1変数関数の極限に関する諸定理 : トピック一覧 


 ・1変数関数の和差積商・定数倍と極限の順序交換 

 ・コーシーの判定条件:普通の極限右極限左極限一般化された極限/独立変数発散のときの極限 

 ・単調関数と右極限・左極限

 ・極限の存在条件と右極限・左極限 



1変数関数の諸概念:
 1変数関数とその属性 / 極限の定義 / 無限小解析 / 連続性 / 微分 / リーマン積分 
極限関連ページ:
 数列の極限の性質
 2変数関数の極限の性質 / n変数関数の極限の性質 / n変数ベクトル値関数の極限の性質 
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1変数関数の和差積商・定数倍と極限の順序交換 









lim
f(x)  =A 、  lim
g(x)  =B  とすると、
xx0
xx0


【1. sum-difference limit theorem


  
   なぜ?→証明

【2】


    (c:定数)
   なぜ?→証明  




[文献]
 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』(p.20)
 ・神谷浦井『経済学のための数学入門』(p.69) 





  
 





【関数一般への拡張】



 →2変数関数の和差積商・定数倍と極限の順序交換 
 →n変数関数の和差積商・定数倍と極限の順序交換
 →ベクトル値関数のベクトル和と極限の順序交換/ベクトル値関数のスカラー倍と極限の順序交換 






【3. product limit theorem


   
  なぜ?→証明

【4. quotient limit theorem


   A
≠0で、
     
    なぜ?→証明
 

定理:コーシーの判定条件 Cauchy Criterion for Limits of Function [ xx0のとき] 


 xx0のときf(x)収束するための必要十分条件は、

 任意の(どんな)正の実数εに対して(でも)、
 その各々に応じて、ある正数δが存在し、
    「 0<|xx0|<δかつ0<|x'−x0|<δならば、  |f(x)f(x')|<ε 」
 つまり「 x,x' ( x0−δ, x0)( x0 , x0)ならば、  |f(x)f(x') |<ε 」
  を満たす、ということ、
  すなわち、
 ε>0 δ>0  x,yUδ(a)(D{a}) |f(x)−f(y)|<ε   
         (D: fの定義域、Uδ(a):aのδ近傍) 





[文献]
 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』(p.20)
 ・小平『解析入門I』78-9.;杉浦『解析入門』61-62;
 ・住友『大学一年生の微積分学』124;
 ・Fischer,Intermediate Real Analysis,238-239;
 ・Lang, Undergraduate Analysis, 140-141 




なぜ?→証明
 

【左極限・右極限等への拡張】 xx0+0のときの判定条件/xx0−0のときの判定条件/一般化された条件
【関数一般への拡張】
2変数関数の場合のコーシー判定条件/n変数関数の場合のコーシー判定条件/ベクトル値関数の場合のコーシー判定条件    




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定理:コーシーの判定条件 Cauchy Criterion for Limits of Function [xx0+0のとき]


   [杉浦『解析入門I』p. 61→53は、片側極限も含む一般的な議論を展開]


   ※広義積分の収束についてのコーシーの判定条件で使われているが、
    これを明示したテキストが見当たらないので、
     1. xx0のときの判定条件をベースに、自力でカスタマイズしつつ、
     2. 杉浦杉浦『解析入門I』p. 61→53の、より一般的な議論から特殊具体的を導く
    ことによって、以下を作成した。よって要確認。
 以下の命題P,Qは同値である。
 命題P: xx0+0のときf(x)収束する
 命題Q: 任意の正数εに対して、その各々に応じて、ある正数δが存在し、
         「0<xx0<δかつ0<x'−x0<δならば|f(x)f(x')|<ε」
      つまり「x, x'( x0 , x0)ならば|f(x)f(x') |<ε」
     を満たすということ、
  すなわち、 ε>0  δ>0    x, x'  (x, x'( x0 , x0)|f(x)f(x') |<ε)
※なぜ?→証明
  cf. xx0のときの判定条件/xx0−0のときの判定条件/一般化された条件
※利用例→広義積分の収束についてのコーシーの判定条件 


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定理:コーシーの判定条件Cauchy Criterion for Limits of Function [ xx0−0 のとき]


   [杉浦『解析入門I』p.61→53は、片側極限も含む一般的な議論を展開]

 ※広義積分の収束についてのコーシーの判定条件で使われているが、
  これを明示したテキストが見当たらないので、
   1. xx0のときの判定条件をベースに、自力でカスタマイズしつつ、
   2. 杉浦『解析入門I』p.61→53の、より一般的な議論から特殊具体的を導く
  ことによって、以下を作成した。よって要確認。
以下の命題P,Qは同値である。
命題P: xx0−0のときf(x)が収束する
命題Q: 任意の正数εに対して、ある正数δが存在し、
         「−δ<xx0<0かつ−δ<x'x0<0ならば|f(x)f(x')|<ε」
      つまり「x, x'( x0−δ, x0 )ならば|f(x)f(x')|<ε」
    を成り立たせる、ということ、
  すなわち、(ε>0)(δ>0) ( x, x') (x, x'( x0−δ, x0 ) |f(x)f(x')|<ε)
※なぜ?→証明
cf. xx0のときの判定条件/ xx0+0のときの判定条件/一般化された条件
※利用例→広義積分の収束についてのコーシーの判定条件 


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定理:コーシーの判定条件 Cauchy Criterion for Limits of Function[xx0/x0+0/−0の判定条件の一般化]


   [『解析入門I』p. 61-2→53]
 
設定:以下で登場するB, x0については、
 
B:関数f(x)の定義域の部分集合    (つまり、集合Bは定義域に含まれる何らかの区間及びその合併
 
x0x0B閉包(BB境界) (つまり、x0Bで表される区間の内部か境界にある)
  としておく。この設定が成り立たない場合、以下は、定義されないことになる。
本題:以下の命題P,Q同値である。
命題P:  xB内でx0に近づくときf(x)収束する。すなわち f(x)A (xx0 , xB)  
命題Q: 任意の正数εに対して、
      「
x, x'Bかつ|xx0|<δかつ|x'x0|<δならば|f(x)f(x') |<ε」
   つまり「
x, x'B( x0−δ, x0+δ)ならば|f(x)f(x') |<ε」
  を成り立たせる、ある正数δが存在するということ、
  すなわち、
(ε>0)(δ>0) ( x, x') (x, x'B( x0−δ, x0+δ)|f(x)f(x') |<ε)
以上の議論は、
 
B= (fの定義域){ x |xx0}とすると、 x x0のときのコーシーの判定条件になり、
   ∵
B= {x|xx0}なら「x,x'B( x0−δ, x0+δ)ならば」を
         「
x, x'( x0−δ, x0)( x0 , x0+δ)ならば」と言い換えても同じ。
 
B= (fの定義域){ x |xx0}とすると、 x x0+0のときのコーシーの判定条件になり、
   ∵
B= { x |xx0}なら「x,x'B( x0−δ, x0+δ)ならば」を「x, x'( x0 , x0+δ)ならば」と言い換えても同じ。
 
B= (fの定義域){ x |xx0}とすると、 x x00のときのコーシーの判定条件になる。
   ∵
B= { x |xx0}なら「x,x'B( x0−δ, x0+δ)ならば」を「x, x'( x0−δ, x0)ならばと言い換えても同じ。

 なぜ?→証明

 cf. xx0のときの判定条件 / xx0+0のときの判定条件/xx0−0のときの判定条件



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定理:コーシーの判定条件 [ x→∞のとき] 


 [吹田新保『理工系の微分積分学』23.] 


 x→∞のときf(x)収束するための必要十分条件は、
 任意の正数εに対して、
     「 x,x'K ならば、 |f(x)−f(x')|<ε 」
 を成り立たせるある数Kが存在するということ。
   すなわち、(ε>0)(K >0) ( x, x') ( x,x'K|f(x)−f(x') |<ε)
 これは、以下のように言い換えることもできる。
  x→∞のときf(x)収束するための条件は、
    任意のの正数εに対して、
    ある数Kをとると
     xK, h>0 ならば | f(x+h)f(x) |<ε 
    が成り立つことである。

 証明: xx0のときのコーシーの判定条件の証明をベースに、自分で書いたもの。要確認。
 利用例→広義積分の収束についてのコーシーの判定条件、 
  
  

 

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単調関数と右極限・左極限

定理:f開区間(a,b)で単調のとき、aでの右極限bでの左極限が、ともに存在する。
 [吹田新保『理工系の微分積分学』21]

定理:f開区間 (a,b)で狭義増加のとき、acbなるcにつき
  
   [吹田新保『理工系の微分積分学』22]



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定理:

極限が存在するための条件は、右極限左極限がともに存在して一致することである。 [吹田・新保『理工系の微分積分学』22.]


 

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reference

岩波数学辞典(第三版)』.項目166(pp436).
吉田耕作・栗田稔・戸田宏『平成元年3/31文部省検定済高等学校数学科用 高等学校 微分・積分 新訂版』啓林館、pp.28-33.
小平邦彦『解析入門I (軽装版) 』岩波書店、2003年、pp.78-9。
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年、pp.20-23.
神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、p.95.
和達三樹『理工系の数学入門コース1・微分積分』岩波書店、1988年、pp.27-28.
杉浦光夫『解析入門』東京大学出版会、1980年、pp.57-63.
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、pp.32-36;42-44.
住友洸『大学一年生の微積分学』現代数学社、1987年、p.124。
Chiang, Fundamental Methods of Mathematical Economics: Third Edition, McGraw Hill,1984. pp.145-147.
Fischer,Emanuel.Intermediate Real Analysis(Undergraduate Texts in Mathematics),Springer-Verlag New York Heidelberg Berlin,1983,pp. 228-231; 238-239.
Lang,Serge.Undergraduate Analysis(Undergraduate Texts in Mathematics),Springer-Verlag New York Berlin Heidelberg Tokyo,1983,pp.135-143.