1変数非有界関数unbounded function の広義積分improper integralの定義

【トピック一覧】
・定義:特異点・不連続点
・定義:閉区間の片方の端点が特異点である場合の広義積分可能・広義積分/閉区間の両端が特異点である場合の広義積分可能・広義積分
・定義:閉区間の中の一点が特異点である場合の広義積分可能・広義積分/閉区間の中に有限個の特異点がある場合の広義積分可能・広義積分 
主値積分・Cauthyの主値 
【関連ページ:1変数関数の広義積分について】
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定義:特異点singular point・不連続点

[高木『解析概論』103; 吹田新保『理工系の微分積分学』114; 高橋『経済学とファイナンスのための数学』90]

被積分関数f(x)が、その近傍において、有界でない(発散する)点。すなわち、
         [高木『解析概論』103:脚注]
小平『解析入門I』p.175や和達『微分積分』p.100などでは、「特異点」なる語は使用せず、「不連続点」なる語を用いている。話を簡潔に進めるべく、連続関数のみに絞ってリーマン積分を論じているためだと思われる(実際には、連続でない関数についてもリーマン可積となることもある。)。
例:
 ・x=0 における f (x)  

1

   [和達『微分積分p.100]

 

x 
 

 ・x=0 における f(x) =

sin
x
 [高木『解析概論』103;]
  


定義:閉区間の片方の端点が特異点である場合の、
    広義積分可能improper integrable・広義積分improper integral

 [高木『解析概論』103; 吹田新保『理工系の微分積分学』114 ; 杉浦『解析入門I』290-291;LangUndergraduateAnalysis,276;Fischer.IntermediateRealAnalysis,pp.711-712;RossA.Elementary Analysis,221;高橋『経済学とファイナンスのための数学』90; 岡田章『経済学・経営学のための数学』241-242.]


「積分の定義の拡張において、我々は積分関数の連続性区間に関する加法性とを指導原理とする。それは妥当であろう。(高木『解析概論』103)」「実際、これらの性質(広義積分における積分関数の連続性・広義積分における区間加法性)を目標として広義積分が定義されたのであった。(高木『解析概論』104)」

[左の端点が特異点である場合]
(前提)
 閉区間[a,b]において、その境界点aだけが特異点で、
 それを除いた区間、
   すなわち、任意のa' ( a<a'<b )に対して[a',b]
 において、f(x)有界かつリーマン可積とする。
(定義)
 右極限値
  
 が存在するならば、
 f(x)は左半開区間(a,b]で、「広義積分可能improper integrableである」「広義積分は収束する」といい、
 この右極限値で、広義積分improper integral
  
 を定義する。
右極限値の定義に遡って、この定義をε-δ論法で書き下すと…)
 左半開区間(a,b]における広義積分の値がAである、すなわち、
  
 とは、
 任意の正数εに対して、
  
     つまり、
     
 を成り立たせる、ある正の実数δが存在する
 ことである。
 なお、前提とここまでの説明でわかるように、
 ここで問題にしている
   
 は、普通のリーマン定積分であることに注意。
 [類似例:小平『解析入門I』176.]

[右の端点が特異点である場合]
(前提)
 閉区間[a,b]において、その境界点bだけが特異点で、
 それを除いた区間、
   すなわち、任意のb' ( a<b'<b )に対して[a,b']
 において、f(x)有界かつリーマン可積とする。
(定義)
 左極限値
  
 が存在するならば、
 f(x)右半開区間[a,b)で、「広義積分可能improper integrableである」「広義積分は収束する」といい、
 この左極限値で、広義積分improper integral
  
 を定義する。
左極限値の定義に遡って、この定義をε-δ論法で書き下すと…)
 右半開区間[a,b)における広義積分の値がAである、すなわち、
  
 とは、
 任意の正数εに対して、
  
     つまり、
     

 を成り立たせる、ある正の実数δが存在する
 ことである。
 なお、前提とここまでの説明でわかるように、
 ここで問題にしている
   
 は、普通のリーマン定積分であることに注意。
 [類似例:小平『解析入門I』176.]


→[非有界関数 の広義積分の定義]
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定義:閉区間の両端が特異点である場合の、
   広義積分可能improper integrable・広義積分improper integral

[小平『解析入門I』176;高木『解析概論』104;高橋『経済学とファイナンスのための数学』91; 杉浦『解析入門I』291; LangUndergraduate Analysis,277;Fischer .Intermediate Real Analysis, 714. ; Ross A.Elementary Analysis,221;]

(前提)
 閉区間[a,b]において、その境界点a,bだけが特異点で、
 それを除いた区間、
   すなわち、任意のa',b' (a< a'<b'<b )に対して[a',b']
 において、f(x)有界かつリーマン可積とする。
(定義1)[小平『解析入門I』176;高木『解析概論』104;高橋『経済学とファイナンスのための数学』91;]
 極限値
  
 が存在するならば、
 f(x)開区間(a,b)で、「広義積分可能improper integrableである」「広義積分は収束する」といい、
 この極限値で、広義積分improper integral
  
 を定義する。
(ε-δ論法による厳密な定義) [小平『解析入門I』176.]
 開区間(a,b)における広義積分の値がAである、すなわち、
  
 とは、
 任意の正数εに対して、
  
     つまり、
     
 を成り立たせる、ある正の実数δが存在する
 ことである。
 なお、前提とここまでの説明でわかるように、
 ここで問題にしている
   
 は、普通のリーマン定積分であることに注意。
(定義2)

[小平『解析入門I』176; 杉浦『解析入門I』291;LangUndergraduate Analysis,277;Fischer .Intermediate Real Analysis, 714. ; Ross A.Elementary Analysis,221;]

 a < c < bを満たす任意の一点をcとする。
 広義積分 
  
  
 がともに収束するならば広義積分improper integral  
  
 を定義する。
 ※これはcのとり方によらず一定となる。なぜか、については、LangUndergraduate Analysis,277を参照せよ。
 ※二つの極限=広義積分を別個にとることに注意。Cf.コーシーの主値
  
(定義1と定義2は同じ)[小平『解析入門I』176; 杉浦『解析入門I』291.]
 要点: 広義積分も、定義にまで遡ると、普通のリーマン定積分であるから、
     普通のリーマン定積分の区間加法性を適用できる。
 Step1: 定義1・定義2に共通の前提
 閉区間[a,b]において、その境界点a,bだけが特異点である。
   だから、それを除いた区間、
     すなわち、任意のa',b' (a< a'<b'<b )からつくった閉区間[a',b']
   において、f(x)有界かつリーマン可積である。…@
 Step2: 普通のリーマン定積分の区間加法性を適用
 ゆえに、
   
 は、普通のリーマン定積分なのだから、普通のリーマン定積分の区間加法性が成り立つ。
 よって、a'<c<b'を満たすcを一つ決めれば、
     …B
 Step3:極限をとる
 ここで、b'b-0a'a +0としても、
 b'=b、a'=aとなるところまで行かないから、
 やはり、
 @より、[a',b']において、f(x)は有界かつリーマン可積であり、
   
 は、普通のリーマン定積分となり、普通のリーマン定積分の区間加法性が成り立つ。
 よって、b'b - 0a'a +0としても、Bは成り立つ。
 つまり、
  
 結論:以上から、
  定義式1
    
  の右辺と、
  定義式2
    
  の右辺は一致することになり、どちらの定義でもかわらないことがわかる。
 Question:定義1における
      「極限値
           
        が存在する」
    と、
   定義2における
      「広義積分 
          
          
       がともに収束する」
    が同値であるという証明は?
  

定義:閉区間の中の一点が特異点である場合の、
   広義積分可能improper integrable・広義積分improper integral

 [高木『解析概論』104;吹田新保『理工系の微分積分学』114; Fischer .Intermediate Real Analysis, 714-5.]
    高橋『経済学とファイナンスのための数学』91; ; 杉浦『解析入門I』290-291]
 閉区間[a,b]内点のうちの一点c ( すなわち、a< c <b)だけが特異点であり、
 一点cを除いてできる二つの区間、
   すなわち、任意のc', c'' (a< c'<c<c''<b )に対して[a,c'][c'',b]
 において、f(x)有界かつリーマン可積とする。
 広義積分 
   
   
 がともに存在するならば
  f(x)[a,b]で「広義積分可能improper integrableである」「広義積分は収束する」といい、
 この二つの極限値を用いて、広義積分improper integral 
  
 を定義する。
 (上式最右辺でc'とc''とわざわざ別の変数でおいて極限を考えていることに注意。
  これを共通のc'で極限をとると、コーシーの主値という別の概念になる。)


→[非有界関数 の広義積分の定義]
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定義:閉区間の中に有限個の特異点がある場合の、
   広義積分可能improper integrable・広義積分improper integral

  [高木『解析概論』104;吹田新保『理工系の微分積分学』114; 杉浦『解析入門I』290-291;
  高橋『経済学とファイナンスのための数学』91; 岡田章『経済学・経営学のための数学』242.]
 閉区間[a,b]内点のなかに、k個の特異点c(1), c(2), …,c(k) ( すなわち、a< c(1)< c(2)<< c(k) <b)がある場合、
 広義積分
   
   
   
 が全て収束する限りにおいて、
 f(x)[a,b]で「広義積分可能improper integrableである」「広義積分は収束する」といい、
 これらのの極限値を用いて、広義積分improper integral
  

       

 を定義する。

定義:主値積分・Cauthyの主値Cauthy principal value

 下記文献参照。

  ・高木『解析概論』105;
  ・吹田新保『理工系の微分積分学』116;
  ・Fischer Intermediate Real Analysis, 715.
  ・『岩波数学辞典(第三版)』202項積分法: D.広義の積分(p.522);
  ・和達『微分積分』101.]



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reference

日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、202項積分法(pp.520-525)。
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年。pp.113-7.
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、pp.90-93.
和達三樹『理工系の数学入門コース1:微分積分』岩波書店、1988年、pp.98-103.
小平邦彦『解析入門I』 (軽装版)岩波書店、2003年 pp.175-177閉区間で有限個の不連続点を持つばあい。
杉浦光夫『解析入門』東京大学出版会、1980年、pp.290-295:一変数関数の広義積分。
高木貞治『解析概論:改訂第3版』岩波書店、1983年、pp. 103-110.
青本和彦『岩波講座現代数学への入門:微分と積分1』岩波書店、1995年、138-142。
矢野健太郎・田代嘉宏『社会科学者のための基礎数学 改訂版』裳華房、pp.117-8.
岡田章『経済学・経営学のための数学』東洋経済新報社、2001年、pp.241-243。
Fischer,Emanuel.Intermediate Real Analysis(Undergraduate Texts in Mathematics),Springer-Verlag New York Heidelberg Berlin,1983,pp.710-712.
Ross,Kenneth A.Elementary Analysis(Undergraduate Texts in Mathematics),Springer-Verlag New York Berlin Heidelberg Tokyo,1980,pp. 221.
Lang,Serge.Undergraduate Analysis (Undergraduate Texts in Mathematics),Springer-Verlag New York Berlin Heidelberg Tokyo,1983.=AnalysisI,Addison-Wesley,1968,pp. 276.