単調減少関数の右極限の存在の十分条件


  [杉浦ほか『解析演習』第1章[例題]§2例題2.2(.33)をカスタマイズ]

以下の命題Q1,Q2が成り立つならば、命題Pも成り立つ。
すなわち、命題Q1かつ命題Q2命題P  
命題Q1: f(x)は、少なくとも開区間( x0, a )狭義単調減少関数
命題Q2: 以下の3点をすべて満たす数列{ xn }={ x1 , x2, x3,…}が少なくとも一つ存在する
  Q2-1 任意のnN について x0xna  論理記号で表せば、すなわち、(nN) ( xn ( x0, a ) ) 
        つまり、すべての項は命題Q1が指定するf(x)の狭義単調減少区間内にある、
  Q2-2 xnx0  (n→∞)  ※x0数列 { xn }の第0項という意味ではないので注意
        つまり、極限より大なる区間はf(x)の狭義単調減少区間(→命題Q1)内にあらねばならないが、
            極限とそれより小なる区間は、f(x)狭義単調減少区間内になくてもよい
  Q2-3 f ( xn )A (n→∞)  
        つまり、数列 { f ( xn ) }={ f ( x1 ) , f ( x2 ), f ( x3 ),…}がA収束する  
命題P: x0におけるf (x)右極限はA。

    すなわち、f(x) A (xx0+0) 。 あるいは、 

lim f(x)

 = A 

xx0+0


cf. 普通の極限/左極限の場合、
※利用例:単調減少関数の右連続性と数列の収束


→[《関数の右極限》と《数列の極限》の関係一覧]
→[トピック一覧:1変数関数の収束・極限値] 
総目次 

[証明:命題Q1かつ命題Q2命題P]


(仮定の確認)

命題Q1  :f(x)は、少なくとも開区間( x0, a)狭義単調減少関数
           (xk ,xl ( x0, a ) ) ( xk < xl f (xk) > f (xl) ) 
命題
Q2-1(nN) ( x0xna) ないし、(nN) (xn( x0, a ) ) 
命題
Q2-2xnx0  (n)   (ε1 >0)(N1N)(nN)( nN1 xn ( x0−ε1, x0+ε1 ) )
                ∵数列の収束の定義 
          ところが、命題
Q2-1: (nN) (xn( x0, a ) )より、つねにx0xn だから、
          
(ε1 >0)(N1N)(nN)( nN1 xn ( x0 , x0+ε1) )  
命題
Q2-3f (xn)A (n)   (ε2 >0)(N2N)(nN)( nN2 f (xn) ( A−ε2 , A+ε2 ) ) 
                ∵数列の収束の定義 

(結論の確認)

命題P : f(x)A (xx00)   ( ε>0 ) ( δ>0 ) ( x ( x0, x0+δ) ) ( f (x) ( A−ε,A+ε) ) 
                 ∵右極限の定義  

(設定1)

任意の正数を一つ選び、これをε'とする。

(設定2)

設定1で選んだε'に対して、命題Q2-3で存在が保証されている
     (nN)( n N2 f (xn) ( A−ε', A+ε') )を成立させるN2
を、N'とおく。
これは、噛み砕いて言えば、
数列{f (xn)}は、添え数N'番以降の項{ f (xN'), f (xN'+1), f (xN'+2),…}はすべて、
開区間( A−ε', A+ε')に入ってしまう、
ということだが、
別の角度からいえば、それ以降の全ての項が開区間( A−ε', A+ε')にすっぽり入るようになる、最初の項が、N'番の項だということでもある。 
  (例)下図は、数列{f (xn)}は、f (x5)以降の全ての項が全て開区間( A−ε', A+ε')に入ってしまう例。
     この場合は、N'=5となる。
     なお、N'=3ではないことに注意。
     数列{
f (xn)}は、f (x3)ではじめて開区間( A−ε', A+ε')に入るが、
     後続のf (x4)は開区間( A−ε', A+ε')の外に出ている。
      単調減少関数の右極限の存在の十分条件 

(設定3)

設定1で選んだε' にたいして、設定2でN'を決めたが、
さらに、このN'に対して、
    
0<δ< xN'x0    …(設定3-式1)
を満たすようにδを決める。
このδは、
    
x0< x0+δ< xN'    …(設定3-式2)
を成立させる(∵移項しただけ)。
   (例)上図のケースでは、xN'=x5であるから、
      0<δ< x5x0  を満たすようにδを決める。
      こうすると、もちろん、x0< x0+δ< x5となる。 
       単調減少関数の右極限の存在の十分条件 

(概要)

設定3で決めたδが、
設定1で決めた任意のε'>0に対して、( x ( x0, x0+δ) ) ( f(x) ( A−ε',A+ε') ) を成立させることを示すことで、
任意のε'>0に対して、( x ( x0, x0+δ) ) ( f(x) ( A−ε',A+ε') ) を成立させるδ>0は確かに存在する、
すなわち、命題Q1-Q2下で、命題P:( ε>0 ) ( δ>0 ) ( x ( x0, x0+δ) ) ( f(x) ( A−ε,A+ε) )
が成立することを示す。

(本題)

Step1:δは、( x( x0, x0+δ) ) ( A−ε'<f(x) )を成立させる 
設定
3で決めたδは、x0< x0+δ< xN'を成立させる(∵設定3-2)。   
だから、 
x( x0, x0+δ) に対して、x0<x< x0+δ< xN' が成り立つ。
つまり、
x( x0, x0+δ) に対して、x < xN' が成り立つ。 
 これと、命題
Q1f(x)開区間( x0, a )狭義単調減少関数より、
 
x( x0, x0+δ)に対して、  f (xN') < f (x)   (1-1)
 が成立する。
   ※
xN' x( x0, x0+δ)が、f(x)の狭義単調減少区間( x0, a )のなかにあることを詳しく確認すると、
    ・命題
Q2-1よりxN'( x0, a )
    ・
x0< x0+δ< xN'(∵設定3-2)より、x( x0, x0+δ)は、x0< x<xN'を満たすから、
     
x( x0, x0+δ)も、x ( x0, a )。 
 設定
2より、f (x N') ( A−ε', A+ε')       (1-2) 
(1-1)(1-2)を合せると、 x( x0, x0+δ) に対して、A−ε'< f (x N') < f (x) 
ここで重要な情報だけを残すと、 
x( x0, x0+δ) に対して、A−ε'< f (x) 
以上、設定
1で決めたε' に対して、設定3で決めたδは、
 
x( x0, x0+δ) に対して、A−ε'< f (x)
を成立せしめることを見た。
Step2: δは、( x( x0, x0+δ) ) (f(x) <A+ε')を成立させる 
x( x0, x0+δ) に対して、xN**< x を満たし、
かつ、設定
2で決めたN'に対して、N**<N'を満たす
数列{ xn }の項xN**が存在する。          (2-1)
 なぜなら、
x( x0, x0+δ) に対して、つねにxx0 > 0だから、 
   命題2-2の任意のε1xx0としても命題2-2は成立する。
   よって、
( N*N)(nN)( nN* xn ( x0 , x0(xx0) ) )  
   
つまり、 ( N*N)(nN)( nN* xn ( x0 , x ) ) 
   したがって、ここで保証された添数
N*番以降の項{ xN*, xN*+1, xN*+2,…}はすべて、
   
x( x0, x0+δ) に対して、x より小さい。
   また、ここで保証された添数N*番以降の項は、可算無限個あるのだから、
   可算無限個の添数N*番以降の項のなかに、添数N'番以降の項は必ずある。
   (添数N*番以降の項は、可算無限個。N*番以降だがN'番以前の項はあっても有限個。
    だから、添数N*番以降かつN'番以降の項は、無限個マイナス有限個で、無限個なければならない) 
(2-1) と、命題Q1f(x)は開区間( x0, a )狭義単調減少関数より、
 
x( x0, x0+δ) に対して、  f (x) < f (xN**)   (2-2)
 が成立する。
   ※
xN** x( x0, x0+δ)が、f(x)の狭義単調減少区間( x0, a )のなかにあることを詳しく確認すると、
    ・命題
Q2-1よりxN**( x0, a )
    ・
x0+δ< xN'(∵設定3-2)より、x( x0, x0+δ)は、x0< x <xN'を満たすから、
     
x( x0, x0+δ)も、x ( x0, a )。 
(2-1)と設定2より、f (xN**) ( A−ε', A+ε')(2-3)    
(2-2)(2-3)を合せると、x( x0, x0+δ) に対して、 f (x) < f (xN**) < A+ε'    
ここで重要な情報だけを残すと、x( x0, x0+δ) に対して、 f (x) < A+ε'     
以上、設定
1で決めたε' に対して、設定3で決めたδは、
 
x( x0, x0+δ) に対して、f (x) < A+ε'
を成立せしめることを見た。
Step3

step1,2の結果を合わせると、設定1で決めたε' に対して、設定3で決めたδは、
   x( x0, x0+δ) に対して、A−ε'<f (x) < A+ε'
を成立せしめることになる。
設定
1で決めたε'は、任意の正数であった。
したがって、
任意のε'>0に対して、
x( x0, x0+δ) に対して、A−ε'<f (x) < A+ε'を成立せしめる」δが存在し、
そのδは、設定3で決めたものであることが示された。
すなわち、
命題
P :  ( ε>0 ) ( δ>0 ) ( x( x0, x0+δ) ) ( f(x) ( A−ε,A+ε) )   

→[《関数の右極限》と《数列の極限》の関係一覧]
→[トピック一覧:1変数関数の収束・極限値] 
総目次