EHN 2012年2月22日
不妊カップルは
フタル酸エステル類への曝露が高い


情報源:Environmental Health News, Feb 22, 2012
Infertile couples have higher exposure to phthalates
Synopsis by Renee Gardne
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/2012/01/
2012-0206-infertile-couples-higher-phthalates/


オリジナル情報:
Tranfo, G, L Caporossi, E Paci, C Aragona, D Romanzi, C De Carolis, M De Rosa, S Capanna, B Papaleo and A Pera. 2012. Urinary phthalate monoesters concentration in couples with infertility problems. Toxicology Letters
http://dx.doi.org/10.1016/j.toxlet.2011.11.033

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年2月26日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_120222_infertile_couples_phthalates.html


 イタリアで不妊カップルを研究している科学者らは、これらのカップルは不妊ではないカップルに比べてプラスチックや化粧品中で広く使用されているフタル酸エステル類への曝露が高いことを報告している。

 不妊カップルは自然に妊娠した不妊ではないカップルに比べてフタル酸エステル類への曝露が3〜5倍高いことをイタリアの研究が発見した。これらのカップルは、プラスチックで最も一般的に使用されているフタル酸エステル化合物及び化粧品中で最も一般的に使用されている化合物を含んで、彼等の尿中に4つの異なるフタル酸エステル類が高いレベルで見出された。

 フタル酸エステル類は、内分泌かく乱化学物質として作用し、エストロゲンのような天然のホルモンの作用を擬態しあるいは阻害する。以前の研究が、フタル酸エステル類はげっ歯類で妊娠損失(訳注:流産、死産、子宮外妊娠、奇胎妊娠)やひと腹の仔数の減少などの問題を引き起こすことがあることを示しているが、これらの動物出の研究では一般的にヒトが曝露するより約100倍高いレベルで曝露させていた。

 フタル酸エステル類はビニル・プラスチックを柔らかくし、柔軟性を持たせるために用いられる。フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP) (訳注1)は可塑剤として最も一般的に使用されている。この化合物は、プラスチック容器から食品へ移行することがあり得る。成人はフタル酸エステル類に主に食事を通じて曝露する。

 他のフタル酸エステル類もまた、マニュキア液、香水、化粧品のような身体手入れ用品中に見出される。化粧品中で最もしばしば使用されているフタル酸ジエチル(DEP)は、石けん、シャンプー、コンディショナーのようなトイレタリー製品中で見出される。それらは皮膚を通じて吸収される。

 広く使用されているので、フタル酸エステル類への曝露は一般の集団に広くいきわたっている。

 フタル酸エステル類への曝露は、男性の精液中の精子数減少や精子の運動減少、また男性における重要なホルモンの血中レベルの低下と関係している。最近のある研究は、女性の受胎した月のフタル酸エステル類への曝露は早期流産のリスク増大と関連することを示した。

 この研究では、イタリアにある生殖支援センターに妊娠支援を求めた56組のカップルと、少なくとも子ども1人を自然妊娠で得た56組のカップルが、フタル酸エステル類の濃度を分析するために尿サンプルを提供した。この研究には、身体的異常や過去の外科手術のために不妊であるカップルは含まれていない。

 科学者らは、全ての参加カップルの尿で4つの異なるフタル酸エステル類とそれらの分解物質を測定した。不妊カップルのフタル酸エステル類のレベルは不妊ではないカップルのレベルと比較された。

 4つの全てのフタル酸エステル類とそれらの分解物質のレベルは、不妊の男性及び女性のどちらも、不妊ではない男性及び女性に比べて有意に高かった。フタル酸ジエチル(DEP)のレベルは、不妊ではない男女それぞれと比べて、不妊女性は約5倍、不妊男性は約3倍高かった。フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP) のレベルは、不妊カップルは不妊ではないカップルに比べて3分の1、高かった。

 フタル酸エステル類への曝露が不妊の特定の原因になり得るかどうか決定するためには更なる研究が必要である。著者等の次のステップは、これらの結果を、カップルの”特別に設計された質問票を通じて収集されたライフスタイルと作業環境”と比較することであろう。


訳注1
訳注2
訳注:EUのフタル酸エステル類規制
訳注:アメリカのフタル酸エステル類規制
訳注:フタル酸エステル類規制関連情報
訳注:フタル酸エステル類の有害影響に関する海外情報 訳注:フタル酸エステル類関連資料(日本)



化学物質問題市民研究会
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