2変数関数の極限・収束・発散の定義:トピック一覧  

  ・定義:2変数関数2変数関数の収束・極限値/累次極限/∞への発散/−∞への発散  
  
・定理:2変数関数の極限と累次極限との関係/関数の収束と点列・数列の収束の関連性 

 ※他のタイプの関数の極限の具体例1変数関数の収束・極限値/ n変数関数の収束・極限値/実数値関数の極限/
                    
ベクトル値関数の極限/距離空間のあいだの写像の極限 
 ※2変数関数に関する諸概念の定義:2変数関数の諸属性/極限の性質/連続性/偏微分/全微分/矩形上の積分/点集合上の積分 
 
参考文献総目次

定義:2変数関数 

定義

2変数関数とは、
2個の実数(x,y)に対して、実数zを対応づける規則」
2次元平面R2上の点集合(定義域)Dに属すPにたいして、
                   
実数zを対応づける規則」
2次元平面R2部分集合Dから、実数体Rへの、写像
のこと。
z=f (x,y) 、z=f (P) 、f : DR 、f :R2DR  などと表す。

2変数関数の諸属性 

[文献]
西村『経済数学早分かり3章§1.1関数とは(p.104)
小平
解析入門U』§6.1(p253);§6.4(p309);
笠原『微分積分学1.4(pp.22-3)
杉浦『
解析入門II§6(p.50);
黒田『微分積分学8.2.1(p.276);
木『解析概論8.函数(p.19)

定義の
ベクトル
表現

2個の実数(x,y)とは、2次元数ベクトルのことにほかならないから、
2変数関数とは、
2次元数ベクトルx=(x,y)にたいして、実数zを対応づける規則」。
2次元数ベクトル空間R2部分集合(定義域)Dの各xに対して、
                  
実数体Rzを対応づける規則」
2次元数ベクトル空間R2部分集合から、実数体Rへの、写像
などといっても同じ。
z=f (x) 、f: DR 、f :R2DR  などと表す。

関連

2変数関数の諸属性/極限の性質/連続性/偏微分/全微分/矩形上の積分/点集合上の積分 

定義:2変数関数の収束convergence・極限値limit 

はじめに読むべき定義/ε-δ論法による定義/近傍概念による定義 

はじめに
読むべき
定義

P(x,y)A(a,b)に近づけたとき、関数f (x,y)実数c収束する
P(x,y)A(a,b)に近づけたときの、関数f (x,y)極限値実数cである」
   f ( x,y )c ( xa , yb ) f ( P )c ( P A )  
           
       
とは、
どの方向からであれ、いかなる経路を通ってであれ、
P(x,y)を、定A(a,b)一致させることなくA(a,b)に近づけると、
P(x,y)の定A(a,b)への接近方向・接近経路にかかわらず、
関数f (x,y)の値が同じ1つの実数cに近づくことをいう。
  
留意点  
   
(1)極限の定義において、PAが一致することは除外している。  
     
A関数f (x,y)の定義域に含まれているとは限らない。 
   
(2) PAへの接近方向・接近経路によって、
     
f (x,y)が近づく値が異なるときには、
     「
P(x,y)A(a,b)に近づけたとき、関数f (x,y)c収束しない
    
 「P(x,y)A(a,b)に近づけたとき、
        
関数f (x,y)極限値は存在しない」という。 
この定義は一見わかりやすい。
 ところが、「近づく」とはいかなる事態を指すのか、という点が、
 明らかにされておらず、
 この「収束」「極限」定義は、実のところは不正確で、
 証明での使用に耐えられない。
 そこで、
 「近づく」の意味を明確化するために、
 「収束」「極限」概念は、次のように厳密に定義される。 

cf.2変数関数の累次極限 

[他のタイプの関数の極限]
1変数関数の収束・極限値
n変数関数の収束・極限値
実数値関数の極限
ベクトル値関数の極限
距離空間のあいだの写像の極限

[活用例]
2変数関数の連続性の定義
2変数関数の偏微分の定義

[文献]
和達『
微分積分pp.112-114;
矢野・田代『社会科学者のための基礎数学改訂版p. 91.  
高橋『
経済学とファイナンスのための数学pp.141-142.;
小平『解析入門U』定義6.1(p.259);
黒田『微分積分学』定義8.6(p.277);
木『解析概論9極限(p.20). 

2変数関数の収束・極限の定義」先頭

厳密な
定義:
ε
-δ
 論法

P(x,y)A(a,b)に近づけたとき、関数f (x,y)実数c収束する
P(x,y)A(a,b)に近づけたときの、関数f (x,y)極限値実数cである」
    f ( x,y )c ( xa , yb ) f ( P )c ( P A )  
           
       
とは、
任意の(どんな)実数εに対して(でも)、ある実数δをとると、
  0<
d( P, A )<δ d ( f (P), c )<ε   
が成り立つ
ということ。
この定義を、
論理記号で表せば、
ε>0)(δ>0)(PR2 )(0<d( P, A )<δd ( f (P), c )<ε ) 
となる。
    * 
d ( P, A )は、2次元平面R2上でのPAとの距離を、
      
d ( f (P), c )は、R上のf (P)cとの距離| f (P)c|を表す。 

[文献]
小平『解析入門Up.259;
笠原『微分積分学1.4[2](p.28);
吹田新保『理工系の微分積分学pp.158-159.
高橋『経済学とファイナンスのための数学p. 143;
木『解析概論p.20.
ルディン『現代解析学4.1(p.81):距離空間一般上。

※ユークリッド距離が定められたユークリッド空間R2における極限概念     
 
2変数関数f (x,y)、すなわち、「2次元平面R2部分集合から、実数体Rへの、写像」について、
 収束・極限を扱う際には、
 特別な目的がない限り、
 
2次元平面R2上の距離ユークリッド距離で定めて、2次元平面R2ユークリッド平面R2とし、 
 
実数体R距離ユークリッド距離で定めて、R1次元ユークリッド空間Rとする設定のもとで
 考えるのが普通。 
 この設定下では、
    
  
    
d ( f (P), c )=| f (P)c|=| f (x,y)c|  
 だから、
 「
P(x,y)A(a,b)に近づけたとき、関数f (x,y)実数c収束する
 
P(x,y)A(a,b)に近づけたときの、関数f (x,y)極限値実数cである」
 の定義は、具体的には
  ┌
任意の(どんな)実数εに対して(でも)、
  |ある
実数δが存在して、
  |   「 
 
  |        
ならば  | f (x,y)c|<ε 」  
  └を成り立たせる
  (
ε>0)(δ>0)(x,yR )(| f (x,y)c|<ε ) 
 となる。

2次元数ベクトル空間の上に定義されたユークリッド空間R2における極限概念     
 
R2ベクトルの加法スカラー乗法自然な内積(標準内積)ユークリッドノルム‖‖が定義されており、
 
R22次元数ベクトル空間計量実ベクトル空間ノルム空間として扱える場合、
 
任意の2次元数ベクトルx, yR2のユークリッド距離はxy と表せる。
 このユークリッド距離を定義したユークリッド平面
R2のもとでは、 
 
d( P, A )PA 
 だから、
 「
P(x,y)A(a,b)に近づけたとき、関数f (x,y)実数c収束する
 
P(x,y)A(a,b)に近づけたときの、関数f (x,y)極限値実数cである」
 の定義は、
  ┌
任意の(どんな)実数εに対して(でも)、
  |ある
実数δが存在して、
  |   「 0<
PA<δ ならば  | f (P)c|<ε 」 
  |          
  └を成り立たせる
  (
ε>0)(δ>0)(PR2 )(0<PA<δ| f (P)c|<ε ) 
 と表せる。   
 ただし、上記の
Pは、「P(x,y)」を表す2次元数ベクトル(x,y)
     上記のAは、「A(a,b)」を表す2次元数ベクトル(a,b)
 である。   

2変数関数の収束・極限の定義」先頭

近傍を
用いた
定義

P(x,y)A(a,b)に近づけたとき、関数f (x,y)実数c収束する
P(x,y)A(a,b)に近づけたときの、関数f (x,y)極限値実数cである」
           
       
とは、
 
実数c任意の(どんな)「R上のε近傍Uε(c)」に対して(でも)、
 ある「
R2上の点Aの除外δ近傍U*δ(A)」が存在して、
     
f ( U*δ(A) ) Uε(c) 
 を満たす
ということ。
この定義を別の表現でいうと、
 
任意の(どんな)実数εに対して(でも)、ある実数δが存在して、
        「 
f ( U*δ(A) ) Uε(c)  」
    すなわち「 
(x,y)U*δ(A) ならば、 f(x,y) Uε(c)
 を成り立たせる、
ということ。
この定義を、
論理記号で表せば、
Uε(c))(U*δ(A))( f ( U*δ(A) ) Uε(c) ) 
ε>0)(δ>0)( f ( U*δ(A) ) Uε(c) ) 
ε>0)(δ>0)(PR2 )( PU*δ(A) f (P) Uε(c)) 
となる。

[文献]
笠原『微分積分学1.4[2](p.28);

※ユークリッド距離が定められたユークリッド空間R2における極限概念     
 
2変数関数f (x,y)、すなわち、「2次元平面R2部分集合から、実数体Rへの、写像」について、
 収束・極限を扱う際には、
 特別な目的がない限り、
 
2次元平面R2上の距離ユークリッド距離で定めて、2次元平面R2ユークリッド平面R2とし、 
 
実数体R距離ユークリッド距離で定めて、R1次元ユークリッド空間Rとする
 設定のもとで考えるのが普通。 
 この設定のもとでは、
 
A(a,b)の「R2上の除外δ近傍U*δ(A)」は、
      
 
実数cの「R上のε近傍Uε(c)」は、(c−ε,c+ε) 
 だから、
 「
P(x,y)A(a,b)に近づけたとき、関数f (x,y)実数c収束する
 
P(x,y)A(a,b)に近づけたときの、関数f (x,y)極限値実数cである」
 の定義は、具体的には
  ┌
任意の(どんな)実数εに対して(でも)、
  |ある
実数δが存在して、
  |       
  |        
ならば  f (P)(c−ε,c+ε)   
  └を成り立たせる
 となる。

2次元数ベクトル空間の上に定義されたユークリッド空間R2における極限概念 
 
R2ベクトルの加法スカラー乗法自然な内積(標準内積)ユークリッドノルム‖‖が定義されており、
 
R22次元数ベクトル空間計量実ベクトル空間ノルム空間として扱える場合、
 
任意の2次元数ベクトルx, yR2のユークリッド距離はxy と表せる。
 このユークリッド距離を定義したユークリッド平面
R2のもとでは、 
 
A(a,b)の「R2上の除外δ近傍U*δ(A)」は、U*δ(A){ QR2 | 0<QA<ε } 
 
実数cの「R上のε近傍Uε(c)」は、(c−ε,c+ε) 
 だから、
 「
P(x,y)A(a,b)に近づけたとき、関数f (x,y)実数c収束する
 
P(x,y)A(a,b)に近づけたときの、関数f (x,y)極限値実数cである」
 の定義は、
  ┌
任意の(どんな)実数εに対して(でも)、
  |ある
実数δが存在して、
  |   
PU*δ(A){ QR2 | 0<QA<ε } 
  |   
ならば   
  |   
f (P)(c−ε,c+ε)  
  └を成り立たせる
 と表せる。   
 ただし、上記の
Pは、「P(x,y)」を表す2次元数ベクトル(x,y)
     上記の
Aは、「A(a,b)」を表す2次元数ベクトル(a,b)
 である。   

[トピック一覧:2変数関数の極限]
総目次

定義:2変数関数の累次極限 

定義

2変数関数極限に対して、
  
  
累次極限とよぶ。

 

[文献]
吹田・新保『理工系の微分積分学p. 159. .

     

[トピック一覧:2変数関数の極限]  
総目次

定理:2変数関数の極限と累次極限 

定理

2変数関数極限
    
が存在するなら、
二つの
累次極限  
   
   
が存在して、ともに
cに等しい。
  (ただし、{ }内の極限は存在するものとする) 

 

[文献]
吹田・新保『理工系の微分積分学p. 159.

以下の原点での極限は?
    
  原点での二つの累次極限は存在する。 
  
     
  しかし、このように、原点への近づけ方で値が変わるため、
  同時に
x→0,y→0としたときの極限  
     
  は存在しない。

[トピック一覧:2変数関数の極限]
総目次

定理:2変数関数の収束の、点列・数列の収束への言い換え 

定理1

次の命題P,Q,Rは互いに言い換え可能である。
つまり、命題
P命題Q命題R
命題P
 
P(x,y)A(a,b)に近づけたとき
   
関数f ( P )=f (x,y)実数cに収束する 
 これを記号で表すと、
   
f ( P )c ( P A ) 
   
f (x,y)c ( xa , yb ) 
   
  
   
 
 など。 

1変数関数の収束の、数列の収束への言い換え
n変数関数の収束の、点列・数列の収束への言い換え
実数値関数の収束の、点列・数列の収束への言い換え
ベクトル値関数の収束の、点列の収束への言い換え
距離空間の間の写像の収束の、点列の収束への言い換え

[文献]
吹田・新保『理工系の微分積分学p. 159.
小平『解析入門Up.259:証明略;
杉浦『解析入門Ip.53:証明付;
木『解析概論9極限(p.22):証明付.
ルディン『現代解析学4.1(p.81):距離空間一般上。

命題Q
 
どんなR2上の点列{ Pn }={ P1 , P2 , P3,}={ (x1 ,y1 ) , (x2 ,y2 ), (x3 ,y3 ),}についてであれ、 
  
1. その点列{ Pn }={ P1 , P2 , P3,}={ (x1 ,y1 ) , (x2 ,y2 ), (x3 ,y3 ),}A(a,b)収束し、 
  
かつ  
  
2. その点列の各項 P1 , P2 , P3,…がどれもAと一致しない 
 
限り、 
 その
点列の各項 P1 , P2 , P3,…を2変数関数f によりR上に写した像の数列 
    {
f ( Pn ) }={ f ( P1 ), f ( P2 ) , f ( P3 ) , }={ f ( x1 ,y1 ) , f (x2 ,y2 ), f (x3 ,y3 ), }
 は実数c収束する
 つまり、
  
任意のR2上の点列{ Pn }={ P1 , P2 , P3,}={ (x1 ,y1 ) , (x2 ,y2 ), (x3 ,y3 ),}について、
   
PnA (n) かつ P1A , P2A , P3A ,ならばf (Pn)c (n→∞)  
 
論理記号で表すと、
   
{ Pn })( PnA (n)かつ(n) (Pn A) f (Pn)c (n→∞)

命題Rいかなる「実数a収束する数列{ x1 , x2 , x3 ,…}」と
        「実数
b収束する数列{ y1 , y2 , y3 ,…}」に対しても、
    (ただし、x1a , x2a , x3a , y1b , y2b , y3b ,
    数列
      { f ( Pn ) }={ f ( P1 ) , f ( P2 ), f ( P3 ),…}={ f ( x1 ,y1 ) , f (x2 ,y2 ), f (x3 ,y3 ),…}
    が
実数c収束する
    つまり、
   
{ xn } { yn }
      (n) (xn a かつ yn b ) かつ xna (n→∞) かつ ynb (n→∞) f (xn ,yn)c (n→∞)
なぜ?
 ・「命題
P命題Q」となるわけ→証明  
 ・「命題
Q命題P」となるわけ→証明  
 ・「命題
Q命題R」となるのは、点列の収束と数列の収束の関係による。 

定理2

P(x,y), A(a,b)とする。  
P A のとき、
f ( P )収束するための必要十分条件は、
A(a,b)収束するどんな点列{ Pn }(ただし、PnD, Pn A )に対しても、
数列 { f ( Pn ) }収束することである。
    ※極限値の値をだしていないことに注意。

活用例

コーシーの判定条件 

トピック一覧:2変数関数の極限
総目次

定義:∞に発散する 

はじめに
読むべき
定義

P(x,y)A(a,b)に近づけたとき、関数f (x,y)∞に発散する」 
   f ( x,y )→+∞( xa , yb )   f ( P )→+∞ ( P A ) 
       
とは、
P(x,y)を、A(a,b)一致させることなくA(a,b)に近づけるとき、 
関数f(x,y)が限りなく大きくなることをいう。
この定義は一見わかりやすい。
 ところが、
 「近づく」「限りなく大きくなる」とはいかなる事態を指すのかという点が、
 明らかにされておらず、
 この「発散」定義は不正確で、証明のなかでは使いものにならない。
 そこで、
 「近づく」「限りなく大きくなる」の意味を明確化するために、
 「発散」概念は、次のように厳密化される。 

1変数関数の発散

n変数関数の発散

 

[文献]
高木・押切
解析I・微分p.25.

厳密な
定義

P(x,y)A(a,b)に近づけたとき、関数f (x,y)∞に発散する」 
   f ( x,y )→+∞( xa , yb )   f ( P )→+∞ ( P A ) 
       
とは、
任意の(どんな大きな)実数Kに対して(でも)、ある実数δをとると、
   「0<
d( P, A )<δ ならば f (x,y)K 」    
が成りたつ
ということ。
この定義を、
論理記号で表せば、
KR)(δ>0)(0<d( P, A )<δf (x,y)K ) 
となる。
  * 
d ( P, A )は、2次元平面R2上でのPAとの距離を表す。 

杉浦
解析入門II§6定義8(p.60);

Euclid平面
において

2変数関数f (x,y)、すなわち、「2次元平面R2部分集合から、実数体Rへの、写像」について、
収束・極限発散等を扱う際には、
特別な目的がない限り、
2次元平面R2上の距離ユークリッド距離で定めて、2次元平面R2ユークリッド平面R2とする
設定のもとで考えるのが普通。 
この設定下では、
   
  
だから、
P(x,y)A(a,b)に近づけたとき、関数f (x,y)∞に発散する」 
の定義は、具体的には
  ┌
任意の(どんな大きな)実数Kに対して(でも)、
  |ある
実数δをとると、
  |   「 

  |        
ならば f (x,y)>K 」  
  └を成り立たせる
  (
KR)(δ>0)( f (x,y) > K ) 
となる。

数ベクトル空間
の上に
定義された
Euclid平面
において

R2ベクトルの加法スカラー乗法自然な内積(標準内積)ユークリッドノルム‖‖が定義されており、
R22次元数ベクトル空間計量実ベクトル空間ノルム空間として扱える場合、
任意の2次元数ベクトルx, yR2のユークリッド距離はxy と表せる。
このユークリッド距離を定義したユークリッド平面
R2のもとでは、 
 
d( P, A )PA 
だから、
P(x,y)A(a,b)に近づけたとき、関数f (x,y)∞に発散する」の定義は、
  ┌
任意の(どんな大きな)実数Kに対して(でも)、
  |ある
実数δが存在して、
  |   「 0<
PA<δ ならば  f (x,y)>K  」 
  └を成り立たせる
  (
KR)(δ>0)(0<PA<δf (x,y)>K ) 
 と表せる。   
 ただし、上記の
Pは、「P(x,y)」を表す2次元数ベクトル(x,y)
     上記のAは、「A(a,b)」を表す2次元数ベクトル(a,b)
 である。   

→[トピック一覧:2変数関数の極限]
総目次

定義:−∞に発散する 

はじめに
読むべき
定義

P(x,y)A(a,b)に近づけたとき、関数f (x,y)−∞に発散する」 
  
f ( x,y )→−∞ ( xa , yb ) 、 f ( P )→−∞ ( P A ) 
    
とは、
P(x,y)を、A(a,b)一致させることなくA(a,b)に近づけるとき、 
関数f(x,y)が限りなく小さくなることをいう。
この定義は一見わかりやすい。
 ところが、
 「近づく」「限りなく小さくなる」とはいかなる事態を指すのかという点が、
 明らかにされておらず、
 この「発散」定義は不正確で、証明のなかでは使いものにならない。
 そこで、
 「近づく」「限りなく小さくなる」の意味を明確化するために、
 「発散」概念は、次のように厳密化される。 

1変数関数の発散
n変数関数の発散

[文献]
高木・押切
解析I・微分p.25.

厳密な
定義

P(x,y)A(a,b)に近づけたとき、関数f (x,y)−∞に発散する」 
  
f ( x,y )→−∞ ( xa , yb ) 、 f ( P )→−∞ ( P A ) 
    
とは、
任意の(どんな小さな)実数Kに対して(でも)、ある実数δをとると、  
   「0<
d( P, A )<δ ならば f (x,y)<K 」    
が成りたつ
ということ。
この定義を、
論理記号で表せば、
KR)(δ>0)(0<d( P, A )<δf (x,y)<K ) 
となる。
  * 
d ( P, A )は、2次元平面R2上でのPAとの距離を表す。 

杉浦
解析入門II§6定義8(p.60);

Euclid平面
において

2変数関数f (x,y)、すなわち、「2次元平面R2部分集合から、実数体Rへの、写像」について、
収束・極限発散等を扱う際には、
特別な目的がない限り、
2次元平面R2上の距離ユークリッド距離で定めて、2次元平面R2ユークリッド平面R2とする
設定のもとで考えるのが普通。 
この設定下では、
   

だから、
P(x,y)A(a,b)に近づけたとき、関数f (x,y)−∞に発散する」 
の定義は、具体的には
  ┌
任意の(どんな小さな)実数Kに対して(でも)、
  |ある
実数δをとると、
  |   「 

  |        
ならば f (x,y)<K 」  
  └を成り立たせる
  (
KR)(δ>0)( f (x,y) < K ) 
となる。

数ベクトル空間
の上に
定義された
Euclid平面
において

R2ベクトルの加法スカラー乗法自然な内積(標準内積)ユークリッドノルム‖‖が定義されており、
R22次元数ベクトル空間計量実ベクトル空間ノルム空間として扱える場合、
任意の2次元数ベクトルx, yR2のユークリッド距離はxy と表せる。
このユークリッド距離を定義したユークリッド平面
R2のもとでは、 
 
d( P, A )PA 
だから、
P(x,y)A(a,b)に近づけたとき、関数f (x,y)∞に発散する」の定義は、
  ┌
任意の(どんな小さな)実数Kに対して(でも)、
  |ある
実数δが存在して、
  |   「 0<
PA<δ ならば  f (x,y)<K  」 
  └を成り立たせる
  (
KR)(δ>0)(0<PA<δf (x,y)<K ) 
 と表せる。   
 ただし、上記の
Pは、「P(x,y)」を表す2次元数ベクトル(x,y)
     上記のAは、「A(a,b)」を表す2次元数ベクトル(a,b)
 である。   

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定義:(x,y)( , )のときの収束・極限値
 どういうわけか、見当たらない。  
cf.一次元の場合      
   関連事項    
    「 
fAにおいて極限値cを持つとは、
     任意の(どんな)
実数εに対して(でも)、
       
| f(P)c|<ε ( 0d( P, A )<δ )    
            * 
dは点Pと点Aとの距離を表す。 
     を成り立たせる、ある
実数δが存在する。
     ということ。
     なお、
P fの定義域D上を動きながらAに近づくが、ADに属さなくてもよい。」 
    「 
f(x)A (x→∞) 
      とは、
      任意の正数εに対して、ある数
Kをとると、
      
| f(x)A|<ε ( xK ) 
      が成り立つことである。」
   ということは、おそらく、    
   「     
      とは、任意の正数εに対して、ある数K,Lをとると、
      
| f(x,y)c|<ε ( xK ,yL) 
      が成り立つことである。」 とくるか、   
   「       
      とは、任意の正数εに対して、ある数Kをとると、   
      
| f(x,y)c|<ε ( x,yK) 
      が成り立つことである。」 とくるかではないだろうか。 

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reference

和達三樹『理工系の数学入門コース1・微分積分』岩波書店、1988年、pp.112-114.
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年。pp.158-159.
矢野・田代『社会科学者のための基礎数学 改訂版』裳華房、1993, p. 91.
岩波数学辞典(第三版)』項目58関数D族・列(p.158)、項目166収束(pp.436).
高木貞治『解析概論改訂第三版』岩波書店、1983年、p. 20.
小平邦彦『解析入門II(軽装版)岩波書店、2003年、pp.259-260.
杉浦光夫『解析入門』岩波書店、1980年、pp.50-54, p.60.  極限の定義が特殊なので注意。
高橋一『
経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、pp.141-143.
ルディン『現代解析学』共立出版、1971年、4.1-4.4(pp.81-3)。一般の距離空間の上で論じている。
高木斉・押切源一『
解析I・微分』共立出版株式会社、1995年。

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