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2011年1月 INC2本会議 ZMWGの発言
「第12条 水銀廃棄物」

リチャード・グティエレス
(Richard Guterez from Ban Toxics in Philippines)

オリジナル:Zero Mercury Working Group Article 12 Intervention
Richard Guterez from Ban Toxics in Philippines
http://www.zeromercury.org/UNEP_developments/INTERVENTION%20ARTICLE%2012%20by%20ZMWG%20-%20Final.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2011年5月28日
このページへのリンク:
"http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/INC2_NGO_Intervention_jp/ZMWG/Art_12_Richard_Guterez.html


 私はフィリピンのバン・トクシックスのリチャード・グティエレスです。ゼロマーキュリーワーキンググループを代表して発言します。

 環境的に適切な水銀廃棄物管理は、全ての国に共通する問題ですが、その課題は開発途上国及び移行経済国で最も緊急であると感じています。提案される水銀条約は、これらの課題を持つ国を大いに支援するものですが、それが実現されるためには、三つの広範な問題がINCにより対応される必要があります。

 第一に、INCは、水銀条約とバーゼル条約の関係をはっきりと明確にしなくてはなりません。この問題の解決のための中心は、水銀廃棄物の管理に関連する特定の管理措置を特定し、どちらの条約がそれらの措置をとるのかを決定することです。私たちは、水銀に関する専門性はINCにあると強く信じます。従って、閾値の指定、水銀廃棄物管理の許容できる実施などの措置は、バーゼル条約ではなく、水銀条約によって決定されなくてはなりません。これに関してバーゼル条約の役割は、水銀条約の下に定義された措置を実施するという技術的側面に対応することに協力し支援することでありましょう。

 第二は、諸国が条約義務を果たすのを支援するためにどのようにして財政的及び技術的リソースを提供するかということです。この点に関しては、私たちは、民間分野、特に廃棄物生成者が、水銀廃棄物の環境的に適切な管理のために資金提供をするという強い役割があると考えます。生産者と民間分野に責任を持たせる拡大生産者責任(ESM)とその他のツールが、ESMの財政的側面に対応するのに大変役立ちます。
 さらに、条約は、世界的及び地域的協力がある法的及び政策的な枠組み、及び、例えば、水銀廃棄物の環境的に適切な管理に必要とされる分別と取扱いのシステムの分野における能力構築に役立てるための支援を提供すべきです。
 バーゼル条約は財政的なメカニズムを持っていないので、途上国がバーゼル条約に準拠して水銀廃棄物における環境的に適切な管理を満たすことを支援することは難しいということに留意しなくてはなりません。

 第三に、実施におけるガイダンスは、本質的に単なる規範又は勧告であるバーゼル条約ガイドラインとは違って、義務的でなくてはなりません。法的な解決がこれに対応するために調査されなくてはなりません。
 締約国と非締約国との貿易についての問題に関し、バーゼル条約の非締約国は、水銀条約の非締約国と同じではないことにもまた留意しなくてはなりません。
 エレメント・ペーパーでは、私たちは埋めらる必要のある大きな隙間をみています。私たちは先進国から途上国への処分のための水銀廃棄物の輸出は、禁止される必要があると信じます。これは環境正義の原則に沿うものです。
 さらに、すでに自身の廃棄物を適切に処理するために十分に苦労している途上国世界に、更なる苦労を押し付けることは正義に反することであり、世界の環境的に適切な管理の制度の下で、環境的な合理性はほとんどありません。

 私たちは、現在の有害廃棄物の問題を取り扱うバーゼル条約の不適切性に基づく電子廃棄物(e-waste)の問題をさらに水銀廃棄物で見る必要はありません。先進国からの大量の電子廃棄物が途上国に投棄され続けています。もし水銀廃棄物が、現在バーゼル条約で行なわれている電子廃棄物のシナリオを繰り返すとしたら、それは恥ずかしいことです。

 最後に、水銀廃棄物の途上国への輸出が禁止されないなら、これらの廃棄物から回収される水銀は小規模金採鉱(ASGM)のような不適切な用途に転用される高い可能性があります。

 ありがとうございました。

訳注:参考情報
ZMWG 2011年1月 INC2 ドラフト・エレメント・ペーパーに対するゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループ(ZMWG)の意見と勧告


化学物質問題市民研究会
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