n変数二次形式 quadratic form ― トピック一覧   [数学についてのwebノート]
 ・定義:二次形式/正値定符号二次形式/正値定符号行列/半正値定符号二次形式/半正値定符号行列
     負値定符号二次形式/負値定符号行列/半負値定符号二次形式/半負値定符号行列
 ・定理:単位ベクトル化の二次形式の計算単位ベクトル化の二次形式の最大値・最小値定理
     二次形式の基底変換公式/二次形式の標準化                   
     正値定の必要十分条件-固有値/負値定の必要十分条件-固有値/正値定の必要条件-行列式/負値定の必要条件-行列式/
     正値定の必要条件-小行列/負値定の必要条件-小行列/正値定の必要十分条件-主小行列式/負値定の必要十分条件-主小行列式
※応用:n変数関数の極値問題  
※具体例:2変数の二次形式 
線形代数目次/総目次 


定理:正値定符号行列になるための必要十分条件〜固有値に関連して


定理


次の二つの命題は同値

命題S:n次対称行列A正値定符号行列二次形式A[x]が正値定符号
命題T:n次対称行列A固有値が全て正


※具体例:2変数の二次形式のケース 

[文献−線型代数]
・佐武『線型代数学』W§4 (p.161)
・永田『理系のための線形代数の基礎』系5.3.10(p.149);
・川久保『線形代数学』11.3定理11.3.2(p.290)
・木村『線形代数:数理科学の基礎』4.6(pp.93-95)。
Chiang, Fundamental Methods of Mathematical Economics,pp.326-330.

[文献−解析]
・松坂『解析入門4』18.2-E 定理2(p.107);
杉浦『解析入門1』U§8定理8.3(p.156):「命題S命題T」の証明付。   
 
[文献−数理経済]
・岡田『経済学・経営学のための数学』2.7定理2.34(p.114)

[文献−数理統計]
・久米『数理統計学』1.34(p.33);
・戸田・山田『計量経済学の基礎:統計的手法の理論とプログラミング』2.9.2(pp.117-8)
・岩田『経済分析のための統計的方法』定理12.26(p.314)

証明
[ 命題T  命題S ]

・命題T「n次対称行列A固有値が全て正」
 すなわち、
 n次対称行列A固有値λ12,…,λn について、
  λ1>0 かつ λ2>0 かつ … かつ λn >0  …(1) 
 とする。(λ12,…,λn に重複を認める)
定理より、
 一般に、
 うまく、n次元数ベクトルx'=(x'1, x'2, …, x'n) を決めてあげると、
    n次対称行列A固有値λ12,…,λn をつかって、
      A[x]=λ1x'122x'223x'32+…+λnx'n2 …(2)
 と標準化できる。
・したがって、
  命題Tすなわち(1)が成り立つならば
  (2)より、
  A[x]=λ1x'122x'223x'32+…+λnx'n2  >0 
  すなわち、二次形式A[x]は正値定符号

[ 命題S  命題T ]
・一般に、
  n次対称行列A固有値は、すべて実数n次対称行列A固有ベクトルは、すべてn次元数ベクトル。(
 したがって、n次対称行列A任意固有値λにたいして、
     λx =Ax …(1)
     かつ 
     x   …(2) 
 を満たすn次元数ベクトルxが存在する。 
 すると、n次対称行列A任意固有値λと、上記のn次元数ベクトルxについて
   ・λ(xx)=(λx)x  ∵自然な内積の性質 
         =(Ax)x  ∵(1)
          =A[x]   ∵二次形式の内積表現  
          …(3) 
   かつ 
   ・xx >0      ∵(2)と自然な内積の性質    
          …(4)  
  が成り立つ。
・命題Sが成り立つならば、すなわち、任意xにたいして、A[x] >0 ならば
  n次対称行列A任意固有値λと、 (1)(2)を満たすその固有ベクトルxについて、
   λ(xx)=A[x] >0   ∵(3)と命題S
   かつ 
   xx >0        ∵(4) 
 が満たされる。
 よって、n次対称行列A任意固有値λ>0 

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定理:負値定符号行列になるための必要十分条件〜固有値に関連して


定理


次の二つの命題は同値

命題S:n次対称行列A負値定符号行列二次形式A[x]が負値定符号
命題T:n次対称行列A固有値が全て負

※具体例:2変数の二次形式のケース 

[文献−線型代数]
・佐武『線型代数学』W§4 (p.161)
・永田『理系のための線形代数の基礎』系5.3.10(p.149);
・川久保『線形代数学』11.3定理11.3.2(p.290)
・木村『線形代数:数理科学の基礎』4.6(pp.93-95)。
Chiang, Fundamental Methods of Mathematical Economics,pp.326-330.

[文献−解析]
・松坂『解析入門4』18.2-E 定理2(p.107);
杉浦『解析入門1』U§8定理8.3系(pp.157-8)。   
 
[文献−数理経済]
・岡田『経済学・経営学のための数学』2.7定理2.34(p.114)
・戸田・山田『計量経済学の基礎:統計的手法の理論とプログラミング』2.9.2(pp.117-8)
・岩田『経済分析のための統計的方法』定理12.26(p.314)

証明 [ 命題T  命題S ]

・命題T「n次対称行列A固有値が全て負」
 すなわち、
 n次対称行列A固有値λ12,…,λn について、
  λ1<0 かつ λ2<0 かつ … かつ λn <0  …(1)    
 とする。(λ12,…,λn に重複を認める)
定理より、
 一般に、
 うまく、n次元数ベクトルx'=(x'1, x'2, …, x'n) を決めてあげると、
    n次対称行列A固有値λ12,…,λn をつかって、
      A[x]=λ1x'122x'223x'32+…+λnx'n2 …(2)
 と標準化できる。
・したがって、
  命題Tすなわち(1)が成り立つならば
  (2)より、
  A[x]=λ1x'122x'223x'32+…+λnx'n2  <0 
  すなわち、二次形式A[x]は負値定符号

[ 命題S  命題T ]
・一般に、
  n次対称行列A固有値は、すべて実数n次対称行列A固有ベクトルは、すべてn次元数ベクトル。(
 したがって、n次対称行列A任意固有値λにたいして、
     λx =Ax …(1)
     かつ 
     x   …(2) 
 を満たすn次元数ベクトルxが存在する。 
 すると、n次対称行列A任意固有値λと、上記のn次元数ベクトルxについて
   ・λ(xx)=(λx)x  ∵自然な内積の性質 
         =(Ax)x  ∵(1)
          =A[x]   ∵二次形式の内積表現  
          …(3) 
   かつ 
   ・xx >0      ∵(2)と自然な内積の性質    
          …(4)  
  が成り立つ。
・命題Sが成り立つならば、すなわち、任意xにたいして、A[x] <0 ならば
  n次対称行列A任意固有値λと、 (1)(2)を満たすその固有ベクトルxについて、
   λ(xx)=A[x] <0   ∵(3)と命題S
   かつ 
   xx >0        ∵(4) 
 が満たされる。
 よって、n次対称行列A任意固有値λ<0 


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定理:正値定符号行列になるための必要条件〜行列式に関連して



n次対称行列A正値定符号行列二次形式A[x]正値定符号
  n次対称行列A行列式は正
      
det A0

※具体例:2変数の二次形式のケース 

[文献]
・岩田『経済分析のための統計的方法』定理12.27(p.317)

   
   
[トピック一覧:二次形式]
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定理:負値定符号行列になるための必要条件〜行列式に関連して



n次対称行列A負値定符号行列二次形式A[x]負値定符号) 
  n次対称行列A行列式は、nが偶数のとき正、nが奇数のとき負。  
    
(1)ndet A0  

※具体例:2変数の二次形式のケース 

[文献]
・岩田『経済分析のための統計的方法』定理12.27(p.317)

 

(証明)

   
   
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定理:正値定符号行列になるための必要条件〜小行列の符号に関連して



n次対称行列A正値定符号行列二次形式A[x]正値定符号
    
 Aのすべての小行列は、正値定符号行列 


[文献]
・岩田『経済分析のための統計的方法』定理12.32(p.317)

   
   
[トピック一覧:二次形式]
[線形代数目次/総目次] 
 

 

定理:負値定符号行列になるための必要条件〜小行列の符号に関連して



n次対称行列A負値定符号行列二次形式A[x]負値定符号) 
   
 Aのすべての小行列は、負値定符号行列  


[文献]
・岩田『経済分析のための統計的方法』定理12.32(p.317)

   
   
   
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定理:正値定符号行列になるための必要十分条件〜主小行列式に関連して

 


に対して、
 
をとる。  

※具体例:2変数の二次形式のケース 

[文献−線型代数]
・佐武『線型代数学』W§4 定理6(p.163) 主小行列式:対角線上にある小行列式
・木村『線形代数:数理科学の基礎』定理2.1(p.43)。
・斎藤『線形代数入門』156.
Chiang322-326.
[文献−解析]
・杉浦『解析入門1』U§8定理8.3(p.156):主小行列式。左上からk行k列をとった行列(1≦k≦n)=右下から(n-k)行(n-k)列除去した行列


[文献−数理統計]
 ・久米『数理統計学』1.33(p.32);


  つまり、行列Ak (k=1,2,n)は、 
  ・行列
Aから、同じ番号の行・列を、後から(n1)個潰してできた主小行列a11
  ・行列
Aから、同じ番号の行・列を、後から(n2)個潰してできた主小行列
           
  ・行列
Aから、同じ番号の行・列を、後から(n3)個潰してできた主小行列
           
            ・
            ・
            ・ 
  ・行列
A自体
  を表している。
 
  対称行列
A正値定符号行列二次形式A[x]正値定符号
    
k=1,2,nに対して、行列式det Ak>0 


() 
    
   が
正値定符号行列ならば、
       
   
a330a22、>0a110 

 

(証明)

   
   
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定理:負値定符号行列になるための必要十分条件〜主小行列式に関連して


   
  に対して、
   
  をとる。  
      つまり、行列Ak (k=1,2,,n)は、 
       ・行列
Aから、同じ番号の行・列を、後から(n1)個潰してできた主小行列a11
       ・行列
Aから、同じ番号の行・列を、後から(n2)個潰してできた主小行列
           
       ・行列
Aから、同じ番号の行・列を、後から(n3)個潰してできた主小行列
           
            ・
            ・
            ・ 
       ・行列
A自体
      を表している。
 
  対称行列
A負値定符号行列二次形式A[x]負値定符号))
   
k=1,2,nに対して、(1) kdet Ak >0 

※具体例:2変数の二次形式のケース 

[文献−線型代数]
・佐武『線型代数学』W§4 定理6-注意(p.164) 主小行列式:対角線上にある小行列式
・斎藤『線形代数入門』156. Chiang322-326.

() 
    
   が
負値定符号行列ならば、
       
   
a330a220a110 

 
 

(証明)

   
   

 

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(reference)

斎藤正彦『基礎数学1:線形代数入門』東京大学出版会、1966年、pp.153-158。
Chiang, Fundamental Methods of Mathematical Economics: Third Edition, McGraw Hill,1984,pp.319-331.極値問題で利用。
岩田暁一『経済分析のための統計的方法(第2版)』東洋経済新報社、1983年、pp.310-322。
永田雅宜『理系のための線形代数の基礎』紀伊国屋書店、1986年、pp.142-150。
藤原毅夫『理工系の基礎数学2:線形代数』岩波書店、1996年、pp.152-157。
石村園子『すぐわかる線形代数』東京図書、1994年、pp.219-225。
縄田和満『EXCELによる線形代数入門』年、朝倉書店。
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、pp.203-205。
William H. Greene Econometric Analysis (3rd Edition) , Prentice Hall International, 1997,pp.46-47...

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