EHN 2009年1月27日
プラスチック可塑剤は
男性のホルモンを低下させる


情報源:Environmental Health News, Jan 27, 2009
Plasticizer related to lower hormone levels in men
Synopsis by Jennifer Adibi
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/phthalates-and-mens-lower-hormone-levels

オリジナル:Meeker JD, AM Calafat and R Hauser. 2008.
Urinary metabolites of di(2-ethylhexyl) phthalate are associated with
decreased steroid hormone levels in adult men.
Journal of Andrology doi:10.2164/jandrol.108.006403.

訳:安間 武(>化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年1月28日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_090127_phthalates_phthalates_adult_men.html


 尿中に平均的なフタル酸エステル類の量をもつ成人男性は、二つの重要なホルモンであるテストステロン(男性ホルモン)とエストロゲン(女性ホルモン)の血中レベルが低い。

 それらのホルモンは正常な精子の生成と機能に必要である。

 これは成人男性におけるフタル酸エステル類のレベルとホルモンのレベルとの関係を示した最初の研究である。このフタル酸エステル類のレベルは、”一般的アメリカ国民の中で見出される代表的なレベル”であるが、男性の健康と不妊に及ぼす影響を決定するためにはもっと多くの研究が必要であると著者らは述べている。

 しかし、この結果は同様のフタル酸エステル類に暴露させたげっ歯類の反応を映し出すものである。げっ歯類では、フタル酸ジ 2- エチルヘキシル(DEHP)は概してテストステロンのレベルを抑制するが、そのことは生殖系の発達と機能を変えることにより男性らしさを失わせる。

 フタル酸エステル類は、プラスチックを柔軟にするために用いられている。この化学物質は家庭用品や身の回り品中の香りの寿命を延ばす。人々は、家庭で、職場で、屋外で、食品、水、及び空気を通じて暴露する。よく知られている暴露源のひとつは、特に幼児や子どもにとっての懸念であるが、医療器具中で使用されているプラスチックのチューブやバッグである。アメリカに住むほとんど全ての人は体内にフタル酸エステル類を持っている。

 この研究では、研究者らは、尿中のDEHP及びその他のフタル酸エステル類の代謝物を測定し、それらのレベルと男性の血中で測定されたホルモン濃度と比較した。代謝物は、代謝する前の”親”の化学物質への暴露をを示している。425人からなる大きなサンプル集団は不妊治療に訪れた男性である。

 男性の尿中から測定されたDEHPの代謝物は女性ホルモンであるエストラディオールと最も強い関連があった。男性の尿中で測定された代謝物が多ければ多いほど、女性ホルモンのレベルは低かった。

 動物での研究はメスに同様な傾向を見出している。それらの研究ではDEHPの主な代謝物(MEHP)は、アロマターゼと呼ばれる主要な酵素の合成を阻害する。アロマターゼはテストステロンをエストラディオールに変換する。したがってこの代謝物は男性と女性の両方でこの酵素の合成を阻害するかもしれないということをこの研究結果は示唆している。

 DEHP代謝物はまた、血中の特別なたんぱく質へのテストステロン結合−性ホルモン結合グロブリン(SHBG)−が少ないことと関連している。このたんぱく質は体の中で必要としているところにこのホルモンを運ぶ。血中で運ばれるテストステロン(男性ホルモン)が少なければ、生殖プロセスを誘導する主要な細胞中のホルモンレベルを低下させることになり、男性らしさを失わせる結果となる。

 研究者らは対象者の年齢、体重指標、喫煙状況、血液サンプルが収集された季節と日時を考慮した。

 それでも他の要素がこの研究で見出された関連性を説明する、又は寄与しているかも知れない。因果関係を引き出すのは実験室で管理された動物で研究するよりヒト研究の方が難しい。

 それにもかかわらず、この発見は動物実験から知られることと一致しており、家庭、事務所、車、台所のビニル製品を制限することについて人を確信させるのに十分かもしれない。


■訳注:フタル酸エステル類規制関連情報
▼欧州連合(EU)
▼アメリカ
▼日本
■訳注:フタル酸エステル類の有害影響に関する情報(海外) ■訳注:フタル酸エステル類関連資料(日本)



化学物質問題市民研究会
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