EHP 2006年7月1日
カリフォルニア州 化粧品安全法 制定
シンシア・ウォシャム
情報源:Environmental Health Perspectives Volume 114, Number 7, July 2006
California Enacts Safe Cosmetics Act
By Cynthia Washam
https://ehp.niehs.nih.gov/doi/10.1289/ehp.114-a402

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年7月1日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_06/06_07/06_07_ehp_cal_cosmetics_act.html

 化粧品の安全に対する米食品医薬品局(FDA)の生ぬるい管理にいらだっていたカリフォルニア州民は、2007年1月に発効する全米初の化粧品安全規制法を州民自身で手にした。この2005年カリフォルニア州化粧品法は、製造者に対し潜在的に有害な成分を使用している場合には州の健康福祉局(DHS)に報告し、それを受けて DHS は消費者に警告することを求めている。
 DHS は製品が通常の使用で有毒かどうか調査し、製造者に健康影響データを提出するよう求める権限を持つ。安全ではないとみなされる製品をカリフォルニア州で市場に出し続ける製造者は法的な措置を受けることになる。

 ”この立法の起案者らは、この法の基礎は市民の知る権利であると信じている”−とDHS 予防サービスの副ディレクター、ケビン・レイリーは述べている。この新たな法律は、カリフォルニア州のプロポジション 65 (訳注)により作成された有害物質のリストを使用する。プロポジション 65 は、がん、出生障害、又はその他の生殖危害を引き起こすとカリフォルニア州に知らされた化学物質のリストを州政府は作成し、少なくとも毎年、更新しなくてはならないというものである。

訳注:プロポジション 65 (Prop 65)
出典:曇天に青空のチャンスはあるか?アメリカの化学物質政策の改革の予測ダリル・ディッツ、国際環境法センター 2006年5月 (当研究会訳)

 カリフォルニア州の 1986 年安全飲料水および有害物質施行法(Safe Drinking Water and Toxic Enforcement Act of 1986 )であり、プロポジション 65(Prop 65) という名前で有名である。この有名な法律は、州が、がん、出生障害、又はその他の生殖系影響を引き起こすことが知られている化学物質のリストを作成し、潜在的な暴露について市民に警告することを求めている。過去20年の間に、カリフォルニアのリストは概略 750種の化学物質になった。そのようなラベルの汚名を避けるために、多くの製造者と小売業者はプロポジション 65 対象物質の使用をやめる選択をした。
 連邦上院は現在、食品ラベル表示要求を実施する州の権限を制限する法案を討議中である。係争中のこの法案はカリフォルニア及び他の州が自身でラベル表示要求を管理することを妨げることになるであろう。この法案の影響は、Prop 65 をはるかに越え、ミルク、魚介類、レストラン、等に関する200以上の州の健康・安全 関連法を後退させるか無効にする。多くの州知事と司法長官は積極的にこの法案に反対している。

参考ウェブページ
プロポジション 65 について(日本電子株式会社 JEOL Q&A)
カリフォルニア州 OEHHA のプロポジション 65 ウェブページ
 この新しい法律はカリフォルニア州だけに適用されるが、その影響は全米に波及するように見える。悪い評判を避けようとする製造者は、疑いのある成分を州に報告するよりは、それを使用しないようにするであろうと消費者団体は予測している。このような製品は全国あまねく市場に広がっていくであろう。

 この法律の勢いは、化粧品のある成分に長期間暴露することに対する消費者の懸念に由来する。化粧品の使用は慢性病には関連していないが、ある製品は、発がん性物質(つめ手入れ用品中のホルムアルデヒドなど)、催奇性物質(2つの髪染めに使用されている酢酸鉛)、その他生殖毒性物質(つめ手入れ用品及びフケ取りシャンプー中のフタル酸ジブチル)などを含んでいる。

 近年の研究では、人は時にはトイレタリー製品中の成分を驚くほど高レベルで吸収及び吸い込んでいることが示されている。EHP 2005年11月号で、ハーバード大学公衆衛生部門のスーザン M. デューティをリーダーとするチームが、尿中のフタル酸エステル類の代謝物濃度が、ヘアーゲル又はスプレー、ローション、デオドラント、オーデコロン、アフターシエブなどの各パーソナル・ケア用品を用いることで、33%増加することを示した。

 歴史的には化粧品の安全性は製造者の手中にある。食品医薬品局(FDA)は上市前のテストを要求していない。毎年、産業側の”化粧品成分レビュー(CIR)”によって召集される専門審議会は、安全性を決定するために文献レビューと分析を実施するための成分の優先順位を決定する。独立した学界研究者及び産業界、消費者団体、及び FDA の代表からなるこの審議会は1976年のレビュー以来、1,286 成分中、通常の使用で安全ではないとして 9 成分を宣言した。しかし、製造者らは、 CIR によって少なくとも1成分が安全ではないと特定されるまで、どのような成分も除去する義務はなく、ヒドロキシアニソール (訳注:酸化防止剤でBHA(ブチルヒドロキシアニソール)、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)などがある)はいまだに使用されている。

 安全を求める人々は、どのような使用であっても発見されるどのような有害性の証拠も、その使用を禁止するに十分であると考えている。”発がん性の疑いのある成分は化粧品に使用されるべきではない”−とこのカリフォルニアの法案を推進する非営利団体でサンフランシスコを拠点とする乳がん財団(Breast Cancer Fund)のスポークスマン、ケビン・ドネガンは述べている。

 CIR のディレクターであり科学担当の F. アラン・アンダーソンは、用量が危険を生むということに論駁する。”もし、有害影響があるなら、化学物質は人々が使用する製品中に存在してはならないという考えには賛成しない”−と彼は言う。”予防原則を適用することは我々には合理的ではない。その代わり、我々はリスク評価アプローチを採用し 、このアプローチを用いてフタル酸エステル類のような化学物質について我々が見出した広い範囲の安全マージンは、実際の化粧品の使用は安全であるということを我々に保証している。”

 この法律は、カリフォルニア議会を通過して発効される時に、個々の会社及び化粧品・トイレタリー・香水協会(CTFA)からも猛烈な反対を受けた。”CTFA は、FDA による連邦規制を強く支持する”−とCTFA の広報担当副代表キャサリーン・デジオは述べている。”この理由のために、CTFA は、国家的アプローチを蝕み、実行不可能な州毎のつぎはぎ規則をもたらす、・・・あるいは正当化されず、他の食品、飲料、医薬品、又は消費者製品に規定されるものをはるかに越える厳しい要求をもたらす、州に特定の立法に対して、一般的に反対してきた。しかし、”彼女は又、CTFA は、州の健康福祉局(DHS)と会い、この法律の”要求を果たすことに協力する約束した”と付け加えた。

 いくつかの製造者らはすでに製品の安全のための公衆の請願を受け入れた。過去2年間、350社が、健康・環境団体の連合である安全な化粧品キャンペーン(Campaign for Safe Cosmetics)によって推進された、がん又は出生障害に関連する化学物質は使用しないという”約束”に署名した。産業界のリーダーであるロレアル社(L'Oreal)とレブロン社(Revlon)は、彼らがアメリカで販売する製品は、より厳しい欧州連合(EU)の基準に合わせるという約束を昨年したが、それはまさに画期的なことであった。2004年、ヨーロッパでは発がん性、変異原性、及び生殖毒性の疑いがある物質のパーソナル・ケア製品中での使用を禁止する法を制定した。

 我々は、製造者らの態度の変化を見ている。彼らはがんを引き起こす可能性のあるどのようなものも使用しないことの利益を見いだし始めた”−と乳がん財団のドネガンは述べている。

シンシア・ウォシャム(Cynthia Washam )



化学物質問題市民研究会
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