Chicago Tribune 2012年5月6日
難燃処理発泡材は
なんら火災安全の便益をもたらさない


情報源: Chicago Tribune, May 6, 2012
Testing shows treated foam offers no safety benefit
Fire-resistant barriers may do better job, cut chemical exposure
By Michael Hawthorne, Chicago Tribune reporter
http://www.chicagotribune.com/news/watchdog/flames/
ct-met-flames-barriers-20120506,0,5658067.story


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究)
"http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/会
掲載日:2012年5月6日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_12/
120506_Chicago_Tribunes_flame_retardants.html





政府の科学者らは、難燃剤を含む椅子は、難燃剤を含まない椅子とちょうど同じ速さで燃えることを見つけた。(消費者製品安全委員会 2012年5月2日)
 化学産業界の中心的業界団体は、火災防止用化学物質を家具の発泡材(フォーム)に加えるかどうかが、”生と死を分けることになり得る”と述べている。

 しかし政府のある研究室の科学者らが、ひと組の布張り椅子、ひとつは難燃剤処理発泡材、もうひとつは処理なし発泡材に小さな火で点火したところ、両方とも4分以内に炎に包まれた。

 ”我々は、発泡材中の難燃剤がどのような火災防止にも役立たないことがわかった”とワシントン郊外のある実験室で2009年に行なわれたテストに立ち会った消費者製品安全委員会の高官デール・ライは述べた。

 さらに、火災犠牲者のほとんどは炎ではなく煙を吸い込んで死亡するということに触れながら、両方の椅子の燃焼によりでた煙の量は同じようなものであったと彼は述べた。

 今までの未公開のテスト結果は、家庭の家具の中での難燃剤の広範な使用に疑いを生じさせる。これらの化学物質のあるものは、がん、神経障害、発達障害などに関連している。

 一方、タバコのくすぶりに耐火性のある設計がなされた布張りを使用することによって、あるいは布地の下に耐火バリアを加えることによって、もっと効果のある家具の火災防止方法を得ることができることが研究によってわかっている。

 産業界の団体である米化学工業協会(ACC)は、この安全委員会の研究についての具体的な質問に回答することは拒否したが、e-メールで難燃剤は、”人々や財産、そして環境に及ぼす火災の壊滅的な影響を削減する重要な要素である”と述べた。

 数十年間、家具製造者らは、1975年にカリフォルニア州が導入した燃焼性基準(訳注1)を満たす化学物質に依存してきた。米国内で広く販売されている布張り家具の多くは、この基準に合うように製造されている。

 世界最大の難燃剤製造者のひとつであるアルベマール社(Albemarle Corp.,)は書面で、”家具に関連する火災による損害、負傷、及び死亡の発生はカリフォルニアが家具燃焼性基準を導入して以来、著しく減少している”と述べた。

 レイ及びその他の政府専門家らは、火災発生の減少と煙検知器使用の増加が火災死亡と損害の減少に主要な役割を果たしていると述べている。

 連邦政府規制当局は、長年、いかにして家具に耐火性を持たせるかという問題に取り組んでいる。安全委員会は現在、最良の解決法は、連邦政府の統計が示すところによれば家具火災のずば抜けた主要原因であるタバコのくすぶり耐性を布張りに求めることであると信じている。

 この提案は、まだ制定されていないが、カリフォルニアの基準を不必要なものにすることになるであろう。今日、販売されている家具のほとんどは既に提案されているタバコクくすぶり基準に合致する布を使用しているとレイは述べている。もし、家具の布が最初の着火点での火災を止めるなら、発泡材に難燃化学物質を加え続ける理由はなくなる。

 政府と独立系科学者によるテストは、家具がライターやロウソクからの炎に耐えることができることを確実するために、追加的な措置た必要かもしれないということを示唆している。しかし、これらの火災のタイプが対応すべきそのような基準を求めるのに十分に一般的であるかどうかについての意見に明確な相違がある。

 安全委員会のテストでは、研究者等は二つの他の椅子を用意し、アクリル線維、ガラス線維、及びポリエステル線維の布バリアを布張りと発泡材の間に加えた。点火後4分間で、椅子の背中の黄色の花がら模様を焦がしただけであった。

  イリノイ州ノースブルックにある米保険業者安全試験所(Underwriters Laboratories Inc(UL))での同様な研究が、家具発泡材を囲む通常のポリエステル布を耐火性布に代えると、難燃剤を発泡材に加えるよりはるかに高い燃焼遅延効果があることを示した。

 マットレスの製造者等は既に、国家火災安全基準を満たす耐火性バリアを使用している。これらのバリアは、一般的に化学物質を使用しないか、または一般的に発泡材に加えられるものよりも安全な材料でできている。

 ULテストでは、耐火バリアを施された椅子はバリアのない椅子より、燃えるのがはるかに遅かった。また火災は消防署員が一般的に駆けつける時間より十分に後まで、模擬の居間全体に火は広がらかった。

 研究者らはまた、難燃剤処理された家具発泡材の椅子と通常発泡材の椅子をテストした。国立標準技術研究所の3月のワークショップで発表されたビデオとスライドによれば、通常の椅子は難燃剤処理の椅子よりわずかに高温で燃焼したが、どちらも部屋全体を直ぐに炎に巻き込んだ。

 ”意味のある相違はなかった”と、ULの火災ハザード研究マネージャーであるトム・ファビアンは後のインタビューで述べた。”もっと効果的で潜在的なこれらの(難燃剤)化学物質のリスクを回避する方法が他にもある”。

 難燃剤製造の業界団体はカリフォルニア基準を連邦政府のくすぶり基準(smolder standard)に置き換えることは支持しているが、耐火バリア要求を加える試みにつては、家具の座り心地が悪くなるとして反対している。発泡材メーカーもまた、バリアを全ての家具に使用することになると高くつくと主張している。

 難燃剤に関しては、ポリウレタン・発泡材協会は、会員はそれらを使いたくないがカリフォルニア基準を満たすためにそのようにしていると述べた。

 ”我々は、環境の問題があることを承知している”と同協会の代表ボブ・ルーデカは述べた。”もし、そのように多くの疑問府がつくことのない(難燃剤)製品が手に入るなら、結構なことだ”。


訳注:ビデオ 難燃剤についての真実
http://www.chicagotribune.com/videogallery/69743455/News/Video-The-truth-about-flame-retardants

訳注1:カリフォルニア州家具可燃性基準 TB117
FLAME RETARDANTS IN FURNITURE (Green Science Policy Institute)
 子ども用製品及び布/皮革張り家具中のポリウレタン・発泡材に対して、小さな裸火(open flame) への12秒間の耐火性を求めるもの。1975年の同基準の実施以来、ハロゲン系難燃剤は、火災安全の効果が証明されていないのに、発泡材の重量の約5%のレベルでカリフォルニア州で売られている発泡材家具に加えられている。(アーレン・ブルム博士/有害で不必要な難燃剤の使用を止めることは 我々の健康と環境を保護することになるであろう

訳注:難燃剤の使用と規制に関する情報
訳注:テレビ筺体ロウソク耐火要求に関する情報
訳注:難燃剤の有害性に関する情報
訳注:難燃剤の曝露経路に関する情報




化学物質問題市民研究会
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