀添加製品の段階的な廃止を求めた。
  • ニュージランドは、煩雑ではなく国家のアプローチに適応できる実行可能性があり機能する輸出入制度の必要性を強調した。
  • 中国はVCM(塩ビモノマー)製造における水銀を半減するという中国の計画を強調し、スリランカとともに、規制措置は伝統的な薬品で使用される成分を除外すべきであると述べた。
  • いくつかの開発途上国は水銀を使用しないプロセスを採用するための能力が十分でない国への特別の配慮の必要性を強調した。
  • ゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループ(ZMWG)は水銀添加製品と水銀使用プロセスの禁止を求めた。
  • アフリカグループは、水銀添加製品がアフリカに輸出されないことを確実にする必要性を強調した。
  • EUは、水銀条約は免除を含めるべきではないと述べ、フィリピンと共に、どのような許容用途免除も数量と期限で制限されるべきであり、厳格な見直しと管理メカニズムの対象とすべきであると述べた。
  • WHOは、歯科アマルガム中での水銀使用とワクチン中でのチメロサールの使用に関する見解を示し、国際小児科学会とともに、混合ワクチンの代替は冷蔵が必要であり、高価になるので、多くの途上国では実行可能ではないと言及した。
  • 人権団体である”水銀を使用しない薬品連合”はチメロサールを”沈没しつつある船”と呼び、”毒性のないワクチン”の利用を求め、脆弱な集団が水銀に曝露することを防ぐ措置をとるようINCに求めた。
  • 世界歯科連合と国際歯科研究協会は、個別の国情が考慮されるなら、歯科アマルガムの使用の削減を支持するとした。
  • セーフマインド(SafeMinds)は健康分野、特に医薬品及び歯科産業での水銀使用の禁止を求め、フェイズダウン・アプローチを支持した。
  • 欧州照明企業連合(European Lamp Companies Federation)は、”主流”照明機器での水銀制限は可能であると述べた。
  • コンタクト・グループ共同議長レビルは、同グループは第8条及び第8条bisに対応する時間がなかったとし、事務局がINC5での作業を容易にするために、それまでの間に関連文書を圧縮し単純化することを提案した。
  • 第6条及び第7条と付属書CとDを含むセクションEの修正文書(UNEP(DTIE)/Hg/INC.4/CRP.31)が本会議で示され、INCは会議報告書にそれを添付することに合意した。
■セクションF 人力小規模金採鉱(ASGM) (12/07/10)
  • セクションF(人力小規模金採鉱)のドラフト・テキストを完成させるために、ドナルド・ハンナ(ニュージーランド)とフェリプ・フェレイラ(ブラジル)を共同議長とするコンタクト・グループがINC3に続き、再度立ち上げられた。
  • コンタクト・グループが作成した第9条(ASGM)と付属書E(ASGM)の修正版は本会議で発表された後、最終的に法務グループに送られた。
  • コンタクト・グループは第9条のテキストを分析し、ASGM(付属書E)に関して国家行動計画(NAPs)に含めるべき要素を討議し、なかんずく、子どもと妊娠可能年齢の女性、特に妊婦を含んで脆弱な集団の水銀曝露を防ぐ戦略を含めなくてはならないということに同意した。
  • 締約国はASGMにおける水銀使用を削減し、実行可能な場合には廃絶するための措置をとらなくてはならないということに同意した。
  • 法務グループは第9条と付属書Eに関するテキストを提示し、INCはこの修正テキストを会議の最終報告書に添えることに同意した。
  • 第9条には、ASGMで使用する水銀の国際貿易に関して、3つのオプションがあり、それらの全てにカッコがついている。
  • 最初のオプションは、そのような貿易を例外として可能とする許容用途免除としてASGMを分類する内部のカッコ付きで、ASGMで使用する水銀の貿易を禁止する。
  • 二番目のオプションは、もし全鉱石アマルガム化及び他の実施を除外するために行動がとられるなら、そのような貿易を許す。
  • 三番目はASGMで使用される水銀について禁止を自主的に課している締約国との貿易を禁止する。
  • この条項と付属書Eの下における措置の実施は、財源と技術的及び実施援助に関する規定に従属するとする項もまた、カッコつきである。
  • 付属書Eは、水銀及び水銀化合物のASGM用途への流用を管理する又は防止するための戦略もまた、そのような水銀の輸入に適用するかどうかに関してはカッコがついたままである。
■セクションG 排出と放出 (12/07/13)
  • 水銀の大気排出と陸地及び水への放出の問題が本会議で議論され、ジョーン・ロバーツ(イギリス)とジュアン・ミゲル(フィリピン)を共同議長とするコンタウト・グループに引き取られ、二つのオプションを検討した。
  • 第一のものは分離された第10条(大気排出)と第11条(水と陸地への放出);第二のものは統合された第11条alt(排出と放出)と付属書F(大気排出)である。
  • コンタクト・グループ共同議長は二つの可能性あるアプローチとして、”A”:各国の状況を反映するための柔軟性を許しつつ、排出を管理及び/又は削減するために特別の措置をとることを締約国に義務付けるアプローチと、”B”:排出を管理及び/又は削減するために各国が決定した措置を作成することを締約国に義務付けるアプローチを紹介した。
  • EUは、共同議長の文書中の概念を規定するための提案として、主要な要素としてBATを採用し、第10条と付属書Fのための新たな条文案を示した。
  • インドは、中国との共同提案でアプローチBと柔軟性と共通ではあるが差異のある責任を強調し、また石炭火力発電は開発にとって非常に重要であることを強調した。
  • アフリカグループは、アプローチAを支持し、規制措置の実施のために新たな財源と技術的支援を要求した。
  • アジア太平洋グループは、同地域の多くの国はアプローチAを支持し、”[非意図的]大気排出”に関する付属書Fを含んで、共同議長の文書に含まれていない要素の検討を求めた。
  • ラテンアメリカ・カリブ海グループ(GRULAC)は、大気排出と陸地及び水への放出を全体的な方法で対応するために、ひとつの条項に統合する提案を行なった。
  • 水銀排出とBATに関し、アメリカは新たな排出源のためのBATの使用は柔軟性のあるアプローチを反映するものであり、既存の石炭火力プラントの閉鎖を求めないと述べた。
  • ノルウェーは、締約国の電力需要を認め、BATはかなりの排出削減を達成する重要な手段であると述べた。
  • カナダは、大気排出を削減するための行動を記述する堅固な条項を支持し、削減を測定するためのベースラインの必要性を強調した。
  • イラクはサウジアラビアとともに、BATの実施のために開発途上国への援助の必要性を強調し、本条約の下に規制されるべき水銀排出源としての石油とガス分野を除外することを求めた。
  • 水銀排出に関して日本とスイスは水と陸地への主要な放出に焦点を当てるよう促し、アメリカは、全ての締約国は全ての排出源からの大気排出を削減するよう求めた。
  • IPENは、全ての媒体への排出と放出が対応されるべきであると述べ、ゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループ(ZMWG)は、ひとつの媒体から他の媒体への移動が管理されなくてはならず、閾値が開発される必要があると述べた。
  • イヌイット北極評議会(ICC)は、北極圏の集団は世界的な排出と魚からの水銀に曝露しており、水銀の排出と放出を削減するための強い規制措置を採択するよう代表者らに強く促した。
  • コンタクト・グループでは、締約国は大気排出を”削減”すべきなのか、”管理”すべきなのか;目録の開発は義務的なのか、もしそうなら財政的及び技術的援助の対象となるのか;BATはある閾値を越える新たな大気排出源について義務的なのか、又は、ある柔軟性が許されるべきなのか;大気排出は陸地及び水への放出と関連して、又は別個に、対応されるべきなのかが、議論の焦点であった。
  • 同グループは、合意に役立てるためのBATを定義し、付属書F(大気排出)と、ことによると付属書G(陸地及び水への水銀放出源)で規定されるであろう源についてより明確にする必要性を明らかにした。
  • 最終日前日、共同議長は全体論的に水銀の大気、水、陸地への排出と放出に対応したBATの定義についての提案をしたが、3つのカッコが残っていた。INCはカッコ付きのない条文を求めてこの文書をリーガル・グループに送った。
  • 最終日(7月2日)の本会議で、委員会は、排出と放出に関するコンタクト・グループの議論を共同議長がまとめた提案、及びBATの定義についてリーガル・グループによるレビューを受けた提案を検討した。
  • チリは、メキシコとアルゼンチンとともに、共同議長のまとめの中にあるラテンアメリカ・カリブ海グループ(GRULAC)の立場、すなわち新規及び既存の大気排出源は異なった扱いがなされなくてはならないこと、及び付属書A(排出)中で特定されている非鉄金属排出源は個別にリストされるべきこと;について明確にするよう求めた。
  • 委員会は、これらの提案をINC5でさらに検討するためにINC4報告書に添付することにした。
  • アルジェリアはドラフト条約テキストに含まれる、資源利用を放棄した国が保有する水銀ストックの補償に関する規定を提案に含めるよう強く促した。ルグリス議長はアルジェリアのコメントはINC4報告書に含まれるであろうと述べた。
  • 委員会は事務局に対し、INC5までの期間に、水銀の大気排出源の閾値の設定のための基準及び/又は経験に関する情報;及びINC5の作業を促進するために技術的情報と排出と放出の源に関する情報を提供するよう、政府及びその他の機関に要請するよう要求した。事務局は、2012年8月31日までに参照情報の提出を求める要請を送付するとした。

■セクションH 保管、廃棄物、汚染サイト (12/07/15)

▼本会議での第14条に関する発言(UNEP報告書から抜粋)(12/10/09)追加
UNEP INC4 Report UNEP(DTIE)/Hg/INC.4/8, 15 August 2012
  • (UNEP Report Item No.103) 複数国のグループを代表する二人を含んで、数人の代表者は第14条汚染サイトに対応するガイドラインを含めることを支持した。複数国のグループを代表するひとりの代表者は、アフリカや世界中の既存の汚染サイトとそれらが人の健康と環境に及ぼすリスクに目を向けることが重要であると述べた。汚染サイトに効果的に対応するために、水銀条約は義務的な汚染サイトの目録と特性化要求を含め、汚染者の浄化コストと被害者への適切な補償に責任を持たせ、地域社会がサイトの特性化と差し迫った健康リスクについて確実に知らされる必要がある。ひとりの代表は、多くの発展途上国および移行経済国では汚染サイトに関して限定された情報だけしか利用できず、そのような汚染サイトを特定し、水銀の人の健康と環境に及ぼす影響に関する情報を提供する必要があると述べた。

  • (UNEP Report Item No.105) 非政府組織の二人の代表者は、保管と廃棄物に関して、水銀条約に拘束力のある条項を確立することが重要であると述べた。条項はまた、汚染者に汚染サイトの修復のための金銭的責任を課す汚染者負担原則及び、汚染サイトの目録作成して国家実施計画の中で優先付ける国家の義務を明確に反映すべきであると述べた。
▼本会議におけるNGOによる第14条に関する発言


ジンドリッヒ・ペトロリク(Arnika/チェコ)photo by ENB
 第14条 汚染サイトに関し、IPENのジンドリッヒ・ペトロリク(Arnika/チェコ共和国)が初日の6月27日に本会議で発言を行なった。その概要は次の通りである。

  • 汚染サイトの条文は、条約のお飾りの家のようなものだ。“適切な場合には”、“努力しなくてはならない”、“実行可能なら”、“策定してもよい”。
  • これらの言葉は 、“条約は何もしない”と言っている。
  • この自主的なアプローチは水俣の悲劇的歴史からの教訓を無視し、被害者への補償を無視している。次の原則が盛り込まれなくてはならない。
    1. 汚染者負担原則に基づく補償と汚染サイトの修復の責任
    2. 汚染サイト目録の作成、特性化、優先付け、国家実施計画への導入
    3. 汚染者による.被害者への補償
  • 汚染サイトの問題を地域の問題とする主張には同意しない。水銀汚染は世界の問題である。
  • もし水俣条約と名づけられるなら、被害者と彼等の正当な要求は敬われ、水俣の悲劇は条約に適用されなくてはならない。
▼コンタクト・グループでの議論
  • このセクションは初日(6月27日)に本会議で議論され、引き続き、アン・ダニエル(カナダ)とアドエル・シャフェイ・オスマン(エジプト)を議長とするコンタクト・グループによりドラフト条約テキスト(UNEP(DTIE)/Hg/INC.4/3)に基づいて検討された。
  • 第12条(廃棄物水銀以外の環境的に適切な[暫定的な]水銀の保管)に関して、EUは、締約国が水銀含有廃棄物の環境的に適切な保管のための要求に合意することができる特定の領域を示唆する提案を提示した。
  • アフリカグループは、義務的な目録とサイト特性化要求を含めること及び地域社会の意識向上を求めた。
  • 定義に関してチリは、定義は条約の初めの部分に含めるべきと提案し、一方日本とオーストラリアはバーゼル条約との一貫性をの必要を強調した。
  • スイスはコンタクト・グループに保管について定義することを求めた。
  • 非廃棄物水銀の環境的に適切な保管についての”ガイダンス”又は”要求”に言及する文言に関し、ある開発途上国グループは、”要求”は保管サイトを持たない諸国に不遵守をもたらすかもしれないと述べて、”要求”の採用に反対した。
  • 他の代表者等は拘束力のある要求は、締約国が水銀保管に対応するための明確なステップをとることに拍車をかけるであろうと示唆し、行動のための特別な要求を記述する付属書を含めるよう推し進めた。
  • アフリカ・グループとともにアメリカは、商品水銀に関するガイダンスは未解決の問題であり、保管に関する地域的な協力の重要性に言及した。
  • フィリピンは、INCに水銀の非締約国への移動に対応するよう求めた。
  • IPENはゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループとともに汚染者負担原則を含めることを支持した。
  • 第13条(水銀廃棄物)に関して、定義に関わる事柄について合意に達することができなかったが、バーゼル条約の下に開発されるガイドラインを検討すること、及びこれらのガイドラインの廃棄物の定義を使用することに同意したが、それらのことはINC3後の会合間の期間に採択されていた。
  • 第14条(汚染サイト)に関して、イラクはこの問題に特別の注意を払うよう求め、IPENとともに汚染サイトの目録を作成するようINCに求めた。代表者等は締約国会議(COP)が汚染サイト管理の諸原則に関するガイダンスを策定する及び/又は採択するのかどうかについて議論した。いくつかの国は、定義されたガイドラインをCOPが採択することを希望し、他の諸国は自由なガイドラインがよいとした。
  • コンタクト・グループの作業結果は、リーガル・グループに送られ、リーガル・グループは最終日に本会議でセクションHに関する最終条文を発表した。ルグリス議長はこの条文案を会議報告書に添付することを提案し、INCは同意した。
▼第14条 汚染サイトに関するINC4での結論

 INC4でのリーガルグループのレビューを受けた第14条 汚染サイトの結論は、会議室ペーパー(UNEP(DTIE)/Hg/INC.4/CRP.20)に下記のように記されている。

  1. 各締約国は、水銀及び水銀化合物で汚染されたサイトを特定し、評価するための適切な戦略を開発するよう努力しなくてはならない。
  2. そのようなサイトにより引きこされるリスクを低減するためのどのような行動も、妥当ならば、サイトが含む水銀及び水銀化合物からの人の健康と環境へのリスクの評価を反映しつつ、環境的に適切な方法でなされなくてはならない。
  3. 締約国会議は、下記の方法とアプローチを含むかもしれない汚染サイト管理のガイダンスを採択しなくてはならない。
     (a) 汚染サイトの特定と特性化
     (b) 公衆の関与
     (c) 人の健康と環境リスク」評価
     (d) サイトにより及ぼされるリスク管理のオプション
     (e) 便益とコストの評価
     (f) 結果の確認
  4. 締約国は、[能力構築、財政的及技術的援助の条項によることを含んで]、汚染サイトを特定し、評価し、優先付け、管理し、適切なら汚染サイトを修復するための戦略を開発し実施することに協力することを奨励される。
▼IEPN及び当研究会の共同声明
 INC4における第14条の結論は、汚染サイトの修復、被害者への補償などに対する汚染者と政府の責任を求める記述がなく、リスク削減戦略やガイダンスの策定だけが強調される全く自主的なものとなっている。これについて、IEPN及び当研究会は6月30日に共同声明を発表したが、その概要は次のようなものである。

2012年6月30日 汚染サイトに関するIPENと化学物質問題市民研究会プレスリリース
新たな水銀条約交渉は、“水俣条約”と呼ばれるに値しない方向に進んでいる
汚染サイトの浄化も被害者の補償も求めていない

  • 今回発表された条文は、汚染サイト浄化のための義務的な行動を求めていない。汚染された地域の人々から水銀条約はどのような行動を求めているのかと訊ねられたら、我々は、締約国は全く何も要求されておらず、何もしないことが許されていると答えなくてはならない。(IPEN 重金属ワーキング・グループ共同議長ジンドリッヒ・ペトロリク)

  • 現在の条約案の文言の下では、水俣湾で起きたような汚染サイトがあっても、それを特定し、浄化し、被害者に対応すべき義務が求められていないので、無視されることになる。もし条約の文言自体が水俣のような惨事が将来起きることを許すなら、世界水銀条約を‘水俣条約’と命名するのは恥ずべきことである 。(化学物質問題市民研究会 安間 武)

  • 汚染者は、水や陸地を不注意に汚染しても、彼等に支払いを求める又は被害者の補償を求めるために、条約を誰も利用することができないということに満足するであろう。各国代表者等はこの負担を被害者や納税者の肩にかけようとしている。 (IPEN INC4 議長フェルナンド・ベジャラーノ )

  • 締約国は汚染サイトを特定し、特性化し、浄化のために最悪の汚染サイトを優先付けることを義務付けられるべきである。(IPEN 上席科学アドバイザー、ジョー・ディガンギ)

  • 条約が2013年1月に予定されている会合で最終的に決まる前に、IPEN は交渉会合の担当者らに対し、この決定をもう一度見直し、行動を義務的なものとし、汚染者と政府に汚染サイトの修復に責任を持たせ、汚染による被害者を補償させる条文を含めることを強く求める。
■セクションI 財源と技術的及び実施支援 (12/08/04)
  • 共同議長フェリプ・フェレイラ(ブラジル)とヨハンナ・パイツ(スウェーデン) が主導するコンタクト・グループは、修正ドラフト・テキスト第15条(財源とメカニズム)、第16条(技術支援)、及び第16条bis(パートナーシップ)、及び財源と技術援助に関する概念的アプローチと可能性あるテキストの提案(UNEP(DTIE)/Hg/INC.4/4) (当研究会日本語訳)に基づき議論した。彼らはまた、イランによる技術移転に関して分離した条項を求める提案を討議した。
  • 第15条(財源とメカニズム)に関して、財政メカニズムは単独とすべきか、又は既存の制度に依存すべきかについて討議した。
  • GRULAC は、単独の財政メカニズムを求める提案を導入した。アフリカグループ、中国、ジャマイカ、フィリピン、ヨルダン、ゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループ(ZMWG)もまた専用の基金を支持した。
  • 日本は単独メカニズムに反対し、アメリカ、EU、ノルウェー、及びいくつかの先進国はGEFを用いることに賛成したが、その他の諸国は”既存のメカニズム”への参照を支持した。
  • 潜在的な基金又はメカニズムへの寄与に関して、日本及びその他の国は全ての締約国が基金に寄与すべきであると述べたが、ジャマイカ、ネパール、及びその他の国は、 後発開発途上国(LDC)及び小島嶼開発途上国(SIDS)は寄与する立場にないと強調した。
  • アメリカは、全ての国の自主的な寄与を含める必要性を強調し、ヨルダンとアジア太平洋グループとともに、民間分野の寄与を動員することの重要性を強調した。
  • ある開発途上国はINCが基金の割り当てのためのタイムテーブルを確立する必要性について強調した。アジア太平洋グループとアフリカグループもまた、条約発効前に利用可能な財源を求めた。
  • アメリカとスイスは、基金の利用可能性を実施義務の条件とすることに反対した。
  • ZMWGとIPENもまた汚染者負担原則と拡大生産者責任原則を引用しつつ、民間分野の関与を強く促した。
  •  第16条(技術支援)に関して、アルジェリアは、水銀生産をする途上国が条約の実施のためのコストを相殺するための能力構築支援と技術移転を求めた。
  • コンタクト・グループにおいて能力構築と技術支援に協力するための締約国の責任が議論されたが、は義務が全ての国に適用されるべきなのか、先進国だけに適用されるべきなのかについて合意することはできなかった。
  • また技術移転の提供は、これらの技術が通常、政府ではなく民間組織が保有しているので、知的所有権の懸念が生ずるであろうということの強調もあり、技術移転は”促進”されるべきなのか、又は”提供”されるべきなのかに関して見解が分かれた。
  • 技術支援を提供する方法に関して、化学物質や廃棄物など他分野の多国間環境協定(MEAs)による協力と調整とともに、地域、準地域、及び国家レベルにおける協定又は引渡しメカニズムを通じての提供の規模を議論した。
  • 第16条bis(パートナーシップ)は、締約国によるパートナーシップの確立、パートナーシップに関する締約国会議(COP)ガイダンス、及びパートナーシップの枠組みを規定する。コンタクト・グループでは多くの代表者が、この条項は個別の条項ではなく、技術支援に関する条項に反映することができることを認めた。
  • 代表者等はこの提案に同意し、条約実施のために民間分野を含んで、パートナシップの重要性を認める文言を第16条に加えた。
  • 技術移転に関して、いくつかの開発途上国は、イランの提案は他の条約中で先例とされていると強調しつつ、条約の下における技術移転メカニズを確立する分離した条項にするというイランの提案を支持した。
  • これに対して多くの先進国は、技術支援の下に技術移転を扱うという一般的なやり方を強調した。
  • コンタクト・グループはまた、締約国会議(COP)が開発途上国が直面している技術的課題を考慮し技術移転を促進するために緊急に行動を起こすことを求めるオリジナルの提案に対する代替の文言を検討した。
  • ある先進国は技術移転への対応について意見を保留すると述べた。
  • この問題については合意に達せず、カッコ付のままとなった。
  • 代表者等は第15条及び第16条を反映するコンタクト・グループの議論の報告書をINC5における更なる討議のためにINC4報告書に添付することに同意した。
■セクションJ 実施と遵守 (12/08/04)
  • 共同議長ツオモス・コッカネン(フィンランド)とジメナ・ニエト(コロンビア) によるコンタクト・グループで金曜日から日曜日まで検討された。コンタクト・グループの議論は、ドラフト条約テキスト(UNEP(DTIE)/Hg/INC.4/3)に基づいていた。
  • 木曜日の本会議で事務局は第17条に関する二つのオプションを示した。すなわち、実施又は遵守委員会を設立するという”オプション1”、及び財政支援、技術支援、能力向上及び実施に関するひとつ又はそれ以上の委員会を設立するという”オプション2”である。
  • オプション1を支持するEUは、条約のテキスト中で遵守委員会と財政メカニズムに同じ重みが与えられるべきであると述べ、日本は遵守委員会は速やかに設立されるべきであると述べ、スイスとアメリカは実施に焦点を当てるべきであると述べた。
  • オプション2を支持する中国は、遵守メカニズムの文脈はその効果を決定するものであり、インド、ブラジル、キューバとともに遵守と、財政的及び技術的支援及び技術移転に関する約束の関連性を力説した。
  • アルゼンチンは義務と要求される財源が合意される前に遵守を議論するのは早すぎるかもしれないと述べた。
  • カナダは代表者等が遵守メカニズムの確立のための根底にある理由を検討するよう求めた。
  • GRULAC、コロンビア、中国は、容易で、罰則がなく、対決的でないアプローチを強調した。
  • 多くの国は、他の MEAsからの教訓、特に化学物質と廃棄物分野からのものを考慮に入れてメカニズムを討議するよう求めた。
  • 代表者等は、採用されるであろうきっかけ、構成、意思決定及び措置に関する条項が、参照に関して、又は手続きの規則に関して、条約テキストの中で最良の検討がなされたかどうかを討議した。
  • 条約の下における義務を最終的なものにする前に、これらを議論することは早すぎるのかどうかに関して見解が分かれた。
  • コンタクト・グループで代表者等は、特に条約がメカニズムと委員会又は委員会を検討するメカニズムを確立すべきかどうか、又は実施を促進すべきかどうかに関して合意することはできなかった。
  • 代表者等はまた合意によって条約テキスト中に含めることができる要素を特定することを目指して、”ビルディング・ブロック”として収束の、及び”箇条書き”としての分岐の問題を規定する”ノン・ノンペーパー”を議論した。
  • ”ビルディング・ブロック”は条約テキスト中に実施/遵守メカニズムの確立と、それは容易な特性のものであるべきとすることを含めた。次に、含めるべき要素のリストに目を向けたが、メカニズムの特性、委員会のメンバーシップ及びその適格性、トリガー、手続き、意思決定、実施の促進、会合、事務局支援を含んで、何も合意に達しなかった。
  • コンタクト・グループは、議論に基づき、新たな第17条を草稿するために、共同議長のテキストに基づいて作業を行なった。
  • 月曜日(7月2日)の本会議でINCは遵守に関するコンタクト・グループの作業(UNEP(DTIE)/Hg/INC.4/CRP.26)は議事録に添付されることに合意した。
■セクションJ 意識向上、研究と監視、情報伝達 (12/08/04)
  • ドラフト条約テキストのこのセクションは、ドラフト条約テキスト(UNEP(DTIE)/Hg/INC.4/3)に含まれる第18条(情報交換)、第19条(公開情報、意識向上、教育)、第20条(研究、開発、監視)、第20条bis(健康面)、第21条(実施計画)、第22条(報告)、第23条(効果の評価)を含んでいる。
  • アレジャンドロ・リベラ(メキシコ)とダニエル・ジーゲラー(スイス)を共同議長とするセクションJのコンタクト・グループが設立された。
  • 代表者等は、第18条と第19条を一緒に検討した。
  • IPENとZMWGに支持されてEUは、水銀に関連する健康リスクに関連する情報は決して秘密とされるべきではないと強調し、他の化学物質関連条約や国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)と連携した文書を組み入れるよう提案した。
  • 日本は、化学的健康ハザードに関する情報を国際社会で直ちに共有することに関する文書を維持することに賛同し、アフリカグループは広範な情報共有アプローチを強調し、タンザニアはラベル表示要求に焦点を当てた。
  • 討議の後、INCは第18条及び第19条に関する修正テキストをリーガル・グループに送った。リーガル・グループは修正テキスト(UNEP(DTIE)/Hg/INC.4/CRP.20)を本会議で示し、INCは議事録に添付することに同意した。
  • 第20条(研究、開発、監視)に関し、EUは研究と監視のための条項は既存のプログラムの上に構築すべきと述べた。
  • IPENは、監視はリスクある全ての集団に向け、食物と汚染サイトを考慮すべきであると強調した。
  • WHOは、監視方法論の重複を避けるよう提案した。
  • 第20条bis(健康面)に関し、GRULAC は、締約国は特に職業曝露の防止に関するプログラムを実施し、水銀曝露により影響を受ける集団に対し、健康介護への適切アクセスを確保しなくてはならないとする提案を行なった。
  • アフリカ・グループといくつかの諸国及びNGOsは、この提案を支持した。IPENは、”脆弱な集団”を参照するよう力説し、国際インディアン条約協議会やその他もまた先住民を具体的に参照するよう求めた。
  • ニュージランド、モルドバ、アメリカ、EUは、健康面に関する単独の条項は必要なく、条約の様々なセクションで健康面に対応する方がよいと述べた。
  • カナダは、条約が人の健康に関する国家政府の責任の代わりをすべきではないと強調し、スイスと共に、この提案は条約の範囲を超えていると述べた。
  • 日本は、この提案と他の条項、及びWHOの作業との間に重複があると述べた。
  • WHOは、どの締約国でも GRULAC 提案で述べられている国家レベルの支援を要求することができると述べた。
  • コンタクト・グループの中で代表者らは、第20条bisに関する一般的な議論にかかわり、健康面に関する単独条項の必要性に関して見解が分かれた。
  • いくつかの開発途上国は、健康面は、ASGMに関する付属書Eのような他の条項の下で最もよく対応されていると主張し、条文の中でWHOと国際労働機関(ILO)との協力を強調することを提案した。
  • 多くの開発途上国は、健康面に関する単独条項は健康規定の実施を優先付け、環境的に適切な水銀の管理への包括的なアプローチを確実にするであろうと主張した。そのような条項の主権の意味合いについての懸念に対して彼等は、提案されたテキストは強硬な義務を含んでおらず、むしろ対話を促進していると強調した。
  • INCは、GRULACの提案(UNEP(DTIE)/Hg/INC.4/CRP.19)のカッコ付テキストをINC5での検討用に言及することに同意し、委員会はこの問題に関して初めの討議をしただけであり、そのテキストを協議したり、このテキストを単独の条項に含めるかどうかに関して合意に達したわけではないと説明する注釈をつけることを許諾した。
  • INC4はまた、この件に関する非公式なINC間協議を持つことを支持し、新たなドラフト条項に現われ、またこのドラフト条約の他の部分にも現われるこれらの規定を特定するために、事務局に対してWHOと協力して文書を準備するよう要請することに同意した。
  • 第21条(実施計画)に関して、アメリカは批准に先立ち実施計画を準備する必要性を強調した
  • EUとカナダは、国家実施計画(NIPs)は自主的であるべきと述べた。
  • メキシコ、チリー、及びその他の国は、NIPsは国内での水銀使用の状態を診断し、有害性に対応するための行動を協議するために重要であると述べ、一方、ニュージランドは国家行動計画(NAPs)が既に条約テキスト中にあることを強調した。
  • アルゼンチン、ブラジル、アフリカ・グループ、チリー、IPENもまた、開発途上国のNIPs策定のための財政的支援の必要を強調した。
  • コンタクト・グループで、共同議長リベラとジーゲラーは条約の下における実施計画の役割に関する意見交換を主導した。
  • いくつかの開発途上国は、実施計画の策定は実施の優先度を決め、例えば保健省と環境省、民間分野と市民社会を含んで、主要な組織を動員することができる本質的に重要な実施行為であり、国家実施計画(NIP)は財政支援を確保する上で重要な一歩であり、ドナー国が優先度を決めるために使用されると強調した。
  • 参加者等はまた、NIPsは全ての締約国に拘束力があるべきかどうか、及びNIPsのタイミング、とりわけ開発途上国にとって批准前にNIPsを完成させることの実行可能性に関して討議した。
  • 意見交換はまた、特定の条項の下での国家行動計画(NAPs)のための要求、及びどのようにしてこれらがNIPプロセスに関連するか関して、目を向けた。
  • 共同議長は、UNEP(DTIE)/Hg/INC.4/3中の第21条にリストされている二つのオプションからのテキストを保持している新たなテキストを導入し、共通の要素にしたがい、次のようにまとめた。計画の開発;意図の表明;文案のひな型及び基準;計画の更新と見直し;実施計画の伝達;国家利害関係者の協議;締約国会議(COP)の役割;締約国の社会的及び経済的状態。
  • 第22条(報告)に関し代表者等は、ドラフト条約中の第22条のための二つのオプションを削除した共同議長のテキストに基づき作業を行ない、報告の様式を決定する時に、報告に関する条項を実施するための開発途上国と移行経済国の能力は能力構築と適切な財政的及び技術的支援の利用可能性に依存するということを認めつつ、締約国会議(COP)への委託を議論した。
  • 第23条(効果の評価)に関し本会議で、グアテマラ、EU、カナダは、この条項中に含まれる規定を支持すると表明した。
  • EUは評価基準と指標の採用を支持し、ストックホルム条約を良い事例として引用しつつ、INCが効果の評価に関して他のMEAsから教訓を得るよう求めた。
  • カナダは、研究と開発は効果の評価への入力であり、行動の代わりとしてみなされるべきではないと強調した。
  • 第22条と第23条に関するコンタクト・グループの討議で、代表者等は定期的な条約の効果評価で検討されるであろう情報に関して議論した。
  • 参加者等は、財政的情報と遵守と実施に関する情報が評価の中で検討されるべきかどうかに関して同意しなかった。
  • 同グループは、使用する方法論と評価を実施するための手段を含んで概念的な問題と評価のタイミングについて議論した。同グループはまた、監視データの役割を含んで評価のための基準と方法論を議論し、テキストを作成したが、それは効果評価のための手はずを決めるというより、関連するMEAsの下における効果の評価を考慮しつつ、締約国会議(COP)が評価のための基準と方法論を採用するための規定であった。

■IISD による INC4 の簡潔な分析 (12/10/09)
International Institute for Sustainable Development (IISD) Monday, 5 July 2012

 「水銀に関する法的に拘束力のある世界条約」を制定するための第4回、そして最後から2番目の交渉に入るに当り、経験豊かな多くの代表者等は、10年以上前の残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約の交渉との比較を引き合いに出した。POPs交渉の間に生じた課題を反映させることで、何人かはINC4における小さめな課題には進展が見られるであろうと予測したが、一方2013年1月のINC5における交渉プロセスの結論に先立ち克服されるべき最も顕著な課題が明らかになってきた。実際にINC4の議事録はこれらの多くの期待で満ちていた。コンタクトグループは、いくつかの条項における”カッコ付”文言を推敲し、カッコを外すことに成功し、選択範囲を狭めたので、ある場合には急速な進捗が見られた。しかし、INC4ではまた、多くの延々と続く困難な議論が繰り広げられ、広い範囲で見解と利害への各国の強いこだわりが明らかになった。

 INC4の結論として、最も議論のある論点は、最終条約テキストに含まれるであろう3本の堅固な糸で結び付けられた難題、すなわち、実施と遵守に関するメカニズム;資金及び技術支援と移転のための条項;広範な規制措置である。この条約が水銀汚染の全ての形態と影響に対応する包括的な条約なのか、あるいは最も著しく世界的に影響を及ぼす水銀の汚染源だけをとらえるひとつのアプローチに焦点を合わせるのかについて、決定することを代表者らに求めつつ、これらの糸の全ては、条約の最終的な範囲に関する疑問に複雑に結びつけられていく。多分、中心的論点の実質的な検討を行なう前に条約の範囲を決定することの困難さを反映して、委員会は目的と定義に関する協議を最終交渉会合まで延期することに合意した。範囲の問題は、INC4では解決されないであろうことは初めから明らかなことであった。

 この簡潔な分析は、中心的論点の議論の背景にぼんやりと見えるこの範囲の問題が、水銀に関する法的拘束力のある条約を制定するための交渉にどのように影響を及ぼしているのかについて、検証するであろう。そして、この結び目をほどき、INC5における最終条約テキストに関する合意を可能とするために、目を向けられるべきことを議論するであろう。

中心的論点の結び目

 実施と遵守に関するメカニズム;資金及び技術支援と移転のための条項;広範な規制措置の間の相互関係は、どのようなひとつの問題に関する進展も他の問題の進展に依存しているということを意味しており、実際に、参加者らは、”全てが合意されるまでは、何も合意されたことにならない”という公理の引用をくり返し聞かされてきた。コンタクト・グループの込み合った厳しいスケジュールは、6日間の会合を最大限有効に使用させ、参加者のアイデアと対話を促進した。多くの場合、代表者らは問題の本質に迫り、お互いの立場を完全に理解することを確実にしようとしたので、問題の複雑さがテキスト、カッコ、選択、及び考えについての縺れ(もつれ)を導いた。多くの代表者等は、中心的論点に関する議長テキストを作成するという難しい仕事を任されたINC議長フェルナンド・ルグリスをうらやまないとコメントした。参加国及びコンタクトグループ議長並びに地域グループ間の協議を通じての会合間作業が、代表者らがこの結び目を解きほぐすことを可能にするために極めて重要である。

実施と遵守

 実施と遵守に関するコンタクト・グループは、他の世界的条約の下でこれらの問題に対するアプローチを策定する広範な経験を持つ代表者らを集めた。特に、締約国がいまだに不遵守手続きに合意しなくてはならない国際貿易におけるいくつかの有害化学物質と農薬のための「ストックホルム条約」と情報に基づく事前同意(PIC)手続きに関する「ロッテルダム条約」;及び条約採択後13年後の第6回締約国会議まで、実施と遵守を促進するためのメカニズを確立することに締約国が合意に達しなかった有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関する「バーゼル条約」がくり返し引用された。

 関連する条約におけるそのような経験は、促進的な条約テキスト自身の中の実施/遵守メカニズムを確立する概念への急速な合意を可能にした。しかし、この基本的な合意を超えて、この糸を他のもっと大きな問題の結び目にある他の糸に相互接続することが収束を阻害した。ある代表者等は、最終的な条約の他の条項は強く効果的な遵守メカニズムを確立することと関係がないと主張したが、他の多くは同意しなかった。そのようなメカニズムは、条約の最終的な範囲の下で全ての義務を取り扱うという合意があったが、資金の役割は、特に発展途上国によってなされた規制措置に関連する義務を伴う彼等の遵守は技術移転はもちろん資金及び技術援助の条項に関連する義務を伴う先進国の遵守が条件となるとする主張の結果、分裂的であった。よく練習したダンスのように、他の多国間環境条約の遵守システムの設計に豊富な経験を持つ何人かの参加者が、コンタクトグループ内に比較的効率的な作業をもたらした。しかし、資金と規制措置に関するグループ内でなされた遅い進展への公然の言及は、代表者等のあるものはINC5で合意されるかもしれないどのような最終的パッケージにも影響を及ぼすために用いることができる重要な取引材料として遵守の問題を見ていることが明らかした。

資金及び技術援助

 この多国籍環境条約の交渉は確かに、資金及び技術援助と遵守が主要な論点となった初めてのものではなく、遵守コンタクト・グループの交渉担当者らがストックホルム条約及びロッテルダム条約の下で直面した難題を回避しようとまさにしているように、資金と技術の援助に関する議論はに他の条約で確立された先例によって明らかに影響を受けた。INC4では、発展途上国と先進国の間の良く知られた意見の相違に誰も驚かされなかった。オゾン層破壊物質に関するモントリオール議定書の下の多国間基金のモデルに倣って、発展途上国は締約国会議の権限の下に自立型資金メカニズムの確立を求めたが、先進国は地球環境ファシリティを用いた協定を望んだ。この意見の相違にもかかわらず、資金と技術援助に関するコンタク・トグループは2012年4月にハンガリーのイナールチュ で開催された資金源及び技術援助に関する専門家の会合間会合で準備された概念的アプローチ上で構築する作業を開始することができた。

 資金援助の規模、展開している技術は、条約の範囲に関する代表者の決定と合意される規制措置の特性と時機に依存するということも、広く認識されている。この脈絡の中で、技術移転は激しい議論の焦点であった。代表者等は、水銀関連排出の制限に関する議論を、利用可能な最良の技術(BAT)及び新たな技術を開発しそれらを他の諸国に利用可能とする公的及び民間部門の役割とに関連付けた。

 この問題に関して非公式な協議が続くので、諸国は次のような主要な疑問に答えるために、もっと具体的な情報をINC5に持ちよる必要があることは明らかである。
  • 提案される措置と技術のコストはどのくらいか?
  • 増加コストはどのくらいであると見積もられるか?
  • 条約発効前に活動を可能にするために、どのような約束が求められるか?
  • 地域の健康と世界の環境を含んで、水銀条約の下でとられるべき措置の副次的利益(コベネフィット)は何か?
  • それらは、資金メカニズム及び措置の定義の中で、どのように説明されるのか?
 代表者等がINC5に持って行く答は、少なからず規制措置の選択に関して条約の範囲を決定するのに重要な役割を果たすであろう。そのような規制措置は、いくつかの歯科団体が追加コストなしに代替が利用可能であると主張をしている歯科詰め物のための水銀アマルガムの廃止から、産業プラントのもっと高いコストでの改造までの広い範囲にある。共通の土台を達成するために、ある人々は諸国は水銀管理のコストを検討するだけでなく、削減される水銀微粒子や大気汚染のような水銀削減技術の実施によりもたらされる副次的利益、そして回避できる水銀汚染の人の健康と環境のコストについても再考する必要があるかもしれないと主張する。

規制措置と対象となる活動

 同様に、どのようにして規制措置が義務付けられるかということは、資金に関する決定に大きく影響され、また、この条約が水銀に関連するリスクから人の健康と環境を成功裏に守る程度をも決定するであろう。規制措置及び対象となる活動は、他の多くの課題より決定が近い人力小規模金採鉱(ASGM)や廃棄物の保管と輸送に関連するいくつかの具体的な活動と義務を含んで、ドラフト条約案の多くの条項の中で目が向けられている。

 健康分野の討議、及びテキストを通じて健康関連の懸念を織り込むか、あるいは脆弱な集団の為に水銀関連健康の促進に関する国家計画の実施に関する独立した条項を含めるかどうか、に関する議論はINC4で特に感情的であった。健康影響に関連する規制措置は二つの明白な局面に分けられる。第一は、規制措置は製品中の水銀に依存している体温計やその他の水銀含有計器、及び保存剤として水銀含有チメロサールを使用するワクチンのような健康関連分野である。第二は、規制措置のための厳格さと期限が人の健康に関わる水銀排出の地域及び世界に及ぼすであろう影響である。これらの局面の両方は、遵守問題と資金問題が絡みあう。一番目は、代替ワクチン保存剤の利用可能性と価格的な手ごろさは、特に、病気のリスク増大を集団に曝さずにこの比較的マイナーな水銀源に対応するために重要である。二番目は、この条約が既に生じている水銀曝露の健康影響、特に脆弱な集団(妊婦、子ども、特定分野の労働者、及び先住民)に対応する程度は、潜在的に高い値札が付けられるであろうということである。これらの局面の両方において、他の政府間機関が重要となりそうであり、現在進行しているWHOによる活動を含んで、これらの局面に関する会合間作業の成果は、これらの課題に関する様々な決定の影響を明確にする情報を提供し、それにより参加者がどの行動を条約に含めることが正当かを決定するのに役立つかもしれない。

前進し、結び目を緩める

 代表者等がプンタデル・エステのコンラッド・ホテルのホールを離れるときに、多くの人々が集中した生産的な作業に1週間、関わったことに満足の意を表した。また同時に、彼等は、最終協議のための準備に”宿題をする”という圧力を認めた。何人かの参加者は、2013年の1月中旬にジュネーブで開催される交渉の最終会合への再召集に先立つ、非公式の会話の継続、会合間作業の実施、及び地域及び地域間の交渉への関与を強調した。

 2013年2月に開催されるUNEP第27回管理理事会/グローバル閣僚級環境フォーラム(GC27/GMEF)に交渉の結果を提出するというINCの本来の任務をもって、代表者等は全ての諸国の必要(ニーズ)に十分に対応し、それらに合致する一貫した措置をともなう明確な目的を提示し、既存の制度、取り組み、及びメカニズムに価値を付加し、意味のある環境と健康の便益を創出し、実施と遵守を促進する制度的な枠組みを適切に設けるパッケージを作り上げることに挑戦するであろう。彼等はまた、国家が条約の発効に備えるために必要な、暫定的な資金計画と技術的作業のようなメカニズムと活動の確立に取り組むであろう。条約の範囲が最終的に明らかになり、この交渉プロセスの文書を提供するのは、参加者が資金、規制措置、保健、及びその他の中心的課題への答に磨きをかけたときである。


3.国際NGOの参加
IPENウェブサイト
ZMWGウェブサイト


6月28日NGO会合に出席していたメンバー  photo by Shahriar Hossain

■参加NGO
下記に示すNGOネットワーク及び国から40人強が参加し、IPEN/ZMWGと行動を共にしました。
(当研究会は、IPEN及びZMWGの両方で活動しています。)

NGOネットワーク
  • IPEN:国際POPs廃絶ネットワーク(様々のWGがあるが、水銀は重金属WGが対応)
  • ZMWG:ゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループ(水銀に専門性を持つ団体/個人)
  • HCWH:ヘルス・ケア・ウイズアウト・ハーム(医療関係者の団体)
  • その他の団体(歯科アマルガムに取り組む団体、先住民族の団体、人権団体など)
NGO参加国:27ヶ国
  • アルゼンチン、アルメニア、バングラデシュ、ブラジル、ベルギー、カメルーン、カナダ、チリ、クック諸島、チェコ共和国、グリーンランド、インド、インドネシア、象牙海岸、日本、ケニア、 レバノン、モーリシャス、メキシコ、ニュージランド、ナイジェリア、フィリピン、南アフリカ、タンザニア、アメリカ、ウルグアイ、アメリカ領ヴァージン諸島

■NGO 発表プレスリリース

  • 6月27日(水)IPEN及び世界先住民会議(GIPC)共同プレスリリース:
    水銀交渉は環境中の水銀を減少させず、リスクを増大させている。水銀汚染は先住民に悪影響を及ぼす 英語版
  • 6月30日(土)汚染サイトに関するIPENと化学物質問題市民研究会プレスリリース:
    新たな水銀条約交渉は“水俣条約”と呼ばれるに値しない方向に進んでいる。汚染サイトの浄化も被害者の補償も求めていない
    日本語版英語版チェコ語版ロシア語版スペイン語版中国語版
  • 7月2日(月)ZMWGプレスリリース:
    時計は回る:世界の水銀危機に目を向ける時間がなくなる  英語版
  • 7月3日(火)IPEN プレスリリース:
    水銀条約は増大する水銀汚染を正当化する
    英語版日本語版|スペイン語版

■本会議におけるNGOの発言
IPEN グループの発言
  • 6月27日 「INC4 におけるIPEN 冒頭陳述」:フェルナンド・ベジャラーノ(IPEN INC4 共同議長/メキシコ) スペイン語版(オリジナル)英語訳日本語訳 (12/07/25)
  • 6月27日 「世界先住民協議会 冒頭陳述」: イモゲン・プア・イングラム(ISACI, Cook Islands) 英語版日本語訳 (12/07/25)
  • 6月27日 「セーフマインズ 冒頭陳述」:エリック・ウラム(セーフマインズ、アメリカ) 英語版日本語訳 (12/07/25)
  • 6月27日 「汚染サイト」に関するIPENの発言:ジンドリッヒ・ペトロリク(Arnika、チェコ共和国 英語版日本語訳 (12/07/16)
  • 6月28日 「第18条及び第19条 情報と意識向上」:イモゲン・プア・イングラム(ISACI, Cook Islands) 英語版日本語訳 (12/07/25)
  • 6月28日 「排出と放出」に関するIPENの発言:ギルバート・クエポウオ(CREPD、カメルーン) フランス語版英語訳日本語訳 (12/07/16)
  • 6月28日 「財政メカニズム」 ジョー・ディガンギ(IPEN、アメリカ) 英語版日本語訳 (12/07/16)
  • 6月28日「第20条及び第20条bis 研究、開発、監視、健康」:イモゲン・プア・イングラム(ISACI, Cook Islands) 英語版日本語訳 (12/07/25)
  • 6月29日 「製品とプロセス」 フェルナンド・ベジャラーノ(IPEN INC4 共同議長/メキシコ) スペイン語版英語訳日本語訳 (12/07/25)
  • 6月29日  「第6条 製品」に関するセーフマインズ発言:エリック・ウラム(セーフマインズ、アメリカ) 英語版日本語訳 (12/07/25)
  • 6月30日 「供給と貿易」 に関するIPENの発言:ユーユン・イスマワティ(BaliFokus/インドネシア) 英語版日本語訳 (12/07/16)
  • 6月30日 「国家実施計画」に関するIPENの発言: シャリアー・フセイン(ESDO、バングラディシュ) 英語版日本語訳 (12/07/25)
  • 6月30日 「健康面」に関する共同発言:IPEN、カリフォルニア・インディアン環境連合(CIEAI)、島持続可能連合、生物多様性研究所:アンジェラ・ベリーフィリップ(CIEA、アメリカ)英語版日本語訳 (12/07/16)
  • 6月30日 「健康面」に関するIPENの発言:リリアン・コラ(ISDE/アルゼンチン) スペイン語版及び英語訳日本語訳 (12/07/16)
  • 6月30日 2012年6月30日 INC4本会議 先住民 共同発言 国際インディアン条約評議会、イヌイット極域評議会、カリフォルニア・インディアン環境連合 「第20条bis 健康面」:ダニカ・リトルチャイルド(IITC, カナダ) 英語版日本語訳 (12/07/25)
ZMWG グループ
(後日紹介予定)


4.報道/報告
水銀条約第4回政府間交渉会議(INC4)IISD レポート抄訳
■IISD Reporting Services (IISD RS) 写真

5.写真集

■本会議/NGO発言

INC4本会議 photo by CACP

ダニカ・リトルチャイルド(IPEN)  photo by ENB

ジョー・ディガンギ(IPEN)  photo by ENB

フェルナンド・ベジャラーノ(IPEN)  photo by ENB

デービッド・レンネット(ZMWG)  photo by ENB

マイケル・ベンダー(ZMWG)  photo by ENB

■NGO準備会合

photos by Shahriar Hossain

photos by CACP

■IPENブース

photo by CACP

photo by CACP

■ZMWGブース

photo by Shahriar Hossain

photo by CACP

IPEN/化学物質問題市民研究会 水俣を敬うキャンペーン(all photos by Jindrich Petrlik)

安間武(当研究会)とフェルナンド・ルグリスINC議長

ギルバート・クェプオ(カメルーン)(左)と参加者(右)

参加者(左)とユーユン・イスマワティ(インドネシア)(右)

カードを手にする参加者

ユーユン・イスマワティ(インドネシア)、ブジョン・ビーラ(アメリカ)

参加者(左)とズレイカ・ニクツ(ブラジル)(右)

アレジャンドロ・アルティガプルセル(チリ)

アンジェラ・ベリー(アメリカ)(左)
マリアイサベル・カルカーノ(ウルグアイ)(右)

■IPENフィッシュ・アクション

photo by Eric Uram

photo by IPEN

■ZMWGの水銀貿易を止めろ!汚染者が支払え!キャンペーン

photo by Shahriar Hossain

photo by Shahriar Hossain

■NGO仲間

photos by CACP

photo by Shahriar Hossain

photo by Shahriar Hossain

photo by Shahriar Hossain

photo by CACP

photo by Shahriar Hossain


化学物質問題市民研究会
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