身の回り製品中でよく使用されている化学物質、フタル酸エステル類に出生前に暴露すると、後の子ども時代に認識障害及び行動障害になるかもしれない。
新たな研究が、子どもの行動障害発症の可能性と香料、シャンプー、ローション、化粧品などに含まれるある種のフタル酸エステル類への出生前暴露との間に関係があることを見つけた。
妊娠第3期の尿中のこれらの化学物質のレベルが高かった妊婦の子どもは、4〜9歳時の行動及び実行機能テストでスコアーが平均以下となるらしい。このテストスコアーは、行動又は行為障害と注意欠陥多動症の臨床学的診断と関連することが知られている。
これはフタル酸エステル類への出生前暴露と子どもの行動を検証した最初の研究である。それはフタル酸エステル類と子どもの行動・神経発達障害の増加との関連を示し始めた数少ない研究のひとつである。
この結果は、フタル酸エステル類への暴露について懸念を提起するものであり、妊娠中のローション、シャンプー及びその他の身体手入れ用品への暴露は胎児の発達に影響を及ぼすかもしれないことを示唆するものである。
フタル酸エステル類は多くの家庭用品及び消費者製品で使用されている広い範囲のある化学物質の一族である(訳注1)。フタル酸エステル類はその分子量の大きさにしたがって分類される。分子量が小さなフタル酸のあるタイプは農薬や多くのシャンプー、香料、化粧品などの身体手入れ用品中で日常的に見出される。DEHPのような大きな分子量のフタル酸エステル類のタイプのものは、プラスチックを柔軟にし、プラスチックチューブ、柔らかいおもちゃ、そしてビニル床材や壁材などの建築材中で見出される。
それらの広範な使用のために、呼吸、摂食、皮膚接触を通じての暴露が普通である。体内での滞留は長くはないが、尿、血液、羊膜、母乳中で検出されている。以前の動物及びヒトでの研究で、この添加材と男の子の生殖系変更及び行動障害を含む健康影響との関係が示されている。
科学者らは尿中の代謝物を探すことでこれらの化学物質への暴露を監視する。今回の研究でもこの手法が用いられた。彼らは、マウントサイナイ子ども環境健康調査に参加した妊婦の尿中のフタル酸エステル類のレベルを測定した。親は、4〜9歳の子どもの認識と行動発達を評価する標準化された質問票と調査に回答した。
一般的に、母親の妊娠第3期の血液中の低分子量フタル酸エステル類が高レベルであると子どもは、後の子ども時代に行為障害、攻撃性障害、及び注意欠陥障害を持つ。これらの化学物質の影響のあるものは、特に攻撃性、注意欠陥及び多動については、少女よりも少年に多く現れる。
チューブやビニル床材によく使用されているフタル酸エステル類の他のタイプ−高分子量フタル酸エステル類(訳注2)は認識や行動への影響はないように見える。
以前の研究が、このフタル酸エステル暴露と甲状腺ホルモンの循環レベル変更との関係を見出している。これらのホルモンは、脳と性的発達を含む正常な発達にとって本質的に重要で、特に子どもに重要である。したがってこの結果は甲状腺ホルモンの恒常性(homeostasis)の変更に関連するかもしれない。
社会的要素は統計的に処理されているが、この研究は両親の記憶と報告に依存している。著者らはこの領域での更なる研究、及びもし必要なら暴露低減措置を示唆している。
訳注1
・フタル酸エステル 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
訳注2
・フタル酸ビス(2-エチルヘキシル): フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
訳注:フタル酸エステル類の有害影響に関する海外情報
訳注:フタル酸エステル類関連資料(日本)
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