EHN 2010年1月12日
フタル酸エステル類は
ADHDに関係があるかもしれない


情報源:Environmental Health News, Jan 12, 2010
Phthalates may play a role in ADHD symptoms
Synopsis by Paul Eubig, DVM
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/
phthalates-may-have-a-role-in-adhd/

オリジナル:Phthalates Exposure and Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder in School-Age Children
Biological Psychiatry, Volume 66, Issue 10, Pages 958-963
B. Kim, S. Cho, Y. Kim, M. Shin, H. Yoo, J. Kim, Y. Yang, H. Kim, S. Bhang, Y. Hong, et al.
http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0006322309009524

訳:安間 武(>化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年1月14日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_100112_Phthalates_ADHD.html


 フタル酸エステル類は多くの消費者製品中で使用されているプラスチックをもっと柔らかく、もっと柔軟にする。最近の研究は、フタル酸エステル類に暴露した子ども達は、注意欠陥多動症の増加という証拠が示すように、学校での授業に集中できないことを示唆している。

 新たな研究は、フタル酸エステル類への暴露は、学齢期の子どもたちの注意欠陥多動症(ADHD)に関連しているかもしれないことを発見した。この研究が対象としたADHD症状を持つと特定された韓国の子ども達は、そのような症状を持たない子ども達に比べて、尿中のフタル酸エステル類のマーカーが高いらしいことが示された。

 これは、そのような関連をヒトで見出した初めての研究であり、以前のげっ歯類での研究で報告された研究と一致するものである。この新たな研究は、化学物質暴露がこの障害の進展にある役割を演じているかもしれないことを示唆している。

 ADHDは、衝動的な行動、過剰に活発な動き、注意力の欠如などによって特徴付けられる。現在、アメリカでは子ども達の約6〜7%がADHDであると推定されている。

 その原因は非常に複雑ではあるが、この障害を研究しているほとんどの医師と科学者らは、脳内の化学的信号の不均衡がその発症に重要な役割を果たしているということに同意している。環境中の化学物質がこの化学物質信号のバランスを崩し、ADHD症状の進展に寄与しているかどうかが専門家らの疑問である。

 この疑問に答えるために、研究者らはADHD症状について250人以上の韓国の子ども達をテスト及び教師の調査を通じて評価し、彼らの尿中のフタル酸エステルのマーカーのレベルを測定して比較した。個人的及び社会的相違は統計的に処理された。

 フタル酸エステル類のひとつのタイプ(DEHP)の分解物質の尿中レベルが高かった8〜11歳の子ども達は不注意で多動ををより多く示すした。さらに、異なるタイプのフタル酸エステル(DBP)の分解物質のレベルが高い子ども達は、標準行動テストの結果、不注意と情動的行動に関連していた。

 フタル酸エステル類は、プラスチックの可塑性と相溶性を保つ役割を果たすことが最もよく知られている。フタル酸エステル類は消費者製品中に存在する非常にありふれた化学物質であり、香水やその他の身体手入れ用品、医薬品、食品容器包装、医療器具、ビニル中などで見つけることができる。

 人々は食物、空気、ダスト、皮膚を通じてこの化学物質に摂食する。最近の研究は、ほとんど全てのアメリカ人は尿中に検出可能なレベルでこの物質を持っていることを示している。今日までの研究結果は様々であるが、フタル酸エステル類はいくつかの生殖健康影響に関連している。

 フタル酸エステル類は体外排出が早いので、この研究での結果は過去の暴露より最近の暴露を反映している。さらにADHDの根源は子宮中での初期の発達にまで戻るらしい。母親の妊娠中のフタル酸エステルのレベルは、長期的な化学物質暴露とこの障害との関係をさらに理解するうえで助けになる。

 それにも関わらず、この研究はADHDの進展にフタル酸エステル類への早期の暴露の役割を示唆しており、その関係はもっと精査されるべきことを示している。


訳注:EUのフタル酸エステル類規制
訳注:アメリカのフタル酸エステル類規制
訳注:フタル酸エステル類規制関連情報
訳注:フタル酸エステル類の有害影響に関する海外情報 訳注:フタル酸エステル類関連資料(日本)



化学物質問題市民研究会
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